The End of the Affair Graham Greene


                                        To C
男は未だ実在しない彼の心の中の場所を持ち、それらが実在を確保してもよいという指図に、それらの中に悩みながら入り込む。

                レオン・ブロイ
BOOK ONE



一つの物語は、始まりは言うまでもなく、終わりさえ持たない。思いのまま人は、そこから振り返るために、そこから前を見据えるために、経緯(いきさつ)のその瞬間を選ぶ。「人は、選ぶ」と、プロフェッショナルな作家の揺らぐ自負から、僕は言う。その人ー彼は何かにつけ、真正面から注目される中ーその専門的技量ゆえに称えられて来たが、僕自身の事実に照らし合わせて、公有地のあの真っ暗で湿った一月の夜、1946の、降る雨の広大な川を傾きながら渡ろうとするヘンリィ・マイルズの光景を選ぶだろうか。それとも、こうした像が僕を選んだのか?僕の職業の慣例に従うと、まさにそこで始まると、好都合であるし、正しいが、もしあの時、僕が神を信じていたら、僕は僕の肘をぐいっと引っ張る手、暗示、「彼に話しかけて。彼は、まだ貴方見ていない。」を信じても、また良かった。
 とはいえ何故僕は彼に話しかけてしまったのか?一時(いっとき)でも憎悪が大きく広がらなければ、どのような人間への告発にも使えない。僕はヘンリィを憎んだ―僕は彼の妻サラァをも憎んだ。そして彼、僕は推察する、はあの晩の出来事の後、間もなく僕を憎むために現れた:彼は確かに折に触れて、彼の妻やその他の者を憎むしかなく、あの当時、誰かを信じるに足りず、僕達は幸運だった。そう、これは愛についてというより遥かにずっと、憎悪の記録である。従ってもし僕がヘンリィとサラァの好意に甘えて、何か言うために登場すれば、僕は期待に応えよう。僕は偏見を向こうに回して書いている。何故なら、近い―真実、僕の近い―憎悪の表明でさえ、選ぶこと、それは僕のプロフェッショナルな自負だから。
 こんな夜に外でヘンリィを見かけるのは、思いがけなかった。彼は彼の慰めとなる人を好む、そしてつまるところー或いは寧ろ、そこで僕は思った―彼はサラァを所有した。僕にとって慰めは、悪しき場所か時の、悪しき記憶に似ている。人は寂しければ、人は苦痛に寄り添う。僕が不道徳をして過ごした居間、ベドゥの中にー南ー公有地の横、他の人々の調度の名残りの中に、そこにはあり余るほどの慰めがあった。雨を突いて僕は散歩に出かけそこら辺で一杯やろうと僕は思い付いた。少し混み合ったホールは、見知らぬ人の帽子やコウトゥでごった返し、僕は誰か他の人の傘を偶々(たまたま)手に取ったー二階の男が仲間を招待していた。そこで僕はステインドゥーグラス・ドアを後ろ手に閉め1944に爆破され修繕されたことのない階段を僕なりに注意深く辿った。僕にはその時を思い出す理由があり、如何にステインドゥ・グラス、頑丈で不様でヴィクトーリア朝風の、僕達の祖父自らそうしたように、は衝撃に耐えたことか。
 直ぐに僕は公有地を横切り始めると違う傘を掴んだことを自覚した、それは漏れ穴を生じ雨が僕の防水レインコウトゥの襟の下に流れ落ちたから、その時僕の視野に入ったそれはヘンリィだった。僕はいとも容易く彼を避けられた;彼は傘を持たずラムプの灯かりで彼の目が雨で見えなくなっていると僕には見て取れた。黒い葉のない木々は、何の守りにもならなかった。それは壊れた送水管のように周りに立ち尽くし、雨は彼のこわばった暗い色の帽子から滴り落ち、彼の黒い文官用オウヴァコウトゥを流れとなって伝わり落ちた。もし僕が彼を追い越して真っ直ぐ歩いて行けば、彼は僕に目をくれようともしなかっただろう、僕は歩道から二フィートゥ避(よ)けて通ることで、避け難くした。何れにせよ僕は声をかけた。「ヘンリィ、貴方はおよそ見ず知らずの人だ。」僕達は古くからの友人であるかのように、彼の目が輝くのを見た。
 「ベンドゥリクス、」彼は人懐っこく言った、それでも尚、世間は言っただろう、彼は憎悪の理由を持ち、僕にはないと。
 「貴方はどうしょうっていうの、ヘンリィ、雨の中?」誰でも焦(じ)らしたくて抑えられない衝動にかられる男達がいる:誰一人受け容れない男達、その美徳。彼は口籠りながら言った。「オゥ、僕は少し外気に触れたくて。」思いがけない一陣の風と雨の最中(さなか)北の方角へ輪を描いて持って行かれないように彼はどうにかこうにか彼の帽子をしっかり押さえた。
 「サラァはどうしてる?」そうしなくてもそれは妙に思えたかも知れないから、僕は尋ねた。彼女が病気、不幸せ、臨終だと聞くこと以上に僕を喜ばせることは何もなかったが。僕はあの当時、彼女が経たどんな苦悩も僕の持ち物を軽くし、仮に彼女が死んだら僕は自由になれるだろうと思い遣った。僕はもう人が僕の卑しい暮らし向き故に想像してしまうどんなことも思うまい。僕は哀れで無邪気なヘンリィを好ましくさえ感じられて、僕は考えた、もし彼女が死んだら。
 彼は言った「オゥ、彼女は夕時何処かへ出かけている。」するとまた僕の心の中のあの悪魔を仕事に差し向けた。ヘンリィが他の質問者に、ちょうどそんな風に、返事をしなければならなかった別の日々を思い出しながら、しかしただ僕だけは、サラァが何処にいるか知っていた。「一杯?」僕は尋ね、僕の不意打ちに彼は僕の側で自ら歩調を合わせた。僕達は以前彼の家の外で一緒に飲んだことはなかった。
 「僕たちが貴方に会っていた頃から随分経つね、ベンドゥリクス。」何かしら分けがあって、僕はその異名によって知られた男である。-僕は、僕の文学上の親たちが僕に寄せた、僕の友人たちはかなり気取っていると思うモーリスを、万事有用であれ、名付けられない方がよかった。
 「久しぶり。」
 「どうしたことか、一年以上ーになるんじゃないかな。」
 「6月1944、」僕は言った。
 「それ以来かーそう、そう。」道化師、僕は思った、一年と半年の間に、何一つ変だと思わないなんて道化師だ。僕たちの両「脇」を五百ヤードゥも、ぺしゃんこになった芝生は隔てていなかった。サラァに話したところで、何も彼に起こらなかったのだ。「ベンドゥリクスはどうしている?ベンドゥリクスを招待するのはどう?」彼女の返事は嘗て彼には・・・風変り、逃げ口上で、怪しく思われなかったのか?僕は池の中の石同然、完全に彼らの視界から抜け落ちてしまっていた。さざ波は一週、一ヶ月の間、サラァを悩ませたのかも知れない、と僕は思いはするが、ヘンリィの目隠しは、しっかりと括りつけられていた。僕は僕がそれから利益を得た時でさえ。彼の目隠しを、仇(あだ)と思って来た。他もまた利益を得られる、と知りつつ。
 「彼女は映画館にいるの?」僕は尋ねた。
 「オゥいや、彼女は前から行かないよ。」
 「彼女はよく行くんじゃあ。」
 ポンテフラクトゥ入江は、未だ紙の長い旗や紙のベルや市場の華やかさを偲ばせるもの、藤色やオリンジでクリスマスのために飾られ、若い女主人は彼女の客を軽く見て、彼女の胸をバァに凭せかけた。
「素敵。」ヘンリィが言った、それには目もくれず。幾分当惑した様子、物怖じして、どこかに彼の帽子を掛けようと、辺りをきょろきょろ見回した。彼が以前、パブリック・バァに行った中で最も近いのは、彼が省の彼の同僚と一緒に、昼食を食べたノーサムバーランドゥ・アヴェニューから離れた焼き肉リストゥラントゥだった。という印象を得た。
 「貴方は何を飲みますか?」
 「僕はフイスキでかまわない。」
 「僕も。だけど貴方はラムを付き.合わなければならない。」
 僕達はテイブルに座りそれぞれのグラスを指で弄んだ。僕はヘンリィに言わなければならないことは今までさほどなかった。もし僕が1939に主役として古参の文官を扱った小説を書き始めていなければ、ヘンリィもサラァもよくよく知ろうとして、これまで骨を折って来たかどうか僕は疑わしく思う。ヘンリィ・ジェイムスは嘗て、ウオルタァ・ベサントゥとの討論の中で、十分な才能を持った若い婦人は、近衛歩兵旅団に纏(まつ)わる小説を書くために近衛連隊の兵舎の食堂の窓をただ通り過ぎ、中を覗き見る必要があると言った、が彼女の編の或る場面ではもし単に詳細に関して照合するつもりなら彼女は近衛兵と寝る必然性を探っただろうにと僕は考える。僕はヘンリィと全く寝なかったが、僕は次の巧みなことをした、つまり僕が夕食にサラァを誘い出した最初の夜、僕は文官の妻の脳を突(つつ)くという冷血な意志を持った。彼女は僕が何を狙っているのか知らなかった;彼女は考え、僕は確信し、僕は彼女の家族の暮らしに純粋に興味を持ち、おそらくそれが彼女の僕への好意をまず呼び覚ました。ヘンリィは何時に朝食をとったの?僕は彼女に聞いた。彼は役所へ地下鉄、バス、それともタクシィで行ったの?彼は夜、家に彼の仕事を持ち帰った?彼はそれに王室の紋章の付いた書類鞄を持っていた?僕達の友情は、僕の関心に基づいて開花した:誰でもヘンリィを真面目に扱えば彼女は随分喜んだ。ヘンリィは、しかし象が有力であるようにどちらかと言えば有力で、彼の局の大きさ故に、有力だった;救いようもなく、不真面目を貶(けな)されっぱなしという有力にも様々な性質がある。ヘンリィは年金省ーそれは後に国防省になる予定だった、内の重要な事務官補だった。 国防-僕は、貴方が貴方の片割れを憎み、どのような武器でも捜し求める時、そうした時々に追ってそれを笑うのが常である・・・僕の本の喜劇的要素、笑い草になった人物のためにコピィ、またもやコピィの目的で、僕は只、ヘンリィに組みして来ただけ、とサラァにわざと話した時、潮時はやって来た。彼女が僕の小説を嫌になり始めた、それはその時だった。彼女はヘンリィ(僕はそれを否定することが出来なかった。)に途方もない忠誠心を抱き、あの雲で覆われた時間に、悪魔が僕の頭脳の咎を引き受けると、僕は罪のないヘンリィまで恨み、僕は小説を使って書くには生々し過ぎる挿話を捏造しようとする・・・サラァが一度僕と一晩を過ごした時(書き手が彼の本の最後の言葉のために先んじて探し求めるように、僕はそのために先んじて探し求めた)僕は折々、一時(いっとき)に何時間も完全な愛のように思われたことのその気分を害す思いがけない言葉によって突然その機会を台無しにしてしまった。二時近く、僕は拗(す)ねて眠りに落ち三時に目覚め、彼女の腕の上に僕の手を置いてサラァを起こした。僕はもう一度、万事見事に振舞おうとしていた、と僕は思う。僕の犠牲が、僕の方を向いて、眠りとあり余るほどの信頼でぼんやりして美しい彼女の顔つきを変えるまで。彼女は口論を忘れてしまい、僕は彼女の忘れっぽさの中にさえ、新たな動機を探った。我々人間が如何に捻(ひね)くれているか、それでも尚、神が我々を創ったと彼らは言う。が、完璧な方程式ほど単純で、空気ほど透明ではないどのような神も想像し難い、と僕は理解する。僕は彼女に言った、「僕は五章について考えながら横になって起きていた。ヘンリィは何時も重要な会議の前に彼の息をすっきりさせるためにコフィ・ビーンズを食べるの?」彼女は彼女の頭を振り静かに泣き始め、僕は勿論その理由が分からない振りをした。ー単なる疑問、それは僕の性格について僕を悩ませて来た。これはヘンリィへの攻撃ではなかったし、非常に洗練された人々は時にコフィ・ビーンズを食べる・・・だから僕は続けた。 彼女はしばらく泣くと眠りに就いた。彼女はぐっすり眠る人だったのに、僕は加えた無礼通りに、彼女の眠る権限まで奪った。
 ヘンリィは彼のラムをあっという間に飲み、藤色とオリンジの長い旗の間をみすぼらしくきょろきょろするばかりの彼の視線。僕は尋ねた、「いいクリスマスだった?」
 「とても素晴らしかった。とても素晴らしかった。」彼は言った。
 「家で?」ヘンリィは僕の言葉の抑揚が妙に聞こえたのか僕を見上げた。
 「家?そう、もちろん。」
 「それでサラァは満足したの?」
 「うん。」
 「ラムをもう一杯飲む?」
 「それじゃあ僕の番だ。」
 ヘンリィが飲み物を取って来る間、僕はお手洗いに入った。その壁は、常套句で殴り書きされていた。「お前を地獄に落とす、家主、それにお前のデカ胸妻。」「全ての女衒(ぜげん)と売春婦どもへ、浮かれた梅毒と幸せな淋病を。」僕は急いで、また、元気のよい紙の長い旗とグラスのチリンという音の方へと出た。時に僕は慰めのために余りにも接近し過ぎて他の男達の中に僕自身が反映されるのを見る。するとその時、僕は聖人を、英雄的高潔を信じたいというとんでもない願望を持つ。僕はヘンリィに僕が見て来た二つの行(くだり)を繰り返した。僕は彼を憤慨させたかったのに、彼がただ「嫉妬は、恐ろしいものだ。」と言った時、それは僕を驚かせた。
 「貴方はデカ胸妻についての訓示を垂れているつもりなの?」
「その両方とも。貴方が恵まれない時、貴方は他の人々の幸せを妬む。」僕は国防省で学ぶことを、今まで彼に期待したことはなかった。そしてそこに―常套句にー僕のペンの外に、またもや苦々しさが漏れる。何とどんよりした、得体の知れない特質か、この苦々しさは。もし僕にできたら、僕は愛を以って書こう、が、もし僕が愛を以って書けたら、僕は違った男になってしまう。僕は愛を捨てた覚えはない。しかし突然、バー―テイブルの光沢のあるタイル張りの表面を横切る何かを、僕は感じた。愛のように大変なものは何一つない、おそらく不運にあっては友情以上のものは何一つない、僕はヘンリィに言った。「貴方は恵まれない?」
 「ベンドゥリクス、僕は心配してる。」
 「僕に話すといい。」
 彼に話しをさせるそれはラム酒だった、と僕は予測する。それとも、彼について僕が如何に多くを知っているか、彼は少しは気付いたのか?サラァは忠実だったが、僕達の経て来たような関係では、貴方は一つの事か或いは二つを拾い上げるしかない…彼には彼の臍の左に黒子(ほくろ)がある、と僕は知った。何故なら僕自身の母斑が一度サラァにそのことを思い出させたことがあるから。彼は近視に悩んでいたが、見知らぬ人相手に眼鏡を着けようとはしないと知った。(そして僕は、彼らの中に嘗て彼を見かけたことはなく、未だに十分見知らぬ人だった):僕は彼の十時にお茶を欲しがることを知り:僕は彼の睡眠の習慣まで知った。僕が既に、随分多くを知っているということを、もう一つの事実が僕達の関係を変えはしないということを、彼は気付いていたのか?「彼は言った。「僕はサラァのことを心配している、ベンドゥリクス。」
 バァのドアが開き、僕にはその明かりの中、下に叩き付ける雨が見えた。小さい浮かれた男が突入し叫んだ、「やあ、皆さん、」そして誰も答えなかった。
 「彼女は病気?僕は貴方が言うと思った・・・」
 「いや、病気じゃない。僕はそうは思っていない。」
彼は居心地悪そうに、辺りを見回した。 ーここは彼の環境に相応しくない。彼の目の白いところが充血しているのに気付いた。おそらく彼は、彼の眼鏡をちゃんと掛けずにいたんだ。ーそこにはずうっと随分大勢の他人がいるし、或いは、それは涙の名残りだったのかも知れない。「ベンドゥリクス、僕はここでは話せない、」それにしても彼は前に何処かで話す習慣でもあったかのように言った。「僕と一緒に家に来てくれ。」
 「サラァは帰るだろうか?」
 「僕はそう期待してはいない。」
 僕が飲み代を払った。するとそれがまたもやヘンリの心配の徴候を露わにした。ー彼は安易に他の人々の持て成しを受け入れたことはなかった。彼は、僕たち他の者が探し回っている間に彼の手のその掌に準備したお金を握って、車上の人になるのが常だった。公有地の通りは、未だ雨の中を走ったが、それはヘンリィの家に遠くはなかった。彼は、アン女王時代の扇形欄間の下に掛け金を持って中に自らを入れ呼んだ、「サラァ。サラァ。」僕は返事を待ち焦がれながらも、返事を恐れた。が、誰も答えなかった。彼は言った、「彼女は未だ外出中だ。書斎に入って。」
 僕は前に一度も書斎に入ったことはなかった。僕は決まってサラァの友人だったし、僕がヘンリィに会っても、それはサラァの縄張りの上でのことだった。
 どこにも調和したものはなく、何一つ時代とか計画に沿った物はなく、そこでは全ての物はその週自体に属しているように見えた彼女の行きあたりばったりの生活‐空間、つまり過去の好みとか過去の感傷とかの形見として残すことを許された物は何もなかった。全ての物はそこで用いられた;ヘンリィの書斎の中と全く同様に、これまで数えるほどしか使われたことがない、と僕は今更のように思った。ギボンのセトゥは、嘗て開かれたか、またスコットゥのセトゥは、只そこにあるだけかどうか、僕は疑った。つまりそれはーおそらくーディスカス・スラウアのブロンズの模造品のように、彼の父親のものだったから。それにしても、彼の利用しない部屋の中では、彼は比較的幸せそうだった。単にそこは彼のもの、彼の所有物という理由だけで。僕は苦々しさと羨望を伴って思った。もし人が一つの物を確実に所有したら、人はそれを一度も使う必要はない。
 「フイスキ?」ヘンリィが聞いた。僕は彼の目を思い出し、昔日やった以上に飲んでいるのだろうかと怪訝に思った。確かに彼が注ぎ出すフイスキは、気前のいいダブルだった。
 「何が貴方を悩ませているの、ヘンリィ?」僕はその古参の文官に関する小説をとっくに放棄していた。僕はもはや、コピイを探ろうともしなかった。
 「サラァ。」彼は言った。
 二年前、丁度そんな言い回しで、もしも彼が言っていたら、僕はぎくっとしただろうか?いや、僕は大いに喜んだと思うー人は本当にどうしようもなく、騙すことが嫌になる。もしかしたらチャンスがあるかも知れないという理由だけでも、僕は開戦を歓迎したかった。たとえそれが僅かであろうと、彼の側の若干の戦術の誤りから、僕は勝てもした。それに、僕が是が非でも勝ちたくなってしまったそれ以前も、以降も僕の人生、そこに嘗て好機はなかった。優れた本を書こうという願望でさえ、そう頑なに持ってはいなかった。
 彼はその赤い縁の付いた目で僕を見上げ、言った。「ベンドゥリクス、僕は不安だ。」僕はもはや彼を贔屓にすることが出来なかった;彼は悲惨な卒業生の一人だった:彼は同じ学校に合格していた、だから初対面で僕は彼のことを対等と思った。僕は彼の机の上、そこにオクスフォドゥを背景にしたその若い頃の茶色い写真の一枚があったのを僕は覚えている、彼の父親の写真、そうしてそれを見ながら、ヘンリィに何と似ていることか(それはほぼ同じ年代、四十半ばに撮られた)何と似てないことよと僕は思った。それを違わせているのは、それは口髭ではなくーそれは、自信、森羅万象に精通していること、周りの事を熟知していることから来るヴィクトーリア朝の見掛けだった。と、突然、僕はまたもや親密な仲間意識を覚えた。僕は彼の父親(彼は大蔵省にいた)を好ましく思う以上に彼を好きになった。僕達は不案内同士だった。「貴方は何が気懸かりなの、ヘンリィ?」
彼は誰かが彼を押したかのように、安楽椅子に座り、嫌悪感を伴って言った、「ベンドゥリクス、僕は何時も一人の男が成し得る最悪の事、最悪そのものを考えた・・・」あの当時、僕は確かに張り枠の針の上:僕には不慣れで、如何に限りなく侘しく、無邪気故に落ち着き払っていたことか。」
「貴方が僕を信用出来るのは分かっている、ヘンリィ。」僕は考えた、彼女は手紙を取って置いた、僕はそんなに何通も書かなかったが、それは可能だった。それは作家が走るプロフェッショナルならではの危険である。女達は彼女の恋人の重要性を誇張しがちで、彼女達は分別のない字句が、五シリングに値付けされた自著の目録に記された「関心がある」が、世に出るその失意の日を、決して予測しない。
「じゃあ、これをちょっと見て。」ヘンリィが言った。
彼は僕に手紙を差し出した:それは僕の手書きには程遠かった。「続けて。それを読んで。」ヘンリィは言った。それはヘンリの或る知人からで、彼は書いた、貴方が助けたがっているその人物は、159ヴィゴウ・ストゥリートゥ、サヴィジという男に依頼するといいと私は提案します。私は彼を有能で思慮深いものと思っています、それと彼の使用人は、普通にいるその種の奴らよりましで厭らしくはないように思います。」
 「僕には分からない、ヘンリ。」
「僕はこの男宛てに書き、家の者の知人が私立探偵斡旋所についての僕の忠告を求めて来たと言った。そりゃあ、ぞっとするよ、ベンドゥリクス。彼は見せかけを通して見破らなければならなかった。」
「貴方は実際そのつもりで・・・?」
「僕はそのことでは何もしなかった。」それでもその手紙は僕に思い出させながら僕の机の上のそこに置いてあった・・・それはひどく馬鹿げていて、彼女は一日に十二回もここに入るのに、それを読もうともしないような彼女を完全に信用していいと思えるか、そうでもないか、僕は引き出しの中にそれを仕舞い込んだりしない。それでも未だ僕は信用出来ない・・・彼女は今、散歩に出ている。徒歩、ベンドゥリクス。」雨は彼の防具にも浸透しガス火の方へ彼の袖の縁を向けたままにした。
 「僕は気の毒に思う。」
「貴方は何時も彼女の特別な友だちだった。ベンドゥリクス。誰もが決まって言う、誰もではないか、夫は女というものを知る実に究極の人物であると・・・僕は今夜思った、共有地で貴方を見かけた時、もし僕が貴方に話して、貴方が僕を笑ったら、僕はその手紙を焼いてしまえるのにと。」
彼は彼の湿った腕を伸ばしたまま、僕から目を反らしながら、そこに座った。僕は笑いたくないとは思いもしなかった。それどころかもし僕に出来たら笑いたかった。
 僕は言った。「それは人が笑うような状況ではない。喩え思うことそれが現実離れしていても・・・」
 彼は待ち望んでいたかのように僕に尋ねた。「そりゃあ、現実離れしている。貴方は僕が馬鹿だと思いもするでしょ・・・?」
 ちょっと前なら僕は進んで笑いもしただろう。そう今でさえ、僕が只々嘘を吐くしかない時、以前の様々な妬みが甦った。夫と妻は人が妻を憎めば人は夫をも憎んでしまう、それ程大層な一塊の骨肉なのか?彼の質問は、彼がいとも容易く騙され:それ程までに気楽だったから、彼は彼の妻の背信における、ほとんど共謀者のように、ホテルのベッドゥルームにあいまいな覚書を置き忘れる男、窃盗における共謀者のように、僕には見えたということを僕に思い出させた。嘗て僕の恋人に良くして来たその資質故に彼を憎んだ。
 彼のジャッキトゥの袖が、ガスの前で蒸気を上げ彼は繰り返した。尚も僕から目を反らしながら、「勿論、貴方が僕を愚か者だと言ってもかまわない。」
 その時、悪魔が話した。「ああいや、僕は貴方が愚か者だとは思わない、ヘンリィ。」
 「貴方は、それは・・・可能だ、と本当に思っているというのか?」
 「もちろん、そりゃあ可能です、サラァは人間だ。」
彼は腹を立てたのか言った。「それに僕はてっきり貴方は彼女の友人だと思っていた。」そりゃあ手紙を書いた本人ではあったが。
 「もちろん、」僕は言った、「貴方は、僕がこれまで心得ているいるよりはるかにたくさん、十分に彼女を知っている。」
 「いろいろと。」彼は憂鬱そうに言い、それで僕は、僕が彼女を最もよく分かっている、その真の手段を考えていたのだと納得した。
 「貴方は僕に尋ねた、ヘンリィ、もし貴方が愚か者だと僕が思っていたらと。僕はただ、その思いの中、そこに馬鹿にしたことは何一つないと言っただけ。僕はサラーには何も言ったことはない。」
 「僕には分かっている、ベンドゥリクス。僕は済まないと思う、僕は最近十分眠っていない。僕は夜に目が冴える。この忌々しい手紙をどうしようかしらとあれこれ思って。」
 「それを燃やせば。」
 「僕に出来たらなあ。」彼は未だ彼の手に、それを持っていたので、一瞬、僕は彼がそれを燃やすつもりだ、と真底思った。
 「それとも、行ってサヴィジ氏に会うといい、」僕は言った。
 「しかし僕は彼に彼女の夫ではないような振りが出来ない。全く考えてもみてくれ、ベンドゥリクス、他愛もない嫉妬に駆られた夫が揃いも揃って同じ噺を口にしながら座った一つの椅子に収まって一つの机の前のそこに座っているしかないことを・・・そこには待合室があり、だから僕達が通る度に僕達には互いの顔が見えるってことを貴方は思い付く?」おかしい、考えてみれば、お前はそもそもヘンリィを想像力豊かな男だから選ぶことにした。僕の優越はぐらつかされ、焦らそうとするお馴染みの欲求が僕の中で目覚めたのを僕は感じた。僕は言った、「何故僕を行かせないの、ヘンリィ?」
 「貴方を?」僕はもし僕があまり突飛なことをやれば、喩えヘンリィだって疑い始めるかも知れない、と一瞬あやふやな気がした。
 「そう。」僕は危険を冒して言った、もしヘンリィが過去について少しでも学んでいたら、今、何故にそれが顕在化したのか?それは彼にとって好都合だろうし、おそらく彼の妻のもっと上手なカントゥロウルの仕方を彼に教える。「僕は嫉妬深い愛人になった振りができる、」僕は続けた。「嫉妬深い愛人達は、嫉妬深い夫達より、敬意に値し、嘲笑に値しない。かれらは文学の重しということで支持されている。愛人を裏切れば、悲劇になり、喜劇になることはない。トゥロイラスを考えてみるといい。僕がサヴィジ氏と面談する時、僕は僕の自尊心を失くさないだろう。へンリィの袖が渇き切ったのに彼は未だ火の方へそれを向けたままだったので、今や、布が焦げ始めていた。彼は言った、「貴方は本当に僕のためにそんなことをしてくれるの、ベンドゥリクス?」すると彼の目のそこには涙が滲んだ。彼はこの友情の絶大な印を期待することも、或いは値することも嘗てなかったが。
  「勿論、僕はするよ。貴方の袖が焦げている、ヘンリィ。」
 彼はそれを見た。それは他の誰かのものなのにというように。
 「それにしてもこれは現実離れしている。」彼は言った。「僕は何をあれこれ考えていたのか、分からない。貴方に話したのが最初で、それから貴方に頼んだのがーこれ。人は友達を通して人の妻を密偵してはいけないーそしてその友達が彼女の愛人だと偽っては。」
 「オゥ、それは未だ済んでない。」僕は言った。「しかしどれも姦通でも窃盗でも敵の火刑からの逃走でもない。為(な)されていない事は、日毎為される、ヘンリィ。それは近代生活の一コマだ。僕は自らそれらの殆どを遣って来た。」
 彼は言った、「お前はいいやつだ、ベンドゥリクス。僕が必要としたのは、それ相応の話だったー僕の頭をすっきりさせるために。」そして今度は彼は本当にガスの炎に向かってその手紙を持ったままでいた。彼が最後の小片を灰‐皿に置いた時、僕は言った、「名前はサヴィジで住所は1ヴィゴウ・ストゥリートゥ159か169のどちらか。」
 「それを忘れてくれ。」ヘンリィは言った。「僕が貴方に何を話したか忘れてくれ。それは意味を成さない。最近、頭痛が酷くなる一方だった。僕は医者に診てもらうつもりだ。」
 「あれはドアだった。」と僕は言った。「サラァが入って来た。」
 「オウ。」彼は言い、「あれはメイドゥだよ。彼女は映画に出かけた。」
 「いや、あれはサラァの歩調だ。」
 彼はドアに向かい、それを開けると、ひとりでに彼の顔は上品さと愛情という馬鹿げた輪郭に成り下がった。
 僕は何時も、彼女の出現に対するその機械的反応によって、苛々(いらいら)させられた。それは全く無意味だからー人(ひと)は必ずしも女の出現を歓迎出来はしない、喩え人が恋愛中でも、そして僕は、彼らは一度も愛し合ったことはないと彼女が僕に打ち明けた時、サラァを信じた。そこには、更なる心からの歓待があり、憎悪と不信の僕の刹那にあっても、僕は信じた。少なくとも僕に対しては、彼女は彼女持ち前の正義の範疇にある人でー注意深く操られるべき一片の磁器にも似た家というものの片割れではない。
 「サル‐アァ、」彼は呼んだ。「サル‐アァ、」音節に間(ま)を開けながら、耐え難い不実を伴って。
 彼女がホールの階段の最下部で立ち止まり僕たちの方を振り向いた時、どうして彼女を見る他人を装えよう?僕は嘗て、その行動による以外、僕の架空の登場人物でさえ描写できた例(ためし)がない。それは何時も、小説にあって、読者は、どんな隔たりがあろうと、彼が選ぶ登場人物を想像するのを許されるべきである、と僕には思えた。僕は彼に既‐成の挿絵を付けて提供したくない。今はもう、僕は僕独自の技巧によって背を向けられる。僕はサラァの身代わりになる他のどんな女も求めてはいない、僕は読者に、一体となった開けた額(ひたい)、そしてくっきりとした口、頭蓋骨の形態を見て欲しいが、僕が伝えられるすべては、「はい、ヘンリィ?」そして次に「貴方?」と言いながら、濡れたレインコウトゥのまま振り向く漠然とした姿である。彼女は何時も僕を「貴方」と呼んだ。「そちらは貴方?」と電話で、「貴方に出来る?」「貴方はそのつもり?」「貴方はそうするの?」だから僕は想像した、馬鹿みたいに、一時(いっとき)にほんの僅かの間、世界に唯一の「貴方」がいて、それは僕だと。
 「そりゃあ君に会えて嬉しい、」僕は言ったーこれは皮肉からなる一コマだった。「外を歩いていたの?」
 「はい。」
 「酷い夜だね。」僕が咎めるように言うと、ヘンリィは明らかに心配して付け足した。「お前はずぶ濡れだ、サラァ。お前は、その内、冷えてお前の疫病神を掴むことになるよ。」
 その通俗的知識による決まり文句は、時に、凶運の通告書のように会話を通して腑に落ち得る、喩え僕達が彼は真実を口にすると分かっていても、僕は、僕達のどちらかが、彼女のためにどんな真に迫った悩みでも思い遣ろうとしていたら、僕達の神経、疑念、憎悪を突き破っていたのかも知れない。



何日経ったのか、僕は口にできない。以前の混乱が甦り、あの陰鬱な精神状態で、人は、盲人が明るさの変化に気付けない以上に、その日々をもはや語れない。僕の行動の針路を僕が決めたのは、七日目か二十一日目だったか?僕には今、三年経った後も、共有地の縁(へり)伝いに、池の辺(ほとり)か、十八‐世紀の教会のポウチコウ(柱廊式玄関)の下の離れた所から、ドアが開き、サラァがそれらの爆破されず、よく‐磨かれた階段を降りて来るという万が一の可能性に賭けて、彼らの家を観察している徹夜の曖昧な記憶がある。正しい時刻は、一切打たなかった。雨の日々が終わると、夜な夜な霜が降りて晴れはしたが、壊れた‎ウエザァ‐ハウスのように、男も女もどちらも現れることはなかった;僕は二度と、暗くなってから公有地を横切るヘンリィを見たことはない。おそらく彼は僕に話してしまったことを気に病んだ。彼は極めて在り来りの男だったから。僕は冷笑を伴った形容詞を書き、それでも未だ僕が自らを試すとすれば僕は只、誰もがそれらの藁葺きや石の中、随分平和そうに見えて、休憩を思い起こさせる車が通る大通りから見る村々のように在り来り向け賞賛と信任だけを探す。
 僕はあの曖昧な日毎か週毎だったか、サラァの夢を随分見たのを覚えている。時々僕は痛みの感覚で、時には満足して起きようとする。喩え一人の女が一日中誰かの思いの中にいるにしても、人は、夜には彼女の夢をどうしても見ずにはいられないというものではない。僕は簡単に出そうもない、一冊の本を書こうとしていた。僕は僕の日常的五百語を駆使しても、その登場人物は、どうしても生気が漲(みなぎ)らない。書くことの多くは人の日々の皮相に依存する。人は買い物、所得税申告、思いがけない会話に心を奪われるかも知れないが、無意識の流れは問題を解決しながら、先行きを計算に入れながら、静かに澱みなく流れ続ける:人は不毛の下に蹲(うずくま)り、机上にて意気込みは消え失せる。すると突然、それでも言葉は宙(ちゅう)からのように現れて:絶望的行き詰まりに閉塞されたかに見えた情況が、前方へ揺るぐ:その仕事は人が眠り、買い物をし、友人と話している間に、終えられた。何れにせよこの憎悪と疑念、破壊に向かうこの激情は、その本より深く埋もれて行った。ー代わりに無意識は、或る朝、僕が目覚めて気付くまで、それに作用した、ともかくそれを夜通し企みでもしたかのように、この日、僕はサヴィジ氏を訪ねる気になった。
 何という風変りな所蔵品が、信頼された職業にあるのか。人は自らの弁護士を、自らの医師を、自らの聖職者を信用する、僕は思う、もし自分がカソリクなら、そう今、そのリストゥに自分の私設刑事を加えた。ヘンリィの他の依頼人にじろじろ見られるという思いは、全く間違っていた。その事務所は二つの待合‐室を持ち、その片方に一人で通された。それは、ヴィゴウ・ストゥリートゥで貴方が期待しようとするものと微妙にかけ離れていたーそこには一弁護士の所有する出張所の何となくだらけた雰囲気があった。むしろ歯医者に似ている待合室には、流行りの読み物の選りすぐりも備えてあったーそこにはハァパァズ・バザーやライフや一揃いのフレンチ・ファション定期刊行があり、中に僕を案内した男は、ちょっと丁重過ぎたが身なりは良かった。彼は火に面した椅子に僕を引っ張って行き、かなり注意深くドアを閉めた。僕は患者のような気がして、僕は患者、僕は嫉妬向けの名だたるショック療法を試みるに足りる病人、だったと自ら思う。サヴィジ氏について、僕が気付いた最初の物は彼のネクタイだった:それは或るOBの会を表していると僕は推測した:次に、粉末の微(かす)かな赤らみの下、彼の顔の何と奇麗に剃られていたことか、そしてその次は彼の額、鼠色がかった髪は後退し、ぴかぴかと光った。職務について回る理解、同情、気遣いの合図の-輝き。彼が握手をする時、彼は微妙な捻(ひね)りを僕の指に加えたので僕ははっとした。彼はフリーメイスンに違いなく、もし僕が抑圧を跳ね返せたら、僕は多分、異例の請求額を受け取っただろう。
 「ベンドゥリクスさん?」彼は言った。「座って下さい。それは最高に心地良い椅子だと私は思います。」彼は僕のためにクシャンを叩き、僕がその中に我が身を上手く沈めるまで、僕の側に気遣って立っていた。それから彼は僕の側に真っ直ぐな椅子を引き寄せた、それにしても僕の脈拍に耳を傾けようとするように。「さあ何とか貴方自身の言葉で何もかも僕に話して下さい。」と彼は言った。僕自身のもの以外、僕が使えた何か他の言葉を想像出来ない。僕は当惑し、苦々しく思い、僕は同情を求めてにここに来たのではなく、僕にそれを払えれば、何らかの実質的助力の代償を支払おうとして来た。
 僕は始めた。「僕には分からないのですが、貴方の手数料は、何の監視代ですか?」サヴィジ氏は縞模様のネクタイをゆっくり撫でた。彼は言った、「今はそのことは心配しないで、ベンドゥリクスさん。この下準備の相談に、三ギニーズ請求しますが、もし貴方がもうこれ以上続行することを望まなければ、私は、経費を全く戴(いただ)きません、全く要りません。最高の宣伝、貴方はご存知でしょうが。」ー彼は体温計のように、中に決まり文句を滑り込ませー「は満足した依頼人です。」
 普通の状況の最中、僕が思うに、僕達は皆、殆ど似たような行動をとり、同じ言葉を遣う。僕は言った、「これは非常に単純な事例です、」そこで僕はサヴィジ氏は僕が話し始める前に実はその事を全部承知しているのではないかと、癪に障りつつも気付いた。僕が言わなければならないそれは、サヴィジ氏にとって何一つ不可解であろうはずがなく、彼が暴いたはずのそれが、その年、既に何十回も、明るみに出されたことは全くなかった。医師でさえ、時に患者にかき乱されるが、サヴィジ氏はあらゆる症状を熟知しながら、唯一つの病気に従事する専門医だった。
 彼は身の毛がよだつほど優しく言った。「貴方の時間を役立てて下さい。」
 僕はおしなべて彼の他の患者同様、混乱を来していた。
 「続けるほどのことは、そこには実際何一つありません。」僕は説明した。
 「ああ、それが私の仕事です。」サヴィジ氏は言い、「貴方は心的状態、周囲の状況を、只、僕に提供して下さい。僕たちは、ベンドゥリクス婦人を審議しているように、私は思いましたが?」
 「正確じゃない。」
 「しかし彼女はその名前で通る?」
 「これでは全く食い違って行く一方です。いいえ、彼女は僕の友人の妻です。」
 「じゃあ、その人が貴方を寄こした?」
 「いいえ。」
 「もしかして貴方とその女性は―性的関係が?」
 「いえ。僕は1944年以来たった一度、彼女に会ったきりです。」
 「心配なのですが、私は全く分かっていない?これは要監視の事例です、と貴方は仰った。」
 その時まで、彼がひどく怒りを覚えているということを、僕は察知していなかった。「人は愛したり憎んだり出来ない。」僕は彼に急にばらした。「そんなに長くは?少しでも誤解しないで下さい。僕はまさに貴方の嫉妬深い依頼人と同じ様に、僕は安心にちょっとでも背くことは主張しないのですが、僕の事例の中に、時の‐ズレがありました。」
 サヴィジ氏はしかし僕が不機嫌な子供だったように僕の袖に彼の手を置いた。「嫉妬についてはそこに信用を傷つけるものは何もありません、ベンドゥリクスさん。僕は何時も本当の愛情の印として、それに敬礼します。さて、僕達が話し合おうとしているこの女性、彼女が今も―他の人と肉体関係があると考えるほどの理由を持っていますか?」
 「彼女の夫は彼女が彼を欺いている、と考えています。彼女は私的逢瀬を重ねています。彼女は何処に彼女がいたのか嘘を吐きます。彼女は持っていますー秘密を。」
 「ああ、秘密、そうですか。」
 「その中には何もないのかも知れません、もちろん。」
 「僕の長い経験では、ベンドゥリクスさん、そこには殆ど一定不変にあります。」しかし彼は論法を以(も)って前に進めるために、目下のところ、僕を十分安心させたつもりで、サヴィジ氏は彼の机に戻り、書く準備をした。名前。住所。夫の職業。彼の鉛筆をを手にノウトゥに向かって身構え、サヴィジ氏は尋ねた。「マイルズ氏はこの面談を知っていますか?」
 「いいえ。」
 「私どもの部下が、マイルズ氏の配下にあってはいけませんか?」
 「確かにいけない。」
 「それでは複雑に輪を掛けます。」
 「貴方の報告書を、後で彼に見せても構いません。僕には分からない。」
 「貴方は家族について何らかの実情を、私に提供出来ますか?そこにはメイドゥがいますか?」
 「はい。」
 「彼女の年は?」
 「僕は知りもしない。3-8?」
 「貴方は彼女が誰か味方を持っていても分からない?」
 「いいえ。それに僕は彼女の祖母の名を知りません。」
 サヴィジ氏は僕に忍耐強い笑顔を向けた:僕は一瞬、彼は彼の机を離れ、また僕を宥めようとしていると思った。「僕には分かります、ベンドゥリクスさん、貴方は調査の経験がなかった。メイドゥというものは、非常に大きな意味を持ちます。彼女は彼女の女主人の癖まで僕達に実に多くのことを話してしまいます。―もし彼女が厭わなければ。最も簡単な調査でさえ、どれだけ多くのことが的を射ているか、貴方は驚くでしょう。」彼は確かにあの朝、彼の指摘を立証した:彼は彼の僅かな走り書きの手書きで何頁も覆った。一度、彼は僕に尋ねるために彼の質問を打ち切った、「貴方の家に近付こうとする僕の部下に、もしそれが緊急に必要でも、貴方は異議を唱えますか?」僕は気にしない、と彼に僕は話したが、しかし直ぐに僕自身の部屋への何らかの悪影響を白状しているように思えた。「それが避けられるなら・・・」
 「もちろん。もちろん。私は分かっています、」そして僕は心から信じ、彼は理解に努めた。彼の部下の存在は、家具を覆った埃のようでもあり、煤のように僕の書籍にシミを付けるだろう、そして彼は驚異とか刺激をまるで感じなかっただろう。 僕は透明な一本-線のフールスカプに書くことへの愛着を持ち:頁の上の汚れ、紅茶の痕は、それを使用不能にするし、僕は嫌な訪問者の場合、僕の文書を鍵を掛けて仕舞い込んで置かなければならないという根拠のない思いが僕を捕える。僕は言った、「もし彼が僕に予告してくれると、それがもっと楽でしょう・・・」「確かに、しかし必ずしもそれは通用しません。貴方の住所、ベンドゥリクスさん、それに貴方の電話番号は?」
 「それは個人回線ではありません。僕の女家主が内線を持っています。」
 「僕の部下全員、卓越した思慮分別を使いこなします。貴方は毎週報告書が欲しいですか、それとも単に最終調査を受け入れる方がいいですか?」
 「週毎に。それは完成しないかも知れません。そこには多分何も探り出すことはありませんから。」
 「貴方は度々貴方の医者に行って、何も悪いところは見つからなかった?貴方もご存知でしょう、ベンドゥリクスさん、男は僕達のサーヴィスの必要性を感じるという実情が、殆ど例外なく、報告すべき何かがそこにはあるということを意味します。」
 取引するにはサヴィジ氏に当たって僕は幸運だったと思う。彼は、普通にいる彼の職業の男達より不愉快ではないということで勧められた、がそれにもかかわらず、僕は彼の自信は嫌がられると察する。それは、貴方がそのことを考えあぐねて訪れる時、実に立派な商売、潔白の看破とはいかない。何故なら恋をする者達は殆ど決まって潔白ではないでしょ?彼らはどんな罪も犯したことがなく、彼ら自身の心の中で、彼らは、「自身以外の誰一人傷付かなければ」、間違ったことは全くしなかったということだと確信している、古くなった下げ札が、彼らの唇の上に、予め用意されている。だから彼らは信じ、そしてだからこそ、僕が愛した日々を僕は当たり前のように信じた。
 そして僕達が料金に至った時、サヴィジ氏は驚くほど節度があり:一日に三ギニーズ、それに経費、「もちろんどちらも承認して頂けるに違いありません。」彼はそうしたことを「変なカフィーを、貴方は御存知ですか、時々僕達の部下は、立ち飲みせざるを得ません。」と僕に説明した。僕はフイスキを承認しないことについて揶揄したが、サヴィジ氏はヒューマァ(ユーモア)を解さなかった。「僕は或るケイスを知りました。」彼は僕に話した。「一か月の調査が、適切な時に、ダブル一杯で節約された時―僕の依頼人がそれまでに支払ったのは、最も安いフイスキ代。」何人かの彼の依頼人は、日毎の収支を受取りたがりましたと彼は説明したが、僕は彼に僕は週毎のもので満足ですと話した。
 事そのものは、実にきびきびと運び:彼は僕がヴィゴウ・ストゥリートゥに出かける頃には、これは、早かれ遅かれ、男という男に降りかかるその種の面談だったと僕をほぼ得心させてしまっていた。



「それで何かもっとあれば、貴方はあれは関係があると僕に話せますか?」サヴィジ氏が言ったのを僕は覚えているー探偵は当を得た糸口をほじくり出す前に、自らのつまらない材料を集めようとする小説家と同様、それが重要であると見定めなければならない。しかしそのほじくり出すことが如何に困難かー実在の対象の公表が。外側の世界の凄まじい重圧は、Peine forte et dure(長い間強く痛めつけるイギリスコモンロー法)のように僕達を圧倒する。今、僕は僕自身の物語を書くに至り、その課題は尚も同じではあるが、もっと悪いことにーそこには随分多くの更なる実情があるということ、今、僕はそれらのことを、別にでっち上げなくてもいいんじゃないかということ。苛酷なシーンから人間の特性を如何に明るみに出すか―日刊新聞、毎日の食事、バタァスィィに向かって軋りながら進む輸送車、パンを探してテムズ川から上って行くカモメ達、やがて子供達がめいめいのボウトゥを走らせる公園の上空にきらきら光っている1939の初夏ーそうした輝きの一つが、戦‐前の幾つもの夏に刑を通告した?僕は喩え僕が十分長く考え尽くしたとしても、僕はヘンリィが催したパァティィで、彼女の後(のち)の恋人を見つけ出せたかどうか疑わしい。僕達は初めて互いを見た、スペイン内戦の所為で不味い南アフリカ産シェリィを飲みながら。僕はサラーに気付いた、彼女は幸せだった、と僕は思う、つまりああした年月の中で、幸せの意味は近付きつつある嵐の下、長い間失せていたから。誰もが酔い潰れた人々の内に、子供達の内に、滅多に他のどこにもないそれを探った。僕はすぐに彼女を好きになった、彼女は僕の何冊かの本を読んだことがあり、その物をそのままそこに置いてあると彼女が言ったからー著者としてより寧ろ人間として直ぐに遇された僕自身がいた。何であれ、僕は彼女と恋に落ちることなど思い付きもしなかった。彼女は美しく、そして美しい女達、とりわけ彼女達がその上聡明であれば、ほんの一事に、僕の中の何らかの根深いねじけた感情をかき混ぜる。心理学者らが コフェテュア・コムプレクスともう名付けていたかどうか僕には分からないが、僕は常々、何らかの心的或いは肉体的優越の感覚無しに、性的欲情を自覚し難いとそれは分かっていた。彼女について僕が注目したのは彼女の美と彼女の幸福、ともかく彼女は彼等を慈しむように、彼女の手で人々に触れるという彼女の癖だった。僕は彼女が僕に言った唯一つのことだけ、想い出せる。彼女が共に始めたあの言明はさておきー「貴方は大勢の人を毛嫌いしているようにしか見えないわ。」おそらく僕が、僕の作家仲間について、手厳しく話して来たからだ。僕は覚えていない。
 それは何というひと夏だったのか。やってみようとも正確にその月の呼び名を示すつもりもない。ー僕は、凄まじい程の痛みに、どうしてもそこへ引き返さなければならなかったが、その暑苦しく、混み入った部屋を抜けたこと、不味いシェリーを随分飲んだ後、ヘンリと一緒に共有地をどんどん歩いたことを、僕は覚えている。陽は公有地を横切って水平に沈むところで芝生はそれに伴なって色を失くしていた。遠くの建物はヴィクトーリア風に焼き付けられ、細かく精密に描かれた落ち着きのある建物だった:只、子供が一人随分遠くで泣いていた。十八-世紀の教会は、芝生の島の玩具のように佇みーその玩具は、乾いた崩れ難い天気の最中、暗くなった外に置き去りにされても構わなかった。それは、貴方が見知らぬ人に打ち明け話をする時間だった。
 ヘンリィは言った。「僕達は揃って何て幸福で生き永らえているんだろう。」
 「そうだね。」
 僕は、その目に涙を溜めて、自ら主催のパァティから離れ、公有地のそこに立ち尽くす彼に並々ならぬ好感を覚えた。
僕は言った。
 「貴方は素晴らしい家を手に入れた。」
 「僕の妻があれを探した。」
 僕は彼にたった一週間前に会ったばかりだった―他のパァティで、その当時彼は、年金省にいて、僕は僕の題材の為に彼を引き留めて長話をした。二日後、案内状が届いた。僕はサラァがそれを彼に送らせた、と後で教えられた。「貴方は結婚して長いの?」僕は彼に尋ねた。
 「十年。」
 「貴方の奥方は魅力的だと僕は思った。」
 「彼女は僕には大いに救いになるんだ。」と彼は言った。
気の毒なヘンリィ。それにしても一体何故、僕は気の毒なヘンリィと言ってしまうのだろう?彼は最後には勝ち札―優しさ、謙虚、そして信頼の勝ち札、を持っていなかったのか?
 「僕は戻らなくちゃあ、」彼は言った。「僕は彼女にその全てを任せてはいけない、ベンドゥリクス、」そして彼はともかく僕達が互いに一年を経て来たふうに僕の腕に彼の手を置いた。彼は彼女からその手真似を習ったのか?結婚した人々は互いに似て来る。僕達は並んで引き返し僕達がホールの‐ドアを開けるにつれ、僕は、ともかくキスからかどうか離れていく二人連れ、が小部屋から鏡の中に写り込んだのを見た。―一人はサラァだった。僕はヘンリィを見た。
 彼は見なかったのか或いは気にしなかったかのどちらか―それとも他に、僕は考えたが、何とも不幸せな男であるに違いない彼は。
 サヴィジ氏はそのシーンを妥当と考えただろうか?僕は後で知った、彼女にキスをしていたのは恋人ではなくそれは妻が一週間前、有能な水兵と駆け落ちした年金省のヘンリィの同僚の一人だった。彼女はその日初めて彼に会った。僕がそれほど断固として遮断されたその場面の一部を彼が未だに占めてしまうことなどそれは有り得ないように思える。恋愛はそれ自体が動き出すのにさほど長い時間を要さない。
 僕はあの過ぎた時をそのままにして置きたかった。僕が1939を書く時、僕は僕の憎悪の全てが甦ろうとするのを感じる。憎悪は愛情と同じ腺を作用させるように思う:それは同じ行動を引き起こしもする。もし僕達が如何に受難の物語を解釈すべきか教えられなかったら、クライストゥを愛したそれが、嫉妬深いデュウダス(ユダ)か、或いは小心なピータァ(ペテロ)だったかどうか、単に彼らの行動のみで言えただろうか?



僕がサヴィジ氏の所から帰宅し僕の女主人がマイルズ婦人が電話を掛けて来たところですと僕に話した時、正面のドアが閉まり、ホールに彼女の足音を聞いた時、僕が何時も感じた張り合いを僕は感じた。僕は数日前、僕の視覚は愛にではなく、勿論、感傷にでもなく、僕が機能し続けられる一つの記憶に目覚めてしまったという乱暴な望みを持った。もし僕がもう一度―どんなに素早く、荒々しく、それでいて満足の行かないままであれ、彼女を自分のものにすればー僕は再び安らかになるだろう:僕は僕という装置から彼女を洗い落とそう、そしてその後、僕は彼女のもとを去ろう、彼女無しの僕に。
 十八カ月の沈黙の後、その番号にダイアルを回すのは、それは奇妙だった:マコーレイ7753、それに僕はその最後のアラビア数字に自信がなかったので、僕のアドゥレス帳でそれを調べなければならなかったのは更に奇妙だった。鳴り響く発信音に耳を傾けながら僕は座った。そしてヘンリィが省からもう戻って来たか、もし彼が出たら何と言えばいいだろうとあれこれ思い巡らした。その時僕は真実と共にあればそこには過ちはもう何一つないと悟った。嘘は僕を見捨て、それでも彼らは僕の唯一の友人だったも同然で僕は寂しく思った。 
 非常に‐訓練されたメイドゥの声が僕の鼓‐膜の中で番号を繰り返した。僕は言った、「マイルズ婦人はいらっしゃいますか?」
 「マイルズ婦人?」
 「そちらは、マコーレイ7753ではありませんか?」
 「はい。」
 「僕はマイルズ婦人に話したいのですが。」
 「貴方は違った番号に掛けました。」そして彼女は電話を切った。時につれて些細なこともまた変わるということ、それは僕には今まで起こったことがなかった。
 住所氏名録で僕はマイルズを調べたが、古い番号は、未だそこにあった:住所氏名録は日付から一年以上経っていた。電話が再び鳴った時、僕は丁度問い合わせに掛けようとしていた、するとそれはサラァ彼女自身だった。彼女は多少戸惑いながら、「そちらは貴方ですか?」と言った。彼女はどんな名前でも僕を呼んだことがなく、今は彼女の年月を経た愛情ある言い回しもなく彼女は途方に暮れていた。僕は言った、「話しているのはベンドゥリクス。」
 「こちらはサラァです。貴方は私の伝言を受取ってなかったの?」
 「オゥ、僕は貴女に電話を掛けようとしたが、僕は一つ仕上げなければならなくて。その道すがら、今、貴女の番号を受信するなんて予想外だ。それはその名簿にはあるのに、と僕は思うのだが?」
 「いいえ、未だない。私達は変えたところ。それがマコーレイ6204。私は貴方に或る事をお願いしたかったの。」
 「はい?」
 「あまり心配しないで。私は貴方と昼食を食べたかった、それだけ。」
 「もちろん。僕は喜んで。何時?」
 「貴方は明日なんとか出来ない?」
 「いや、明日はだめ。貴女も分かっているように、僕はこの一作をどうしてもものにしようと取り掛かったところで・・・」
 「水曜日は?」
 「木曜日にしようか?」
 「はい。」彼女は言い、そうして僕は単音節の中に半ば落胆を想像できた―そのように僕達のプライドゥは僕達を欺く。
 「その時カフェ・ロイアルで、僕は一人で貴女に会おう。」
 「貴方の都合が良ければ。」彼女は言い、僕は彼女の声から彼女はそのつもりだったと言ってもよかった。「木曜まで。」
 「木曜まで。」
 僕の手に電話の受話器と一緒に僕は座り誰も知りたくない卑劣で愚かな男のようで嫌気が差した。僕は彼女の番号を回した、僕は彼女が電話口を離れる猶予を与える前に彼女を捕まえなければならなかった。そして言った。「サラァ。明日でいいよ。僕は何かを忘れてしまっていた。同じ場所。同じ時間。」そしてそこに座りながら、静かになった器械の上に僕の指を、期待する何かと共に。僕は自分自身に対して思った:僕は覚えている。これはどんな希望も似通った感触を持つということだ。



僕はテイブルの上に新聞を平らに広げて置き同じ頁を何度も繰り返し読んだ、僕は出入口を見たくなかったから。人々はひっきりなしに入って来て、彼らの頭を上下に動かすことによって、馬鹿げた期待を売り渡す、そうした者の一人に僕はなるまい。失望と共にそのように並べられるのを覚悟するということに、僕達は皆、何を期待し始めたのか?そこには夕刊にお決まりの殺人や砂糖菓子-配給制限に関する議会の小競り合いがあった、そして彼女は今五分遅れていた。僕が時計を見ているところを彼女が目撃するとしたら、それは僕の不運だった。僕は「済まないと思っています。私はバスで来たんだけど交通の便が悪くて。」と言う彼女の声を聞いた。
 僕は言った、「地下鉄が速い。」
 「知ってはいても、私は速く着きたくなかった。」
 彼女はよく真実によって僕を狼狽させた。僕は真実より更に多くを彼女に言わせようする―僕達が恋愛中だった日々、私達の事が決して終わりませんようにとか、一日でも私達結婚しましょうよとか。僕は彼女を信じようとはしなかったが、彼女の舌の上の言葉を聞きたがった、おそらく単にそれを自ら拒絶する満足を僕に与えるために。ところがその信用‐させるというゲイムを、彼女はすることがなく、それから突然、意外にも、彼女はこんな甘美さと豊富さという声明を伴った僕の予約を打ち砕こうとする・・・或る日、私達の関係は終わるでしょうという彼女の穏やかな憶測を、信じていない幸せと共に聞きながら、僕が惨めに思った嘗てを僕は覚えている。「私は貴方を愛するように人を愛したことは、決して決してなかったし、私には二度とない。」さて、彼女はそれを知らなかった、と僕は思ったが、彼女も又、信じ‐させるという同じゲイムをした。
 彼女は僕の側に座って、ラーガァ一杯を頼んだ。「僕はルールズにテイブルを予約した。」僕は言った。
 「私達ここにいることは出来ない?」
 「そこは僕達が何時も行っていた所だよ。」
 「そうね。」
 おそらく僕達は僕達の挙動からしてわざとらしく見えていた、余り離れていないソウファに座った小男の関心を引いて来たことに、僕はやっと気付いた。僕は彼を睨み付けようとした、そしてそれは簡単だった。彼は長い髭と小鹿‐に似た目を持っていた、すると慌てて目を反らした:彼の肘が彼のビアグラスを捕え、それを床に転がした。それほど彼は混乱に打ちのめされた。僕は同時に、彼は僕の写真で僕が分かったのかも知れない:彼は僕の数少ない読者の一人でさえあるかも知れないと申し訳なく思った、つまりそれは僕の所為で起こったのだから。彼には彼と席を共にしている幼い少年がいて、彼の息子の面前で父親に恥をかかせるとは、何と酷なことを。その少年はウエイタァが急いでやって来た時、頬を緋色に赤らめ、彼の父親は不必要な熱意で謝り始めた。
 僕はサラァに言った。「もちろん、貴女が好むなら何処へでも、貴女は昼食を摂らなければいけない。」
 「貴方も知っているわ、私ははそこへ一度も戻ったことはなかった。」
 「そうだね、そこは貴女のレスタラントゥではなかった、そうだった?」
 「貴方はそこへよく行くの?」
 「そりゃあ僕には便利だもの。週に二、三回。」
彼女は不意に立ち上がり、言った。「行きましょう。」そして突然咳の発作に襲われた。それは彼女の小さな体にしては大き過ぎる咳のように思われた。彼女の額はその排除に連れ汗ばんだ。
 「それ性質が悪いね。 」
 「オウ、このくらい何でもないわ。私のことで申し訳ありません。」
 「タクシ?」
 「私は歩く方がいいわ。」
  貴女が左手側のメイドゥン・レインを上ると、そこに互いに一言もなく僕達が通り過ぎた出入口と鉄格子(排水口)がある。初めての食事の後、僕はヘンリの習慣について彼女に尋ね彼女が僕の関心に熱中した時、僕は地下鉄に向かう途中、そこでかなり不器用に彼女にキスをした。何故僕がそんなことをしたか、僕には分からない、多分鏡の中のその画像が、僕の心の中に入り込まなければ、と言うのも僕は彼女に好意を寄せるつもりはなかった:僕はもう一度彼女を調べるつもりさえ特になかったから。彼女は近寄ろうとする思いで僕をわくわくさせるほど余りにも美しかった。
 僕達が座った時、昔馴染みのウエイタァの一人が僕に言った。「貴方がこちらにいらっしゃってから、サァ、それは随分長くなります。」それにしても僕はサラァを僕の嘘で言い包めなければよかったのに。
 「オウ、」僕は言った、「僕は最近二階で昼食を摂っています。」
 「それに貴女、奥様、これもまた久し振りです・・・」
 「二年近く、」彼女は僕が時々嫌がる正確さで言った。
 「ところが私は覚えています。貴女が何時も好んだのはそれは大きなラーガァだった。」
 「貴方がたは、素晴らしい記憶力で感動させるわね、アルフレドゥ、」すると彼はその記憶振りに満足してにこにこ微笑んだ。彼女は何時もウエイタァ達と仲良くやる芸当を持っていた。
 食物は僕達の陰気なひそひそ噺を中断し、彼女は僕達が食事を終えた時にやっと何故彼女がそこにいるか僅かな気配を見せた。「私は私と昼食を摂るよう貴方にお願いしました、」と彼女は言った、「私はヘンリィについて貴方に聞きたかった。」
 「ヘンリィ?」僕は繰り返した、僕の声が落胆と無縁であるように務めながら。
 「私は、彼のことが心配なの。先日の夜、貴方は彼をどうやって見つけたの?彼は何だか変じゃなかった?」
 「僕は可笑しなところにはまるで気付かなかった。」と僕は言った。
 「私は貴方に尋ねたくて―オウ、私は分かっています、貴方はとても忙しい―貴方は時折彼を調べているかどうかを。私は彼は寂しいんだと思っているの。」
 「貴女と一緒なのに?」
 「貴方は知っている、彼は本当に私のことに全く気付いていなかったの。何年もじゃないもの。」
 「多分彼は、貴女がそこにいなくなった時、貴女のことに気付き始めたんだよ。」
 「私はそれ程出かけてはいないわ。」彼女は言い、「最近、」と、彼女の咳は都合よくその話の輪郭を壊した。その時分(じぶん)に発作は終わり、彼女は彼女の策略を考え出した。しかしそれは真実を避けること、それは彼女に相応しくなかった。「貴方は新しい本に取り掛かっているの?」彼女は尋ねた。それは他人が話しているようで、コクテイル・パーティで会う見知らぬ人のようだった。南アフリカのシェリィを巡る初めての機会にさえ、彼女はああした見解に傾倒しなかった。
 「もちろん。」
 「私は最後のものはあまり好きではなかった。」
 「ちょうどあの頃は全てにおいて書くこと、それは死闘だった―安らぎが近付きつつあった・・・」
それに僕はまさに都合よく安らぎが揺らいでいると言ってもよかった。
 「私は時々貴方があの古い考えに戻ろうとするんじゃないかと心配だった。―私が嫌った人へ。何人もの人達がそうしようとした。」
 「一冊の本は僕を一年は書くことに向かわせる。それは雪辱にしては実に骨の折れる仕事だ、」
 「もしもどんなに些細なことでも貴方が知ったら貴方は雪辱を果たさずにはいられない・・・」
 「もちろん僕は冗談のつもり。僕達は一緒にいい時間を持った。僕達は大人だったし、僕達はそれは或る時終わらなければならないと心得ていた。今,貴女は分かっている、僕達は友達のように会えるし、ヘンリィについて話せる。」
 僕が勘定書きを支払い僕達は外に出た、そうして20ヤァズ通りを下ると出入口と鉄格子(排水口)があった。僕は舗装道路に立ち止まり言った。「貴女はストゥランドゥに行くつもりでしょ?」
 「いえ、レスター・スクェアへ。」
 「僕はストゥランドゥへ行くつもり。」彼女は出入口の中に立ち通りは閑散としていた。「僕は、ここでグッドゥ‐バイを言おう。貴女に会えたこと、それが何よりだった。」
 「そうね。」
「貴女が都合がよければ何時でも僕に電話して。」
 僕は彼女の方へ動いた:僕の足下に鉄格子(排水口)の感触があった。「サラァ、」僕は言った。彼女は彼女の頭を鋭敏に背け、例えば誰かが近付いて来るのを確認するために、例えばそこに頃合いがあれば確認するために彼女は見ているかのようだった・・・しかし彼女がもう一度背けた時、咳が彼女を襲った。彼女は出入口の中で完全に体を二つに折り曲げ咳き込みそしてまた咳き込んだ。彼女の目はそれに連れ赤くなった。彼女の毛皮のコウトゥの中で彼女は追い詰められた小動物のように見えた。
 「気の毒だね。」
 僕は酷にも言った、しかし僕が何かを奪われてしまったかのように。「それじゃあ付き添わなきゃいけないね。」
 「これは只の咳よ。」彼女は彼女の手を差し伸べて言った。「グドゥ‐バイ―モーリス。」その名前は一つの辱めのようだった。僕は「グドゥ‐バイ」、と言いはしたが、彼女の手を取らなかった:僕は脇目も振らず、急いでいる印象を与えようとして、大急ぎで歩いて遠ざかった。そしていなくなるとほっとした、それから僕がもう一度咳が始まるのを聞いた時、僕は一節、何かしら陽気で、大胆で、幸せそうな、を口笛で吹けたらいいのにと思ったが。音楽に傾ける耳など全く僕は持ち合わせない。



若い人がその信じる仕事の習性を築き上げる時、一生持続し、どのような破局にも耐えようとする。二十年に亘り、週に五日間、およそ一日平均五百語になった。僕は一年で一つの小説を産み出せる、そしてそれには改訂やタイプ原稿の校正のための手間を念頭に入れる。僕は何時も非常に几帳面で、僕の仕事の割り当てが終われば、場面の最中でさえ僕は打ち切る。今もあの頃も何時だって、朝の仕事中、僕は僕が何をしたか数え原稿の上の数百を離れて観察する。印刷業者は念入りな僕の仕事について捨てるものを見繕う必要はなく、僕のタイプ原稿の頁の最も前の頁に数字を記した―83,764。僕が若かった頃、恋愛沙汰さえ僕のシェデュールを変えようとはしなかった。恋愛沙汰は昼食後、そしてどんなに遅くても、僕はベドゥに辿り着くようにしたように思う―僕が僕自身のベドゥで眠る限り―僕は朝の仕事を繰り返し読み、その上で眠ろうとした。戦争でさえ、僕に影響を及ぼすことは難しかった。びっこを引く脚は僕を陸軍から締め出し、僕が民間防衛にいた時、僕は職務の静かな朝の当番を望んだことがないということで、僕の同僚の労働者らは只々大喜びした。僕は結果として、熱心故の全く上辺だけの名声を手に入れた、それでも、僕の机、僕の紙の敷布、そのペンから、ゆっくりと方式に倣って滴るばかりの言葉の配分に向かうと、ひたすら熱中した。僕の自らに‐課した規律を狂わせるにはサラァを必要とした。それらの初めての夜明けの急襲と1944のヴィスとの間の投爆は彼ら自身好都合な夜間の習慣を維持した。しかしかなりの頻度で、僕がサラァに会えるのは、それは午前中だけだった。何故なら午後には、誰か、彼女達の買い物を終えた、友達から全く確保したことがなく、夕方のサイレンの前に、仲間や噂話を求めようとしたから。時に彼女は二列の間に割り込み、僕達は青果店主と肉屋の主人に挟まれて愛を育もうとした。
 しかしそんな状況下でも、仕事に戻ることそれは実に簡単だった。人が幸せである限り人はどのような規律にも耐えられる:仕事の習慣をすっかり止めるということ、それは不幸だった。僕達がどれだけ頻繁に口論したか、僕がどれだけ頻繁に神経質な苛立ちで彼女を詰(なじ)ったか、僕が悟り始めた時、僕達の愛は破滅するという思いに至った。愛は始まりと終わりを抱え込んで愛着という‐無常の中を転げ回った。それが始まったまさにその瞬間を僕は示すことができた。とうとう或る日、最後の時を僕が指図できるならそうすべきだと僕は知った。僕は互いに対して僕達が何を言ってしまったか再現しようとする:彼女が家を後にすると僕は仕事をしようにも落ち着けなくなった:僕は怒り、或いは自責の念へと僕自身を煽り立てようとする。そして僕は常に僕がペイスを強いていたと分かった。僕は僕の暮らしの外でひたすら愛すそのことだけ押し進め、尚も押し進めていた。僕が愛は続くそれを信じ‐させられる限り、僕は幸せだった。僕は、一緒に暮らすことさえ構わなかったし、そうすれば愛は続いたのに、と僕は思う。しかし、もし愛が滅びるしかなかったら、僕は急いでそれを葬りたかった。それにしても僕達の愛は、小さい生き物が罠にかかり死に向かって血を流しているようだった:僕は目を閉じ、その首を力を籠めて捩じらなければならなかった。
 やがて僕はその時期ずっと働けなくなった。小説家の書くことの大半は、僕が言って来たように、無意識に席を選ぶ:それらの最初の言葉が紙の上に現れる前、それらの深さで最後の言葉が書かれる。僕達は僕達の物語の詳細を覚えている、僕達はそれらをでっち上げない。戦争はそうした深い海の‐洞窟を煩わせはしなかったが、今、そこには戦争より、僕の小説より、僕にとって限りなく大きく何か重要なことー愛の終わりがあった。それは物語のように、今、大きく動かされなくしてしまいつつあった。彼女を嘆かせようと向けられる言葉、そうした水底の大洞窟で研ぎ澄まされて来たそれはその唇にどこまでも自然に生じたかのように見えた。僕の小説は遅れ、何れにせよ僕の愛は妙案に相応しく終わりに向かって急いだ。
 僕は彼女が僕の最後の本が好きじゃなかったということは不思議ではない。それは何時も意に反して、救いもなく、人は生きて行くしかないということ以外に、どんな理由もなく書かれた。批評家らはそれは熟練工の業(わざ)だと言った:何らかの情熱はあったというのが、僕に残された全てだった。おそらく次の小説と一緒に情熱はきっと甦るだろう、その興奮が何か人が意識的に知らずに済ませた記憶を再び呼び覚まそうとする。 ルールズでのサラァとの昼食後一週間、僕はどんな仕事も全く手につかなかった。そこでそれは再び動く―僕は、僕は、僕は、しかしこれは僕の物語で、サラァ、ヘンリィの、そしてもちろろん、僕が未だ彼を知ることも、ましてや彼を信じることさえなく遠ざけている、第三者の物語ではなかった。
 僕は朝の内に仕事をしょうとしては失敗した。僕は、昼食と一緒に酒をひどく飲み過ぎ、だから午後は台無しにされた;暗くなってから、僕が消した灯かりを持って窓に立つと起伏のない暗い共有地の向こうに明りの点いた北側の窓が見えた。それはそれは寒くて、もし僕が急いで閉めて、その時それが焦げようと、僕のガスの炎だけは僕を暖めた。僅かな雪の薄片が南側のラムプの向こうで舞い、厚く湿った指で窓ガラスに触れた。僕はベルが鳴っているのに聞こえなかった。僕の女主人は、ドアをノックして言った、「貴方に会うためにパーキスさんて方が、」
文法に適った冠詞によって、このように僕の訪問者の社会的地位を仄めかしながら。僕はその名前を聞いたことがなかったが、彼を中に案内するよう彼女に話した。
 僕はその穏やかで申し訳なさそうな目、その天候次第で湿る長い時代遅れの口髭を以前何処で見たのやら?
僕の読書のラムプを僕が点けただけで、近‐視のように目を凝らしながら、彼はその方へ近寄った;彼は暗闇で僕を見分けることができなかった。
彼は言った。「ペンドゥリクスさん、サァ?」
 「はい。」
 彼は言った。「名前は、パァキスです、」しかしそれが僕に何か意味でもあるように。彼は付け足した。「サヴィジ氏の部下です、サァ。」
 「オウはい。座って下さい。煙草を喫いますか?」
 「オウいいえ、サァ、」彼は言った、「職務中は厳禁―方針で除外、潜伏という目的のために。」
 「しかし今は職務中じゃないでしょう?」
 「一応マナァで、サァ、はい。私の報告書を作る30分間、私は丁度交替させられたところです、サァ。サヴィジ氏は貴方が週決めで―経費を含むその方がどれだけいいかと言いました。
 「何か報告することがそこにありますか?」僕が感じたそれは落胆だったか、或いは興奮だったかどうか、僕には定かではなかった。
 「それは全く一枚の白紙というわけではありません、サァ、」彼は満足気に言い、手頃なものを探して驚くほどの数の書類と封筒を彼のパキトゥ(ポケット)から取り出した。
 「どうか座って下さい。貴方は僕を不安にする。」
 「貴方がその方が良ければ、サァ。」座りながら、彼は僕を更に近くでちらりと見た。「私は以前貴方に何処かで会いませんでしたか、サァ?」
 僕は封筒から最初の一枚を取り出した:それはしかし男子生徒によるような非常にきちんとした筆跡で書かれた経費請求書だった。僕は言った。「貴方はとても奇麗に書きますね。」
 「それは僕の若い者です。僕は彼を実地で訓練しているところです。」彼は慌てて付け加え、「僕は彼のために一切要求しません、サァ、今のように、私が彼を料金に委ねなければ。」
 「彼は料金に入っているのですか?」
 「私が私の報告書を作る間だけ、サァ。」
 「彼は何歳ですか?」
 「12過ぎ、」それにしても彼の若い者が時計ででもあるかのように彼は言った。「若者は役に立つはずだし、今も前もコミク以外何一つ要らない。おまけに誰も彼に気付きません。彼らは生まれながらの浮浪者です。」
 「それじゃあ一人の若い人にとっても妙な仕事のように思える。」
 「そうですね、サァ、彼は、現実の意義を分かっていません。もしそれがベドゥルームの中で急に起こることになれば、僕は彼を置き去りにします。」
 僕は読んだ。

 1月18
二夕刊       2ペンス
地下鉄帰り     1シリング8ペンス
カフィ.ガンタァズ 2シリング

僕は読んでいたので彼は綿密に僕を監視した。「カフィの場所は、僕にも思いの外(ほか)高くつきました。」彼は言った、「しかしそれは注目されずに、僕が飲めた最少額でした。」

 1月19
地下鉄   2シリング4ペンス
瓶入りビア   3シリング
カクテイル   2シリング6ペンス      
苦みのパイントゥ1シリング6ペンス

 彼はまた僕が読むのを妨げた。「そのビアは私の良心にかけてほんの少量です、サァ、私が不注意の所為でグラスを引っくり返したからです。私は縁をちょっとだけでしたのに。何かそこで報告すべきことがあるとすれば。貴方はご存知です、サァ、そりゃあ期待外れの週が時にはあります、それにしても今回は二日目に・・・」
 もちろん僕は彼を思い出した、彼の当惑した少年を。僕は1月19の下に目を通した(僕は1月18、そこに些細な移動の記録だけがあるのをちらっと見て気付いてしまった。)「問題の当事者は、ピカディリィ・サァカス行きバスで行きました。彼女は動揺しているようでした。彼女はカフェ・ロイアルへエア・ストゥリートゥを上へと進みました。そこに紳士が彼女を待っていました。私と私の若い者は・・・」
 彼は僕を一人にして置こうとしない。「貴方は気付かれるでしょう、サァ、それは違う筆跡です。私は私の若い者に少しでも親密な登場人物のことがある場合、決して報告書を書かせません。」
 「貴方は彼の面倒をよく見ています。」と僕は言った。
 「私と私の若い者は隣の長椅子に座りました。」僕は読んだ。「当事者とその紳士は、明らかに非常に親密で、儀礼という情愛ある欠如を保って互いに接し、或る時には、テイブルの下で手を握っていたと私は思います。私はこのことを確認できませんでした、が当事者の左手、その種のぎゅっと握ることを大抵それとなく示す紳士の右手もまた、視野の外にありました。短くて親密な会話の後、彼らはルールズ同様その手の客に知られた閑静で人目につかないレスタラントゥへ、徒歩で向かい、テイブルより寧ろ長椅子を選んで、彼らはポォク・チョプ二つを注文しました。」
 「ポォク・チョプは重要ですか?」
 「それは身元確認の目印になるかも知れません、サァ、もし頻繁に耽溺したら。」
 「貴方はその時男の身元確認をしなかった?」
 「貴方は気付くでしょう、サァ、読み進むと。」
 「私がこのポォク・チョプの注文を観察した時、私はバァでカクテイルを飲みましたが、どのウエイタからもバァの向こう側の女性からも、その紳士の身元確認を引き出せなかった。」にもかかわらず、私は私の疑問を、曖昧で無頓着な物腰で表現しました。それは明らかに好奇心を刺激し、そこで私は出た方がいいと考えました。しかしヴォードゥヴィル劇場の舞台門衛と馴染みになることによって、僕はそのレスタラントゥを監視下に置けました。」
 「どのように、」僕は尋ねた、「貴方は馴染みになったんですか?」
 「『ベドゥフォォドゥ・ヘドゥ』というバァで、サァ、当事者達が間違いなくチョプの注文をしているのを見て、その後、映画館まで彼に後をつけさせました。そこにはステイジ・ドアが・・・」
 「僕はそこを知っている。」
 「私は私の報告書を要約しようとしました、サァ、不可欠なものへ。」
 「実にまともだ。」
その報告書は続いた:「昼食後、当事者達は一緒にメイドゥン・レインを上手へ向かい普通の食料雑貨店の外で分かれました。私は彼等は激情の下で苛まれているという印象を持ち、もしこの調査にそう言っても構わないのなら彼らは望ましい。幸せな結末のために分かれようとしているのかも知れないとそれが私の脳裏をふと掠めました。
 また彼は心配そうに僕を遮り、「貴方は私的接触を許す気はありますか?」
 「もちろん。」
 「私の職業でさえ、サァ、私達は時に私達の感情が揺さぶられたと気付きます。それに私はその女性を好ましく思います―問題の当事者、その人がです。」
 「私は紳士か問題の当事者に随行すべきかどうか躊躇(ためら)いましたが、私は私の指示は前者を許さないだろうと決めました。故に私は後者に従いました。彼女は随分動揺した様子で、チャァリング・クロス・ロウドゥへの道を少し歩きました。それから彼女はナショナル・ポォトゥレイトゥ・ギャラリィの中に入りましたが、二、三分いただけです・・・」
 「何かもっと重要なことがありますか?」
 「いいえ、サァ。彼女は実のところ腰を下ろす場所を探していただけだと思います。次に教会に入りましたから。」
 「教会?」
 「ロウマン教会、サァ、メイドゥン・レインの。貴方はそこいら中にそれを見つけるでしょう。しかし祈るためではなく、サァ、ただ座るために。」
 「貴方はそれさえすっかり知っている、そうでしょ?」
 「当然、私は当事者について中へ入りました。正真正銘の礼拝者に見せようとして、私は二、三席後ろで膝まづきました。私は貴方にサァ保証できます、彼女は祈らなかった。彼女はロウム信者ではない、彼女はそうですか、サァ?」
 「いや。」
 「それは暗いところに座るためでした、サァ、彼女が落ち着くまで。」
 「もしかしたら彼女は誰かに会おうとしていた?」
 「いいえ、サァ、彼女はたった三分いただけで誰にも話しかけなかった。喩え貴方が私に聞いても、彼女は心ゆくまで泣きたかったのです。」
 「ひょっとすると。しかし貴方は手が間違っています、パァキスさん。」
 「手、サァ?」
 僕は明かりが僕の顔をもっと十分捕えるように移動した。
 「私達はそこまで手に触れてはいません。」 
 今や僕が僕の物笑いの種を引き受けてしまったものだから、彼には気の毒だと思った―元来非常に憶病な誰かを尚も殊更に脅えさせたとしたら僕は申し分けないと思った。
 彼は彼の口を少し開けたまま僕をじっと見た。それにしても不意打ちを喰らい、今や次の企てを立ちすくんで待っているかのように。僕は言った、「僕は過ちなんてよくあると思います、パァキスさん。サヴィジ氏は僕を紹介すべきだった。」
 「オウいえ、サァ、」彼は居心地悪そうに言った、それから、彼は彼の頭を垂れて、彼の膝の上に置いた彼の帽子の中を見ながら、そこに座っていた。僕は彼を元気づけようとした。「そんなの本気じゃあないよ。」僕は言った。「もし貴方が外側からそれを見ていれば、それは実際全くおかしい。」
 「しかし私は内側にいます、サァ。」彼は言った。彼は彼の帽子を回し、外の公有地と同じくらい湿り気のある侘びしい声で続けた、「私が気にするそれはサヴィジ氏ではありません、サァ。彼は貴方が専門的職業の中で会うのと同様、部下を理解しています―それは僕の若い者です。彼は私について大いなる認識を持って始めました。」彼は彼の窮乏の深みから、非難しながらも脅えた笑顔を取り出した。「彼らがする読書の種類を貴方は知ってらっしゃる、サァ、ニック・カァタァズやそのようなものを。」
 「何故そもそも彼がこのことについて知って置くべきだったか?」
 「貴方は子供連れに率直に振舞った、サァ、すると彼はきっと疑問点を尋ねます。どのように僕が究明するのかを、彼は知りたがるでしょう―それが彼が学んでいることです、徹底的に究明するために。」
 「貴方は彼に、僕は当の本人だと認められると話せなかったの―まさにそのことを、それに僕には関心がないと?」
 「貴方は親切にそのことを示唆して下さる、サァ、しかし貴方はこれをあらゆる角度から見なければならない。私は私の若い者にも、そうはしないとは言いません。しかし彼はどんなことを考えようとするでしょう、もし彼がこれまでに貴方と交わって近付けば―調査の成り行きで?」
 「それは必要ない。」
 「それでもそういうことは十分に起こり得ます、サァ。」
 「どう、今回は彼を家に残して置きませんか?」
 「それではことをただ悪化させるだけです、サァ。彼は母親を持たず、それは彼の学校の休日で―僕は彼の休日に彼を教育するという方針を何時も続けて来ましたーサヴィジ氏の十分な承認を得て。いえ。あの時私自身馬鹿なことをしました、それで私はそれを正視しなければならなかった。何れにせよ彼が本当にさほど気真面目でなかったら、サァ、が彼は私が浮浪者を用意する時、それを気にします。或る日プレンティス氏―それはサヴィジ氏の助手で、かなり厳しい方です、サァ、―は言いました。「『貴方の他の浮浪者達は、パァキス、』その若い者達の聴取の中で。つまり何が最初に彼の目を開けるかだ。」彼は法外な決意の様子で立ち上がった。(他の男の勇気を測ろうとする僕達は何様か?)そして言った。「私は私の問題について話しながら、貴方を守っていました。」
 「僕はそれを楽しんだ、パlァキスさん、」僕は皮肉抜きで言った。「気にしないよう心掛けるといい。貴方のボイは、貴方を手本にするしかない。」
 「彼は彼の母親の頭を持っています、サァ、」と彼は悲しそうに言った。「私は急がなければ。外はそれは寒い、私は離る前にいい避難場所を彼に見つけてやりましたが。それにしても彼は非常に鋭敏ですから、僕は彼が濡れないでいるとは思えない。どうか経費に署名して頂けますか、サァ、もし貴方がそれらを承認して下さるのなら?」僕は彼の薄いレインコウトゥで現れ彼の古い帽子が折れ曲がったのを僕の窓から見守った;雪は勢いを増し既に三つ目のラムプの下、彼は泥塗れで透けて見えている小さな雪だるまのように見えた。僕は10分の間サラァのことも、僕の嫉妬のことも考えなかった、それは驚きと共に僕に起こった;僕は他人の悩みについて思うほど十分、人間らしくなって来た。

嫉妬は或いはそう僕は常々信じていたのだが、ただ欲望と共に在る。旧約聖書の作家らは、その言葉「妬む神」を使うことを好み、おそらくそれは、人間にとって神の愛の信仰を表している彼らのおおざっぱで遠回しな言い方だった。がそこには様々な欲望の種類があると僕は想像する。僕の欲望は、今、愛より憎しみに近く、ヘンリィを僕が信頼するには訳があり、サラァが一度僕に話したことからすると、彼女に対しては、僅かな欲望でも感じることを長く止めて来た。そして未だに、僕は思う、そうした日々、僕と同じくらい彼は嫉妬した。彼の欲望は単に仲間付き合いのためにあった。彼は初めてサラァの信頼から締め出されたと思った。彼は悩み落胆していた―彼は、何が進行していたか或いは何が身に降りかかろうとしていたか知らなかった。彼はひどく無防備の中を生きていた。限界に向かって、彼の窮地は僕のものより酷かった。僕は何一つ所有していないという安心感を持っていた。僕は僕が失った以上持つことは出来なかったが、彼は尚も、食卓での彼女の存在、階段での彼女の足音、ドアの開け閉め、頬へのキスを所有していた―僕は今、もし他にもたくさんあるとするとー疑わしく思う。しかし一人の飢えている男には、どんなに多くとも、そのくらいが相応しい。そしておそらく何がそれを悪化させたにせよ、彼は一度は僕が持ったことのないような安心感を満喫した。何故か、パァキスさんが共有地を横切って引き返したその瞬間には、彼はサラァと僕が嘗て恋人だったと知りもしなかった。そして僕がその言葉を書く時、僕の意志に反する僕の頭は苦悩が始まったその地点に否応なしに連れ戻そうとする。
 僕がサラァに電話する前、メイドゥン・レインでの不器用なキスの後、丸一週間経った。彼女はヘンリは映画を好まず、だから彼女は滅多に行かないと夕食で触れていた。彼らはウオーナーズやその他で僕の本の一つのフィルムを見せていた。幾分「誇示する」ために、幾分キスは儀礼的であるため、何故か従わざるを得ないと僕は思ったから、幾分また僕は未だに文官の結婚生活に興味があったから。僕はサラァに僕と一緒に来るよう頼んだ。「僕は、それはヘンリィに愉快じゃない依頼だと思う?」
 「どうってことないわ、」彼女は言った。
 「彼はこの後、夕食で僕達と合流できる?」
 「彼はたくさんの仕事を自分で持ち帰っているの?或るお粗末な自由主義者が議会で来週未亡人について質疑を要求している。」その自由主義者―たしか彼はルイスというウエルシュ人だったと思う―だから僕達のベドゥはあの夜僕達のために作ったと、貴女は言ってもよかった。」
 そのフィルムはいいフィルムではなかった。そして、時々状態を見るにもそれは酷く痛み、それは僕には随分現実的で、映画のありきたりの在庫の中に捻じ込んであった。僕はサラァと一緒に何か他のものに行きたかった。取りあえず僕は彼女に言ってあった。「あれは僕が書いたものじゃない、貴女も知っている、」しかし僕はそれを言い張ることができなかった。彼女は同情して、彼女の手で僕に触れ、その時からピタッと僕達は子供や恋人達が用いる天真爛漫な抱擁の内に僕達の手を取り合ってそこに座った。突然しかも予期せずに、ほんの数分の間、そのフィルムは甦った。これは僕の小説だということも、これは嘗ては僕の台詞回しだったことも僕は忘れ、安レスタラントゥでの慎ましいシーンに、純粋に心動かされた。恋人同士が玉葱付きステイクを注文した、彼女の夫はその匂いを好まなかったから、その娘は一瞬、玉葱を食べるのを躊躇った。恋人が傷付き、腹を立てたのは、彼女の躊躇いの背後に何があるか、彼に分かったから。それは彼女の帰宅時、避けられない抱擁を彼の心に齎した。そのシーンは成功だった:言葉或いは筋に僅かな誇張もなく、何は取り敢えず、普通の単純な挿話を通して、激情の意味するところを伝えることを望んで来たしそれは機能していた。ちょっとの間、僕は幸せだった―これが書くことだった:何か他に関心をそそることは世の中になかった。僕は家に帰って、そのシーンを繰り返し読みたくなった:僕は何か新たなもので勝負したかった。僕は願った、どれだけ僕は願ったか、僕は夕食にサラァ・マイルズを招待していなかったらと。後で―僕達はルールズに戻ると彼らは僕達のステイクをちょうど持って来たところだった―彼女は言った、「そこに貴方が書いたワンシーンがあるわ。」
 「玉葱についての?」
 「そう。」そしてまさにその瞬間、玉葱の一皿がテイブルに置かれた。僕は彼女に言った―その夕暮れ、彼女を強く求めることそれは僕の心を過(よぎ)りもしなかった―「それでヘンリィは玉葱を気にする?」
 「そう。彼はそんなものには耐えられないわ。貴方はそんなものが好き?」
 「うん。」彼女は僕にそんなものを取ってくれた。それから彼女自身も取った。
玉葱の一皿を越えて、恋に落ちることは可能か?それはありそうもなく今尚。恋に落ちたのはそれはまさにその時だったと僕は宣誓できるような気がする。それは、もちろん、単に玉葱では済まなかった―それは後であんなにもしばしば僕を幸せにしたり惨めにもした率直という個性的な女のその思いがけない感覚だった。 
 そこには追跡も誘惑も全くなかった。僕達は僕達のお皿に美味しいステイクを半分とクラレトゥ三分の一を残し、僕達二人、僕達二人の心に同じ意志を持ってメイドゥン・レインの中に出て来た。ぴったり前と同じ場所で、出入り口と鉄格子(排水口)の側、僕達はキスをした。僕は言った。「僕は恋をした。」
 「私も。」
 「僕達は家に帰れない。」
 「そうね。」
 僕達はチャァリング・クロス駅経由のタクシを捕まえ僕はアーバックル・アヴエニュゥへ僕達を乗せて行くよう運転手に話した―それは、彼らがイーストゥボーン・テラス、贅沢な名前、リッツ、カールトンやその類を持つパディントン・ステイションの側に沿って古くから立つホテルの列、に彼ら自身の間で与えた名前だった。こうしたホテルのドアは、何時も開いていて、貴方は日中一、二時間、何時でも部屋を取れる。一週間前、僕はテラスを再訪した。その半分は消えた―ホテルが以前立っていた半分は粉々に爆破され、そしてあの夜、僕達が愛を育んだ所は、継ぎ接ぎだらけだった。それがブリストルだった。そこにはホールに鉢植えのシダがあり、僕達は青い髪の女支配人によって最高の部屋に案内された。本物の見事な金箔を貼ったダブル‐ベドゥや赤いヴェルヴェトゥのカートゥンや等身大の鏡のあるエドゥウォドゥ七世時代の部屋を。(アーバックル・アヴェニュウに来た人々は、トゥイン・ベドゥを決して要求しない。)つまらない詳細は、とてもよく覚えている。支配人は僕達が夜泊まりたいかどうか、どうするか僕に尋ねた。なんとショートゥ・ステイで部屋代15シリング:なんと電気ミーターだけ数シリングがかかった、そして僕達は二人合わせても一枚も持っていなかった。それにしても僕は他に何一つ覚えていない―サラァは初めどんな様子だったか、或いは僕達が何をしたか、それを除けば、僕達は二人共緊張して、味気なく愛を育んだ。それは重要ではなかった。僕達は始めてしまった。―それが肝心だった。そこには、その時を期待して待った全人生があった。オウ、それにそこには、僕が何時も覚えているもう一つのことがある。僕達の部屋(30分後「僕達の部屋」)、のドアで、僕がもう一度キスをして、ヘンリィの処に彼女が帰ることを考えるとどんなに厭になるか言った、彼女は言った、「心配しないで、彼は未亡人の件で忙しい。」
 「貴女に彼がキスをすることを考えただけで厭だ。」と僕は言った。
 「彼はそうはしない。玉葱以上に彼が嫌うものなんか何処にも全くない。」
 僕は公有地の彼女の側らの彼女の家を見た。ヘンリの明かりは、彼の書斎のドアの下を照らしていた、そして僕達は二階へ向かった。居間で僕達は、身動きできないように、互いの体に凭(もた)れ僕達の手を取り合った。「彼が上がって来そうだ。」僕は言った。「今にも。」
 「私達には彼が分かるのよ。」彼女は言い、彼女はぞっとするような明晰さで付け加えた。「あそこには何時も軋む一段があるの。」 
 僕は僕のコウトゥを脱ぐ間もなかった。僕達はキスをして階段の軋みに耳を傾けた、そうしてヘンリィが入って来た時、彼女の表情の落ち着きを悲しく見守った。彼女は言った。「私達は貴方が上がって来て私達に飲み物を下さるだろうと期待していたの。」
 ヘンリィは言った、「もちろん。貴方は何を飲む、ベンドゥリクス?」僕は飲み物は欲しくない、と僕は言った;僕にはしなければならない仕事があると。
 「貴方は夜には仕事をしないと言ってたと僕は思うのだが。」
 「オウ、こういうのは数に入れていない。批評。」
 「面白い本?」
 「ではない、かなり。」
 「僕に貴方の能力があったらなあ―出来事を書き留めるだけの。」サラァはドアに向かう僕を見て僕達は再びキスをした。その瞬間に僕が好ましく思ったのはサラァではなく、ヘンリィだった。それはしかし過去の全ての男達未来の全ての男達全てが現在を覆う彼らの影を投げかけたかのようだった。「何か支障が?」彼女は僕に聞いた。彼女は何時もキスや頭の中の囁きの背後の意味を、読み取るのが素早かった。
 「何でもない。」僕は言った。「僕は朝、貴女に電話するよ。」
 「私が貴方に電話すればその方がいいでしょ。」彼女は僕に伝え、慎重にと、僕は思った、慎重にかと、彼女が、このようなことの指揮の取り方を如何によく心得ているかを。そこで僕はまた何時も―「何時も」は彼女が使って来た表現だった―軋んだというその段をまた思い出した。

BOOK TWO

1

不幸の感覚は幸福のそれより頗(すこぶ)る伝え易い。窮乏にあると、僕達は僕達自身の実在に気付くようで、喩え不条理な自己中心癖の形態を成していようとも、この僕の痛みは個別的である。怯(ひる)むこの神経は、他にではなく僕に属す。何れにせよ幸福は、僕達を壊滅させる:僕達は自らの主体性を失う。人間愛という言葉は、神という彼らの先見の明を説明するために聖者らによって使われて来た、そしてそこで、僕は想像する、僕達が女に対して感じる愛の激しさを説明するために僕達は祈る者、黙祷、瞑想の言葉遣いを駆使するといいんだ。事実、僕が遠ざけるものをそれにしても愛したかのようなこうした表現を綴ろうとする己を発見するのはそれは妙だ。時に僕は僕そのものの思いを認めない。「暗い夜」のような表現について、或いは祈る者について、僕が何を知ろう?只一人の祈り手を誰が持とう?僕はそういうものを受け継いでいた、それが全てである、死によって女の衣服、香水、クリームのポトゥ(壺)といった無要の所有の只中に取り残される夫のように・・・
そして未だにそこにはこの平和があった・・・
 それは僕がそうした戦争の最初の数ヶ月をどう思うかである―それはいんちきな戦争と同様にいんちきな平和だったのか?それは、疑念と期待のあの数ヶ月中ずっと安楽や安堵の腕を伸ばしていたように今は思える。しかしその平和は、僕は思う、当時でさえ誤解と疑いによって何度も中断されたに違いない。それにしても悲しさや諦めといった感覚だけでなくまるで浮き浮きした気分もなくあの最初の夕方、僕は家に戻った、まさにそのように、そうして繰り返し繰り返し僕は数多くの男達の中の唯一の者―当面好感度のある恋人だという確信と共に以前は家に戻った。僕があれほど憑りつかれたように愛したこの女だから、僕はもし夜に目覚めようものなら直ぐに僕の頭の中の彼女への思いを探し当て、眠りを捨て、僕に対する彼女の余裕の全てを捨て去ろうとした。それでも尚、僕はまるで確信に触れられなかった。愛の行為で、僕は傲慢であってもよかった。しかし一人僕はひたすら疑いを確かめようと鏡の中を覗かなければならなかった、しかめっ面や不自由な足の形に―何故僕を?そこには何時も僕達が会えない時があった―歯医者とか美容師との予約、ヘンリィがもてなした時、彼らが二人合わせて単独だった時。彼女自身の家の中で、僕を裏切るような機会(愛人の自己本位で、非実在の義務というその暗示を伴ったその言葉を、僕は既に使っていた。)を持とうとはしないということ、それは自分自身に言い聞かせても何の得もない。ヘンリィが寡婦年金に取り組んでいた間か、或いは―彼は間もなくその業務―ガス-マスクの配布や公認の段ボール箱のデザインに関するーから配置転換されたせいか、僕には、最も危険な境遇にあって、喩えそこに欲望があったにしても、愛を育むことが可能かどうか分からなかったからか?不信は恋人の成功に連れ増大する。何故か、僕達が互いを見たまさに次の時、僕は不可能に電話をしてしまった、まさにそんな具合に。それは身に降りかかった。
 僕は僕の心にじっと留まっている彼女の最後の用心深い助言の悲しさと共に目覚め、起床の三分以内の電話の彼女の声はそれを一掃した。前にも後にも、電話で只話すだけで気分をそこまでがらっと変えられる女を僕は全く知らなかった。また彼女が部屋に入って来るか、僕の傍らに彼女の手を置く時、彼女は忽(たちま)ち僕が別れの都度見失う全幅の信頼を築いた。
 「ヘロウ。」彼女は言った、「貴方は寝てるの?」
 「いや。僕は何時貴女に会える?今日の朝?」
 「ヘンリィが風邪を貰ったの。彼は家にいるわ。」
 「たとえば、唯、貴女さえここに来れたら・・・」
 「私は電話に出るために、家に居なきゃいけない。」
 「彼が風邪を貰ったからってだけで?」
 昨夜、僕はヘンリィに親しみと同情を感じた。それにもかかわらず、もう彼は敵になり、馬鹿にされ、憤慨され、密かに動きを止められた。
 「彼は完全に彼の声を失くしたの。」
 僕は彼の病気の不条理に、意地の悪い喜びを感じた;寡婦年金についてしわがれた声で無駄に囁く、声の出ない文官。僕は言った。「貴女に会うには何か方法はない?」
 「でも、もちろん。」
 通話中一瞬の沈黙があり、僕達は切られたんだと僕は思った。僕は言った、「ヘロウ。ヘロウ。」しかし彼女はそれは可能な限り、注意深く、落ち着いて、素早く、適当な答えを直ぐ僕に伝えられたら、とそう考えていた。「私は1時にヘンリィにベドゥでトゥレイを与えるつもりよ。私達は私達で、居間でサンドゥウィチを食べたらいいわ。私は貴方が映画について話したいようだと彼に伝えるわ―それか貴方のあの小説。」そして直ぐに彼女は電話を切り、信頼の感覚が断たれて僕は思った、何回前にちょうどこんな風に彼女は計画するようになったのか?彼女の家に行き、呼び鈴を鳴らした時、僕は、敵兵―或いはパァキスや彼の若い者が数年後彼女の行動を見張ろうとしていたように、彼女の言葉を待ち構えている探偵に似ていると思った。そしてその時ドアが開き信頼は回復した。
 誰かが誰かを求めたあの日々、そこにはどんな疑問もなかった―僕達は欲情の只中に共にいた。ヘンリィは彼の緑のウールのガウンを着て、二つの枕に寄りかかってきちんと座り、彼のトゥレイを抱え、部屋の下、支えのためのシングル・クションを置いた硬材の床の上、それにドアは半開き、僕達は愛を育んだ。その瞬間が来た時、ヘンリィが頭上でそれを聞くのを懸念して、その未知の哀れで怒ったような自暴自棄の叫び声を削ぐために、彼女の口の上にそっと僕の手を置かなければならなかった。
 考えると、僕はまさに彼女の頭脳を啄(ついば)むつもりだった。僕は彼女の側で床の上に蹲り、それにしても僕はこれを二度と見てはいけないかのように、見守り、そして見守った―一貯まりのリキュールに似た茶色い曖昧な色をした髪、彼女の額の汗、激しい呼吸、何れにせよ彼女はレイスを走って来たかのようで、今、若い陸上競技選手みたいに、勝利の過度の疲労で横になっていた。
 するとその時、階段が軋んだ。一瞬、僕達はそのどちらも動かなかった。サンドゥウイチはテイブルの上に食べずに積み重ねられ、グラスは満たされていなかった。彼女は小声で言った。「彼は階下に行ったわ。」彼女は椅子に座り、彼女の膝に皿を、彼女の側にグラスを置いた。
 「もし彼が聞いていたら。」僕は言った。「彼が通りがかった時。」
 「彼は、それが何だか知ろうともしなかった。」
 僕は疑って見なければならなかった、彼女は陰鬱な優しさで、「可哀そうなヘンリィ。を説明したから。それはたまたま起こったことではなかったー丸十年の内にでもなく、」しかし全く同様に、僕達は僕達の安泰をそれほど確信してはいなかった;僕達は耳を澄ましてその段が再び軋むまで静かにそこに座っていた。僕はかなり必要以上に声高に言ったので僕の声は自分自身にも掠(かす)れて不誠実に聞こえた。「あの玉葱のあるシーンを貴女が好きでよかった、」そこでヘンリィがドアを押して開け中を見た。彼はグレイのフランネルカヴァを掛けたホトゥ‐ウォタァ‐ボトゥルを運ぼうとしていた。「ヘロウ、ベンドゥリクス、」彼は囁いた。
 「貴方は自分でそれを取って来ちゃいけないわ。」彼女は言った。
 「君達の邪魔をしたくなくて。」
 「私達、昨夜の映画について話していたの。」
 「貴方が欲しいものなら何でも手に入れるといい、」彼は僕に囁いた。彼はサラァが僕のために出したクラレトゥをちらっと見て、「彼に『29』をあげたら、」とそのフランネルカヴァの中のホトゥ‐ウォタァ‐ボトゥルを握りしめながら、彼は彼の特徴のない声で囁き、またぶらっと出て行って、そしてまた、僕達だけになった。
 「気になる?」僕は彼女に尋ねたが、彼女は彼女の頭を振った。僕には自分がどういうつもりか実のところ分からなかった―僕はヘンリィの様子で良心の呵責を呼び覚ましても良かったような気がしたが、彼女は良心の呵責の抹消の驚くべき方法を持っていた。僕達の気休めと違って彼女は罪の意識に付き纏われなかった。彼女の見解で事が為された時、それは遂行された;良心の呵責はその行為と共に息をひそめた。もし彼がちょっとの間以上に怒るべきだと僕達のことを受け止めたとしても、彼女はそれをヘンリィの無分別と思っただろう、。カサリク教徒は過去の死手から懺悔の内に自由になると常に言われている―確かにその尊重に於いてお前は彼女を生来のカサリク教徒と呼んだ、しかしながら、彼女は僕がそうする程度に殆ど神を信じなかった。またそう僕はあの時思いはしたものの今となっては不可解だ。
 たとえこの僕の本がきちんとした経過を辿ることに失敗しても、それは僕が不慣れな領域に迷い込んだからだ;僕はどんな地図も持たない。僕は時に僕がここで何か書き留めていることは本当かどうかしらと思うことがある。僕はあの午後、彼女が問い質(ただ)されることもなく、「私は私が貴方をそうするほど、誰も何ものも嘗て愛したことはなかった。」と突然僕に言った時、こんな完璧な信頼をと感慨深かった。半ば食べかけのサンドゥウイチを彼女の手に持って、そこで椅子に座りながら、彼女は自分自身を彼女が硬木の床の上で五分遡(さかのぼ)ってしてしまったのと同じくらい、完全に捨てていた。僕たちは僕たちの大半はあまりにも完全に陳述するのを躊躇った―僕たちは思い出すそして僕たちは予知しやがて僕たちは疑う。彼女は僅かな疑いも持たなかった。その瞬間が重要なだけだった。永遠は時の延長であってはならない、と言われているが、時にそれは彼女の自暴自棄は、あの不思議な数学的無限の点、広がりを伴わない、空間を占有していない一点に触れるように僕には思われた。時は何を重んじたか―彼女が一時(いっとき)から一時迄(そこには再びその言葉が登場する)過去と他の男達全てを知ってしまっても構わない、或いは彼女が真実の同じ意識で同じ陳述をしようとするかも知れない未来全てを?そのように、僕もまた、彼女を愛していると答えた時、僕が嘘吐きになった、彼女ではなく、僕は時間という意識を失くしたことは一度もなかったから:僕には現在はここにはない:それは何時も去年か、来週かである。
 「他には誰もいない。何れ又。」と彼女が言った時、彼女は嘘を吐こうともしなかった。そこには数学的点上に存在しないという、それが全てだが、時間における矛盾がある。彼女は僕が持つ以上の有り余るほどの愛の能力を持っていたー僕は時間の周りのそのカァトゥン(カーテン)を下げることが出来ず、僕は忘れられず、僕は恐れることが出来なかった。愛のその瞬時にあってさえ、僕は未だ犯されていない罪の証拠を集めようとする警官に似ていた、やがて七年以上後に僕がパァキスの手紙を開けた時、その証拠が僕の辛辣に添えるために、僕の記憶の中のそこに全てあった。

「親愛なるサァ、」手紙は言った、「私と私の若い者が、17番で女中と親密に連絡を取らせて頂いて報告できるようになり、嬉しく思います。今回は、私は素晴らしい速さで調査を進行することが出来ました、と申しますのも私は時に当事者の予定簿を横目で見ることが可能です。それにこのように動向を手に入れ、同様に、日毎当事者の紙‐屑籠の中身を点検しています、そこから、私は興味深い証拠物件を同封して置きます、どうかそれをご意見と共に返却して下さい。渦中の当事者も又、日記をつけていて、何年もの間、ずっと一冊を保持していますが、今後、私は私の友人として、より大きなな安心のために言及する女中が、今までそれに手を伸ばせなかったのです。その当事者は、同じ物を錠と鍵の下に置いておくという具合のようであること、それがよいのか、或いは、疑惑を起こさせる情況なのかも知れません。ここに添付した重要な証拠物件から離れ、当事者は、盲目に見做されるしかない彼女の予定簿に従って取り決められた会う約束を守ることもなく、時間の大半を費やしているように見えます。しかし個人的には、この依頼の調査に当たって、卑しい見方をしても、或いは偏見の眼差しを向けても、いい気はしません。真実そのものが、あらゆる当事者のために望まれます。
 僕たちは悲劇によってのみ、傷付くのではなく、怪奇も又、武器を運ぶ、品位を落としめる、とんでもない武器を。
僕は、彼のあの若い者の面前で、パーキスさんの漫然とした責任逃れの非能率的報告書を、彼の口の中に押し込んで潰したくなるきっかけが、そこにあった。(どんな目的のために?)ヘンリを傷付けるため?それとも自分自身を傷付けるために?)僕は肉体関係の中で、混乱を極める道化師を登場させた。肉体関係。その言葉でさえ、パーキスさんの報告書を平手でぴしゃりと打った。彼は一度も書いたことがなかったのか、「私はシェダーロウドゥ16で行われていた肉体関係の直接的な証拠は持っていませんが、当事者は確かに騙す意志を見せました。」?しかしそれが後だった。この彼の報告書の中で、サラーが彼女の歯医者と彼女の仕立て屋を訪れる約束を書き留めた二つの機会に関して、それだけは覚えがあった。彼女は彼女の予約に、姿を現さなかった。もしそれが存在したとしても。彼女は気晴らしを避けた。それからパーキスさんのその薄いウェイヴァり筆跡で、安い便箋に藤色のインクで書かれた大まかな文書の頁を捲りながら、僕は大胆で均整の取れたサラー自身の筆跡を見た。僕がおよそ二年後にそれを認めるなど、僕は考えもしなかった。
 それは報告書の裏にピンで留められた単なる紙屑だった。それには赤い鉛筆で大文字のAと記されていた。そのAの下に、パーキスさんは書いた、「可能な進捗のために重要なその全ての証拠書類は、書類整理のために返却されるべきです。その断片は紙屑籠から持ち出され、それが恋人の手によってであったかのように、注意深く撫で付けてあった。そして確かに、それは恋人に向けて話されたに違いなかった。「私は貴方に書く必要も、又話す必要性も持ち合わせない。私が話そうとする前に、何もかも知っている。それでも誰かが愛し、誰かが何時も使って来た変わることのない、使い古した手口を使う必要性を感じます。私は只愛し始めていると自覚しています。それなのに、もう私は全てを捨ててしまいたい。貴方ではない誰も彼も、怯えと習癖だけが、私を引き留めます。愛しい人・・・」そこにはもう何もない。それは私を厚かましく睨み上げ、そこで僕は、彼女が嘗て僕に宛てた覚書全てのどの目鼻立ちも、何故忘れてしまったのかと、思わざるを得ない。僕はそれを取って置こうと思ったのか、もしそれが彼女の愛情に対して、それ程完全にこれまで明かして来たのなら、僕のそれを取って置くことへの不安のために、彼女は何時もあの頃、彼女はそれを「針金の間に」置いたように、僕に手紙を書くのに神経を使った。しかしこの最後の恋は、針金の籠を飛び出した。それは視野の外のそれの間に置かれるのを拒んだ。そこには僕が覚えていた一つの婉曲語句「玉葱」があった。愛は、「玉葱」に、行為そのものでさえ「玉葱」になった。「もう私は全てを捨ててしまいたい。貴方ではない誰も彼も。」それに玉葱を僕は思った、嫌悪を伴った、玉葱を―それが僕の持ち時間で辿る径だった。
 僕は手紙の断片に「論評はない。」と書き、それを封筒に戻して、パーキスさんの宛先をそれに書いたが、夜中に目が覚めた時、自分自身に対して、全てのことをすっかり読んで聞かせることが出来た。そして「捨てなさい」という言葉は、様々な身体的画像を結んだ。僕は眠られず、そこで横になった。憎悪と欲望で、僕を次から次へとちくちくと刺す記憶、寄木細工の床に扇形に広がる彼女の髪、そして軋むその段、僕たちが、道路から外れた溝で横になった田舎の或る日、僕は固い地面の上の頭髪の間に、霜の輝きを見ることが出来た。そして重大局面の瞬間に、一台のトゥラクタが押しながら側に近付いたが、その男は決して頭を向けなかった。何故憎悪は欲望の命を奪えないのか?僕は眠るために何かを供給しようとした。喩え僕が代用品の可能性を信じていたにしても、僕は小学生のように振舞おうとした。しかしそこにあったのが、僕が代用品を探そうとした時期だとしても、それは機能しなくなっていた。
 僕は嫉妬深い男だった―こうした言葉を書くのは愚かに思える、僕は想像する、嫉妬の長い記録、ヘンリの嫉妬、サラーの嫉妬、パーキスさんが極めて不器用に追跡していたその他の嫉妬を。この全ては過去のものであるという今、僕は、記憶が特に生々しくなる時だけ、ヘンリについての僕の嫉妬を痛感する(僕は、もし僕たちが、彼女の誠実と僕の欲望を引き連れて、結婚していたら、僕たちは終生幸せでいられただろうと僕は誓うから)、しかしそこには尚、僕のライヴァルの嫉妬が残っている―耐え難い一人よがり、自信、そして成功を表現するために、痛々し気で不適格なメロドラマ的言葉を彼は何時も楽しむ。彼は僕を絵画の一部としても、認めようとさえしない、と僕は思うし、僕自身への注意を引こうとする凄まじい願望を感じる。彼の耳に大声で叫ぶために「お前は僕を無視できない、ここに僕はいる。喩え後々何が起ころうと、サラーはその時僕に思いを寄せているんだ。」
 サラーと僕は、嫉妬に関する長い口論をしょっちゅうやったものだ。僕は過去のことでさえ妬いた、それが上り坂に差し掛かると、そのことについて彼女は僕に率直に言った。全く意味をなさない情事(ヘンリがひどく痛ましく、引き起こし損ねたあの決定的な引き付けを何とかして見つけようとする無意識の願望を除いて)彼女は彼女の愛人に対して、彼女がヘンリに対するのと同じくらい誠実だったが、安心感を僕に与えようとして何かが(疑いなく、彼女は僕に対しても誠実であろうとするから)僕を怒らせた。そこにあったのは、彼女が僕の怒りを一笑にふそうとした時期だった、まるで、それが本気だったと簡単に信じるのを拒絶したかのように、まるで彼女自身の美しさを彼女が信じるのを拒むかのように、そして僕はと言えば、まるで怒りの最中にあろうとでもするかのようだった。何故なら、彼女は、僕の過去も僕の可能性のある未来をも、妬くのを拒絶したから。僕は、愛情が僕のものより少しでも別の形態を採り得たということを信じるのを拒絶した。僕の嫉妬の程度で愛情を測り、その基準では、勿論、彼女は、僕を全く愛せなかった。
 その口論は、何時も同じ形態を採り、僕は或る特別な場合を描写するだけ。何故ならその場合に、口論は行為―僕は書き始めると、結局、多分彼女は正しく、僕が悪いという感慨に向かうというこの不確かさがなければ、ついに、何処にも導かない馬鹿げた行為で終わったのだから。
 僕は怒って言ったのを覚えている、「これはまさに、貴方の何時もの冷淡さからの遺物だ。冷淡な女は、決して妬かない、貴女は単に並みの人間の感情に未だ追いついていなかっただけだ。」
 彼女は、どんなクレイムもつけなかったということが、僕を怒らせた。「貴方は正しいかも知れない。私は貴方に幸せになってほしいと言っているだけ。私は貴方が不幸せであるのは嫌。私は貴方を幸せにするなら、貴方がどんなことをしても気にしない。」
 「貴女は只許しが欲しい。もし私が他の誰かと寝ると、貴女は同じことが出来ると思う―何時でも。」 
 「それは、ここにもあっちにもどっちにもないの。私は貴方に幸せになってほしい、それが全て。」
 「貴女は僕のために僕のベッドゥを作るつもりなの?」
 「多分。」
 不安は恋人たちが感じる最悪の感覚だ、時に、最も平凡な結婚は、より良く見える。不安は意義を捩(よじ)り、信頼に毒を盛る。厳重に包囲された都市においては、あらゆる見張りが、潜在的な反逆者だ。パーキスさんのその日々以前でさえ、僕は彼女を調べようとしていた。僕は些細な嘘、僕についての彼女の懸念を除くと、何一つ意味のない言い逃れに、彼女を罠に賭けようとした。あらゆる嘘に対して、僕は背信へと誇張しようとし、又最も開かれた声明でさえ、僕は隠された意味を読み取ろうとする。何故なら、他の男に触れるも同然の彼女の考えに、僕は耐えられず、僕はそれをずっと惧れ、そうして僕は,最も何気ない手の動きに、愛情表現を予測した。
 「貴方は私に惨めであるより、少しでも幸せであってほしくはないの?」彼女は耐えられない論理で尋ねた。
 「僕は寧ろ死ぬか、貴女が死ぬのを見る方がいい。」僕は言った、「他の男と一緒なら。僕は常軌を逸してはいない。それが普通の人間の愛情だ。誰にでも聞くといい。誰も彼も皆、同じことを言うに決まっている―もし彼らが全てを愛したら。」僕は彼女に二の足を踏んだ。「恋をする誰もが妬いている。」
 僕たちは僕の部屋にいた。日中の安全な時間に、そこに来ていた。晩い春の午後、愛を育むために。一度は僕たちは暇な時間を持ち合い、そうしておきながら、僕はその全てを口論で浪費した。そこになかったのは、育みたくなる愛情だった。彼女はベッドゥに座って、言った。「ごめんなさい。私、貴方を怒らせるつもりじゃなかった。貴方が正しい方がいいわ。」それでも僕は彼女を一人にしては置かない。僕が彼女を嫌になったのは、彼女は僕を愛さなかったと考えるようになったからだ。僕の秩序から外れて欲しかった。どんな不満を、彼女が僕を愛しているのか、愛さないのか、僕には今も分からない、僕は彼女に対して、抱くようになったのか?彼女は一年近くの間、僕に誠実だった。彼女は僕に大きな喜びを齎した。彼女は僕のむら気に付いて来て、僕は束の間の喜びの外(ほか)、お返しに何を与えて来たか?この目を見開いたまま、この情事にのめり込んだ、このことは何時か終わるしかないと知りながら、それでも尚、不安感、望みのない未来の論理的確信は、鬱病のように伝わる。僕は彼女を苛め、そして又苛めようとする。まるで僕が、ドアの現在に未来を、望まれない、早過ぎる客を伴いたかったかのように。僕の愛情と不安は、分別のように振舞った。もし僕が罪を信じたら、僕たちの行動は、殆ど違っていなかっただろう。
 「貴女はヘンリには妬いてしまうんだ。」僕は言った。
 「いいえ、そうなる筈ないわ、そんなの馬鹿げてる。」
 「もし貴女の結婚が、脅かされているように見えても・・・」
 「そうなってしまうなんてないの。」彼女は寂しそうに言った。そして僕は侮辱的彼女の言葉に応じて階段を降り、通りへと一直線に歩いて出た。これが終わりか、僕自身に演技を仕掛けたのかと問いかけた。そこにはもう二度と戻る必要はない。喩え僕の秩序から彼女を締め出せても、前進し続けるだけの、穏やかで仲の良い結婚に行き着かないじゃないか?それから多分、僕が嫉妬を感じさえしなくなったのは、僕が手放しで愛そうとしなかったから。僕は只安全域に留まろうとしたに過ぎず、この自己憐憫と嫌悪は、手に手を取って保護者のいない馬鹿のように暗くなっていく共有地を歩いて横切った。
 僕は書き始めた時、これは憎悪の物語だと言ったが、僕は納得していない。多分僕の憎悪は、僕の愛情同様、実に欠陥がある。僕はまさに今、書くことで目覚め、机に寄り、鏡の中に僕そのものの風景を捕えて、やっと僕は思った、憎悪は本当にそんな顔つきをしているのか?僕たちはその誰もが、子供の頃に見た筈のその顔を思い起こした。ショップ・ウインドウから、僕たちの方を振り返ろうとすると、顔立ちがその息でぼやけた。僕たちが、中のきらきらした手に入らない物に、あんなに思い焦がれて見入ったので。それは、1940・5月のきっとあの時だった、その時、この口論は勃発した。戦争は、数多くの素晴らしい方法で僕たちを助け、それは、如何に僕が戦争を、かなり質の悪い、当てにならない殆ど僕の情事の共犯者だと見做したかである。(慎重に、僕はその言葉「情事」の苛性ソウダを僕の舌の上に始まりと終わりのその暗示と共に置こう。)この時まで、僕はドイツ人が低地三国を侵略して来たと、考えている、屍のような春は、開花の匂いで甘い香りがしたが、僕には何の関係もなく、それどころか二つの実際の出来事―ヘンリは国防省へ配置され、遅くまで仕事をしたし、僕の女主人は、空襲を恐れて地下室へ移り、もはや階上の床の上には、望まない訪問者のために手すりの向こうで見張りながら潜む者さえいなかった。僕自身の暮らしは、この不自由な足の所為で、全く変わらなかった(子供の頃の事故の結果、僕はもう一方のものより短い片足を持っていた)。只、空襲が始まった時は、学校長になる必要性を感じた。まるで僕が戦争に署名をしたかのように振舞おうとしたのは、その時期だった。
 その夕べ、僕がピカディリに着いた時、僕は尚も、僕の憎悪と不信でがんじがらめだった。世界の何ものよりずっと、僕はサラーを傷付けたかった。僕は、僕と共に女を再び迎え入れ、僕がサラーを抱くその同じベッドゥの上に、彼女と横になりたかった。それで、彼女を傷付ける唯一の方法は、自分自身を傷付けることだ、と僕には分かっていたかのように、振舞った。通りでは、この時までに、それは暗く静かになっていた。が、見上げると、月のない空の上方に、小さな塊とサーチライトゥの光線を動かした。戸口や使われていない避難所の入り口に、女たちが立つそこでは、貴方は顔を見られない。彼女たちは、ツチ蛍のように彼女たちの懐中電灯で合図しなければならなかった。サックビル・ストゥリートゥを上る全ての道は、その小さな明かりが、点いたり消えたりしていた。サラーは今何をしているのかと気を回そうとする自分自身に気付いた。彼女は帰宅したか、それとも彼女は僕が戻って来ると思って、待っていたか?
 一人の女が彼女の明かりををぱっと点けて言った。「私と一緒に家に来たい、ねえ?」僕は僕の頭を振り、歩き続けた。通りを上ってもっと先で、その女は、男に話しかけていた。彼女がその顔を彼のために照らした時、僕は、何処かしら若く、暗く、幸福で、未だ損われていないものをちらっと見た。動物、それは未だ自らの監禁状態に気付いていなかった。僕は通り掛かり、そこで彼女たちの方へと道を引き返した。僕が近付くと男は彼女を一人残し、そこで僕は話し掛けた。「一杯どう?」僕は言った。
 「後で私と家に来るってことでは?」
 「いいよ。」
 「話が速くて嬉しいわ。」
 僕たちは通りの頂上のパブに入り、僕は2杯のフイスキを注文した。が、彼女が口にしても、サラーの所為で彼女の顔を見られなかった。彼女はサラーより若く、彼女は19を超えている筈もなく、その上美しく、寧ろ損なわれていないと誰かが言っても構わなかったが、それは只、駄目になるようなものが極端に少なかったからだ。僕は犬か猫の類を求める以上に、彼女を全く欲しくはないと気付いた。彼女は僕に、ほんの二、三軒下ると最上階に素敵なフラットゥを彼女が持っていると話した。彼女は支払わなければならない何を借りて、彼女の年齢は何歳で、何処で生まれ、カフェで一年働いた、と僕に話したが、僕は紳士だと直ぐに見抜いてしまった。彼女は、自分にそれをくれた紳士の名前を付けたジョウンズと呼ぶカネアリを飼っていると言った。彼女は、ロンドンでの襤褸菊(のぼろぎく)を得ることの難しさについて話し始めた。僕は思った、もしサラーが今も僕の部屋にいれば、僕は教会の鐘を鳴らせる。例えば僕が庭を持っていれば、僕は彼女のカネアリを時々思い出すかどうか、その少女がぼくに尋ねているのを聞いた。彼女は言った。「貴方は尋ねている私のことを気にしないでしょ?」
 僕のフイスキの向こうの彼女を見ながら、僕は思った、何て奇妙な、彼女に全く欲望を感じない。僕が大人になって入り混じった全ての年月の果てに、全く突然といった風にそうなった。サラーに向かうこの激情は、単なる肉欲を永遠に封じた。二度と再び愛情のない女を弄ぶことは出来はしない。
 それにしても確かに、このパブに僕を連れて入ったそれは愛情ではなかった。僕は僕自身に、共有地からのあらゆる道、それが嫌だったと打ち明けた。僕はずうっと自分自身に説くに連れ、彼女のこの話を書きながら、永遠に僕の秩序から彼女を締め出そうとするのは、もし彼女が死んだら、僕は彼女を忘れられる、と何時も説得して来たから。
 僕はパブの外に出た。済ませたに見合う彼女のフイスキと一緒に彼女を、彼女のプライドゥ用軟膏としてパウンドゥ紙幣を残して。そしてニュー・バーリントン・ストゥリートゥを電話ボクスまで歩いて上った。僕は僕用の懐中電灯も持たず、僕が僕の番号のダイアルを回すことを完了してしまう前に、僕は競争相手の後に又競争相手に行き当らざるを得なかった。その時僕は、電話が鳴っている音を聞き、僕は僕の机の上に置いてある電話を思い描いてしまった。例えば彼女が椅子に座っているか、ベッドゥで横になっているかで、サラーがそれに辿り着くのに何歩歩かなければならないか、僕は正確に知っていた。それでも僕は、それが30秒間、留守の部屋で鳴り続けるままにした。それから僕が彼女の家に電話すると、メイドゥは未だ中にはいないと僕に話した。灯火-管制中に共有地をあちこち彼女は歩いているのではないかと思った―その頃、より安全な場所は其処にはなかった。そして僕の時計を見ながら、僕は思った、もし僕が愚か者でなければ、僕たちは一緒にあと三時間は過ごしていた。僕は一人で帰宅し、本を読むことにした。しかしずうっと、僕は鳴らない電話に耳を澄ましていた。僕のプライドゥが、彼女にもう一度電話しようとする僕を引き留めた。とうとう僕はベッドウに向かい、睡眠薬‐一回分の服用量の2倍を呑んだ。挙句の果て、朝、僕が知った冒頭は、何事もなかったかのように僕に話す、電話でのサラーの声だった。僕が受話器を置くまで、そこには、再び完全な平和のようなものがあった。ところが、直ぐに僕の頭の中のその悪魔は、彼女にはあの三時間の浪費は、全く何の意味もなかったという考えを促した。
 主観的神の法外な起こりそうにないことを鵜呑みにできる人々は、何故、主観的な悪魔を受け付けないかを、僕は全く理解しなかった。僕はとても親密だったので、僕の想像力の中で、その悪魔は働く術を心得ていた。サラーは嘗てどのような声明も作ったことはなく、それは、彼の狡猾な疑念に対する証明になった。それでも、彼は何時も彼女があれやこれやを言葉にするまで、待とうとした。それが起こるずっと前に、彼は僕たちの口論を、駆り立てようとした。彼は愛の敵程には、サラーの敵ではなく、つまり、どんな悪魔もいると考えられているんじゃないのでは?もしそこに愛する神が存在すると、、悪魔は、その愛の最も弱く、最も不完全なまがい物でさえ、破壊に至らせる。彼は愛の性(さが)が募ったら嫌になってしまうんじゃないか、それに僕たち皆、反逆者になり、愛を根絶しようとする彼を助ける罠にかけてしまうんじゃないか?そこにもし、僕たちを使い、こんな僕たちのような人物から遠い、彼の死者を作る神がいれば、悪魔も又、彼の大望を抱く。彼は僕自身のようなこんな人物さえ、可哀そうなパーキスでさえ、彼の死者になることへと訓練しようと、夢見かねない。喩え何処でそれを見い出しても、愛を滅ぼそうと、借りた熱狂で準備する。

それで僕は、悪魔の計略に備え、心からの熱中をパーキスの次のリポートゥで発見出来たらいいと思った。ついに彼は現実に恋愛を嗅ぎつけてしまって、今や彼は、そっと近付いてリトゥリーヴァのように、直ぐ後に続く彼の若い者、それを仕留めた。彼はサラーが彼女の時間の大半を何処で過ごしていたか発見した。そのこと以上に、彼は訪問は秘密だとはっきりと知っていた。僕は、パーキスさんが抜け目のない探偵だ、と自ら立証して来たことを、認めざるを得なかった。問題の当事者が、16番の方へシーダー・ロウドゥを歩いて下った時、丁度その時に、家の外にマイルズのメイドゥを連れて出るのに、彼の若い者の助けを彼が取り決めた。サラーは立ち止まり、その日が非番のメイドゥに話し掛けると、メイドゥは、彼女を若いパーキスに紹介した。それからサラーは、歩き続け、次の角を曲がった。そこでパ―キス自身が待っていた。彼は狭い道を歩く彼女を見て、そこで引き返す。彼女は、メイドゥとパ―キス青年が視野から外れたのを確認すると、彼女は16番のベルを鳴らした。パーキスさんはそこで16番の居住者の調査に取り掛かった。これが、さほど簡単ではなかった。その家屋は、屋根の中で分けてあり、彼にはサラーが三軒のベルの内、どれを鳴らしたかを知っても、大した意味はなかった。彼は数日内の最終報告を約束した。
 彼がしなければならないことは、次にサラーがこの方向へ出かける時には、彼女の先周りをして、粉を塗した三軒のベルの埃を払うことだった。「そこには、勿論、証拠物件Aから離れ、問題の当事者による姦通の証拠の欠片もありません。仮にこれらの報告書の強みに基づいて、このような証拠が、法的処置を視野に入れるに伴い、求められるとすると、屋内の当事者を尾行すること、それは、適当な間隔を開けた後、必要かも知れません。当事者を確認できる二番目の目撃者が求められます。行為の最中の当事者を押さえること、それは全く必要ありません。衣服の確かな乱れや動揺は、判事によって十分維持されるでしょう。」
 憎悪は肉体的愛情に実に近い。それはそれ自体の危機と同時に、それ自体の平穏の終結を兼ね備えている。可哀そうなサラー、と僕が思ってしまったのも、パーキスさんの報告書を読みながら、この瞬間が僕の憎悪のオーガズムであり、今、僕は満足しているから。僕は、彼女がいたからこそ、がんじがらめにしてしまい、彼女に対して済まないとやっと思った。彼女は恋愛の他に何事にも傾倒したことがなかったのに、あらゆる動向を見張っているパ―キスと彼の若い者が、今はいる。彼女のメイドゥを使った企み、呼び鈴への粉塗布、多分、彼女が最近満喫したのは唯一平和だけだったそのことへの凄まじい噴出計画。僕はその報告書を引き千切り、スパイ共を呼んで彼女から引き離そう、と心が半ば動いた。多分、僕はそうしようとした。もし、僕が属したみすぼらしいクラブで、「タトゥラ」を公開せず、ヘンリの写真を見なかったら。ヘンリは今は成功し、去年の誕生日には、彼は省の彼の業務に対して、C,B,E.を叙勲した。彼は、英国委員会の委員長に任命され、今、彼は「The Last Siren]と名付けられた英国フィルムの祝祭の夕べを担当していた。彼の腕にしがみつくサラーと一緒に、フラッシュを浴び、青白い上に目を丸くして。彼女はフラッシュを避けるように、彼女の頭を低くした。それでも、罠にかけ、又指を阻止した結び目の多い髪を寄せ集める、そのことを、僕は認めようとした。突然、僕は僕の手を差し出し、彼女に。彼女の頭の毛と彼女の隠れた毛に、触れたくなり、僕は僕の側で横になっている彼女が欲しくなり、僕は枕の上の僕の頭を彼女の方へ向けられるようになればと願い、僕はその殆ど感知できない匂いや彼女の肌の味わいを求めたところで、そこにいたのは、新聞記者のカメラに、自己満足と百貨店的頭の自信共々、面と向かっているヘンリだった。
 僕は、1898にサー・ウォルタ・ベサントゥによって贈られた雄鹿の頭の下に座り込み、ヘンリ宛に書いた。彼と話し合いたい或る重要な問題を抱えているので、僕と昼食を摂れるか、と書いたー彼は来週の内、どの日を選んでも構わなかった。かなりすばしっこく彼はベルを鳴らした、それがヘンリの典型で、同時に、僕は彼と昼食を摂るべきだと提案した―これほど難しい客である男を、僕は今まで知らなかった。僕は何が口実だったのか、正確に思い出せないが、それは僕を怒らせた。彼の所有するクラブは。或る特別美味しいワインを持っていると彼は言った、と僕は思うが、本当の理由は、義務という感覚が彼をうんざりさせたからだった―負担のない食事の僅かな義務でさえ。どんなに僅かでも、彼の義務がありそうだと、彼は少なからず推測した。彼は土曜日を選び、その日に僕のクラブは、殆ど空いていた。日刊新聞の記者らは、制作する紙が全くなく、学校警備官は、ブラムリやストゥリーサムへ帰宅していた、牧師たちにその日に何があったのか、僕は全く知らない―多分彼らは、彼らの説教を準備するために屋内にいる。作家について言えば(彼らのためにクラブが設立された)、彼らの殆ど全員が壁に掛けてある―コナン・ドイル、チャールズ・ガーヴィス、スタンリ・ウエイマン、ナットゥ・グールドゥ、特別に任命され、その上著名で、よく知られた顔を持っていた。貴方が片手の指で数えられる生存者。僕が何時もクラブで寛(くつろ)いでいたのは、そこには、作家仲間に会う可能性がさほどないから。僕はヘンリがヴィエンナ・ステイクを選んだのを覚えている―それが彼の潔白の現れだった。僕は 彼が何を注文し、ウィーナー・シュニツ゚ェルのような何かを期待しても、彼にはどのような裏もなかったと心底信じる。彼は、ホウム・グラウンドゥから離れ、彼は、寛ぐには余りにも気分が悪かったので、皿の上で論評し、何とかしてやっと、ピンクのべとべとした混合物を詰め込んで、きれいに平らげた。僕はフラッシュライトゥの前の、その尊大な様子を覚えていて、彼がカビネットゥ・プディングを選んだ時、彼に警告しようとするどのような試みもしなかった。忌まわしい食事の間(その日そのクラブは、許容範囲を超えていた。)、僕たちは何に関しても、苦心して話さなかった。ヘンリは、新聞で日々報じられた英国委員会の会報向けの内閣機密の顔を添えようと全力を尽くした。僕たちがカフィを求めてラウンジの中に入ると、擦り切れた黒いバス織りのソウファに、火の側で全くぽつんとしている自分達に気付いた。壁伝いの角は、その場所に何と相応しいことかと思った。旧-式の炉格子の上に僕の足を載せながら、ヘンリを片隅にしっかりと閉じ込めた。
僕は僕のカフィを掻き雑ぜ、言った。「サラーはどう?」
 「かなり元気。」ヘンリはごまかして言った。彼は、彼のワインを、不安と、疑念を持って味わった。彼は忘れていなかった、と僕は思う、ヴィエナ・ステイクを。
 「未だ貴方は心配してるの?」僕は彼に尋ねた。
 彼は不幸せそうにその凝視を移した。「心配?」
 「貴方は心配している。貴方がそう僕に話した。」
 「僕は覚えていない。彼女はかなり上手くやってる。」彼は弱々し気に説明した。僕が彼女の健康に言及したのに。
 「貴方は前にあの私立探偵に相談したの?」
 「僕は貴方がそのことを忘れてくれたらと願った、僕は良くなかった。―分かってるでしょ、そこにはこの英国委員会の企画がある。僕は働き過ぎだ。」
 「僕は貴方に会うように進めたのを覚えている?」
 「僕たちは二人共少し働き過ぎに違いない。」
 彼は頭上の古い角目掛けて、急に立ち上がった。寄贈者の名前を読もうとして彼の目を見開きながら。彼は愚かにも言った。「貴方に、たくさん頭があるようだ。」僕は彼を容赦するつもりはなかった。僕は言った。「僕は2、3日後に彼に会いに行ったんだ。」
 彼は彼のグラスを置いて言った。「ベンドゥリクス、貴方は全く抜け目がない・・・」
 「僕が料金は全部持つよ。」
 「それじゃあ悪魔のようなずうずうしさになる。」彼は立ち上がったが、僕は彼が暴力行為なしで傍を通り過ぎて受取れないような所に彼を閉じ込めたものの、暴力はヘンリの柄じゃなかった。
 「確かに貴方は彼女のことをはっきりさせた方がいい。」
 「はっきりさせたいことなどない。僕は行かなきゃ、ねえ。」
 「貴方は報告書を読んだ方がいい。」
 「僕はそのつもりはない。」 「それなら、秘密の訪問についてその一端を、僕が貴方に読み聞かせるしかない、と僕は思います。彼女のラヴ・レタ-を、僕は私立探偵に書類整理ということなので返した。我が親愛なるヘンリ、貴方は適切に庭へ導かれた。」
 彼が僕を殴ろうとしていた、と実際僕は思った。もし彼がしたら、僕は喜んで殴り返そうと、サラーが、自らの考えで、随分長い間、実に馬鹿げたことに、忠実であり続けたこの愚か者を殴り返そうとしたが、その瞬間、クラブの幹事が入って来た。彼は、長いグレイの顎髭と、スープのシミが付いたべストゥを身に着けた男で、彼は、ヴィクトリア朝詩人のように見えた。が、実際に、彼は嘗て知っていた犬の少し悲しい回想を書いた。(For Ever Fidoは、1912、大きな成果を上げた。)「ああ、ベンドゥリクス。」彼は言った。「長い間、僕はここで貴方に会ったことがない。」僕がヘンリに彼を紹介すると、理容師の素早さで彼は言った。「僕は毎日、あのリポートゥを追いかけていました。」
 「どんなリポートゥを?」その言葉が発せられた時、ヘンリの仕事は、彼の心に初めピンと来なかった。
 「イギリス委員会」
 とうとう彼が行ってしまうと、ヘンリが口を開いた。「さあどうかそのリポートゥを僕にくれ、そして僕を通してよ。」
 幹事が僕たちといる間、彼は物事を考え過ぎていたんじゃないだろうか。だから僕は彼に最終リポートゥを彼に手渡した。彼はそれを火の中に直接載せ、火掻き棒でそれをしっかり叩き込んだ。その身振りは威厳を放っていたと思わざるを得ない。「貴方はどういうつもりなんだ。」
 「別に。」
 「貴方は事実から放免されてはいない。」
 「事実を道連れに地獄へ?」ヘンリは言い放った。僕は以前彼が暴言を吐くのを耳にしたことはなかった。
 「僕は何時でも貴方に写しを持たせられるんだよ。」
 「僕を直ぐにでも行かせてくれないか?」ヘンリは言った。悪魔がその仕事を終えようとした。僕は毒液から液を抜き取ったと勘付いた。僕は炉格子から足を外し、ヘンリを通した。彼はクラブから直ぐに歩いて出て行った。彼の帽子を忘れたままで、その黒い傲慢な帽子、それが、僕は共有地をずぶ濡れで横切って来るのを見たことがあった―それは老人のようだった、何週間も前のことでもないのに。

僕は彼に追い着くか、或いは少なくともフワイトゥホールからの長い距離を先回りして、彼を視界に捕らえようとした。というのも僕は彼の帽子を、僕が持って行ってやりたかったから。ところが彼は何処にも見当たらなかった。僕は何処へ行こうか決めかねて折り返した。近頃、それは最悪の時刻だ。そこにあるのは、有り余るほどのそれ。僕はチャーリング・クロス地下に近い小さな本屋の中を見た。この時間にサラーは、角の周辺で待ち伏せるパ―キスさんと一緒に、シーダー・ロウドゥの粉を塗したベルに、彼女の手を置いているのではないだろうか。仮に僕が時間を巻き戻せたところで、僕はそうしようとしたと思う。僕は、ヘンリを徒歩で側に行かせようとした。ところが僕は、僕に何か出来ることがあるとすれば、とっくの昔に、出来事の道筋の変更をしているのにと疑心暗鬼になるばかりだ。ヘンリと僕は、今や、僕ら流に、連合軍で、無限の潮流に逆らった連合軍だ、僕たちは。
 僕は道路を横切り、露天商を過ぎ、ヴィクトウリア・ガードゥンの中に入った。さほど多くはない人々が、曇った吹きっさらしの中、ベンチに座っていた。僕は、忽(たちま)ちの内に、ヘンリを探し当てたものの、彼と認めるには少々僕には時間がかかった。戸外で、帽子もなく、彼は、匿名の人、放浪者ら、貧しい郊外から上って来た誰も知らない人々―雀に餌をやる老人、Swan & Edger’sと記された茶色い―紙包みを持った婦人と合流したように見えた。彼は垂れたその頭で、彼の足元を見つめながら、そこに座っていた。それで僕は、僕自身の所為で、随分長い間、酷くお高く留まって、僕の敵に対して申し訳ないと思うのは、僕にしては珍しいような気がした。僕はその帽子を静かに彼の傍の座席に降ろし、歩いて行こうとしたが、彼が上を向くと、彼は泣いていたように僕には見えた。彼は非常に遠い道を旅するしかなかった。涙は、イギリス委員会とは別世界のものだ。
 「僕は済まないと思う、ヘンリ。」僕は言った。如何に安易に悔恨の動作によって、僕たちの罪悪感から逃れられると信じることか。
 「座って。」ヘンリは、彼の涙の権威で勧め、僕は彼に従った。彼は言った。「僕は考えていた。」「貴方は二人分の愛人だったの、ベンドゥリクス?」
 「どうして貴方はそう思うの・・・?」
 「それが、唯一の解説だから。」
 「僕は貴方が何を言っているのか分からない。」
 「それは、唯一の容赦でもある、ベンドゥリクス。貴方がしたことは、―不条理だと、見てはいけない?」彼は話しながら、彼の帽子を回転して、メイカー名を調べた。
 「僕が恐ろしく馬鹿だ、と貴方は思っている、と僕は推測する。何故、彼女は僕を置いて去らなかった?」
 彼のものである妻の性質を彼に教えていいものか?
毒は、再び僕の中で効いて来た。僕は言った。「貴方は十分安定した収入源を持つ。貴方には、彼女が形作った習性がある。貴方は担保に過ぎない。」彼は真剣に、注意深く耳を傾けた。僕は、委員会を前に、宣誓の上で、証拠を提供する目撃者であるかのように。僕は不毛にも続けた。「貴方が他の男にそうであった以上のトゥラヴルなど、僕たちには何でもなかった。」
 「他の男もいたの?」
 「時々僕は、貴方はそのことを全て知りながら、関心がないのかと思った。時々僕は、貴方に対してそのことを持ち出そうかと切に思いはした―それでは遅過ぎるが、僕たちが今しているように。僕は貴方に、貴方のことを僕がどう考えるか、打ち明けたかった。」
 「貴方が何を考えたって?」
 「それは、貴方は彼女のヒモだった。貴方は僕を食いものにしたし、貴方は誰も彼も食いものにして、今、貴方は最も遅れたものを食いものにしている。永遠のヒモ。何故貴方は腹を立てない、ヘンリ?」
 「僕は全く分からない。」
 「貴方は気付かないままに食いものにした。貴方は彼女とどのように愛を育めばよいか、知ろうともせずに食いものにする。だから彼女は、何処か他に目をやるしかなかった。貴方は、好機を恵んでやっては、食いものにする・・・貴方は、退屈な人、愚か者になっては食いものにした。だから今この時、退屈でも愚かでもない誰かが、シーダー・ロウドゥで彼女とあちこち遊び回っている。」
 「どうして彼女は貴方を置いて去らなかったか?」
 「そりゃあ、僕まで退屈で馬鹿になったからでしょう。だけど僕は生まれつきそういう風じゃない、ヘンリ。貴方が僕を創るんだ。彼女は貴方を捨てない。その内僕は嫌な男になって行った、不平と嫉妬で彼女をうんざりさせては。」
 彼は言った。「人々は貴方の著作に素晴らしい見解を持つ。」
 「そして彼らは、貴方が一流の委員長だと言う。僕たちの仕業は、どんな生き地獄と関係しているのか?」
 彼は、「僕はそれが齎すものの他には、何も知らない。」南の川岸の上の灰色の積雲を見上げながら、悲し気に言った。。カモメは艀(はしけ)を越えて低く飛び、発砲塔が、冬の日差しの中、崩壊した倉庫の間に黒く佇んでいる。雀に餌をやっていた男は去り、茶色い‐紙包みを持った女、露天商は、駅の外の暗闇で動物のように吠えた。それはまるで地上全体で鎧戸が上がっているかのようだった。間もなく僕たちは、僕たち全員、自らの装置に見捨てられてしまう。「僕は不可解に思う、何故、貴方はあの時期、僕たちに姿を見せようとしなかったの?。」とヘンリは言った。
 「僕は推察する―行き詰まって―僕たちは恋の終点に辿り着いてしまった。そこには、僕たちが一緒に出来ることは何か他にある筈がなかった。彼女は、買い物や料理をしたり、貴方とぐっすり眠ったりできるでしょうが、僕と一緒に彼女は愛を育むことしかできなかった。」
 「彼女は貴方をとても好ましく思っていた。」
僕を楽にすること、それが彼の仕事だったかのように、僕の目が、涙と共に傷付いたそれであるかのように、彼は言った。
 「或る者は好みでは満足しない。」
 「そうだね。」
 「僕は続く上に続く、決して擦り減らない愛情が欲しかった・・・」僕はこんなことをサラー以外、誰にも話したことはなかったが、ヘンリの返事は、サラーのものとは違った。彼は言った。「そういうのは、人間の本質の範疇にない。人は満足しなければならない・・・」何れにせよ、それはサラーが言ったことではなかった。そうしてヴィクトウリア・ガードゥンで、ヘンリの横に座りながら、一日が果てて往くのを見守りながら、僕は全「出来事」の終わりを、記憶に刻み付けた。」

彼女は僕に言った―それは、彼女があの密会から玄関広間の中に雨の雫を滴らせながら入って来る前、彼女から僕が聞いた殆ど最後の言葉だった。「貴方はそう恐れる必要はない。愛情は果てない。先ず、私たちは他の者をそれぞれ見ないでしょ。彼女はもう彼女の決意を固めてしまっていた。それなのに、電話がリンとも鳴らない翌日まで、そのことを知らなかった。しかし、誰かの口をこじ開ける沈黙が、突如として探り当てる。彼女は言った、私の愛しい人、私の愛しい人。人々は、神を慈しみ続けるわね。全身全霊、彼の人に間見えもせずに。
 「それは僕たちの愛の有り様とは、ずれている。」
 「私は、時には、何か他の有り様があるなんて鼻っから思い込まない。」彼女は既に何処かの誰かの影響下にあると認めるべきだと僕は考える―僕たちが最初に二人だけになった時、彼女はそんな風に話したことはなかった。僕たちの世界から、神を除くことに、僕たちは大いに喜んで賛成した。僕は彼女の行く手を照らそうとして注意深く懐中電灯を向けた。彼女はもう一度言った。「何もかもみな正しいに違いないわ。もし私たちが十分に愛し合っていれば。」
 「僕はこれ以上は、専心できない。」僕は言った。「貴女は全て手に入れた。」
 「貴方には分からない。」彼女は言った。「貴方には分からない。」
 窓からグラスが、僕たちの足元に砕け落ちた。古いヴィクトウリアのステインドゥ・グラスだけは、ドアの上にしっかりと固定されてそのままだった。グラスは白くなった、そこでそれは、子供たちが、雨で湿った畑の中か、道端に沿って割った氷のように粉状になっていた。彼女は又、僕に言った。「恐れないで。」彼女が、五時間後の今尚、蜂のように南からブンブン唸りながら着々と北上するその見慣れない新兵器を差し向けたのではない、と僕には分かった。
 それは1944六月、後にVisと呼ばれた物の最初の夜だった。僕たちは空襲に不慣れになっていた。1944二月、短期の呪文から逃れ、そこでは、電撃戦が1941の大規模な最終的急襲で消滅して以来、何も起こらなかった。サイレンが鳴り、最初の自動装置が上空に飛来し、2、3機が、僕たちの夜間防御を突き破った、と僕たちは推定した。或る者は、警報解除が、一時間後も尚、発されなかった時、不満感を露わにした。僕はサラーに話しているのを覚えている。「誰もが不注意になっていた。為すべきことは、余りにも矮小。」それにあの瞬間、僕のベッドゥで、暗い中、横になりながら、僕たちは僕たちの初めての自動装置にお目にかかった。それは共有地を横切って低く通過し、僕たちは 火だるまの一機やその異常な低く張りのあるマルハナを、制御を失くしたエンジン音だと勘違いした。二番手、それから三番手とやって来た。僕たちはその時、僕たちの防御に関する僕たちの意識を変えた。「それらは、鳩のように彼らを撃っている。」僕は言った。「続けるからには、彼らは必死に違いない。」それにしても夜が明け始めた後でさえ、これは何か出来立ての物だと僕たちが悟ったところで、何時間も何時間も、彼らは遣り続ける。
 その襲撃が始まった時、僕たちはベッドゥで只横たわっていただけだった。それには全く相違点はない。死は、そうした時期に、決して重大事ではなかった。―初めの内、僕でさえ、そのことをよく祈ったものだ。全滅を免れること、それは起床、着衣、走り去ろうとする緩いスピードゥのテイル‐ライトゥのように、共有地の反対側へと、彼女の懐中電灯が道を横切るのを見守ることを、永遠に妨げようとする。来世は、結局、死の瞬間の無限の延長として存在し得るかどうか、時に不可解に思いもしたが、それは、僕が選び、もし彼女が生きていれば、無条件の信頼、無条件の喜びの瞬間、考えることそれは不可能だから、口論することそれが不可能になったその瞬間が、僕が未だに選んでしまう瞬間だった。僕は彼女の忠告に不満を漏らし、パーキスさんが得た彼女の記述の断片を伴ったその言葉「玉葱」の僕たちの使い道を、苦々しく比べた。が、僕の知らない後継者宛の彼女のメセイジ読むことは、もし僕が、どれ程彼女が自暴自棄になりかねないか知らなければ、少しも傷付けようとしない。いや、Visは、愛の行為が終わるまで、僕たちに影響を及ばさなかった。
僕は、僕が持つ全てを使い果たして、彼女の胃の上の僕の頭共々仰向けになろうとしていた。そして彼女の味覚―水のように薄く捕えどころがない―僕の口の中で。自動装置の一つが共有地の上に墜落し、僕たちに南側をずっと下った所で、グラスが割れたのが聞こえた時
 「僕たちは地下室に行くべきだと思う。」僕は言った。
 「貴方の女主人は、そこにいるのね。私は他の人々に顔を合わせられない。」
 所有の後に責任という弱みが生じ、誰かが誰かを忘れてしまえば、何者に対しても責任のない、単なる恋する人だ。僕は言った。「彼女は離れた所にいるかも知れない。僕は、降りて見て来よう。」
 「出かけないで。どうか出かけないで。」
 「僕はちょっといなくなるだけ。」それが誰彼となく使い続けた文言で、人はあの当時、一瞬は、優に無限の長さに成り得るということを知っていた。僕はドゥレシング‐ガウンを着て、僕の懐中電灯を見つけた。僕はそれを殆ど必要としなかった。空は今灰色で、明りの点いていない部屋の中に、彼女の顔の輪郭が見えた。
 彼女は言った。「速く戻って。」
 僕が階段を駆け下りるに連れ、僕は上空に次の自動装置が飛来したのを耳にする、とその時、エンジンが停止したのか、唐突な待ちかねていたかのような静けさに変わった。僕たちは、尚も、学ぶ機会をものにしなかった。それは、グラスの列から出るため、水平になるために危険の瞬間だと。僕は一度もその爆発音を聞いたことがなく、僕は五秒か或いは五分後、様変わりした世界で、目を覚ました。僕は未だ両足が付いていて、僕は暗さに途方に暮れた。誰かが僕の頬の中に冷たい握り拳(こぶし)を押し付けているように思った。僕の口は血でしょっぱかった。僕の精神状態は、数秒間、僕が長い旅行をして来たかのようで、疲労の感覚を除くと、全てはっきりしていた。僕はサラーに関する記憶が全くなく、、僕は完全に、不安、嫉妬、危険、憎悪から解放されていた。僕の心は、白紙で、その上に誰かが幸福のメセイジを書くには持って来いの山場に丁度差し掛かっていた。僕はそのことを確かに思った。僕の記憶が蘇った時、書くことは続けようと僕は幸せになろうと。
 しかし記憶が戻った時、それはそんな風ではなかった。僕は先ずそれを悟った。僕はあおむけに倒れ、光を締め出しながら、僕の上で平衡を保っていたのは、玄関ドアだった。何か他の瓦礫がそれを受け止め、僕の身体の上で、数インチそれを吊っていた。その異変は、後で、その影によるかのように、肩から膝にかけて傷付いていると、自ら気付いたそれだった。僕の頬に密着していた握り拳は、そのドアの磁器の取手で、それは、僕の歯二本を強打して折った。その後、やっと、僕はサラーやヘンリや恋の終わりの怯えを思い出した。
 ドアの下から抜け出し、埃を払った。僕は地下室に向かって呼び掛けたが、そこには誰もいなかった。爆破された出入口を通り越し、僕は灰色の朝の光を見ることができた。崩壊したホールから外に伸びているそこはかと知れない喪失感に見舞われた。僕は木だと悟った。それは明かりを締め出して来た一本の木が、単に存在に終止符を打ったに過ぎず―そこには倒れた幹さえ跡形もなかった。かなり離れて、管理人が口笛を吹いていた。僕は二階に上がった。最初の飛行は、手すり子を失わせ、石膏に深く足部がめり込んでいた。それにしても家屋は、実際、あの当時の標準では、酷く痛手を受けてはいなかった―真面(まとも)な爆風を受けたのは、僕たちの隣人だった。僕の部屋のドアは開けっ放しで、僕にサラーが見えた通路伝いに襲来していた―彼女はベッドゥから離れ、床に蹲っていた。―恐怖から、と僕は思った。
彼女は馬鹿馬鹿しい程、有りのままの子供のように、幼く見えた。僕は言った。「あれは接近した一撃だった。」
 彼女はさっと振り向き、恐怖で僕を見つめた。僕は、ドゥレシング‐ガウンは破れ、石膏で全身粉だらけだったのに、気付いていなかった。僕の髪は、それで白くなり、僕の唇や頬は血に塗れていた。「オゥ神様。」彼女は言った。「貴方は生きているのね。」
 「貴女は、がっかりしたようだね。」
 彼女が床から起き上がると、彼女の衣服に手が届いた。僕は彼女に告げた。「貴女が去っても、今は、何もいいことはない。」「間もなく警報解除があるに違いない。」
 「私は帰る方が良かったのね、」
 「爆弾は、二つも一か所に落ちない。」僕は言った。しかし機械的に、それはしばしば誤りを立証して来た迷信の一つだったから。
 「貴方は怪我をしているのね。」
 「僕は、歯を二本失くした、それだけ。」
 「こっちに来て。貴方の顔を私が洗ってあげるわ。」彼女は、僕がもう一つのの異議を行う間もなく、―手当てを終えた。僕が嘗て知り合った女は、同じように速く手当てができない、彼女は僕の顔をゆっくりと注意深く洗った。
 「貴女は床の上で何をしていたの?」僕は尋ねた。
 「祈っていたの。」
 「誰のことを?」
 「生きとし生けるもの全てのことを。」
 「階下に降りた方が、もっと気が利いていたよ。」
 彼女の真剣さは、僕を驚かせた。僕は彼女をそのことから離れてからかいたくなった。
 「私はそうしたのよ。」彼女が言った。
 「僕は貴方に聞いていなかったよ。」
 「そこには誰もいなかった。ドアの下から伸びている貴方の腕を見るまで、私には貴方が見えなかった。私は貴方が死んだと思った。」
 「貴女は近付いて、試してみたってよかった。」
 「私はそうした。私はドアを持ち上げられなかった。」
 「あそこには僕を動かすくらいの隙間があった。そのドアは僕を押さえ付けていなかった。僕はどうにかこうにか起きようとした。」
 「私には分からない。私は貴方は死んだものと確信した。」 
 「だったら、そこで随分祈ったんだろうね?」僕は彼女をからかった。
 「奇跡をそっちのけにして。」
 「貴方にはもう望みがなければ」彼女は言った、「貴女は奇跡のために祈れる。そういうことは起きるでしょ?亡くなった人に。そして僕は亡くなった人だった。」
 「警報解除までいなさい。」彼女はその頭を振り、歩いてさっさと部屋から出た。僕は階段を彼女に付いて降り、僕の意志とは逆に困らせ始めた。「今日の午後、貴女にお目にかかれます?」
 「いいえ、だめです。」
 「明日の何時か・・・」
 「ヘンリが帰っているの。」
 「ヘンリ。ヘンリ。ヘンリ―その名は、僕たちの関係が続く限り、鐘を鳴らす。愛が死に絶え、愛着や習慣は日常の努力の末に得るというその無念さと共に、幸福とか楽しみとか、陽気とかのムードゥを悉(ことごと)く削ぎながら。「貴方はそんなに怯えなくていいわ。」彼女は言った。「愛情は尽きない・・・」そうして二年とと余りが、ホールでのあの出会いと「貴方?」以前に、過ぎ去った。

その後何日も、当然、僕に希望はなかった。それは単に偶然の一致に過ぎなかった、と僕は思った、電話は応じられなかったし、一週間後、僕がメイドゥに会って、マイルズ夫妻について尋ねると、彼女は田舎で不在だと分かり、僕は戦時中書簡は失われるもの、と自分に言い聞かせた。毎朝毎朝、僕はポウストゥ‐ボクスのがたがたいう音に耳を澄ましながら、意識的に女主人が僕の郵便物を取りに行くまで、僕は二階にじっとしていようとした。僕は手紙に目を通さず、落胆が後回しになるようにして、望みはできる限り息づかせて置いた。僕は順番にそれぞれの手紙を読むことにして、僕が積み重ねの底に達した時、やっとそこにサラーからのものはない、と僕は確信できた。それから四時の郵便まで、生活は色を失い、そしてその後は、再び夜通し電話で連絡することにした。
 およそ一週間、僕は彼女宛に書かなかった。プライドゥが僕を引き留めていた。僕はそれを完全に捨てた。不安の内に書きつつ、苦々しく、北側へ向けた宛先を書いた封筒に、「緊急」と「どうか転送を」と印を付けつつ、終に或る朝、僕はそれを完全に捨てた。僕は返事を貰わず、そこで同時に、僕は希望を放棄した。やがて彼女が何を言ったか、こと細かに思い出した。「人々は、生涯彼の人にまみえることもなく、神を慈しみ続けるでしょ?」僕は嫌気が差して思った。彼女は、常にその自らの鏡に申し分なく姿を映そうとする。彼女は彼女自身に、それを高潔に思わせるために、信仰を捨て去ることと混同する。彼女は、今、彼女がXと寝たいと認めようとしない。
 終に、万事に付け最悪の結末となった。想像することやイミジを心に描くことは僕の専門だ。一日中五十回、それに差し当たり僕は夜の間起きていた。カートゥンは上がったままで、その演目は始まるのだった。何時も同じ演目、恋するサラー、Xと一緒のサラー、僕たちが揃ってして来たのと同じことをしている、彼女自身の特別な遣り方でキスをするサラー、セクスの中で彼女自身を弓形に曲げ、苦痛に似たその呻き声を発しながら、自暴自棄のサラー。僕は直ぐに眠れるように、夜にピルを飲むことにしている。しかし、昼間迄僕を眠らせてくれるピルが、僕にはどうしても見つからない。自動装置だけが、日中の気晴らしだった。静寂と轟の間の数秒間、僕の心は、サラーから解放された。三週間が過ぎ、イミジは、初めと同様に、明瞭で常習的で、そこでは、彼らはずっと終わる気が全くないように見えた。そうして僕は、自殺について、実に真剣に考え始めた。そこで僕は、殆ど希望の感覚と言っても良いものと一緒に、僕の睡眠薬を取って置いた。僕は結局、このように無期限に続ける必要はない。僕は自分自身に語りかけた。それからその日付が迫り、その芝居はどんどん進行し、僕は自分自身を殺さなかった。臆病からではなかった。僕を止めたのは、一つの記憶だった―V₁が落下した後、部屋に入った時、サラーの顔に浮かび上がった落胆の様相の記憶。彼女は本当に、僕の死を期待していなかったのか、Xとの彼女の新しい出来事は、彼女は初歩的な良心の類を持ち合わせていなかったために、彼女の良心を少しも傷付けていない。もし今僕自身を殺したら、彼女は全く僕のことで気に病むこともありはすまい。そして確かに、共に過ごした僕たちの四年後、そこには、Xと一緒であっても、気苦労の瞬間はあるに違いない。僕は、彼女にそんな満足を与えるつもりはなかった。もし僕が一つの方法でも分かっていたら、僕は、彼女の気苦労を忍耐の限度まで増やそうとしたし、僕の不能は僕の機嫌を損ねた。どれ程、僕は彼女を憎んだか。
 やっとそこに恋の最期があるように、憎しみの最期がある。六か月後、僕は一日一杯サラーのことを思わず、そしてそれで僕は幸せだと悟った。それでも、完全に憎悪の最期は、訪れようがなかった。何故なら、一度、出来れば絵葉書を買い、歓喜に満ちたメシジをその上に書きたくなって、文房具店に僕は入ったから―誰に分かる?―時々刻々の痛み、ところが、その時までに僕は彼女の住所を書いてしまっていた。僕は傷付けたいという渇望を見失い、道路に葉書を落とした。それは不思議だった、憎しみはヘンリとのその邂逅で、再び息を吹き返そうとしていた。僕はパーキスさんの次のリポートゥを開くに連れ、愛情も又それだけでそんな風に息を吹き返せるものかどうか、思いあぐねたのをおぼえている。
 パーキスさんは、彼の仕事を首尾よく終えたー粉は効き、フラトゥは突き止められた―シダ―・ロウドゥ16の最上フラトゥ。占有者、ミス・スマイズと兄弟リチャードゥ。ミス・スマイズは、ヘンリが夫であると同程度に、姉妹として便利だったかどうか、僕は不可解に思った。そして僕の隠れた俗物根性は、その名前によって呼び覚まされた―そのy、末尾のe。僕は シダー・ロウドゥの中で、彼女はスマイズと同じくらい卑しいものになったのか?彼は、この二年で、愛人の長い鎖の端っこになったのか、或いは、僕が彼を見た時(そしてパーキスさんの報告書の中でという程、曖昧にではなく、僕は、彼を見ることを決定付けられていた)、1944六月に、誰かの所為で、彼女は僕を捨てたのに、僕はその男を見ようとしているのか?
 「僕はベルを鳴らして、直接歩いて中に入り、傷付いた夫のように彼を慰めましょうか?」僕はパーキスさんに尋ねた(彼は、約束してA.B.C.で僕に会っていた―それは彼が彼と行動を共にする若者を使っているという彼独特の暗示で、彼をバーに連れて入ることは出来なかった。)
 「僕はそれに反対です、サー。」パーキスさんは、彼のティーにスプーン三杯の砂糖を加えながら言った。彼の若者は、聞こえないテイブルに、オリンジエイドゥとロウルパンと一緒に座った。彼は、入って来た誰も彼も観察した。彼らは、彼らの帽子やコウトゥから、その薄い湿り気の多い雪を振り落とした。まるで彼は後で報告書を作ることにしているかのように、その抜け目のない、茶色のビードゥのような目をして、凝視した―おそらく彼はパーキスの訓練の断片を、持ち合わせていた。「御存知でしょう、サー。」「パーキスさんは言った。「貴方が快く証拠を提供しなければ、法廷内で事を複雑にします。」
 「それが、法廷に届くことはない。」
 「平和的な決着を?」
 「興味の欠如。」僕は言った。「誰も、スマイズという名の男のことで、まともに騒ぎ立てたりする筈がない。僕は何とか彼に会いたいんだ。」
 「最も安全な方法は、サー、計量器検査人ですよ。」
 「僕が、ひさし付きの帽子で仮装する筈がない。」
 「僕は貴方と同感です、サー。それは僕だって避けて通ることです。その時が迫れば、僕は若い者にも、それを避けるようにして貰います。」彼の悲しげな眼差しは、彼の若い者が見せるあらゆる動きを追った。「彼はアイスを欲しがったのです、サー、僕は駄目だと言いました、こんな天気でなければな。」すると彼は、アイスへの思いが彼を凍らせたかのように少し震えた。瞬間、彼が「専門家というものは、その尊厳を身に着けていらっしゃいます、サー。」と彼が言った時、彼の意味するところが,僕には何だか分からなかった。 
 僕は言った。「貴方の若者を、僕に貸してくれますか?」
 「もし貴方が、その場で、不愉快になることはない、と僕に保証して下さるのなら。」彼は不安そうに言った。 
 「僕はマイルズ婦人がそこにいる時は、立ち寄りたくないんです。この場面では、万人に通じる資格を手に入れるだろう。」
 「しかし、何故若い者を?」
 「僕は、彼が具合が悪いようで、と言うつもりです。僕たちは間違った住所に来てしまいました。彼らは暫く彼を休ませざるを得ないでしょう。」
 「そういうことなら、この若い者の能力の範疇です。」パ―キスさんは,自信ありげに言った。「それに誰もランスに抵抗できません。」
 「彼はランスと呼ばれてるんだね?」
 「サー・ランスロトゥに肖(あやか)りまして、サー。Of the Round Table(円卓の)。」
 「驚いたね。確か、あれは、かなり不愉快なエピソウドゥだった。」
 「彼は、聖杯を見つけました。」パーキスさんは言った。
 「それは、ガラハドだよ。ランスロトゥは、グイネヴェレとベドゥの中で見付けられた。」何故僕たちは、無知をからかいたがる悪癖を隠し持つのか?つまり妬(ねた)みなのか?パーキスさんは、悲し気に言った。彼を裏切ったかのように、彼の若い者を横目で見ながら、「僕は 聞いたことがなくて。」

翌日―彼の養父に意地悪をしたくなって―僕たちがシダー・ロウドゥに出かける前に、僕は、ハイ・ストゥリートゥで若者にアイスを御馳走した。ヘンリ・マイルズはカクテイル・パーティを開いている―そうパ―キスさんは、報告して来たので、リスクは避けられた。彼の衣服を真っ直ぐにグイっと引っ張ってから、彼は若者を僕に預けた。若者は、顧客と一緒の彼の初舞台のお目見えという光栄に則(のっと)った彼の一張羅でめかし込んでいた。それなのに僕は、僕の最もみすぼらしいのを身に着けていた。苺アイスが少々、彼のスプーンから零(こぼ)れ、彼のスーツにしみを作った。僕は、最後の一滴が飲み干されるまで、黙って座っていた。間を入れず僕は言った。「もう一杯?」彼は頷(うなず)いた。「又、苺?」
 彼は言った。「ヴァニラを。」かなり経ってから付け加えた。「どうか。」
 彼は二杯目のアイスを随分ゆっくりと、指紋を除去するかのように、念入りにスプーンを舐めながら食べた。
それから僕たちは父と息子のように手に手を取って、共有地を横切り、シダ―・ロウドゥへ向かった。サラーと僕には、どちらにも子供がいない。強い欲望や嫉妬やパーキスの報告書といった、こそこそした職業の中より、結婚することや、子供を持つことや、甘ったるく退屈な平和の内に、共に静かに暮らすことの中、そこにはもっと生(せい)の感覚が在ったのではないだろうか?
 僕はシダ―・ロウドゥの最上階でベルを鳴らした。僕は若者に言った。「覚えて置くんだよ。君は具合が悪い。」
 「もしその人達が、僕にアイスをくれたら・・・」彼は始めた。パ―キスは、予め備えるよう訓練して来た。
 「その人たちは、くれないに決まってる。」
 「僕は、ドアを開けたのは、ミス・スマイズだと思った。―チャラティ・バザーの灰色でくたびれた髪の中年婦人。僕は言った。「ウィルソン氏は、ここに住んでいらっしゃいますか?」
 「いえ、御免なさい。」
 「仮に、彼が下のフラトゥにいても、たまたま貴方はご存じないのでは?」
 「この家に、ウィルソンという名の者はいません。」
 「オゥ親切な方。」僕は言った。「私は、はるばる若者を連れて参りましたが、今しがた彼は具合が悪くなりました・・・」
 僕は若者を見ないようにしたが、通路からミス・スマイズは、彼をじっと見ていた。彼は静かに、効果的に彼の役割を果たした。サヴィジ氏は彼のチームのメムバとして、彼を認めることを誇っただろう。
 「彼を中に来させて、座らせて上げなさい。」ミス・スマイズは言った。
 「それは大変ご親切なことで。」
 サラーは、どれだけ頻繁に、このドアを通って、狭く散らかったホールへと消えたのだろう、と嘆かわしく思った。ここ、Xの家の中に僕はいた。多分、フックの茶色いソフトゥ帽は、彼のものだ。僕の後釜の指―サラーに触れ―今開けたこのドアの取手を毎日回した指。雪で鉛色の午後を通して燃えているガスーストウヴの黄色い炎に、ピンクの傘の付いたラムプに、クレトン更紗の緩めのカヴァの屑綿に。「私は、貴方の可愛らしい少年に、水の一杯でも取って来てもいいのですが?」
 「それは大変ご親切なことで。」僕はさっきそう言ったのを思い出した。
 「それともオリンジ‐スクワシュなんかは。」
 「君は悩まなくていいから。」
 「オリンジ‐スクワシュ」若者は、断然言った。又間を置いて「どうか」、彼女がドアを通って行く時。
とうとう僕たちだけになり、彼を見た。彼は、クレトン更紗の上で、背中を曲げながら実に具合が悪そうに装った。もし彼が僕にウインクをしなかったら、僕は、多分、かどうか不可解に思った・・・ミス・スマイズがオリンジ‐スクワシュを運んで、戻って来た。そこで僕は言った。「ありがとうと言いなさい、アーサ。」
 「彼の名前は、アーサですか?」
 「アーサ・ジェイムス。」僕は言った。
 「それはかなり古典的な名前ですね。」
 「僕たちは古風な家族です。彼の母親は、テニスンが好きでした。」
 「その方が、ですか・・・?」
 「はい、僕が言うと、彼女は憐れみを持って、その子供を見た。
 「彼は、貴方には慰めでしょうね。」
 「それに心配の種。」僕は言った。僕は羞恥心を感じ始めた。彼女はそんなに疑わなかった。それで、僕はここでどんな良いことをしていたのか?僕はXに会うことに、少しも近付けなかった。ベドゥの上の男に、顔を提供することの代償として、少しでも幸せになるつもりか?僕は僕の戦術を修正した。僕は言った。「僕は、自分のことを紹介した方がいいようです。「僕の名前は、ブリジスです。」
 「そうしますと、私の方は、スマイズです。」
 「僕は、前に何処かで貴女に会ったような気がしてなりません。」
 「私は、そう思いません。私は、顔のことは大変よく覚えています。」 
 「多分僕は、貴女を共有地で見掛けたことがあります。」
 「私は私の兄弟と一緒に、時々そこへ行きます。」
 「見込み違いでなければ、ジョン・スマイズですか?」 
 「いえ。」彼女は言った。「リチャドゥ。お子さんの具合は、どうです?」
 「「悪い。」パーキスの養子は言った。
 「私たちは彼の体温を測った方がいい、と貴方は思います?」
 「僕にもう一杯オリンジ‐スクワシュを頂けますか?」
 「それは何んともなきゃ、いいのよ。」ミス・スマイズは、途惑った。「可愛そうなお子さん、。多分、彼は、熱があるのね。」
 「僕たちは、十分貴女の邪魔をして来ました。」
 「私の兄弟は、もし貴方がたに居て頂けなければ、私を許しはしません。彼は、とても子供が好きなんです。」
 「貴女の兄弟は、中にいらっしゃいますか?」
 「私は彼が今来るか来るかと期待しています。」
 「仕事から帰宅を?」
 「そうですねえ、彼の働いている日は、正直申しまして日曜日です。」
 「牧師?」僕は敵意を隠し持って尋ねると、途惑っている答え「正確には違います。」を受取った。懸念の様相が、僕たちの間に、カートゥンのように降りて来て、彼女の個人的な悩みと共に、彼女はその背後に退いた。彼女が立ち上がると同時に、玄関ホール・ドアが開き、そこにXはいた。ホールの暗がりの中、ハンサムな俳優の顔を持つ男という印象を得た―しょっちゅう鏡の中でそれそのものを見ているという顔も又、低俗の趣、すると僕は、悲しく、満足とは無縁で、あの女はもっといい好みをしていたらなあ、と思った。それからラムプの灯かりの中に歩み寄った。彼の左頬を覆った重症の青黒い痣(あざ)は、凡そ非凡の焼き印と見紛(みまが)うばかりだった。―僕は彼に敵意を持って来たものの、彼は、どんな鏡で自分を見たところで、露ほども慢心する筈がない。
 ミス・スマイズは言った。「私の兄弟は、リチャドゥ。ブリジス氏。ブリジスさんのお子さんの具合が良くないの。私がこの人たちに、入るようお願いしたの。」
 若者を見やりながら、彼は握手した。僕は彼の手の渇きと熱に気が行った。彼は言った。「僕は、以前貴方のとこの若者を見掛けました。」
 「共有地で?」
 「おそらく。」
 彼は部屋のわりに、余りにも力強かった。クレトン更紗とは、釣り合いがとれない。彼の妹が、ここに座るのか、それにしても彼らは、他の部屋で…或いは、彼らが愛を育む間、彼女を使いに出すのか? 
 ところで、僕はその男を見ていた。そこには留まりたいものは微塵もなかった。何故なら―今、彼の出現によって放免された様々な疑問の全てを除いたから―何処で彼らは出会ったのか?彼女が初め主導したのか?彼女は彼の中に何を見たのか?如何に長く、如何に頻繁に、あの二人は愛人関係にあったのか?そこには、僕が魂によって身に付けた彼女が書いた言葉があった。「貴方に書く或いは貴方に話す必要が何もなくなった。・・・私は恋し始めているだけ、と知っています。それにもかかわらずもう、私は、貴方を除いた全ての物と人を捨てたい。」そして僕は彼の頬の剝き出しの痣をまじまじと見ながら考えた、そこには何処にも、無傷なところはなかった。一つの盛り上がり、一つの不具で、それらは皆、恋を始めさせる引き金を持っている。
 「貴方の来訪の本当の目的は何ですか?」彼は突然僕の思いの中に押し入った。
 「僕は、ミス・スマイズに話しました―ウィルスンという方を・・・」
 「僕は貴方の顔を覚えていませんが、貴方の息子さんのは覚えています。」まるで彼が若者の手に触れたかったかのように、彼はつっけんどんな欲求不満の素振りを見せた。彼の眼差しは、或る種、型に嵌らない優しさを湛えていた。彼は言った。「貴方は、僕を恐れることなどない。僕はここに人々が訪れることには慣れています。僕は貴方に保証します、僕は只、役に立ちたいだけ。」
 ミス・スマイズは、説明した。「何方でもよく後退(あとじさ)りなさいます。」僕の人生では、それは、何事に関しても、全てだったと思えなかった。
 「僕は丁度ウィルスンという人を捜していました。」
 「そんな男は其処にはいないと僕が知っているのを、貴方はご存知です。」
 「もし貴方が電話帳を貸して下されば、僕は彼の住所を調べられるのですが・・・」
 「もう一度、腰掛けて。」彼は言い、陰気げに若者のことをじっと考え込んだ。
 「僕は、お暇(いとま)しなければなりません。アーサの具合も良くなり、それにウィルスン・・・」彼の曖昧さは、僕を容易く意地悪にした。
 「もし貴方が望むのでしたら、帰っていいんです、当然。しかし若者をここに残して頂けませんか?―30分だけなら?僕は彼に話したい。」彼はパ―キスの助手に見覚えがあり、彼に詰問するつもりだということが僕の身に振りかかった。
僕は言った。「何か貴方が彼に尋ねたいことがあれば、貴方は僕に尋ねていいんですよ。」どんな時も、彼は僕の方へ、彼の痣のない頬を向けた。僕の怒りは、込み上げた。どんな時も、僕はそれが消えた醜い黄色い頬を見た。僕は信じられなかった。―紅茶を入れるミス・スマイズと一緒の、花柄のクレトン更紗の間のここで、性欲が存在するということが信じられない以上に。しかし落胆は、何時も答えを生み出し、落胆は今僕に尋ねた。それは愛で欲望ではない、と貴方はそんなにも評価したいか?
 「貴方と僕は、年を取り過ぎた。」彼は言った。「それでも、校長や聖職者―彼らは、丁度、自らの嘘で彼らを堕落させ始めたばかりだった。」
「貴方が意味する地獄とは何か、僕には分からない。」僕は言って、急いで付け加えた。「すみません。」スマイズに向かって。
 「そこに貴方はいるし、貴方は見ている。」彼は言った。「地獄、そしてもし僕が貴方を怒ったら,同じように、貴方はマイ・ガドゥと言おうともしない。」
 僕は彼に衝撃を与えたような気がした。彼は非国教徒牧師かも知れなかった。彼は日曜日の度に働く、とミス・スマイズは言った。それにしても、サラーの恋人であるような、そんな一人の男を如何にこっ酷く傷付けよう。突如としてそれは、彼女の重要性を削いだ。彼女の愛の出来事は、悪ふざけになった、彼女は彼女自身、僕の次のディナ・パーティで、コミクの逸話として使われるかも知れない。一瞬、僕は彼女から解放された。若者が言った。「僕は吐き気がする。僕はもう一杯オリンジエイドゥを飲んでもいい?」
 ミス・スマイズは言った。「いい子だから、飲まない方がいいと思うわ。」
 「本当に、僕は彼を連れて行かなければなりません。その方がきっと貴方がたのためになるでしょう。」
僕は痣が十分に視界に留まるようにした。僕は言った。「僕は、大変申し訳なく思います。もし僕が何かに付け、貴方がたに嫌な思いをさせたのなら。それは全く不測の事態で。僕は、たまたま貴方がたの信仰を共有しません。」
 彼は驚いて僕を見た。「ですが、僕は何も持ちません。僕は何ものも信じません。」
 「僕は、貴方が不服なのではと思い・・・」
 「僕は、居残って計略に嵌るのは嫌です。僕を放免して下さい。僕は余りにも懸け離れてしまっている、ブリジスさん、僕は分かります、しかし僕は、時々心配になります。というのは、人々は典型的な言葉によってでさえ思い出すのではないかと―例えばグドゥ‐バイ。例えば僕の孫は、神のような言葉が、スワヒリの言葉よりもっと僕たちには、重要であると、知ろうとさえしなということを信じられたら。」
 「貴方には孫がいるんですか?」
 彼は憂鬱そうに言った。「僕には子供はいません。僕は、子供のいる貴方が羨ましい。それは。重い義務と重い責任がある。」
 「貴方は彼に何を聞きたかったんですか?」
 「僕は彼にここでくつろいで欲しかった。その後戻ってもかまわないから。そこにある非常に多くのことを、子供に話したい人がいます。世界は、どのように存在に至ったのか。僕は、彼に死について話したかった。僕は、学校で彼らが入れ込む嘘の全てから、彼を救い出したかった。」
 「三十分でしてしまうには、かなり多い。」
 「誰でも一粒の種を撒けます。」
 僕は、悪意を持って言った。「それは福音書の引用ですね。」
 「オウ、僕も又堕落してしまった。貴方はそんなことを僕にどうしても言わなければならないことではない。」
 「人々は、実際、貴方の所に来るんですか―閑静に便乗して?」
 「貴方は驚くでしょ。」ミス・スマイズは言った。 「人々は希望のメシジを待ち焦がれています。」
 「希望?」スマイズは言った。「喩え、この世の誰もが、僕たちがここにあるもの以外、他に何一つないと気付いても、そこにあるに違いないどんな希望も、貴方には見えないのですか?将来の埋め合わせ、報奨、処罰も何にもない。」
片方の頬が隠れると、彼の顔は狂った気品が加わった。
「それから僕たちは天国のようなこの世を作り始めます。」
 「そこには最初に説明されるべき恐ろしい運命があります。」と僕は言った。
 「僕は貴方に僕の蔵書を見せてもいいのですが?」
 「それは、南ランダンで最高の合理主義者の蔵書です。」ミス・スマイズは説明した。
 「僕は改宗する必要はありません、スマイズさん。僕はそれがあるからといって、何一つ信じません。今も今後も例外なく。」
 「それは、今も今後もずっと、僕たちは対処しなければならない。」
 「奇妙なことは、それらが希望の時になるということです。」
 「誇りは、希望のふりをすることができる。又、自己本位も。」
 「それには、何かに付け、それを用いて何か果たすべきことがある、と僕は思わない。それは突然降りかかる、分けもなく、或る匂いが・・・」
 「アー。」スマイズは言った。「花の構造、ディザインからの論拠、時計屋を必要とする時計に関するあらゆるその仕事。それは、古風だ。シュヴェ二ゲンは、二十五年前全てを答えた。僕に貴方を案内させてください・・・」
 「今日は駄目。僕は、本当に、あの子を家に連れて帰らなければいけない。」
 再び彼は拒絶された愛人のように、欲求不満の柔軟さの素振りを見せた。如何に数知れぬ臨終の‐床から彼は締め出されて来たか、僕は突然ぞっとした。僕も又、彼に何らかの希望のメシジを捧げたい、と思うに至った、が、その時だ、頬の向きが変わり、僕は単に尊大な演技者の表情を見たに過ぎない。彼が不憫で、不適格で、時代遅れに成り果てた時、僕は好ましく思った。アイア、ラスル―彼らは今日流行(はやり)ではあるが、僕は彼の書庫そこに多くの論理的実証主義者がいたかどうかどうか疑った。彼は単に十字軍戦士に肖っただけで毒何時ものではない。
 玄関先で、―危うい専門用語グドゥ‐バイを遣わなかったということに気付いた―僕は迷わず彼の美しい頬を一突きした。「貴方は僕の友人、マイルズ婦人に会うべきだ。彼女は興味深い・・・」そこで僕は止めた。その一突きは、まともにあたった。痣がより濃い赤に染まったようで、僕は、彼が不意に顔を背けると同時に、ミス・スマイズが「オウ、私の愛しい人が。」と言ったのを聞いた。そこには、僕が彼に痛みを与えたことに疑いの余地はなく、とはいうものの痛みは彼同様僕にもあった。僕の一突きが、外れていたらとどれだけ思ったことか。
 外の排水路で、パ―キスの若者は気分が悪くなった。僕は彼を吐かせた。訳も分からずそこに立ったまま、彼も又、彼女に夢中だったのか?これに対する結末は、そこにはないのか?僕は今、Yを発見することに苛立ったのか?

パ―キスは言った。「それはもう実に簡単でした、サー。そこにはこんな混乱がありました。マイルズ婦人は、僕が省出身の彼の友人の一人だと思い、マイルズ氏は、僕が彼女の友人の一人だと思いました。」
 「それは素晴らしいカクテイル・パーティでしたか?」あの最初の出会いと、知らない人と一緒のサラーの観察を再び思い出しながら、僕は尋ねた。
 「高い成果と、僕は言うべきでしょう、サー、それにしてもマイルズ婦人は、少し場違いなように思われました。酷くしつこい咳を、彼女はしていました。」僕は、満足して彼の話を聞いた。多分、このパーティでは、小部屋のキスも又触れることもなかった。彼は茶色い紙包みを僕の机にのせ、自信を持って言った。「僕はメイドゥ経由で、彼女の部屋への道を知りました。もし誰かが僕に気付いたら、僕はトイリトゥを探していたことにしようとしたのですが、誰一人気付かなかった。そこにそれが、彼女の机の上に出してありました。彼女はその日、その上で作業をしなければならなかったのです。勿論、彼女は非常に慎重であるかも知れません。しかし僕の日記の経験では、そうした物は、決まって物事をばらすのです。人々はそのささやかな符号を考案しますが、貴方は直ぐにそれらを見破ります、サー。又それは物事を省きますが、貴方は何を省いたかを直ぐに学びます。」彼が話している間に、僕は本を出して、それを広げた。「そこに人間の本質が潜んでいます、サー、貴方が日記を取って置くのは、貴方が、物事を思い出したいから。そうでなければ、何故それを取って置きます?」
 「貴方はこれを見たの?」僕は尋ねた。
 「僕はその本質を確かめました、サー、それで、一つの記載から、彼女は慎重なタイプではない、と判断しました。」
 「それは今年のものではないね。」僕は言った。「それは、二年も前のものです。」一瞬、彼は落胆させられた。
 「それは僕の目的に適いますよ。」僕は言った。
 「それは都合良く妙技をするに決まっています、サ―,もし何一つ償われなかったら。」
 その日誌は、大判の会計簿に記載され、くだけた肉太の筆跡が、赤と青の線で横線を引いてあった。そこに日記の記載はなかったので、僕はパ―キスを安心させられた―「それは、何年もに亘っています。」
 「何かが読むために、彼女にそれを外に持ち出させなければならなかった、と僕は推測します。」それは可能か、僕はあれこれ思い巡らした。僕に関する、僕の出来事に関する或る記憶が、この当日、彼女の心を横切り、その何事かが、彼女の平和を乱したのかも知れない。僕はパ―キスに言った。「僕はこれを手に出来て嬉しい、実に嬉しい。貴方には分かるでしょう、僕たちは、今やっと、僕たちの勘定を締められる、と僕は心底思う。」
 「私は、貴方が満足されたらと願っています、サー。」
 「実に満足。」
 「それでそのことを、貴方はサヴィジ氏にその通りに書くでしょう、サー。彼は依頼者から酷い報告書を受取りますが、良いものは、なかなか書いて頂けません。依頼者は、満足すればするほど、彼は忘れ、私たちを直ぐにでも心の外に追い遣ろうとします。貴方は、彼らを先ず咎めようがない。」
 「僕は、書くつもりです。」
 「ええ、ありがとうございます、サー、若い者に優しくして頂きました。彼は、少しばかり取り乱しましたが、私にはそれがどうしてか分かります―ランスのような若造に対して、アイスに限度を設けるのは難しい。彼は、苦労して貴方からそういうものを頂いている、と一言、言いました。」僕は無性に読みたかったが、パ―キスは手間取った。おそらく彼は、彼を覚えていようとする僕を、実際は信用していなかったし、僕の記憶に、そのしょげた眼差しや、あのけちな口髭を印象付けたかった。「私は、私たちの付き合いを満喫致しました、サー―もし、嘆かわしい次第にも拘らず、楽しみにしていたことを話させて頂けるなら。私たちは必ずしも、彼らが称号を持つ場合でさえ、真の紳士の為に働くとは限りません。
 僕は、パ―キスの結末を見たいということは、かなり自覚していたし、彼の言葉は、僕の罪悪感を目覚めさせた。僕はその男を急いで立ち去らせることが出来なかった。彼は言った。「私は考えていました、サー、私は貴方にささやかな記念品を差し上げるつもりです―しかし、それは正(まさ)しく、貴方が受け取りたくないものです。」欲しがられるとしたら、どんなに不思議だろう。それは自動的に確かな忠誠を喚起する。そこで僕はパ―キスに嘘を吐いた。「僕は何時も僕たちの会話を満喫しました。」
 「何れにしても、サー、大変不運な中での始まりでした。あの馬鹿げた間違いもあり。」
 「貴方は、もう貴方の若者に話しましたか?」
 「はい、サー、が只、何日かして、紙屑籠での成功の後に。それが、棘を取り去りました。」
 僕は帳面を見下ろして、読んだ。「とても幸せ。Mが明日戻る。」僕は、一瞬。Mが誰か思い巡らした。誰かが愛された、と思うと、どんなにか妙でもあり、不慣れでもあった。誰かの存在は、一度は、他の誰かの一日に、幸福と単調の間の相違を作ろうとする力を持ってはいた。
 「それにしても、貴方が本当に記念品を憤慨しないのであれば、サー・・・」
 「勿論僕はそうしない、パ―キス。」
 「私は、ここに或る物を持っています、サー、それには、関心と有用性があるのかも知れません。」薄用紙に包まれた物を、彼はポキトゥから取り出し、それを僕の方へと、気遣いながら机を横切って滑らせた。僕は、それを開いた。それは、ホテル・メトゥロポウル、ブライトゥリングスィー、と記された安価な灰‐皿だった。「そこには実際、それに纏(まつ)わる或る由来があります、サー。貴方はボルトン事件を覚えていますね。」
 「僕は覚えていると迄は、言えない。」
 「それは大騒ぎになりました、サー、その当時。レイディ・ボルトン、彼女のメイドゥとその愛人、サー。皆、同時に見つかりました。その灰皿は、ベドゥの傍らに位置していました。レイディの脇腹の上に。」
 「貴方は、実に小さな博物館を集めなければならなかった。」
 「私はそれをサヴィジ氏に上げようとしました―彼は殊更に、関心を持ちました―しかし私は今、晴れ晴れとしています、サー、私はそうしなかった。私は、貴方が署名を見つけるだろうと思います。貴方の友人が、彼らの煙草を消す時、噂話を思い出すでしょうが、そこに貴方の解答の一塊があります―ボルトン・ケイス。彼らは皆それについてもっと聞きたいでしょう。
 「それは、人騒がせな感じだ。」
 「それは、全て人間の本質で、サー、人間の愛情ですよね。それに広くも、高級でもないその部屋。パ―キス婦人は、あの頃存命中でしたが、私は、彼女に詳細を話すのは、気乗りしなかったんです。彼女は、事によったら邪魔になりました。」
 「僕は必ず記念品を大事にしますよ。」
 「もしも灰‐皿が話せたら、サー。」
 「本当に、そうだね。」
 何れにせよ感銘深い思いを持ったパーキスでさえ、すっかり言葉尽きた。その手の最期の圧迫、少々べとべとした(おそらくそれは、ランスの手に触れて来たから)、そして彼は行ってしまった。彼は、誰かが又会いたくなる、そういう人の一人ではなかった。やっと僕は、サラーの日記を開いた。僕は、全てが終わった1944六月のその日を探そう、と先ず思った。そして僕はその理由を見付けた後で、そこには、他の日付がたくさんあるから、僕は僕の日記とそれらを見比べながら、正確にそこから学べたらいい、どのように、彼女の愛は尽きたのか。僕はこれを、或る事件の記録として取り扱いたかった―パ―キスの事件の一つ―取り扱われるべきだったが、僕はそれ程の冷静さを持ち合わせていなかった。何故なら、僕が日記を開いた時、僕が気付いたことは、僕が期待していたものではなかったから。嫌悪と疑いと嫉妬は、僕を遥か彼方へ駆り立てて来た。僕は、見知らぬ人からの愛の告白のように、彼女の言葉を読んだ。僕は、彼女に対して、多くの根拠を求めて来た―随分頻繁に、彼女を嘘の中に追い詰めたのではなかったか?―そして今ここに、僕が彼女の声を信じられなかった時、信じることが出来た記述の中に、その完全な答えがあった。それは、最後の二頁にあったから、僕は、先ず読んだ、そして確かめるために、終わりにもう一度読んだ。愛すべき親や神以外、誰かに対して貴方の中に、何もないと分かっている時、貴方が愛されるということを発見することも、信じることも、それは、不思議なことです。

BOOK THREE

・・・何もかも通り過ぎる、そうして私たちは終わってしまった。貴方(神)以外は。私たちのどちらかの所為ね。私は、ひと時、ささやかな恋心を、費やしながら、それを、こちらへ又あちらへと外へ向かって、この男そしてあの上へと手を伸ばしながら、命ある時を夢中で過ごしたのかも知れない。けれども初めての時でさえ、パディントンに程近いホテルで、私たちは、私たちに備わる全てを出し尽くした。貴方(神)が裕福な人に教えるように、私たちに浪費することを教えようとして、貴方(神)は、そこにいた。その結果、或る日、私たちには、この貴方(神)という愛以外、何も残っていなくてもよかった。何れにせよ、私には貴方(神)は立派過ぎた。私が苦痛の為に、貴方(神)を頼みにすると、貴方(神)は、私に安らぎを下さった。それを彼にも上げて下さい。彼に私の安らぎを上げて下さい―彼はそれをもっと必要としています。

1946・2月12日
 二日前、私はあれ程、平穏と静けさと慈しみの感覚
を持った。暮らしは、又幸せの方向に向かっている。しかし昨夜、最上階でモーリスに会うために、階段を上っている夢を見た。私が階段の最上階に着いた時、私たちは愛を育むことにしていたので、私はまだ幸せだった。私が来たと彼に呼び掛けたが、答えたそれは、モーリスの声ではなかった。道に迷った船に警告する霧笛のように、大声で伝え、私を怯えさせたのは、見知らぬ人のそれだった。私は考えた、彼は、彼のフラトゥを貸していなくなってしまった。彼が何処にいるのか、私は知らない。そして又階段を降りようとすると、私の腰より水位が上がり、ホールは、霧でどんよりしていた。その時、私は目覚めた。。私は、もう内心穏やかではなかった。私は只、過ぎた日に何時もそうであったように、彼が欲しい。私は、彼と一緒にサンドゥウイチを食べていたい。私は、バーで彼と一緒に飲んでいたい。私は疲れ、私はもう何の苦しみも欲しくない。私は、モーリスが欲しい。私は、普通の堕落した人間の愛情が欲しい。親愛なる神よ、私は貴方の苦しみを貰いたいのですが、今は、それが欲しくはありません。暫くそれを持ち去って、他の時にそれを与えて下さい。

それから、僕は初めから帳面に取り掛かった。彼女は、毎日、日記に記入していなかったし、僕は、全ての記載を読もうとは思わなかった。彼女がヘンリと一緒に行く芝居、レスタラントゥ、パーティ―僕が何も知らないその暮らしの全ては、未だに傷付ける力を持っていた。

1944・6月12

 時に、私は彼を愛しているし、永遠に彼を愛す、と彼を納得させようとすると、本当に疲れ果ててしまう。彼は、法廷弁護士のように私の言葉を攻撃し、それを曲解する。もし私たちの恋が終われば、彼の周りを囲むに違いないその不毛を、彼は恐れている、と私には分かる。それなのに、私が丁度同じように感じていても、彼は理解しようとしない。彼が声を出して何を言っても、私は黙って私自身に言い聞かせ、そのことをここに書く。一人では、不毛の地に何も築くことは出来ないのか?時に、私たちが何度も愛を育んだ一日の後、私は、性の終わりに至る、それが可能かどうか危ぶむ。彼も又、訝しく思い、不毛が生じるその地点を恐れている。もしも私たちが互いを見失えば、その不毛の地に居て、何をするのか?一人で、その後どうして生き続けるのか?
 彼は、過去や現在や未来を嫉妬する。彼の愛は、中世の純潔ベルトゥに似ている。彼は、私と一緒にそこにいて、私に包まれている時だけ、彼は何とか安心する。もし私が、彼を安心させられさえしたら、それで私たちは、穏やかで、幸福で、無作法でも不摂生でもなく愛せる。そうして不毛の地は、視野から後退する。命ある内は、多分。
 もし人が神を信じられるとしたら、彼は不毛の地を満たそうとするか?
 私は、何時も良く思われ、褒められたがった。例えば一人の男が、私の方を振り向けば、例えば一人の友だちを失えば、私は酷い危険を感じる。私は夫を手放せもしない。私は全てが、全ての時が、何処も彼処(かしこ)も欲しい。私は、不毛が怖い。神は貴方を愛し、彼らは教会で、神が全てです、と言う。賞賛を必要としないということを信じる人々、彼女たちは男と一緒に眠ることを必要とせず、彼女たちは安心感を得る。しかし、私は信用をでっち上げられない。丸一日、モーリスは、私に思いやりを見せた。彼は、私にしょっちゅう他の女をこんなにも愛したことはない、と私に話す。彼は、そう頻繁に口にすることで、彼は、私にそれを信じ込ませようとする。何れにせよ、私が単純にそう信じるのは、丁度同じように、私は彼を愛すから。もし私が彼を愛すのを止めたら、私は、彼の愛情を信じるのを止めようとする。もし私が神を愛したら、私への彼の人の愛を信じようとする。それを必要としても、それでは十分ではない。私たちは、先ず愛さなければならないのに、どうしていいか分からない。それでも、私はそれを必要とする、どれ程、それなしでいられない。終日、彼は優しかった。只一度だけ、一人の男の名前が気になり、私は、彼の眼差しがあらぬ方向に動いたのを見た。私が他の男と未だに眠る、と彼は思い、そしてもしそうしたら、それは、それ程重大なことだろうか?仮に、時々彼が女を買えば、私は文句を言うの?もし私たちがそこで互いを所有出来なくても、不毛の地にあって、どんなつましい付き合いからも、彼を奪い取りはしない。時に、もし時が来たら、彼は一杯の水さえ拒もうとするに決まっている、と私は思う。彼は、私を、何一つ誰一人傍に寄せず、一人になってしまう、こんな完全な孤立へと追い遣ろうとする。―世捨て人のような、ところが、彼らは一人ではなかったし、又そう彼らは言う。私はそこまで混乱させられる。私たちは、互いに対して何をしようって言うのでしょう?彼が私にしていることを、私は彼に、そっくりそのまま、承知の上でしているから。時には、私たちはとても幸せで、生きている内に、もっと不幸せを思い知るなんてことは、私たちにはなかったわ。それは、まるで私たちが同じ像に関わって、共に働いているかのようだった。互いの居心地の悪さの外側を切り取るばかりで。それにしても私は、そのデザインを知りもしない。

1944・6月17
 昨日、私は彼と一緒に家に戻り、私たちは何時ものことをした。私は、その荷を下ろす為に神経を用いず、それどころか好んで向かう。何故なら、今書いている間に、時は、既に明日になり、昨日の終わりになることを、私は恐れている。私が書くことを続ける限り、昨日は、今日であり、私たちは未だ一緒にいる。 
 昨日、私が彼を待っている間に、共有地のとある場所に演説者が現れた。I.L.P.(独立労働党)と共産党、それに冗談ばかり言う男、又、そこには、クライストゥ教を攻撃している一人の男がいた。南ランダン合理主義者協会、或いはそれに似た何らかの名称。彼は、片頬を覆った痣さえなかったら、美貌だったろうに。彼の聴衆は、ほんの少人数で、ヤジを飛ばす人はいなかった。彼は既に死んだ何ものかを攻撃していたが、何故、彼が面倒を引き受けるのか、私は不可解だった。私は、数分立ち止まり、耳を傾けた。彼は神の論争に対して主張していた。私は実際は分からなかったが、そこには―私が一人きりではないと思う、この臆病な窮乏を除く何かがあった。
 私は、心変わりして、彼は家に戻るよと言う電報を送ったかも知れない、と唐突な不安を抱いた。私が何を最も恐れるのか私には分からない―私の落胆か、或いはモーリスの落胆か。それは、私たち二人同時に、同じ様に動かす。私たちは、口論で荒捜しをする。私は私自身に腹が立つし、彼は私に腹が立つ。私は家に戻ってみたが、そこに電報はなく、その上、モーリスに会うのに、十分遅れ、彼の怒りに触れそうで、イライラが募って行った、ところがその時、予期せぬことに、彼は私に優しかった。
 私たちは、以前、こんなにも長い一日を過ごしたことはなく、一緒にいる為に、そこには丸一晩があった。私たちは、レティスにロウルパンにバタ‐割当量を買った―私たちは、たくさん食べられなかった、それは、もう暑かった。それは今も暑い。誰も彼も口々に言う、何て心惹かれる夏かしら、それに私は、ヘンリと落ち合うために田舎へ向かう汽車の中。やがて全て通り過ぎる、未来永劫。私は怯える。これが不毛だ。そこには、辺り一面、誰もいない、何もない。もし私がランダンに居たら、直ぐに潰されるかも知れない。何れにせよ、もし私がランダンに居たら、電話に向かい、私が愛情で分かる唯一の番号のベルを鳴らそうとする。私は自分のをしょっちゅう忘れる。フロイトは言うだろう、それも、ヘンリの番号だから、それを忘れようとするのだ。しかし私はヘンリを愛す。私は、ヘンリに幸せになって欲しい。私は、只今日、彼を避けるだけ、彼は幸せで、私は背を向け、モーリスは背を向ける、つまり彼は物事を知ろうとしない。彼は、私が疲れているようだねとか、それは祟りだと思うよとか言う―彼はもはや、あの頃の伴侶を維持しようとして悩もうともしない。
 今夕はサイレンが鳴った―私は、勿論昨夕のことを言っているが、それは何と関係があるのか?不毛の中、そこにはどんな機会もない。不毛の外に、私が望めば出て行ける。私は明日、帰途の列車を捕まえ、彼に電話でベルを鳴らせる。ヘンリは、おそらく未だ田舎にいるだろうから、私たちは一緒に夜を過ごせる。誓いが全てではない。あの大切な―誓い、私が今まで全く知らなかった誰かへの、私が心底信じてはいない誰かへの。私が誓いを破ったのを、私と彼以外、誰も知らない。―それに彼はいないでしょ?彼はいられない。貴方は、慈悲深い神も、この絶望も持てない。
 もし私が帰ったら、私たちは何処にいるのでしょう?サイレンが鳴る前に、その前の年、私たちが、昨日いた場所。終わりを恐れる互いに対して苛立つといい、そこに何も残っていなかった時、命と共に何をすべきか思い巡らしながら。私はもうこれ以上あれこれ考えなくていい。―そこには恐れるものは何もない。これが終わり。それでも親愛なる神よ、愛に向かうこの欲求を抱え、私はどうしましょう?
 私は、何故「親愛なる神」と書くのか?彼とは親しくない―私にとってではなく、彼はそうではない。もし彼が実在するなら、その時には、彼は、私の心の中にこの誓いという考えを入れ込み、だから私は、その所為で彼を遠ざける。数分毎に、灰色の石造りの教会や酒場がその輪郭を崩して後方に駆け抜ける。不毛の地は、教会と酒場が溢れている。それに複合的な店、それに自転車に乗った男達、それに草と牛、そして工場の煙突。貴方は、タンクの水を通して魚のように砂じゅうに、それらを見る。そしてヘンリも、タンクの中で待つ、私のキスの為に彼の鼻を持ち上げながら。
 私たちは、あのサイレンに注意を払いもしなかった。それに関心がなかった。私たちは、そんな風に死ぬことを、恐れなかった。しかしその時は、急襲が次から次へと続いた。それは、普通の急襲ではなかった。新聞は、未だに発言を許されていないのに、誰も彼も知っている。これは、私たちが警告されていなかった新たな事態だった。モーリスは、もしも地階のそこに誰かがいたら、と階下へ見に行った―彼は私を気遣い、私は彼を気遣った。私には、何かが起ころうとしているのが分かった。
 彼は、通りのそこで爆発があった時、二分も経ってはいなかった。彼の部屋は、裏にあり、ドアが巻き込まれて開く以外、何も起こらなかったが、幾らか石膏が落ち、私は、爆弾が落ちた時、彼は建物の前にいた事を知った。私は、階段を下った。そこいら中、がらくたと壊れた手すり子で散らかり、玄関ホールは、凄まじい散乱の最中にあった。初め、モーリスは目に入らなかったが、その後私は、彼の腕がドアの下から外に出ているのを見た。私は彼の腕に触れた。私は、それは死んだ手だったと誓ってもいい。二人が互いに愛し合った時、彼らは、キスに於ける愛情の欠如を偽装出来ず、彼の手に触れて、そこに残されたその僅かな息遣いがあるかどうか、見極めようとしなかったのか?もしも私が彼の手を取り、それを私の方に引けば、それは、ドアの下から、全て自ずと隔たろうとすると分かっていた。今やっと私は、これが、ヒスティアリアだったと分かる。私は、騙された。彼は、死んでいなかった。ヒスティアリア発症時に、人が取り決めることに、人は責任があるのか?又、どんな取り決めを、人は打ちのめすのか?私は、今、ヒスティアリア気味で、全てをここに洗いざらい書いている。しかしそこには、僕は不幸だ、と誰にでも何処ででも、言ってのけられる一人の人物がいるわけではなく、彼らは私に何故と質問し、その質問が決まって始まり、そして私は必ず行き詰まる。私は行き詰まっている場合じゃない、ヘンリを守らなければならない。オウ、地獄へ、ヘンリと一緒に地獄へ。私は、私という者の真実を受け入れようとする誰かを求め、保護は要らない。もし私が、意地悪で、ペテン師なら、意地悪でペテン師を愛する人は、そこには一人もいない?
 私は、床に膝まづいた。私がそんなことをするなんて、分別を失くしていた。私は、今まで、子供のようにそんなことをしようとしたことさえなかった―私の両親は、私以上に祈りを盲信しなかった。私にはまるで口にすべき思いが、胸になかった。モーリスは死んだ。死滅した。魂のようなそんなものは、そこにはなかった。私が彼に上げた半分の幸福さえ、血のように彼の外に流れ出た。彼は二度と幸せになる機会を得ようとはしない。誰かと一緒に、と私は考えた。誰か他に彼を愛し、彼を私が出来る以上に幸せに出来たら。それなのに、今、彼は、その機会を持とうともしない。私は、膝まづき、ベドゥに頭を乗せ、私が帰依出来たらと願った。親愛なる神よ、と私は言った―何故親愛なる、何故親愛なるか?―私に信仰させる。私は信仰する筈がない。私を作り替えて下さい。私は言った。私は意地悪でペテン師で、私は自らを退けます。私は私自身のことは何も成し得ません。私に信仰させて下さい。私はきつく私の目を閉じ、私の爪を私の手の掌の中に、痛み以外、何も感じられなくなるまで、押し付けた。そして私は言った。。私は信じます。彼を生き返らせて下さい。その時、私は信じます。彼に機会を上げて下さい。彼に彼ならではの幸福を感じさせて下さい。 これをして下されば、私は信じます。が、それだけでは十分ではなかった。信じれば傷付かない。だから私は言った。私は彼を愛していますから、もし貴方が彼を生き返らせて下されば、私は何か致します。私はとてもゆっくりと言った。私は、永遠に彼を諦めます。只、見込みがあれば、彼を生き返らせて下さい。そして私は押し当て、押し当て、やっと皮膚を突き破れた。そして私は言った。人々は、互いを見もしないで愛せるでしょ。彼らは、全生涯を通じて、貴方を見もせずに、貴方を愛します。するとその時、彼が、ドアから入って来た。その上、彼は生きていた。そして私は、今、彼なしで始まることの苦しみを思いながらも、私は、彼が、再びドアの下で無事に死んでくれたらと思った。

1944.7月9

 ヘンリと一緒に8.30に間に合った。空席の目立つ一等客室。ヘンリは、イギリス委員会の議事録を声を出して読んだ。パディントンでタクシを捕まえ、ヘンリを省で降ろした。今夜家にいるよう、彼に約束させた。タクシ乗務員は、間違って、私を14番を過ぎた南側に運んだ。ドアは修繕し、正面の窓が板張りしてあった。死を連想するのは怖い。誰でも、とにかく、もう一度生きているという実感が欲しい。私が北側に着くと、そこには、「何も転送しないで。」と、彼らに話した為に、転送されなかった古い手紙があった。古書のカタログ、古い請求書、「緊急、転送請う」と記された手紙があった。私は、それを開けたくなり、だからこそ、仮にも、未だ私は生きているのに、私はそれをカタログと一緒に引き千切った。

1944.7月10

もしたまたま、共有地で私がモーリスの所へ駆け込んでも、私は私の約束を破ることにはならないと思った。そこで私は、朝食後と、昼食後に又、そしてもう一度夕方にうろうろ歩き回ったが、彼を見ることはなかった。私は、六時以降、ヘンリが夕食に客を招いたから、外にいられなかった。演説家が、六月にいたように、又そこにいた。そして痣のある男は、今尚、クライストゥ教を攻撃していたが、誰も気にしていなかった。喩え単に、誰かの為に約束を守ろうとしなくて良い、と彼が私を納得させられても、奇跡は起こらないということを、貴方は信じない。そして私は行って、しばらくの間、彼に耳を傾けたが、ずうっと折に触れ、モーリスが、目に入るかも知れない、と辺りを見回していた。彼は、福音書の書かれた年代に関して話し、如何に早いものであろうと、クライストゥが生まれて百年以内に書かれてはいない。私はそうしたものが、それ程早いと認めたことはなかった。それにしても、私は、伝説が始まった時、それは、実に重要だということを見ようがなかった。次に彼は私達に、福音書の中で、ガドゥであることを主張したことはない、と話したが、一体、そこにクライストゥのような、そんな男がいたのか、ともかく福音書は、モーリスがやって来るのを待ち、見ることもないこの閉塞感に比べたら、何が重要なのか?銀髪の婦人は、彼の名、リチャードゥ・スマイズとシェダー・ロウドゥの彼の住所
が印刷された小さなカードゥを配った。そこには、訪問し、個人的に彼に話す者への招待書きがあった。大半の人がカードゥを受取ろうとせず、婦人が会費を請求したかのように、立ち去り、草の上にそれを捨てる者もいた(私は、幾つか拾う彼女を見た、節約のためだと私は思った)。それは、とても悲しそうだった―悍ましい痣、誰も興味を示さないことについて語ること、そして捨てられたカードゥは、折り返された親睦の申し込みのようだった。私は、私のポキトゥにカードゥを押し込み、そうする私を彼が見るのを望んだ。サー・ウイリアム・マロックが、夕食に来た。彼は、ロイドゥ・ジョージの国民保険のアドゥヴァイザの一人で、極めて老練で有力だった。ヘンリは、勿論年金ともはや関わりはなかったが、彼は、その種に関心を持ち続け、当時を思い出したがった。モーリスと私が初めて夕食を共にし、全てが始まった時、彼が働いていたのが、寡婦年金ではなかったか?ヘンリは、寡婦年金が、それが十年前と同じ重さに達する、もう一シリング上げられるかどうかについて統計だらけのマロックとの長い議論を始めた。彼らは、生活費について争い、それは、非常に学究的論争だった。彼らは揃って、国は、ともかく、それを値上げする余裕がない、と言った。国家安全省のヘンリのチーフに話し掛けようとしたが、Vis以外のことを話すにしても、何も思い付く筈がなかった。すると私は突然、誰彼となく階下に降りたことや埋もれたモーリスを見付けたことについて、無性に話したくなった。勿論、私は全裸だった、と私は口にしたかった。何故なら私は、服を着る余裕がなかった。サー・ウイリアム・マロックは、振り返るぐらいはしただろうか、或いはヘンリは聞こうとしただろうか?彼は、手持ちの対象以外、何事にも耳を傾けようとしない素晴らしい得意技を持っていて、あの時期の手持ちの対象は、1943年の間の生活費の目録だった。私は、全裸だった、と私は口にしたかったのは、モーリスと私は、夜通し愛を育んでいたから。私はヘンリのチーフを見た。彼はダンスタンと呼ばれた男だった。彼は、崩れた鼻を持ち、彼の殴られた顔は、陶工の間違い―輸出を拒絶された面構えのように見えた。彼は、しようとする何事も、思うに、笑顔で通した。彼は、不機嫌でも無関心でもあるまいとする―彼は人間という者が何かしでかしたことのように、それを受取ろうとする。只、私が動こうとするという意識を持てば、彼はそれに応える。私は、何故しようとしないのかしら?私は見知らぬ人と約束したことはなく、モーリス一筋だった。ヘンリと一緒にわたしの残りの人生を、一人寂しく過ごせない、誰も私を認めず、誰も私に刺激されず、ヘンリが他の人と話す事に耳を傾け、チェダ洞窟のあの山高帽のように、会話の滴りの下で化石化する。

1944.7月15
ダンスタンとJardin des Gourmetsで昼食をとった。彼は言った・・・

1944.7月21
家でダンスタンと一緒に飲む。その間、ヘンリを待った。全て・・・へ向かう

1944.7月22
Dと夕食をとった。彼は、もっと飲もうとして、その後、家に来た。何れにせよ、それは、機能しなかった、それは、機能しなかった。

1944.7月23-1944.7月30
D.が電話した。私は出かけると言った。ヘンリと旅立った。南英に於ける民間防衛。チーフ・行政区長官たちと行政区エンジニアとの会議。爆風問題。深刻なシェルタ問題。生きている振りをするという問題。墓の上の人形のように、来る夜も来る夜も並んで眠っているヘンリと私。海上の‐ビグウエルの新たに補強されたシェルタの中で、そのチーフ長官は、私にキスをした。ヘンリは、市長やエンジニアと一緒に二等私室の中に先頭に立って入って行ったが、私はその長官を引き止めた。彼の腕に触れ、スチールの寝棚に関し、そこに既婚者用のダブルの寝棚がなかったのは何故かについて、何か馬鹿げたことを彼に質問しながら。私は、私にキスをして欲しい、と言おうとした。彼は、寝棚に凭れて私をぐるっと捩じった。それで金属が私の背中を横切る痛みの線を作り、そして私にキスをした。その時、彼は随分驚いたようだったので、私は笑い、彼にキスを返した。それなのに、何事も進展しなかった。それは、二度と進展しないのだろうか?市長がヘンリと一緒に帰って来た。彼は言っていた。「切羽詰まっても、僕たちは、二百年間は、部屋を見付けられます。」その夜、ヘンリが公式の夕食にいた時、モーリスの電話番号を手に入れようとして、長距離電話を頼んだ。私は、ベドゥでそれが繋がるのを待ちながら横になった。私は六週間、私の約束を守りました、と私は神に言った。私は貴方を信じられず、愛せもしませんが、私は私の約束を守りました。もし私が再び生き生きと蘇らなければ、私はだらしない女に、只のだらしない女になるつもりです。私は全く故意に、自らを壊そうと思います。年毎に、私はますます使い古されます。もし私が私の約束を破れば、貴方は、より以上に少しでもそれを好みますか?私は、余りにも笑い過ぎて、彼女たち相手の、肉体関係がなくても彼女たちに触れている三人の男を持つバーのあの婦人たちのようになるでしょう。私は、既に粉々に砕け落ちています。
 私が、私の肩に挟み込んだ受話器を取ると、交換手は言った。「私共は、只今貴方の番号にかけています。」私は神に言った。もし彼が応答すれば、私は、明日戻ります。電話は、彼のベドゥの傍の何処に置いてあるかを、私は正確に知っていた。一度私はそれを私の睡眠中にぶつかって落とし、げんこつですっかり打撃を与えたことがある。女の声は、「もしもし」、するとすんでのところで電話を切ろうとした。私は、幸せになるには、モーリスを欠いていたが、私は、本当にそんなに素早く、彼に幸せを見つけて欲しかったの?論理が私の手助けをしてくれるまで、胃に少しばかり違和感を覚え、私は私の頭に私と言い争わせた―何故彼はしないのか?お前は彼を置き去りにした。お前は、彼に幸せになって欲しい。私は言った。「ベンドゥリクスに話せますか?」しかし何もかもフラトゥを出てしまっていた。おそらく彼は、今や私の約束を破ることを私に望もうとさえしない。おそらく彼は、誰か彼と一緒に居て、彼と食事して、彼と何処にでも一緒に行って、彼とそれが心地良く習慣的になるまで、来る夜も来る夜も共に眠り、彼に代わって彼の電話に答えようとする人を見つけてしまった。その時その声は、言った。「ベンドゥリクスさんは、ここにはいません。彼は二、三週間遠くへ出かけました。私は、フラトゥを借りました。」
 私は電話を切った。ともかく私は幸せだったのにその後、又惨めになった。私は、彼が何処にいるか、知らなかった。私たちは触れもしなかった。同じ不毛の地で、同じ水源を探しながらも、おそらく景色の外、何時も一人。私たちは一緒に居れば、そこは不毛の地になりようもないから。私は神に言った。私は貴方を信じ始めています。私が貴方を信じれば、私は貴方を遠ざけます。私は私の約束を破ろうとする自由意志を持っているでしょ。でも私はそれを破ることによって何かを得る能力がありません。貴方は私に電話をさせながら、その後、貴方は私の面前でドアを閉ざす。貴方は、私を罪に走らせながら、貴方は私の罪の果実を持ち去る。貴方は、私にD.と一緒に逃げ出そうとさせながら、それを楽しむことを、私には許さない。貴方は、私に愛を外へ追い払わせ、その後で貴方は言う。そこにも又、貴女が求める渇望はない。貴方はいま、私にどうして欲しいのか、神よ?私は、ここから何処へ向かうのか?
 私が学校にいた頃、私は国王について学んだ―ヘンリの一人、べキトゥを殺した人物―彼の敵によって焼かれた彼の生誕の地を彼が見た時、彼は誓った。何故なら神は彼にそういうことをしてしまったから、「何故なら貴方は、私に私が最も愛した町を、私が生まれ育てられた地を、私に失わせたから。私は貴方に貴方が私の中で最も愛するものを失わせます。」奇妙でどういう訳か、私は十六年後のその祈り手を思い出した。国王は、彼の馬に乗って、それを七百年前誓い、そして私は、海上のビグウエル―ビグウエル・レジスのホウテルの部屋の中で、それを今祈る。私は、貴方に失わせようとしています、神よ、貴方が私の中で最も愛するものを。私は、今まで心からの主の祈り手を知らなかったが、私は、人が―それ、祈り手であるということを思い起こす。貴方が私の中で最も愛すことの。
 貴方は何を最も愛しますか?私が貴方を信じていれば、不道徳な魂を信じようと思いますが、それは、貴方の愛ですか?貴方は、皮膚の下のそこに、それを実際に見ることが出来ますか?神は、何か存在しないものを愛せず、彼は、何か彼に見えないものを愛せない。彼が私を見る時、彼は、何か私に見えないものを、見るのですか?彼がそれを愛せれば、それには、心惹かれるに違いない。私の心の中、そこに少しでも心惹かれるものがあるということ、それは、余りにも多くを私に信じるよう求めている。私は、私を称賛する男が欲しいが、それは、貴方が学校で学ぶ癖です―目の動き、声音、肩とか頭の上の手の感触。もし彼らが思えば、貴方は彼らを褒めるでしょう。貴方の立派な好み故に、彼らは貴方を称賛しようとする。そして彼らが貴方を褒める時、貴方は、束の間、そこに褒めるべき何かがあるという幻想を抱く。今までずっと、その幻想―私が意地悪でペテン師だということを忘れさせる鎮痛剤に浸ってで生きようとして来た。意地悪でペテン師の中に、そんな時、愛すべき何を貴方は思い浮かべられます?そうしたことが物語る不道徳な魂を、貴方は何処に見い出しますか?人皆の内、この心惹かれるものを、私の心の中の―私の心の中の何処に貴方は見ますか?ヘンリの中に貴方はそれを見いだせる、とすると私は納得出来ます―つまり私のヘンリ。彼は紳士で、善良で、忍耐強い。貴方は、それを彼が嫌い、愛す常に愛すと思うモーリスの中に見出せます。彼の敵でさえ。それなのにこの意地悪でペテン師の中の何処に、貴方は何か愛すべきものを見出せますか?
 それを私に話して下さい、神よ、そして私は、永遠に貴方にそれを失わせるようにします。
 国王は、彼の約束をどのように守ったか?私は思い出せたらと願う。私は、べキットゥの墓の上で修道士に彼を鞭打たせるよりもっと、彼について何も思い出せない。それは、答えのような響きがない。それは、前に起こらなければならなかった。
 ヘンリは今夜又、家を離れている。私がバーに馴染んで男を摘まみ取り、浜辺に彼を連れて行き、砂丘の間で彼と横になれば、私は、貴方が最も愛するものを貴方に失わせはしないのか?それでもそれは進展しない。それはもはや進展しない。私がそれから僅かでも楽しみを得なければ、私は貴方を傷付けられない。不毛の地のそうした人々のように、私は、おまけに私自身にピンを突き刺しても良かった。不毛。私は満喫し、それが多少でも貴方を傷付けようとすることをしたい。私を信じて下さい、神よ、私は貴方を信仰しない未だに、私は貴方を信仰しない未だに。

1944・9月12

ピータ・ジョウンズで昼食を摂り、ヘンリの勉学の為に新しいラムプを買った。他の婦人たちに囲まれた取り済ました昼食。何処にも男はいない。それは、大勢の内の一部分になることに似ていた。殆ど平和といった感じ。その後、ピカディリの新しい映画に行って、ノーマンディの喪失とアメリカの政治家の到着を見た。ヘンリが帰る筈の七時まで何もすることがない。一人で二杯のお酒を飲んだ。それが間違っていた。私はお酒を飲むことも止めなきゃ。私が何もかも払い除ければ、私はどうなる?私はモーリスを多少愛し、男達に同行し、私なりのお酒を満喫した身だった。貴方が私を作る物事全てを振るい落とせば、何が起こる?ヘンリが入って来た。彼は何だかとても嬉しそうだった。彼は、それが何なのか、明らかに彼に尋ねることを私に望んだが、私はしなかった。それで終に、彼は私に話すことにした。「彼らはO.B.E.大英帝国勲章 に僕を推薦している。」
 「それは何?」私は尋ねた。
 私が知らなかったということで、彼はかなり落胆させられた。彼が彼の課の長になった時、一、二年以内に次の段階は、C.B.E.になるだろう。そしてその後」
、彼は言った。「僕が退職する時、彼らは、おそらく僕にK.B.E.を与えようとしている。」
 「それでは面食らってしまうわ。」私は言った。「
貴方は同じ文字に、突き刺されなかったの?」
 「お前は、レイディ・マイルズになりたくないの?」ヘンリは言い、私は怒って、この世で私が欲しいものは皆、ミスィズ・ベンドゥリクスであるが故で、これまでの間、その頼みとするところを、手放さなかった。レイディ・マイルズ―愛人を持たず、お酒を飲まないけれど、サー・ウイリアム・マロックに年金について話す。その時ずっと、私は何処に居ればいいの?
 昨夜、彼が寝ていた時、私は、ヘンリを見た。私が、法律が有罪の当事者だと考える何かである限り、私は彼を愛情を持って見守ることが出来た。彼が私の保護を必要とする子供だったかのように。今や、私は、彼らが無知と呼ぶ者だった。私は、彼によって延々と
気持ちを正常に動かなくされた。彼は、家まで彼に電話をして来る秘書を持っていた。彼女は、言ってのける。「オウ、ミスィズ・マイルズ、H.M.は中に?」秘書は皆、そんな耐え難いイニシアルを使った。親しいだけではなく、馴れ馴れしい。H.M.、眠る彼を見ながら、私は思った。H.M.彼(か)の陛下と彼の陛下の配偶者。時々、彼の睡眠中、彼は微笑んだ。普通の、簡潔な、国民の奉仕者の笑顔、口にすれば限りなく、そう、実に滑稽。とはいうものの、今や、私たちは仕事と寝た方が良かったんじゃない?
 私は彼に一度言った。「貴方は、今まで秘書に対して関心を持ったことはなかった?」
 「関心?」
 「恋愛感情」
 「いや、勿論ない。何が、お前にそんなことを思わせるの?」
 「僕は、分からない。僕は全く考えられない。」
 「僕は誰か他の女を愛したことはない。」彼は言って夕刊を読み始めた。私は 余りにも魅力がなくて、どんな女も嘗て彼を欲しがったことがないのが私の夫だ、と不可解に思わざるを得なかった。私以外、勿論。私は求めずにはいられなかった、一筋に、一度は、それなのに私は何故かを忘れ、私が、選ぼうとしたものを知るには若過ぎた。それでは、余りにも不当だ。私がモーリスを愛した間、私はヘンリを愛した。そして今私は、彼らがいいと称するものだ。私は、誰かを全く愛さない、そして貴方を全ての中で、最も愛さない。

1945・5月8
 夕方のセイントゥ・ジェイムズ・パークへ、イウアラプ戦勝記念日を祝う彼らを見に下った。それは、近衛騎兵隊と宮殿に挟まれた投光照明の水域の側で、とても静かだった。誰も大声を出さず、歌わず、酔っぱらうこともなかった。人々は、二人ずつ、手を取り合い、草の上に座った。私は、これが平和であり、何処にももう爆弾はなかったから、彼らは幸せだと思った。私は、ヘンリに言った。「私は、平和と寄り添えない。
 「僕は、情報省から、何処へ選抜されるか、あれこれ考えている。」
 「情報省?」私は、興味深そうに尋ねた。
 「いや、いや、僕は、それを引き受けたくない。」
 「それは、俄か作りの国民の奉仕者だらけだよ。お前は、内務省はどれ程いいと思っているの?」
 「何かが、ヘンリ、それは、貴方を満足させたわ。」と私は言った。その後、ロイアル・ファミリが、バルカニに登場し、群衆は、非常に礼儀正しく歌った。
彼らは、ヒトゥラ、スターリン、チャーチル、ルーズベルトゥのようなリーダではなかった。彼らは、誰にも,どんな危害も加えない只の家族だった。私は、私の側にモーリスが欲しかった。私は、もう一度やり直したかった。私も、家族という者の一員になりたかった。
 「とても感動的だね。」ヘンリが言った。「そうね、私たちは皆、これで夜ぐっすり眠られるわ。」私たちは、夜に、今まで何か他にしたのにぐっすり眠ったかのように。

1945・9月10

私は賢明さを取り戻した。私は二日前、私の古いバグを片付けていた。―ヘンリは突然、「平和のプレズントゥ」として、新しいものを私に与えた―それは、彼にたくさんのお金を遣わせてしまった。私は、「リチャドゥ・スマイズ16スィダ・ロウドゥ4-6毎日個人的相談を、どなたでも歓迎。」と伝えているカドゥを見つけた。考えると、私は十分長く引きずって来た。私は、別の薬を飲もう。もし彼が私に買えれば、何事も起こらなかったし、私の約束は、勘定に入れなかった、とモーリスに書いて、もし彼がもう一度やり直したければ、と彼に尋ねよう。おそらく私は、ヘンリの下を去りもしよう。私は分からない。それでも第一、私は賢明さを取り戻した。私はもうこれ以上ヒステリクになるまい。私は聞き分けが良くなるわ。そこで、私は出かけて、スィダ・ロウドゥのベルを鳴らした。
 今、私は何が起こったか、思い出そうとしている。ミス・スマイズは、お茶を作り、お茶の後、彼女は出かけて、私を彼女の兄弟と一緒に、一人残した。彼は、私に何が私の困難か尋ねた。私は木綿更紗のソウファに座り、彼はかなり固い椅子に、彼の膝の上の猫と一緒に座った。彼は猫を撫で、彼は奇麗な手を持ち、私はそれを好まなかった。私は、押し並(な)べて痣をかなり好んだが、彼は、彼の見栄えの良い頬だけを私に見せながら座ることを選んだ。
 私は言った。「そこには神はいないと、何故あなたはそんなに決め付けるのか、貴方は私に話せますか?
 彼は猫を撫でながら、彼自身の手を見詰め、彼は彼の手で自尊心を維持しているのか、と私は彼を不憫に思った。彼の顔が、印を付けられていなければ、彼はどんな自尊心も持ち合わせなかっただろう。
 「貴女は共有地で話す私に耳を傾けて下さった?」
 「はい、」私は言った。
 「私はあそこではごく簡素に物事を留め置くよう、心掛けています。自分自身の為に考えるよう、人々に風穴を開ける為に。貴女は、自分自身の為に考えることを始めましたか?」
 「私はそう思っています。」
 「どんな教会に、貴女は取り込まれましたか?」
 「何処にも。」
 「ならば、貴女はクリスチャンではないのですか?」
 「私は洗礼は施されています―それは、社会的通念でしょ?」
 「貴女がどんな宗教も持たないのなら、どうして貴方は私の助けが欲しいのですか?」
 何故って、本当に?私は、ドアの下のモーリスと私の誓いについて彼に打ち明けられなかった。駄目だ、未だ私には出来ない。その上、それは全体の核心ではなかった。生まれながらにして、私はどれだけの数の誓いをしては破ったっていうの。何故、友人がくれた不格好な花瓶のように、この誓いは留まるのか、それを壊しそうなメイドゥを誰かさんは待ち詫び、来る年も来る年も、彼女は誰かが評価する物を壊し、ついにその不格好な花瓶は残る。私は、実際今まで彼の言う疑問に立ち向かったことはなく、追って彼はそれを繰り返そうとした。
 私は言った。「私には、信仰心がないのですが、いいとは思えません。かと言って、私はそうしたいわけではありません。」
 「私に話して下さい。」彼は言いながら彼自身の手の美しさを忘れ、彼の醜い頬を私に向けた。救おうとする一心で我を忘れ、私は打ち明けている自分自身に気付いた―あの夜と爆弾落下と馬鹿げた誓いについて。
 「それで、貴女は実は信仰している。」彼は言った。「それは多分・・・」
 「はい。」
 「今祈っている世界中の何千人もの人々について考えて下さい。彼らの祈りは相手にされない。」
 「パラスタインで、そこに死にかけた何千もの人々がいた。その時ラザラスは・・・」
 「私たちは、そんな作り話を信じないでしょ。貴女も僕も?」彼は一種連座を押し付けて言った。
 「勿論そう。何れにせよ、何万もの人々が持っています。彼らは、それを道理に適っていると思うしかなかった。」 
 「彼らの情緒が揺り動かされると、人々は、物事が合理的であること、それを必要としない。恋人同士は、合理的ではないでしょ?」
 「貴方は又、愛情抜きで説明できますか?」
 「オウ、はい、」彼は言った。「或る者に入り込んで独占したいという欲求、強欲と言われるまでに。他の者に入り込んで入れ込みたい、責任感をかなぐり捨てたいという欲求、褒められたいという願い。時には、話が出来ればと、耐えられない誰かに貴方自身荷を下ろしたいう願い切実。父か母を再び探し出したいという欲求。そして勿論、その根底にあらゆる生物学的動機が。
 私は思った。それは皆、真実だ。でもそこに何か覆っているものはないのか?私は、私自身の中で、モーリスの中でも、その全てを掘り返した。しかし未だに鋤(すき)は岩に触れなかった。「それでは、神の愛は?」私は彼に尋ねた。
 「それは皆同じことです。人は彼自らの想像の内に神を作りました。ですから彼が彼を愛してしまうのは、そりゃあ当たり前です。貴女は定期市でそこにある歪める鏡ご存知ですね。人は美しく見える鏡も作り、その中で、彼は、彼自身が魅力的で、逞しく、公正で、賢明に見えます。彼を笑わせるだけの歪める鏡の中よりいとも簡単に、彼自らを識別しますが、彼は他者の中で彼自身をどれ程大切に思うことでしょう。」
 歪めたり美しく見せたりする鏡について彼が話す時、私は何について私たちが話していたかを思い出せなかった。思春期以来その年代全ての思い故に、彼は鏡を覗き、それらを美しく見せよう、歪めることなくと心がけて来た。地道にその方法で、彼は彼の頭を持ち上げた。何故彼は、顎髭を痣を隠す程、十分長く伸ばさないのかしら?体毛はそこでは伸びなかったのか、それとも彼がごまかしたくないからだったのか?私は、彼が心底真実を追い求める男だという考えに至りはしたが、そこにはもう一度やり直すというあの言葉があり、それは只、余りにも明らかで、いかに多くの欲求に埋もれて、彼の真実への愛着は、易々(やすやす)と引き裂かれたことか。彼の誕生の損傷の為の埋め合わせ、権力への欲求、もっともっと全てを賞賛されたいという願い、つまり、みすぼらしく祟られた顔は、肉体の欲望の根拠を必ず奪おうとする。私は、この手でそれを確かめ、その傷のように永続的に、慰めたいという非常に強い意志を持った。それは、ドアの下のモーリスを見た時に似ていた。私は祈ろうした。只、彼が癒され得るなら、何か法外の犠牲を捧げるにしても、今そこには、私の為に捧げるどんな犠牲も残されていなかった。
 「私の親愛なる人よ、」彼は言った「神という概念をこれから外しましょう。それは、まさに貴女の愛する人と貴女の夫の問題です。物事を幻想と混同しないで。」
 「でも私はどんな方法で決めますか―もしそこに愛のようなそんなものがなければ?」
 「長い走程にあって、貴女は何が最も幸福であるか、決めたくなります。」
 「貴方は幸福を信条としますか?」
 「私はどんな完全も、信じません。」
 私は、彼が何時までも手にする唯一の幸福は、これだと思った。彼は慰め、助言し、救うことが出来るという着想、彼は有用たり得るという思い。それは彼を毎週、共有地へ彼を行き着かせる。いなくなり、質問もせず、芝生の上に彼のカードゥを投げ捨てる人々に語り掛ける為に。私が今日来たように、どれだけの頻度で、誰かが実際に来るのか?私は彼に、「貴方はたくさん訪問者を持っていますか?」と尋ねた。
 「いいえ。」彼は言った。彼の真実への愛着は、彼の誇りより偉大だった。「貴女が最初です―随分長い時間で。」
 「貴方に打ち明けるのは、それは申し分ありません。」私は言った。「貴方は私の心を本当に随分整理して下さった。」それは誰彼となく彼に与えられる唯一の慰めだった―彼の幻に餌をやる為に。
 彼は内気そうに言った。「もし貴女が時間を割ければ、私たちは、現実的に開始し、物事の根源に向かえます。私が意味するのは、、哲学的論争や歴史学的証拠です。
 私は彼が続けて行く為に、何らかの回避的な返事をでっち上げなければならなかったと思う。
「それは実に重要です。私たちは、私達の敵を侮ってはならない。彼らは、一つの箱を持っています。
 「彼らが持っている?」
 「それは、しっかりしたものです。上辺を除けば。それはもっともらしい。」
 彼は心配そうに私を見つめた、私は、いなくなってしまうそうした者の一人ではないか、と彼は不安に思っていた、と私は考える。彼が神経質に「週に一時間。それは大いに貴女を救います。」と言った時、頼むのは些細なことのように思った。それに、今、私は時間の全てを持っていないか?私は本を読んでもいい、又映画に行っても良く、私は言葉を解さず、又映像を思い出せない。私自身と私の持つ惨めさが、私の耳の中で太鼓を打ち、私の目に溢れる。この午後のちょっとの間に、私はそれを忘れた。「はい、」私は言った。「私は来ます。時間を割くのは、それは貴方にも望ましい。」私は言った。私は、彼の保護の中で私に可能な全ての望みをシャヴルで掬いながら、神に祈りながら、彼は、私を救済すると誓っていた、「私を彼に用いて下さい。」
 
1945・10月2
 今日、それはとても暑く、その上雨が滴り落ちていた。そこで私は、暫く腰を下ろす為に、パーク・ロウドゥの角の暗い教会の中に入って行った。ヘンリは家に居たが、私は彼を見たくなかった。私は、朝食時、優しいということを思い出そうとする、彼が家にいる昼食時の優しさ、夕食時の優しさ、そして時々私が忘れると、彼は逆に優しい。命ある限り互いに優しくあろうとする二人。私が入り、座って、辺りを見た時、そこは、石膏の塑像と悪趣味な美術品、写実主義的美術品で溢れ返ったロウマン教会だと悟った。私は、塑像やクライストゥ受難の像、あらゆる人体の強調を嫌った。私は人間の体から逃げ出そうとしていたし、全くそれが急務だった。私は私達自身とは無縁に生み出された或る種、神のようなもの、何か曖昧で無定形で、宇宙的なものを信じられると思った。それに対して、私は何かを誓い、そしてそれは、お返しとして私に何かを授けた―有形の人間の生命へと曖昧さの外へ伸びる椅子と壁の間を精力的に動く蒸気のように。何時か私も蒸気の役になろう―私は永遠に私自身を避けよう。そうしてその時、私はパーク・ロウドゥの暗い教会に入って全ての供物台の上の私の周りに立つ体を見た。その悦に入った顔を持った恐ろしい石膏の塑像、それで私は彼らが肉体の復活を信じていることを思い出した。私が永遠に葬られたい肉体の。私はこの体と共に、随分たくさん傷を負って来た。私は永久にその僅かでも保存することをどうして望めるのか?そこで突然私は、リチャドゥの名言を思い出した―その欲求を満たすために教義を考案する人間についての、そして私は、彼がどれだけ悪辣であるかを思った。私が教義を考案することになったら、肉体は二度と蘇らなかったということ、それは去年の害虫を道連れに腐ったということになるだろう。人間の心は後ろに前に揺れ動く。一つの極端からもう一つの極端へと。真実は、振り子の振幅の或る目盛で欺き、決して静止しない一つの目盛りで、弛んだ垂線の中ではなく、風のない旗のように、それが仕舞に何処でだらりと垂れるかが大切だ。しかし角度においては、他より一つの極端により近いのか?只、奇跡が60度の角度で振り子を止められたら、人は真実はそこにあったと信じるだろう。さて、振り子は今日も揺れ動き、私自身の体の代わりに、モーリスのを思った。私は、彼の著作の一行と同じくらい個性的な命が、彼の顔の上に置いた確かな輪郭を思った。私は、嘗て彼が、落下する壁から他の人の体を庇おうとしなかったら、そこにある由もない肩の新しい傷跡を思った。何故あの三日を病院で過ごさなかったのか、彼は私に打ち明けなかった。ヘンリが私に話した。あの傷跡は、彼の嫉妬と同程度の度を越した彼の性格の顕われだよ。そこで私は思った。私は蒸気になる為に、あの体を求めるのか(私のものをはい、いや彼のものを?)又、永遠そのものを貫いて存在することを、あの傷跡に私は求めた、と私は分かっている。しかし私の蒸気はあの傷跡を愛せるか? その時私は、私が憎んだ私の体が欲しくなって来た。しかしそれは、単にあの傷跡を愛せたからに過ぎない。私たちは、只私達の心だけで愛せるか?愛情は、何時もその身を広げる。そうそれで私たちは私達の感覚のない爪でさえ愛せる。私たちは、私達の衣服でさえ愛する。そうそれで袖は袖を感じられる。
 リチャドゥは正しい。私は思った、私たちが肉体の復活を考案したのは、私たちが私達自身のの体を必要とするから、直ぐに私は彼が正しかったと、又、これは、私たちが慰めに互いに話すお伽話だったと認めた。私はもはやその塑像を、少しも嫌だとは思わなかった。それは、ハンス・アンダスンの中の汚い色の絵に似ていた。それは、下手な詩に似ていた。しかし誰かが、それを書くことを必要として来た。非常に誇り高く、彼の愚かさを曝け出すよりむしろ彼はそれを隠した誰か。私は教会に歩いて上った。それらを次から次へ眺めながら。全ての内、最も酷いもの―私は彼女が誰か知らない―中年の男が祈っていた。彼は山高帽を彼の脇に置き、山高帽の中に、新聞に包んだセラリの茎があった。
 そして勿論、供物台の上のそこにも、一体あったー
そんなによく知られた肉体、モーリスのものよりもっとくだけた、肉体のあらゆる部分を持った肉体として、前に私を感動させたことはなかった。私はヘンリと訪れたスペインの教会の一例を覚えていた。そこでは、目や手から緋色の絵具で、血が下方へ走っていた。それは、私の具合を悪くした。ヘンリは、私に12世紀の記念碑を称賛して欲しかったのに、私は具合が悪くて開けた所へ出て行きたかった。私は思った、こういう人々は、残忍さを好むのねと。蒸気は、血や叫びで貴方にショックを与えられない。
 私は広場へ出ると、私はヘンリに言った。「全くこんな風に塗った傷には耐えられないわ。」ヘンリはとても理性的だった―彼はいつも冷静だった。彼は言った。「勿論、あれは非常に物質主義的信仰ではある。魔力の代物(しろもの)・・・」
 「魔力って、物質主義的なの?」
 「そう。イモリの目や、カエルの足の指、出産で‐締め付けられた赤ん坊。お前はそれ以上に何か物質主義的なものを所有出来ない。聖体拝領ミサに於いては、彼らは、未だに全質変化を信仰する。
 私はその全てを知りはしたが、勿論貧乏人の為を除いて、それは多かれ少なかれ宗教改革で絶滅したという一つの考えに至った。ヘンリは私をきちんとさせた(どんなにしょっちゅうヘンリは、私の混乱した考えを整理し直して来たことか)。「物質主義は、単に貧乏人向けの姿勢だけではない。」彼は言った。「どこまでも洗練された頭脳の者たちは、物質主義者で、パスクル、ニューマン。傾向という点で非常に微妙、他の点では非常に粗雑な迷信。何時か私たちに何故かが分かるといい。それは腺の欠乏かも知れない。
 そこで今日、あの実在する十字架の上のあの実在する肉体を見て、私は不思議に思った。この世は、そこでどのように蒸気に釘を打てたのか?上記は、勿論痛みもなく、喜びも感じなかった。それは単に、それが私の祈りに答える筈と想像する私の迷信に過ぎなかった。親愛なる神よ、と私は言って来た、私は言うべきだった、親愛なる蒸気よと。私は貴方を遠ざけると私は言ったが、人は蒸気を遠ざけられるか?十字架の上のあの像を私の感謝の気持ちへのその主張と共に避けることは出来た―「私は貴方の所為でこんなことで苦しんだ。」しかし蒸気は・・・それにしてもリチャドゥは、蒸気以下でも信仰した。彼は寓話を嫌い、彼は寓話と戦い、彼はまともに寓話を受取った。私はハンスル・アンドゥ・グレトゥルを嫌えなくて、彼らの砂糖の家を、彼が神の伝説を嫌ったようには嫌えなかった。私が子供だった時、私はスノウ・フワイトゥの中の意地悪な女王を嫌いになれたが、リチャドゥは、彼のお伽⊶話のデヴルを嫌いではなかった。デヴルは存在せず、神は存在せず、それでも悉(ことごと)く彼の嫌悪は、いいお伽話の為にあり、意地悪なものの為ではなかった。どうして?私は、あの―過度に‐くだけた肉体を見上げた。想像上の苦痛で張り詰めた、眠る人のように項垂れている頭。私は、時にモーリスが嫌になった。が、もし私も、彼を愛さなくなったら
、私は彼を避けようとするだろうか?オウ神よ、もしも私が心底彼を嫌ったとしたら、それは何を意味するのでしょう?
 すると結局、私は実在主義者かしら?私は何か腺の欠乏があって、実際に重要な迷信ではない物事や目標に少しも興味がない―慈善委員、生活の指標、労働者階級の為のより良いカラリのように?山高帽を持ったあの男の孤立した実在を、十字架の金属を、私が祈られないこの手を信じるから、私は実在主義者か?神は実在したと想像する、彼は、あの世な肉体を持っていたと想像する、彼の体が私のものとまるで同じように実在したと信じることは、何が間違っているのか?もし彼が肉体を得なかったら一体誰が彼を愛し、或いは彼を遠ざけられたか?私はそれがモーリスであっても、蒸気を愛せない。それは粗雑で、それは野蛮で、それは実在主義者だ、と私は知っているが、何故私は、粗雑で、野蛮で、実在主義者であってはいけないのか?赤く燃える憤怒に、ヘンリの公然たる反抗、合理的なものの全て、私は、スペインの教会で人々が行う何を私は見て来たにしても、私が誘(いざな)った孤立に、教会の外へと歩いた。聖水、そう‐呼ばれた中に私は私の指を浸し、私の額に十字架のようなものを作った。

1946・1月10

私は今夜家庭に耐えられなかった。だから雨の中外を歩いた。私が掌の中に私の爪を突き刺した時を、私は思い出した。私はそれを知らなかった、が、貴方は痛みに動いた。私は言った。「彼を生き返らせて下さい。」貴方を信仰することもなく、それに私の不信心は貴方にどんな差別もしなかった。貴方は貴方の愛の中にそれを受け入れ、供物のようにそれを食した。そして今夜、雨は私のコウトゥや私の衣服や私の肌の中をびしょ濡れにして、私は寒さで震え、そんなことは初めてで、まるで私は殆ど貴方を愛したかのようです。私は、雨の中貴方の窓の下を歩き、一晩中その下で待とうとした。何もかも終わり、私は愛することを学んでも良かったのに、又、貴方がそこにいたから幾分長く私は不毛を恐れずに済んだ。私が家に戻ると、ヘンリと一緒にそこにはモーリスがいた。それは二度目だった、貴方は彼を返してくれた。一度目、私はその所為で貴方が嫌になり、貴方が私の不信心を貴方の愛の中に誘って来たように、貴方は私の嫌悪を受け止めて来た、だから私たちは共に笑い合えた―私は時にモーリスを笑った、「私たちがどんなに馬鹿げていたか貴方は覚えているの・・・?」と言っては。

1946・1月18
 二年経ち、初めて私はモーリスと昼食を摂っていた。私が電話をして、私と会って、と彼に頼んだ―それなのに私のバスは、ストックウエルで通行に手間取り、私は十分遅れた。私はちょっとびくびくしていた。あの遠い日々、私は何時も感じた、何かが一日を台無しにするためにきっと起こるぞ、それは、彼が私に対する腹立たしさを抑え切れなくなるに決まってるぞ。しかし私は私の怒りと共に今、先に乗り込もうという願望は、微塵もなかった。他の多くの物事のように、怒りに向かう能力は、私の中で死に絶えた。私は、彼に会って、彼にヘンリのことを尋ねようとした。ヘンリは、最近おかしかった。外出して、モーリスとパブで飲む、そんなことは彼にはなかった。ヘンリは、家でとか、彼のクラブでしか飲まなかった。私は、彼がモーリスに打ち明けるといいと思った。もし彼が私のことを気に病んでいたら不思議。私たちが結婚した当初から、気に病む原因は、何処にも殆ど見当たらなかった。しかし私がモーリスと一緒だった時、彼と一緒だということを除いて、彼と一緒に居ようとする理由らしきものは、何処にも心当たりがなかったなかった。私は、ヘンリについて何事も探り出さなかった。今もその時も何時だって、彼は私を傷付けようとしながら、彼は、彼自身を実際傷付けていたから、彼は、成功し、私は、自らを傷付ける彼を見ることに耐えられない。
 私はあの昔の誓いを、モーリスと昼食を摂っている内に破ったのか?一年前、私はそう思おうとしたが、今私はそうは思わない。私は不安だったから、どんなこともそれが全てだったと私は知らなかったから、私は愛に信頼を持てなかったから、あの頃とても文学的だった。私たちはルールズで昼食を摂ったが、私はただ、彼と一緒にいるだけで、幸せだった。格子の上で、さよならを告げながらも私は、少しの間、不幸せだった。彼はもう一度、私にキスをする筈だと私は思い、私はそれを願った、ところがその時、咳の発作が私を襲い、手間取った。私には分かった、彼は遠ざかるにつれ、本当ではないようなことを皆、彼は背負い込んでしまい、それによって彼は傷付けられ、彼が傷付けられると私は傷付けられた。私は気付かれずに泣きたかった。それから私はナショナル・ポートゥレイトゥ・ギャラリに行ったが、その日は学生たちの日だったーそこには大勢の人々いた。それで私はメイドゥン・レインに引き返し、教会の中に、そこは何時も酷く暗く、貴方の近所の人を見なくていい。私はそこに座った。そこには、私と、入って来て静かに後ろの席で祈る小さい男以外全くいなかった。私は、そうした教会の一つに初めて入った時を覚えていたが、私はそこがどれだけ厭だったか。私は祈らなかった。私は嘗てはかなり頻繁に祈って来た。私は神に言った。私が私の父に言っても差し障りのないように、もし私が今まで誰かを自分のものにしたことを思い出せたら、親愛なる神よ、私は飽き飽きする。

1946・2月3
 今日、私はモーリスを見たが、彼は私を見なかった。彼は、ポンテフラクトゥ・アームズへの途上にあり、私は彼の後をつけた。私は、シェダ・ロウドゥで一時間を費やした―可愛そうなリチャドゥの論拠に追随しようとして、時間を長びかせながら、ひっくり返された信仰という意味を、ひたすらそれから汲み取りながら。誰がそこまで生真面目で、一つの伝説についてそこまで論争的であることが出来るだろう?私が全体で何かしら理解した時、彼のケイスを殆ど救えないように私には見える、と私が気付かなかった何か不思議な実体が、そこにはあった。そこにクライストゥと呼ばれた一人の男がいたという証拠のように。私は疲れ、つまらないという感情を表に出した。私は、迷信から私を抜け出させるために、彼の所に出かけたが、その都度、私は迷信を更に深く作り直した彼の狂信をなぞった。私は彼を救っていたが、彼は私を救っていなかった。一時間、私は殆どモーリスのことを考えなかった。しかしその後、そこに突然彼がいた。通りの端を横切っている。
 私は、彼を視界に留めながら、彼の後をずっとつけた。私たちは、ポンテフラクトゥ・アームズへ、何度も繰り返し二人で出かけたものだ。彼がどのバーへ向かい、彼が何を注文したか、私は知っていた。私は彼を追って入ろうかしら、そして私のものを注文し、彼の方を振り向くと、何もかもが、飛び越えてもう一度始まるのに?ヘンリが出かけたら直ぐ、彼に電話出来たから、朝は、希望に満ち溢れていたし、そこには、彼が帰宅が遅くなると告げると、期待する夜があった。そして今なら多分、ヘンリの下を去るだろう。私は私の最善を尽くして来た。私はモーリスに上げるお金を持っていないし、彼の本は、彼自身を維持するのに十分で、それ以上殆ど稼がなかったが、一人でタイプを打つのを、手伝って私と一緒にしたところで、私たちは、一年に55パウンドゥ  私は貧乏を恐れない。時には、貴方が作ったベドゥの上の嘘より、貴方のコウトゥを布を間に合わせる為に切ることの方が、それは気楽だわ。
 私は入口に立ってバーに上がる彼を見守った。もし彼が振り返って私を見れば、私は神に打ち明けた、私は中に入りますと。しかし彼は振り向かなかった。私は家へと歩き出したが、私は私の心の外に彼を置いたままには出来なかった。二年近くに亘って、私たちは知らない者同士だった。一日の僅かな特別の時間に、彼が何をしていたか、私には分からなかったが、今は彼はもう見知らぬ人ではなかった。何処に彼がいても、昔のように私は知っていたから。彼はもう一杯ビアを飲み、それから書く為に慣れ親しんだ部屋へ戻る。彼の一日の習慣は、今尚同様で、誰かが古いコウトゥを愛するように、私はそれをを愛した。私は彼の習慣によって守られていると感じた。私は知らないことを求めたことはない。
 そして私は思った、私は彼をどれ程幸せに出来るか、どれ程楽々と。私は、幸せと共に笑う彼を、もう一度見たかった。ヘンリは外に出ていた。彼は官職の後、昼食の約束を持っていた。彼は、七時までには間に合いそうにないと言う為に電話した。私は六時半まで待つことにして、その後モーリスに電話する。私は言おう、私は今夜と他の全ての夜の為に来ていると。私は、貴方なしでいることに参っています。私は、大きな青いスートゥケイスと小さな茶色のものに荷造りしよう。私は一か月の休日に十分な衣服を持って行こう。ヘンリは啓蒙されているから、月の終わりまでに、法的側面は、決着をつけられるだろう。辛い事は終わり、家から、私が必要とした何か他の物は、都合の良い時に取りに来られる。そこには、そんなに直面する辛い事がある筈がない。そりゃあ私たちは、未だに恋人同士のよう、ではなかった。結婚は、友情になり、少ししも仲が良ければ、前と同様にやって行けるだろう。
 唐突に私は解放感と居心地の良さを感じた。私は、もうこれ以上、貴方のことをあれこれ気に病まなくていい。私は、共有地を歩きながら神に言った。貴方が実在するのかどうか、或いは貴方は実在しないのかどうか、貴方が二度目のチャンスをモーリスに与えるのかどうか、或いは私は全てのことを予測したのかどうか。多分これは二度目のチャンスになる、と私は。彼に縋(すが)った。私は彼を幸せにするつもりだ。それは、私の二つ目の誓いです。神よ、そして貴方に出来るのなら私を止めてみなさい、貴方に出来るのなら、私を止めてみなさい。
 私は、私の部屋へと階段を上り、私はヘンリ宛に書き始めた。ダーリンヘンリ、私は書いたものの、それには偽善的響きがあった。最も親愛なる方では、嘘になった。つまり、それでは知人のようになりかねなかった「親愛なるヘンリ」そこで「親愛なるヘンリ」、と私は書き、「これは貴方にはかなり衝撃になるのではないか、と心穏やかではありませんが。この五年、私はモーリス・ベンドゥりクスと恋愛関係にありました。二年近くに亘り、私たちはお互いに目を合わせたこともなく、又文面に依(よ)ったこともなく、それにしても、そんなことでは上手く行きません。私は彼なしで幸福に暮らせません。ですから私は、離れて行きます。私は長い間、一妻に属する多くを経ずに来ましたし、その上私は、1944年六月から、全てにおいて夫人とは言い難かった。そう、周りから反れると、誰でも、最悪に陥る、と私は分かっています。私は嘗て思いました、私は、この恋愛沙汰を、まさにものに出来るわと。それは、徐々に満足して疲れ切ってしまうだろうに、それは、その道を閉ざしてしまった。私は1939年にそうだった以上に、モーリスを愛しています。私は子供じみていた、と私は思いますが、今は遅かれ早かれ、人は選ぶしかなく、又人は、あらゆる方向に窮地を作る、と私は悟っています。グドゥ‐バイ。神が貴方を祝福しますよう。」「神が貴方を祝福しますよう。」私は深く深く横線を引いた。だからそこは、読まれる筈はなかった。それは、自己満足の感がありはするが、何にしても、ヘンリは神を信じない。その時私は、Loveと記入したかったが、その言葉は、それは本当だと分かっていても、不適当な響きがあった。私は私の使い古した方法でヘンリを愛した。
 私は封筒に手紙を入れ、非常に個人的とそれに記した。誰かの面前でそれを開かないようヘンリに警告するだろう、と私は思った―彼が友人を家に連れて来ても、私は彼の自尊心を傷付けたくなかったから。私がスートゥケイスを引っ張り出して詰め始めるやいなや、私は不意に思った。私は、手紙をどこに置いたかしら?私はそれをすぐに見付けたものの、その時私は考えた。私はホールにそれを置くのを忘れていて、ヘンリは待つ、家に帰ろうとして私を待つ、と私の慌て振りを思う。そこで私は、ホールにそれを置く為に階下に下りた、私の荷造りは殆ど終わった―片付けるのは、イヴニングドゥレスだけ、それにヘンリは、後三十分は帰って来ない。
 私が、まさにホール・テイブルの午後の郵便物の一番上にそれを置いたその時。私はドアに入るキーの音を聞いた。私はもう一度それをさっと取り上げた。私は訳が分からない、するとその時、ヘンリが入って来た。彼は具合が悪く、疲れ切っているようだった。彼は、「オウ、お前は何でこんな所にいるの?」といっれ、私の横をさっと擦り抜け、彼の書斎に入った。私は一瞬たじろぎながらも、直ぐに従った。私は、今彼に私の手で手紙を渡そうと思い付いた。その内もっと思い切りが必要になって来る。私がドアを開くと、暖炉の側の彼の椅子に座っている彼を私は見た。彼は明かりも付けず、それに泣いていた。
 「一体どうしたのヘンリ?」私は彼に尋ねた。彼は言った。「何も、僕は酷い頭痛がして、それだけ。」
 私は彼の為に暖炉に火を点けた。私は言った。「私は、少々ヴェンガニンを手に入れて来ます。」
 「心配しなくていい。」彼は言った。「もうそれは良くなっている。」
 「どのような一日を、貴方は過ごしたの?」
 「オウ、殆どいつもと同じ。ちょっと疲れた。」
 「貴方の昼食の約束は誰だったの?」
 「ベンドゥリクス。」
 「ベンドゥリクス?」私は言った。
 「何故、ベンドゥリクスじゃいけない?彼は、彼のクラブで昼食を僕に御馳走した。」
 私は彼の背後に回って彼の額に私の手を当てた。永遠に彼の下を去ろうとする寸前にしていることにしては、それは妙な具合だった。私たちが結婚したての頃、彼は何時も私にそういう風にしてくれていた。それは何も思うように行かなくて、私は、恐ろしく神経過敏な頭痛持ちだった。私は只、一瞬その症状が改善される振りをしようとするのを忘れた。彼は、彼自身の手を上げて、彼の額に強く押し付けて、私のを押さえた。「僕はお前を愛している。」彼は言った。「お前はそれが分かっているの?」
 「そうね。」私は言った。私は、そんなことを言うなんて、彼が厭になりもするわ。それじゃあ要求のようだわ。私は思うのだけれど、もし貴方が本当に私を愛していたら、他の傷付けられた夫のように、貴方は振舞うに決まっているわ。貴方は怒りを覚え、そうして貴方の怒りは、私を自由にするのに。
 「お前がいなければやって行けない。」彼は言った。オウそう。貴方には出来る。私は異議を唱えたかった。それは不便になるでしょうが、貴方には出来る。貴方は貴方の新聞を、一度変えたけれど、貴方は直ぐにそれに慣れてしまったわ。これは言葉、型通りの夫の型通りの言葉で、それは全く何事も意味しない。それから私は、鏡の中の彼の顔をまじまじと見て、
 「ヘンリ、」私は言った。「何が気に入らないの?」
 「何も。僕はお前に話した。」
 「私は貴方を信じない。何か役所であったの?」
彼は馴染みのない辛さと共に言った。「何がそこで起こってしまったの?」
 「ベンドゥリクスが、何らかの方法で貴方の心を弄んだの?」
 「勿論、違う。どうして彼に出来るの?」
 私は彼の手を避(よ)けたかった。彼はそれをそこに置いたままにした。私は、彼が次に何を言い出そうとしているのか、不安に思った。私の分別の上に耐え難い重荷を広げている。モーリスは、今は家にいるだろう。もしヘンリが入って来なかったら、五分で彼の下に行ったのに。惨憺の代わりに、私は幸せを目の当たりにしただろうに。貴方は惨憺を目の当たりにしなければ、貴方はそれを信じない。貴方は離れた所から、誰にでも苦痛を与えられる。ヘンリが言った。「僕の愛しい人よ、僕は、多くの夫のようではなかった。」
 「私は貴方が何が言いたいのか分からない。」私は言った。
 「僕はお前には退屈だ。僕の友人たちは、退屈している―僕たちはもう―お前も分かっている―どんな事も一緒にはやっていけない。」
 「そりゃあ、時には立ち止まってもいいのよ。」私は言った。「どんな結婚でも。私たちはいい友達同士だわ。」そのくらいが、私の逃げ口上の限界であるべきだった。「彼が同意した時には、私は彼に手紙を出そう。私が何をしようとしていたのか、彼に打ち明けよう。私は家から出て行こう。何れにせよ、彼は、彼のきっかけを見失い、私は未だここにいて、ドアは、再びモーリスを遮断した。只、私は、今回は神に責任を負わせることは出来ない。私は自らドアを閉ざした。ヘンリは言った。「僕は、お前のことを、友達のようには思えない。お前は、友達なしでもやって行ける。」そして彼は、鏡から振り返り、私を見て、彼は言った。「僕を一人にしないで、サラー。もう二、三年我慢して。僕も努力する・・・」それにしても彼が何を努力しようとしても、 オウ、そりゃあ、私が彼の下を何年も前に去っていれば、私達どちらにも、もっと良かっただろうに。しかし、私は彼がそこにいる時には、私は彼に打撃を与えられない。彼の惨憺が、どのようであるかを、私は見てしまったから、今や、彼は何としてでもそこにいるだろう。
 「私は、貴方を置いて行きはしないわ。私は約束します。」守ろうとするもう一つの誓い、そして私がそれを形にした時、私は、これ以上彼と一緒にいることに、耐えられなくなった。彼は勝ち、モーリスは敗れた。そして私は、彼の勝利故に、彼を憎んだ。私は、彼ゆえに、モーリスを憎むだろうか?私は二階へ上がり、手紙を極小さく千切り、誰にも二度とそれを繋ぎ合わせられないようにして、私は、荷物を解き始めるには、疲れ過ぎていた為に、スートゥケイスをベドゥの下に蹴った。そして私はこれを埋めて行った。モーリスの痛みは、彼の書いたものの中に詰まっている。彼の文を通して疼くその神経が、貴方には聞こえる筈です。さて、もし痛みが一人の小説家を作られるのなら、私も又、モーリスに教えられています。私は、一度だけでも貴方に話せたらと思います。私はヘンリに話せない。私は誰にも話せない。親愛なる神よ、私に打ち明けさせて下さい。
 昨日、十字架像、安物の不格好なものを買った。私は速くそれをしたくなったから。それを頼む時、私は頬を赤らめた。誰かが、店の中で私を見たかも知れない。彼らは、ゴム製品店のように、ドアの中に曇りガラスを嵌めるべきである。私は私の部屋のドアに鍵を掛けると、私は、宝石箱の底からそれを取り出せる。祈り手、それは私、私、私ではない、と私に分かっていたらと思う。私を救って下さい。私をもっと幸せにして下さい。私を、私を、私を直ぐにでも死なせて下さい。 リチャドの頬のあの悍(おぞ)ましい痣について私に考えさせて下さい。涙が流れるヘンリの顔を、私に見せて下さい。私に我を忘れさせて下さい。親愛なる神よ、私は愛そうとして、それをこんなに支離滅裂にしました。もし私が貴方を愛せたら、彼らをどんな風に愛したらいいのか、私にも分かったでしょう。私は、伝説を信じます。私は、貴方が生まれたことを信じます。私は、貴方が私たちの為に死んだ事を信じます。私は、貴方が私達の神であることを信じます、私に愛すことを教えて下さい。私は、私の痛みを気にしません。私が耐えられない、それは彼らの痛みだ。私の痛みは、上へ上へと募らせて下さい。が、彼らのは止めて下さい。親愛なる神よ、暫く貴方が貴方の十字架から降りられるのであれば、代わりに私の身を起こして下さい。もし私が貴方のように苦しめば、私は貴方のように癒せるでしょう。

1946・2月4
 ヘンリは、仕事を離れ一日を手に入れた。私は、何故か知らない。彼は私に昼食を御馳走し、私たちは、ナショナル・ギャラリへ行って、速い夕食を摂り、劇場に向かった。彼は学校を休行かせず、子供を外に連れ出している片親のようだった。それにしても、彼の方が子供だった。

1946・2月5
 ヘンリは、私たちのために春に海外での休日を計画している。ルワーのお城と、爆撃下のドイツの士気に関する報告書を作成出来るドイツとの間で、彼は彼の心を決め兼ねている。私は、春になって欲しくない。そこへ私はもう一度行く。私は望む。私は望まない。もし私が貴方を愛せたら、私はヘンリを愛せたでしょう。神は、男を造られた。彼は、彼の乱視眼を持つヘンリ、彼の痣を持ったリチャドゥ、モーリスだけはなかった。私がハンセン病患者の痛みを愛せたら、私はヘンリの退屈さを愛せないのか?何れにせよ、私は、彼がここにいたら、ハンセン病患者に背を向けようとする、私がヘンリと隔たり、我が身を閉ざすに連れ、と私は思う。私は、何としてでも劇的であってほしい。私は、貴方の釘の痛みの心構えは整っていても、地図とミシュラン・ガイドゥの24時間を、私は耐えられない。親愛なる神よ、私はまるで機能しない。私は今尚、意気地なしの格好つけ。私をこの状態の外に追い遣って下さい。

1946・2月6
 今日、私はリチャドゥと空恐ろしいシーンを演じた。彼は、クライストゥ教会の矛盾について、私に話していた。そして私は、一生懸命聞こうとしていたのに、物の見事に成功していなかった。その内、彼はそれに気付いた。彼は突然私に言った。「貴女は、何をしにここに通っているの?」そして、私は自分自身を確認出来る前に、私は言った。「貴方を見る為に。」
 「僕は、貴方は学ぶ為に来ていると思っていました。」と彼は言い、私は彼に、それが私が言いたいことだと話した。彼は私を信じていない、と私には分かった。それに、彼のプライドゥは、傷付くだろうし、彼は怒るだろう、と私は思ったのに、彼は全く怒らなかった。彼は、彼の木綿更紗の椅子から立ち上がって近付き、彼の頬を見せない側の木綿更紗の椅子に、私と一緒に座った。彼は言った。「毎週貴女を見ること、それは、僕には多くを意味する。」その時、彼は私に恋をし始めている、と私は知った。彼は、私の手首に彼の手を置き、尋ねた。「貴女は、僕が好きですか?」
 「はい、リチャドゥ、勿論、」私は言い、「そうでなければここにはいません。」
 「貴女は僕と結婚しますか?」彼は尋ね、私がもう一杯お茶を飲みたいかどうか、聞いているかのように、彼のプライドゥは、彼にそう尋ねさせた。
 「ヘンリは、反対するかも知れない。」私は言った、それを一笑に付そうとして。
 「何ごとも、貴女にヘンリの下を去らせはしないでしょ?」そして私は腹立たしく思った。喩え。私がモーリスの為に彼の下を去らなかったにしても、何故貴方の為に彼の下を去るよう期待されなければならないの?
 「私は結婚しています。」
 「そんなことは、僕にも貴女にも大した意味のあることではない。」
 「オウそうなの、それもそうね。」私は言った。私は何れ彼に話そうと思っていた。「私は、神を信じるわ、」私は言い、「そして安息そのものを。貴方は私に教えて来た。貴方とモーリスが。」
 「僕には分からない。」
 「貴女は何時も、牧師が貴女に信じないように教える、と言った。ところで、それじゃあ、どっちみち上手く行かない。」
 彼は彼の美しい手を見た―彼はその左側を自分の物とした。彼は、随分ゆっくりと「僕は、何を貴方が信じても気にしません。貴女は、僕が気にするその馬鹿げた手品の鞄を、丸ごと信じても構わないんだよ。僕は貴女を愛している、サラー。」
 「御免なさい。」私は言った。
 「僕がその全てを遠ざけるくらいなら、僕はもっと貴方を愛します。僕が貴女による子供を設けたら、僕は、彼らを貴女に悪の道に導かせます。」
 「貴方は、そんなことを言ってはいけないわ。」
 「僕は、お金持ちの男ではない。僕の教義を捨てることを申し出られもしますが、それは単なる餌に過ぎません。」
 「私は、他の誰かと恋愛中です、リチャドゥ。」
 「もし貴女があの馬鹿げた誓いによって、制約を感じているのなら、貴女は、手放しで彼を愛せない筈だ。」
 私は、心侘びしく言った。「私はそれを破る為に、私のべストゥを尽くしたけれど、それは上手くは行かなかった。
 「貴女は僕を馬鹿だと思いますか?」
 「何故、私が?」
 「こんな物を持った男を貴女に愛して欲しいと願っているから。」彼は、彼の傷んだ頬を私の方に向けた。「貴女は。神を信じる、」彼は言い、「その方が楽だから。貴女は奇麗だし。貴女は、どんな欠点も持たない。それなのに、こんな物をたかが子供に付けた神を、何故、僕は愛さなければならない?」
 「親愛なるリチャドゥ、」私は言って「そこには、何もそんなに酷く傷んだ所はないわ・・・」私は、私の目を閉じ、その頬に私の口を置いた。私は、一瞬奇形ではないかと危ぶみ、私は、血の気が引く思いがした。そして彼は、静かに座り、彼にキスを私にさせた。そこで私は、痛みにキスをしています、幸せが決して貴方のものにならない限り、痛みは貴方そのものだと思いました。私は、貴方の痛みに入り込んで、貴方を愛します。私は、その肌に殆ど金気と塩気を味わえ、私は感心して、何ていい味わいでしょう貴方は。貴方は、幸せと共に私たちを殺しても良かったのに、貴方は、痛みの中にある貴方と共に、私たちを生き永らえさせます。
 私は不意に動いて離れる彼を感じ、私は、私の目を開けた。彼は言った。「グドゥ‐バイ。」
 「「グドゥ‐バイ、リチャドゥ。」
 「戻って来ないで、」彼は言い、「僕は、貴方の哀れみに耐えられない。」
 「それは、憐れみじゃないわ。」
 「僕は、自信の愚かさに輪を掛けてしまった。」
 私は、去った。それでは、そのままいても何れいいことはない。私は、彼があんな風に痛みの印を身に付けて、あちこち持ち歩きいているのを、私たちが美と呼ぶものを、この鈍感な人間の代わりに、毎日鏡の中に貴方を見ているのを羨んだ、と彼に言い出せなかった。

1946・2月10
 私は貴方に書く、或いは話す必要性を感じない。それは、少し時を遡って、貴方宛てにどのように手紙を始めるかであり、私は自らを恥じて、私はそれをすっかり引き千切った。それが私の心の中に届く前に、何もかも知っている貴方に手紙を書くこと、それが酷く馬鹿げたことのように思えたから。私が貴方を愛する前と同じくらい有り余る程、モーリスを愛しましたか?それとも、私が何時も愛したのは、それは、実は貴方でしたか?私が彼に触れた時、私は貴方に触れましたか?私が先に彼に触れなかったら、私は貴方に触れることが出来ましたか?私は、ヘンリにも、誰にも触れもしなかったので、彼に触れました。そして彼は私を愛し、彼は、他のどんな女にもしなかったように、
私に触れました。彼が愛した、それは、私だったのか、それとも貴方?貴方が、好き嫌いをする物事を、私の中で、彼が嫌がりました。彼はそうとは知らず、何時も貴方の側にいました。貴方は、私たちの別離を望みましたが、彼も又それを望みました。彼は、彼の怒りと彼の嫉妬を抱えたまま、それに向かって動きました。彼は、私に有り余る程の愛情を注ぎ、ですから、私も、彼に有り余る程の愛情で答え、間もなく、貴方なしで、私たちが終わろうとする時、そこには何一つ残されていなかったのです。私たち二人の為に。私は一時(いっとき)有りもしない愛情を費やしながら、ここからあちらへ、この男からあれへとそれを遣り繰りしながら、命ある時を握り潰しました。それなのに、その最初の時でさえ、パディントン近くのホテルで、私たちは、私たちが持つ全てを、使い果たしました。お金持ちに貴方が諭すように、私たちに浪費することを勧めながら、貴方はそこにおられた。ですから、それは、或る日、この貴方の愛以外、私たちは、何一つ残っていなくても構わなかった。けれど、貴方は、私に大変よくして下さる。私が、痛みをと請う時、貴方は安らぎを授け、彼にもそれを上げて下さい。彼に私の安らぎを上げて下さい―彼は、それをもっと必要としています。

1946・2月12日
 二日前、私はあれ程の平穏と静けさと慈しみの感覚
を持った。暮らしは、又幸せの方向に向かっている。しかし昨夜、最上階でモーリスに会うために、長い階段を上っている夢を見た。私が階段の最上階に着いた時、私たちは愛を育むことにしていたので、私はまだ幸せだった。私が来た、と彼に呼び掛けたが、答えたそれは、モーリスの声ではなかった。道に迷った船に警告する霧笛のように、大声で伝え、私を怯えさせたそれは、見知らぬ人のものだった。私は考えた、彼は、彼のフラトゥを貸し、いなくなってしまった。彼が何処にいるのか、私は知らない。そして再び階段を降りようとすると、私の腰より水位が上がり、ホールは、霧でどんよりしていた。その時、私は目覚めた。私は、もう内心穏やかではなかった。私は只、過ぎた日に何時もそうであったように、彼が欲しい。私は、彼と一緒にサンドゥウイチを食べていたい。私は、バーで彼と一緒に飲んでいたい。私は疲れ、私はもう何の苦しみも欲しくない。私は、モーリスが欲しい。私は、普通の堕落した人間の愛情が欲しい。親愛なる神よ、私は貴方の苦しみを貰いたいのですが、今は、それが欲しくはありません。暫くそれを持ち去って、他の時にそれを与えて下さい。

BOOK FOUR

僕は、もう少しも先を読めなかった。繰り返し繰り返し何度も、一説が、僕を酷く傷付ける時は、僕は飛ばして読んだ。僕はダンスタンのことを見付けようとしながら、極力それを見付けたくなかった。しかし今やっと、先を読み進めていた、それは、歴史の未確定の日付に似て、時を追ってかなり後迄、滑るように引き返した。それが、目下の重大事という訳でもなかった。僕が共に残された記載は、たった一週間古いだけの記載だった。「私にはモーリスが欠けている。私には、普通の堕落した人間の愛情が欠けている。」
 それなら、僕は貴方に上げられる。と僕は思った。僕は、何か他の類の愛情のことは分からないが、もし貴女が思うのなら、貴方は間違っているということの全てを、僕は不意にした。そこには、僕たち二人の暮らしの為に十分残されている。そして僕は、彼女が彼女のスーツケイスを一杯にしたあの日のことを考えた。幸福が、間近に迫っていることも知らず、僕はここで仕事をしながら座っていた。僕は知らなくて良かったし、僕が知ったとしても、僕は嬉しかった。僕は今が行動の時だ。ダンスタンなんか、関係なかった。空襲長官も関係なかった。僕は電話に向かい、彼女の番号を回した。
 メイドゥが出た。僕は言った。「こちらは、ベンドゥリクスです。僕は、マイルズ婦人に話しがありまして。」彼女は、そのままでいるよう僕に話した。僕がサラーの声を待っている時、僕は長距離レイスの終盤であるかの如く、僕は息切れを覚える程だったのに、
届いた声は、マイルズ婦人は、お出かけです。と僕に話すメイドゥのものだった。何故僕は彼女を信じなかったのか、分からない。僕は、五分待まって、それから僕のハンカチフで送話口を覆うように、きっちり広げ、僕は、もう一度掛け直した。
 「マイルズ氏は、いらっしゃいますか?」
 「いいえ、サー。」
 「それなら、マイルズ夫人に話せますか?こちらは、サー・ウイリアム・マロックです。」
 「サラーが返事をするまでに、そこに、単なるほんのちょっとした間があった。「今晩わ、こちらは、マイルズの妻です。」
 「僕だよ、」僕は言い、「僕は貴女の声が分かる、サラー。」
 「貴方・・・と私は思いはしたわ。」
 「サラー、」僕は言い、「僕は、貴女を見る為に出掛けるつもりだ。」
 「いえ、どうしてもだめ。聞いて、モーリス。私はベドゥにいるの。今そこから私は話しているの。」
 「かえっていいじゃないか。」
 「馬鹿なことを、モーリス。私は具合が悪いと言う意味よ。」
 「それなら、貴女は僕を一目でも見る方がいい。何が気懸かりなの、サラー?」
 「オウ、何も。性質の悪い風邪なの。聞いて、モーリス。」彼女は女性家庭教師のようにゆっくりと、彼女の言葉の間隔を開け、それは僕を怒っていた。「どうか来ないで。私は貴方を見ることは出来ない。」
 「僕は、貴女を愛している、サラー。だから行くよ。」 
 「私は、ここにいられなくなるわ。私が起きます。」僕は思った、共有地を走って横切れば、そりゃあたった四分もあればいいだろう。彼女は、その時間内に服を着ることは出来ない。「僕はメイドゥに誰も中に入れないように話すつもりだ。」
 「彼女は、解雇の体を成さない。それで僕が解雇されざるを得ないようにする、サラー。」
 「どうか、モーリス…お願いだから。私は、長い間貴方に何もお願いしたことはないわ。」
 「一度だけの昼食を除いて。」
 「モーリス、私はあまり体の調子が良くないの。私は、只今日だけは、貴方を見られないの。来週・・・」
 「そこには、恐ろしい程何週間もあるようだよ。僕は貴女を今夜見たい。」
 「どうして、モーリス?」
 「貴女は、僕を愛している。」
 「どうして決め付けるの?」 
 「深く考えないで。僕は、僕と一緒に遠くへ行くよう貴女に頼みたい。」
 「でも、モーリス、私は、電話でも上手に答えられるわ。答えは、いいえ。」」
 「僕は、電話で貴女に触れることは出来ない、サラー。」
 「モ-リス、私の愛しい人、どうか。貴方は来ないと約束して。」
 「僕は出掛けるよ。」
 「聞いて、モーリス。私は、酷く具合が悪いと思うの。」
 「それに今夜は痛みが酷いの。私は起きたくない。」
 「貴女が、そうする必要はない。」
 「私が起きて、服を着て、家を出ることにします、もし貴方が約束しないのなら・・・」
 「このことは、サラー、僕たち二人には風邪より大切だ。」
 「どうか、モーリス、どうか。ヘンリが間もなく家に戻るの。」
 「彼をいさせるといい。」僕は、電話を切った。
 それは、僕が一か月前ヘンリに会った時より、悪天候の夜だった。この時、それは雨の代わりに霙(みぞれ)だった。それは、雪への途中で、縁取られた滴りが、誰かのレインコウトゥのバトゥンホウルを抜けて、中へとその道を切り取るかのようだった。それは、共有地のラムプを覆い隠した。だから、それだけで、走るのは難しく、僕の足では、とうてい速く走れる筈がない。僕の戦時の懐中電灯を、僕の手に持って来ていればなあ。北側の家に着くのに、僕なら八分も時間がかかってしまうから。ドアが開き、サラーが外に出た時、僕は渡ろうとして、ちょうど舗道から離れ、歩を進めようとしていた。僕は幸せと共に思った。僕は今彼女を自分のものにしている。夜が尽きる前に、僕たちは、又一緒に眠るのは当然だということが、絶対の確信と共に、僕は分かった。そして、それは一旦、新たに始められたからには、何事があろうと構わなかった。僕は、以前、彼女を全く知らず、今まで僕は、彼女をそこまで深く愛したことはなかった。僕たちは、知れば知る程更に、僕たちは愛し合う、と僕は思った。僕は、信頼の領域に戻った。
 彼女は、霙を突いて広い道路を横切り、僕を見る為に、随分急いでいる様子だった。彼女は、左に曲がり、急いで歩き去った。僕は思った、彼女は、何処か座る場所を必要とするだろう。それに僕は彼女を罠にかけた。僕は、二十ヤードゥ後ろを付いて行ったが、彼女は、決して後ろを振り返らなかった。彼女は、共有地の端を通った。彼女は地下鉄に向かっているかのように、池や爆弾投下の本屋を過ぎた。さて、もしそれが必要だったら、混み合った列車の中で、彼女に話すことも良しとした。彼女は、地下鉄⊶階段を降り、出札口に向かったものの、彼女は、彼女の手にバッグを抱えていなかったので、彼女は、ポキトゥの中のどちらにもざら銭がないと思った―三半ペンスさえなく、それでは、深夜まで、あちこち旅に出ることも出来なくなりそうだった。階段を再び上り、路面電車が走る道を横断した。或る俗事は、止められてしまったが、もう一つは、明らかに、心の中に現れた。僕の勝ちだった。彼女は、恐れたが、彼女は、僕を恐れたのではなかった。彼女は、彼女自身を恐れ、僕たちが会った時、何かが起ころうとしていた。僕は既にゲイムに勝っていると思い、僕の生贄に対して、確かな哀れみを感じる余裕が出来た。僕は彼女に言いたかった、心配しないで、心配しなくていい、何処にも恐れるものは何一つなく、僕たちは二人で直ぐに幸せになろう。悪夢は、殆ど乗り越えた。
 そして次に彼女を失った。僕は、確信し過ぎ、その上、僕は彼女に余りにも寛大なスタートゥを許した。彼女は、僕の二十ヤードゥ先で、道路を渡り(階段を上っている内に、又、僕は遅れをとった)、路面電車が間に割り込んで走り、彼女は行ってしまった。ハイ・ストゥリートゥを下って左折したのか、或いはパーク・ロウドゥを下った先を直進したのかも知れなかったが、僕は彼女を見ることは出来なかった。僕は余り心配しなかった―僕が彼女を今日探せなかったら、僕は次にする。今、僕は全く馬鹿げた誓いの物語を理解し、今、僕は彼女の愛を確信した。僕は彼女を安心させられる。二人が愛し合えば、彼らは一緒に眠る。それは数学の公式で、人の経験によって、試され、証明された。
 ハイ・ストゥリートゥのその場所には、A.B.Cがあり、僕は、それを試みた。彼女はそこにはいなかった。次に、僕は、パーク・ロウドゥの隅の教会を思い出し、僕はそこに来たことは、直ぐに分かった。 僕は辿った、彼女が聖母マリアの柱状の、酷く醜い塑像に近い通路側の一つ、そこに座っていたことは、十分間違いなかった。彼女は祈ってはいなかった。彼女は、彼女の目を閉じて、そこに座っていただけだった。僕は只、塑像の前のキャンドゥルの灯で彼女を見た。その場所辺りは酷く暗かったから。僕は、パーキスさんのように彼女の後ろに座り、待った。物語の結末を知った今、僕は何年でも待つことが出来た。僕は、寒くて、濡れてはいても実に幸せだった。そこにちらついている供物台や塑像に向かって、慈愛の眼差しで見ることさえ出来た。彼女は、僕たちを二人共愛している、と僕は思ったが、そこに、想像と一人の男の間の不一致があるべくしてあるにしても、誰が勝とうとしているか、僕には分かる。彼女の腿に僕の手を、或いは、彼女の胸に僕の口を置けたらいい。彼は、供物台の後ろに閉じ込められ、彼の弁明を訴えようにも、身動き出来なかった。
 突然、彼女は咳き込み始め、彼女の手で彼女の方に押さえた。彼女は、苦しんでいると納得し、、そして僕は、苦しむ彼女を一人のままにして置くことが出来なかった。僕は近付き、彼女の側に座って彼女が咳をしている間、彼女の膝に僕の手を置いた。僕は思った。単に誰かが触れるだけで、それは治せることもあった。発作が治まった時、彼女が言った。「どうか、貴方は、私を放って置いてくれない?」
 「僕は、貴女を放って置けない。」と僕は言った。
 「何が貴方にあったの、モーリス?貴方は、この前の昼食の時のようじゃないわ。」
 「僕は、心を痛めた。貴女が僕を愛していると気付かなかった。」
 「どうして私がそうなんだと思うの?」彼女は尋ねたのに、彼女は、僕の手を彼女の膝の上で弄んだ。僕は次に、パ―キスさんが、どうやって彼女の日記を盗んだか、彼女に打ち明けた―僕は、もはや、僕たちの間にどんな嘘も、望まなかった。
 「それは、していいことじゃなかったわ。」彼女は言った。
 「良くないわ。」彼女は再び咳き込み、それから疲れて、彼女は彼女の肩を僕に傾けた。
 「僕の愛しい人、」僕は言い、「もう、何もかも終わりだよ。待つこと、を言っているんだよ。僕たちは一緒に遠くへ行くんだ。」
 「いいえ、」彼女は言った。僕は、僕の腕を彼女に回し、彼女の胸に触れた。「これが、僕たちがもう一度始める場所だよ、」僕は言った。僕は酷い恋人だった、サラー。そうしたのは、それは不安だった。僕は貴女を信用していなかった。僕には、貴方が十分わかっていなかった。しかし今は、僕は安心している。」
 彼女は何も言わなかったが、彼女は尚も、僕に凭れていた。それは、承諾に似ていた。僕は言った。「どんなにそれがある方がいいか、僕は貴女に言いたい。」家に戻って、二、三日ベドゥに横になると言い―そんな風邪をひいていたのでは、貴女は旅行もしたくない。僕は毎日電話をして、貴女がどんな具合か見よう。貴女が十分よくなれば、僕は真っ先に駆け付け、貴女が荷造りをするのを手伝おう。僕たちは、ここに居てはいけない。僕にはドーセトゥにいとこがいて、彼は僕たちが使える空いたカティジを持っている。僕たちは、そこに二、三週滞在し、休息しよう。僕は、僕の本を聞き終えられるだろう。僕たちは、その後弁護士に面会出来る。僕たちは休息を必要としている、僕たち二人共。僕は疲れ、貴方なしでいることの断罪に僕は病んでいる、サラー。」
 「私も。」僕がそれに不慣れな者であれば、僕はそれを聞き取りようもない程、彼女は酷く低く話したが、それは、パディントン・ホテルでの最初の愛の‐確認から、僕たちの結び付きの全てを貫いて響き渡ったサイン入りの調べのようだった。「私も」孤立、悲しみ、落胆、喜びと絶望、全てを分かち合おうとする要求故の。
 「お金は、乏しくなるだろう。」と僕は言った。「しかし、そんなに乏しいという程でもない。『a Life of Gneral Gordon』をやることを依頼され、その前金は、三か月間、不自由なく、僕たちの暮らしを維持するのに十分だ。その時までに、小説に手を付け、それに関する前金が入る。本は両方共、今年出るだろうから、それで、次の現金まで、僕たちはやって行ける。僕は、貴女と一緒にそこで仕事が出来る。貴女なら分かるでしょ、こうなればどんな時も、僕は乗り越えてみせるよ。僕は、延々と大衆的成功のままだろうし、貴女は、それを嫌がり、僕はそれを避けようとするだろうが、どうせ物を買い、浪費し、それも又、僕たちが一緒であれば、楽しからずやだろう。
 ふと、僕は彼女が眠っていると気付いた。彼女の高揚によって疲れ、彼女は、タクシで、バスで、公園の‐座席で、あれ程数ある機会のように、僕の肩で熟睡した。僕はじっと座り、彼女の為すがままにした。暗い教会のそこには、彼女を妨げるものは何もなかった。聖母マリアの周りに、蠟燭が揺れ、そこには他の誰もいなかった。彼女の重みがかかる僕の上腕の痛みが、ゆっくりと増してゆくことは、僕が今までに知った最高の喜びだった。
 子供たちは睡眠中、彼らに何を囁くかに左右される
と思われるが、僕もサラーに囁き始めた。言葉が催眠状態で彼女の無意識の心に落ちるよう願いながら、彼女を起こさないよう十分声を落として。「僕は、貴女を愛している。サラー。」僕は囁いた。「誰も、前にこれ程貴女を愛した者はいなかった。僕たちは、幸せになろうね。ヘンリは、彼のプライドゥに関らない限り気にもせず、プライドゥは、直ぐに甦る。彼は、貴女の居場所を掴む為に、新しい習性を探すだろう―多分彼はギリシャのコインを集めるだろう。僕たちは他所へ行こう、サラー、僕たちは他所へ行こう。もう誰もそれを止められない。貴女は、僕を愛している、サラー。」僕は新しいスートゥケイスを買うべきかどうか迷い始めたように、僕は冷静そのものだった。その時、彼女は咳き込みながら目覚めた。
 「私は、眠ってしまった。」と彼女が言った。
 「貴女は直ぐに家に帰らなきゃあ。貴女は、風邪をひいている。」
 「それは、家じゃないの、モーリス。」彼女は言った。「私は、ここから他所へ行きたくない。」
 「それは風邪だよ。」
 「私は、風邪のことはどうでもいいの。それに暗いわ。私は暗闇の中でなら、何でも信じられるの。」
 「只、僕たちのことを信じればいい。」
 「それは私が言おうとしたことよ。」彼女は、又目を閉じ、塑像を見上げながら僕は勝利と共に考えた。殆ど彼が生きているライヴァルかのように、お前は見ている―これが勝つという口論だ、そしてそっと彼女の胸を十文字に僕の指を動かした。
 「貴女は、疲れているんだね?」僕は聞いた。
 「とても疲れた。」
 「貴女は、あのように僕から急いで離れるべきではなかった。」
 「私が急いで距離を置いたのは、それは貴方からではなかった。」彼女は、彼女の肩を動かした。「どうか、モーリス、もう行って。」
 「貴女は、ベドゥに入っていなきゃいけない。」
 「私は、直ぐにそうするわ。私は、貴方と一緒に帰りたくない。私は今ここで、グドゥ‐バイを言う方がいいの。」
 「貴女はずっとここにいない、と約束するね。」
 「私は約束する。」
 「じゃあ、貴女から僕に電話を掛ける?」
 彼女は頷いたが、彼女の手を見下ろすと、それは、何か何処かへ投げられた物のように、彼女の膝の中、そこにあった。
彼女が彼女の指を交差させたのを、僕は見た。僕は怪しんで彼女に聞いた。「貴女は、僕に真実を話している?」僕は、僕のもので彼女の指を解いて言った。「貴女は、又、僕から逃げようと思っていない?」
 「モーリス、親愛なるモーリス、」彼女は言い、「私は、その強さを貰わなかった。」
彼女は、子供がするように、彼女の目の中に握り拳を押し付けながら泣き始めた。
 「私は、すまないと思っているの、」彼女は言い、「今直ぐ何処かへ行って、どうか、モーリス、ほんの少しだけ慈悲をちょうだい。」
 人は、困らせること、企むことの限界に向かって獲得する。僕は僕の耳のその訴えで、続けられなかった。僕は、彼女の堅く、結び目の多い髪の彼女にキスして、遠ざかりながら、僕は、僕の口の隅で、彼女の唇の金気と塩気に気付いた。「神は貴方を祝福する。」彼女は言い、僕は、それは、ヘンリ宛の彼女の手紙で、彼女が横線を引いたことだと思った。その人がスマイズでさえなければ、人は、他の人のグドゥ‐バイにグドゥ‐バイと言い、彼女に彼女の祝福をお返しに繰り返した時、それは無意識の行いだった。しかし教会を後にして振り返りながら、蝋燭の‐灯の縁のそこに、乞食が暖を求めて入っているような体を丸めた彼女を見ながら、僕は、神が彼女を祝福すること、又、神が彼女を愛することを想像出来た。僕は、僕たちの物語を末尾に向かって書き始めた時、嫌悪の記録を書いていると思ったが、何故か、嫌悪は置き忘れられ、ぼくが知っている全ては、彼女の過ちであり、彼女の不確実性であるにも関わらず、そうなる。彼女は、大多数より好ましかった。僕たちの内の誰かは、彼女を信じる。彼女は、彼女自身をそうしたことはなかった。

 翌数日、僕は賢明になるには、大きな努力を要した。僕は目下、僕たち二人の為に励んでいた。朝、僕は、最低七百五十語を自分自身で組み立てたが、大抵、11時近くには、一千を処理し終えた。希望の効果、それには驚いている。昨年中、すっかり引きずってしまった小説は、その結末に向かって走った。ヘンリは、9時30分辺りに仕事に出かけるということを、僕は知っていたから、電話して彼女と向き合うおおよその時間は、その時と12時30分の間だった。ヘンリは、昼食の為に帰宅し出した(そういうふうにパ―キスは、僕に話した)3時以前に、もう一度彼女に電話する機会は、総じて皆無だった。僕は、一日の仕事を校正し、12時30分までつづりを確認し、そうしてその後、どんなにうんざりしようとも、期待から僕は解放された。2時30分まで、大英博物館の閲覧室で、the life of General Gordonの為の覚書を作りながら、時間内に置くことが出来た。僕は、僕自身読むことにも、覚書を引用することにも夢中になれなかった。
そこで、サラーの思いが、僕とチャイナでの宣教師暮らしの合間合間にちらついた。何故僕は、この伝記を書く為に招聘されたのか?僕はおおよそ不可解だった。彼らは、ゴードンの神を信仰する筆者を選んだ方が、より上手く事が運ぶのだろう。ハートゥームでの執拗な態度―国内での無難な行政官の憎悪を、僕は察するに容易だった―何れにせよ、机上のバイブルは、僕のものと距離があり、他の思考の世界に属した。多分、ゴードンのクライストゥ教信仰の皮肉な扱いは、スキャンダルの成功を呼び覚ますだろうということを、出版社は、半ば望んだのである。僕には彼を喜ばせる意図など微塵もなく、この神も又、サラーの神で、僕は、彼女が愛すものを彼女が信じた、どのような幻であろうと、石を投げる用意はなかった。僕はあの期間、彼女の神を多少なりとも毛嫌いしたことはなかった。だから、僕の方がより強固であると、最後まで証明しなかったのか?
 或る日、何故か決まって譲渡された僕の消えない鉛筆を手にして、僕が僕のサンドゥウイチを食べていると、懐かしい声が、向こう側で、フェロウ研究者への敬意から宥めるような語調で、デスクから僕に挨拶をした。「思いの外、今は、何もかも上手く行っているんですね、サー。もし貴方が個人的侵入を許して下さるなら。」
 忘れもしない口髭を、僕のデスクの背の向こうに見た。「とても上手くいってるよ、パ―キス、ありがとう。認められていないサンドゥウイチを食べる?」
 「オウいえ、サー、私は、とても戴けません・・・」
 「さあ、おいでよ。それは、実費の上乗せだと思ってくれ。」しぶしぶ彼は一つ取り、それを広げながら、まるで彼はコインで、しかもそれが金貨だと分かったかのように、或る種の恐怖と共に目を丸くした。「それは、本場のハムだよ。」
 「僕の出版社が、アメリカから缶詰の缶を僕に送ってくれたんだ。」
 「それは、貴方、とても良かったですね。」
 「僕は、今も灰‐皿を持っているよ、パ―キス。」
僕が囁いたのは、僕の隣人が、腹立たし気に僕を見上げていたから。
 「それは、感傷的な値打ちがあるだけ。」彼は囁き返した。
 「貴方の若者は、どうしてる?」
 「少し気難しくて、サー。」
 「僕は、貴方をここで見て驚いている。仕事?本当に、貴方は僕たちの内の一人を、監視してはいないの?」僕は、閲覧‐室の埃を被った収容者―暖を求めて、屋内で少しでも帽子やスカーフを身に付けた男たち、ジョージ・エリオトゥの完備した著作を骨を折って勉強していたインド人、又、同じ山積みの本の側で、横たえた彼の頭を抱えて毎日眠っていた男――性的妬みの戯曲に関心を持つことが出来る男など考えられなかった。
 「オウいえ、サー。これは、仕事ではありません。それは今日は僕の休みで、若い者は、今日は学校に戻っています。」
 「貴方は、何を読んでいるの?」
 「The Times Law Reportsを、サー。今日、僕はラセル事件に関っています。それは、人の任務に背景のようなものを提供します、サー。展望を開けよ。それは、日常の取るに足りない詳細から、一つの道を選び取ります。僕は、この事件の目撃者の一人を知っていました。僕たちは前に同じ事務所にいました。ところが、彼は、今や僕が背負い切れない程、歴史に飲み込まれてしまいました。」
 「オウ、貴方は全く分かっていない。パ―キス。」
 「人は、知っていますよ、サー。それが、がっかりさせていることです。僕がずっと掴もうとすると、遠のきました。公表されている離婚ケイスの証拠を禁止する法律は、僕の訪問者の男たちには打撃でした。裁判官は、サー、名前で僕たちに触れることはなく、彼は実に頻繁に専門家たちにえこ贔屓します。
 「それは、僕には打撃じゃあなかった、」僕は同情して言った。
 パ―キスでさえ、思慕の念を目覚めさせられた。僕は、サラーの思いなしに、彼を見ることは出来なかった。僕は、仲間への希望を抱いて、地下鉄で帰宅した。鳴り続ける電話の‐ベルの消え入りそうな期待に、寛いで腰を下ろしながら、僕は、僕の連れが、又離れてゆくのを感じた。それは今日ではないだろう。五時に、僕はその番号に電話を掛けたが、僕がベルが鳴る‐音を聞く間もなく、僕は受話器を元に戻した。おそらくヘンリが早く帰って、僕は勝者で、サラーは僕を愛し、サラーは彼と別れたがっている以上、僕は今、ヘンリに話せなかった。
 電話が鳴る前に、八日が過ぎた。それは、僕が期待した日時ではなかった。それは朝の九時前だったから。そして、僕が「ハロウ、」と言った時、答えたそれは、ヘンリだった。
 「そちらはベンドゥリクス?」彼は尋ねた。そこには、何か極めて妙な彼の声があり、彼女が彼に話したのか、と僕は動揺した。
 「はい、話しています。」
 「大変なことが起こってしまった。貴方は、知って置いた方がいい。サラーが死んだ。」
 僕たちはこんな瞬間にどう世間並みに振舞ったらいいのか?僕は言った、「実に残念だ、ヘンリ。」
 「貴方は、何か今夜しているの?」
 「いや。」
 「貴方が何とかして飲みにでも来てくれたらなあと思って。一人でいるなんて、想像もつかない。」

BOOK FIVE

僕はヘンリとその夜いた。そういうことは、初めてだった。僕は、ヘンリの家で眠った。彼らは、一部屋ゲストゥ‐ルームを持ち、サラーは、そこに(彼女の咳でヘンリに迷惑を掛けないように、彼女は、一週間前にそこに移った)いた。それで僕は、僕が愛を育んで出来た客⊶間のソウファアで眠った。僕は、その夜、いたくはなかったが、彼は、僕に請うた。
 僕たちは、僕たちの隔たりに、一本半ものフイスキを飲まなければならなかった。僕は、ヘンリが言っていたのを覚えている、「そりゃあ、不思議だ、ベンドゥリクス、人は、死んでしまうと、どれ程も妬んではいられない。彼女が、只、二時間前に死んでるだけなのに、僕は僕の側に貴方を必要とした。」
 「貴方は、嫉妬だと大げさなことを言う程のこともない。そんなことは、随分前に何もかも終わった。」
 「僕は、今、どんな気休めも要らない、ベンドゥリクス。それは、貴方もどちらも終わらない。僕は幸運な男だった。僕は、ずうっとあの年月、彼女を自分のものにした。貴方は、僕を憎みますか?」
 「僕は、分からない、ヘンリ。僕はそうだったと思うが、僕は分からない。」僕たちは、灯りも点けずに、彼の書斎に座っていた。ガス‐火は、互いの顔が十分見える程、強くしてなかった。だから僕が唯一話すことが出来たのは、ヘンリが、彼の声の調子でしくしく泣いた時だけだった。円盤投げ選手が、暗闇から僕たち両者を狙った。「こんなことがどうして起こったのか、僕に話してくれ、ヘンリ。」
 「貴方は、僕が共有地で貴方に会ったあの夜を覚えている?あれは、三週間前、或いは四、だったか?彼女は、酷い風邪をあの夜貰って来た。彼女は、それをどうにかしようともしなかった。僕は、彼女の胸に達したそれを知りもしなかった。彼女はその種のことを、誰彼となく、打ち明けることはない」―そして彼女の日記にさえ、と僕は思った。そこには病気関連の言葉は、全くなかった。彼女は、病気になる機会を持たなかった。
 「彼女は,仕舞に彼女のベドゥに向かった、」とヘンリは言って、「だけど誰も彼女をそこにじっとさせて置くことは出来なかったし、彼女は、医者に掛かろううとしない―彼女は、彼らを信じたことがない。彼女は、一週間前、起きて、外出した。神は、何処へ、又、何故かを知っている。彼女は、彼女には運動が必要だと言っていた。僕の方が先に家に帰り、彼女がいなくなっているのに気付いた。彼女は、九時まで、家に入らなかった。初めての時より酷くずぶ濡れになっていた。彼女は、雨の中を何時間も歩き回っていたに違いなかった。彼女は、一晩中熱に浮かされ、誰かに話し掛けていた、僕が知らない誰か、それは、貴方でも僕でもなかった、ベンドゥリクス。その後、僕は、彼女を医者に診せた。彼は、一週間早く、彼女がペニシリンを打っていたら、彼は、彼女を救えただろうに、と言った。」
 僕たちお互いの為に、為すべきことは、そこには何もなかったが、もっとフイスキを注いでくれ。僕は何処までも追及する為に、パ―キスに支払った新参者のことを思った。新参者が、確かに最後に勝った。否、私は思った、僕はヘンリを嫌ってはいない。僕は、喩え貴方が存在しようと、貴方を憎む。僕は、彼女が何をリチャドゥ・スマイズに言ったか、僕が、信じることを教えたと、僕は忘れはしなかった。僕の命運に賭けても、僕は如何ようにも口を開くわけにはいかなかっただけでなく、僕が何を投げ出したたかについて考えることも又、僕を自己嫌悪に向かわせた。ヘンリは言った。「今朝、四時に彼女は死んだ。僕はその場にいなかった。看護婦は、間に合うように僕を呼ばなかった。」
 「看護婦は、何処にいるの?」
 「彼女は、彼女の仕事を、非常にきちんとこなし切った。」彼女は、他の緊急事態を受け持ち、昼食前にいなくなった。
 「僕は、貴方に対して、役に立てたら思う。」
 「貴方が、ここに只座っているだけでいい。そりゃあ、大変な日だった、ベンドゥリクス。貴方も知っている、僕は、捌(さば)かなければならない死人を抱えたことはなかった。僕が先に死ぬものと、僕はてっきり思い込んでいた―又、サラーなら何をすべきか知っていただろうにと。もしサラーが、あの長時間、僕の側にいてくれたらなあ。考えようでは、あれは女の仕事だものー赤子を抱いているような。」
 「僕は、医者が助けたと思う。」
 「彼は、この冬、忙しくしていた。彼が、葬儀屋に電話を掛けた。僕は、何処に行くべきか、調べようともしなかった。僕たちは、職業電話帳を持った例がなかった。しかし、医者は、彼女の衣服をどう処理すべきか、僕に話す筈がない―カバドゥ(食器戸棚)は、そうしたもので溢れている。カムパクトゥ、香水―誰でも、むやみやたらに捨てられない・・・只、もし彼女が、姉妹でも持っていれば・・・」正面のドアが開き、閉じた為に、彼は、突然止めた。まさにそれは、彼が「メイドゥ、」と言い、僕が、「あれはサラーだよ。」と言った、あの何時かの夜にも起こったように。僕たちは、二階に上がって来るメイドゥの足音に耳を澄ました。一つの家がどんなに空疎でも、その中に三人も一緒にいられるのは、それは、奇妙ではあった。僕たちは僕たちのフイスキを飲み、僕は、もう一杯注いだ。「僕は、家の中を大勢にした、」ヘンリが言った。「サラーは、新しい拠り所を見付けた・・・」そして、又止めた。彼女は、何処の細道の外れにも立っていた。そこには、一瞬の間さえ、彼女を避けようとする目当ては、まず見受けられなかった。僕は思った、何故貴方は、僕たちにこうしたことをしなければならなかったのか?彼女が貴方を信仰しなかったら、彼女は、今尚生きているに決まっていて、僕たちは当然、未だに恋人だった。この境遇を不満に思って来たと覚えているのは、それは悲しくもあり、可笑しくもあった。僕は、彼女を、今やっと幸せそうに、分かち合おうとしていた。
 僕は言った、「それで葬儀は?」
 「ベンドゥリクス、僕は、どうしていいか分からない。何かかなり手こずらせる事態になった。彼女がうわ言を言った時(勿論、彼女に責任はなかった)、看護婦は、彼女は牧師にずっと聞いていた、と僕に教えた。少なくとも彼女は、ファーザ(父である神)、ファーザ、と言い続けた、そしてそれは、彼女自身である筈がなかった。彼女は、彼を理解したことがなかった。勿論看護婦は、僕たちがカサリクではないと知っていた。彼女は、実に賢明だった。彼女は、彼女を宥めた。しかし僕は、悩んでいる、ベンドゥリクス。」
 僕は、怒りと苦々しさを併せ持って考えた、貴女は、不憫なヘンリを一人残して去ってもいいんだろう。僕たちは、貴女を手放して何年も遣って来た。何故貴女は突然、あらゆる立場の中に割り込み始めるはめになってしまったのか、対蹠地から見知らぬ親族が戻って来たように。
 ヘンリは言った、「誰でも、ロンドンに住んでいれば、火葬が、最も拘りのない方法なんだが。看護婦が、それを僕に言うまで、僕は、それをゴウルダズ・グリーンで執り行おうと計画していた。葬儀屋は、火葬場に電話を掛けた。彼らは、明後日サラーを納める。」
 「彼女は、うわ言を言っていた」と僕は言い、「貴方は、話しの中で、彼女が何と言おうと受け止める必要はない。」
 「僕は、そのことについて牧師に聞くべきかどうか迷った。つまり、彼女は、カサリクになってもよかったと僕は理解しているから。彼女は、最近、何だか妙だった。」
 「オウいや、ヘンリ。彼女は、貴方や僕以上に、何かを拠り所としてはいなかった。」僕は、彼女が妬き尽く去れたらと願い、僕は言えたらと望んだ、貴方に出来るものなら、その体を復活させてみなさいと。僕の嫉妬は、尽きなかった。ヘンリのそれに似て、彼女の死を以てしても。それは、彼女が未だに生きているかのように、彼女が僕に対して望む恋人という関係のにあった。僕は、彼らの永遠性を中断する為に、パ―キスを彼女の後に送れたらと、どれだけ願っただろう。
 「貴方は、本気か?」
 「本気だよ、ヘンリ。」僕は思った、僕は慎重になってしまった。僕は、リチャドゥ・スマイズのようになってはいけない、僕は嫌がってはいけない、何故なら、もし僕が心底嫌ってしまったら、僕は信じようとし、もし僕が信じようとしたら、貴方と彼女の為にどんな勝利が。ここは、演技をすることだ、復讐や嫉妬について語り合いながら。それは、まさに何か脳を満たすものだ。だからこそ、絶対的な彼女の死を忘れられる。一週間前、僕は、何の気なしに彼女に言った、「貴女は、あの初めて二人揃った時を、それにミータの代金一シリングを、どうにもこうにも僕が手にしていなかったのを覚えている?、だからそのシーンは、僕達二人の為に、そこになくてはならない。今は、只僕だけの為に、それはそこにある。彼女は、僕たちの思い出の全てを見失った、永遠に、そしてそれは、死ぬことに託(かこつ)けて、彼女は、僕自身の一部を僕に失わせたのだ。僕は、僕一個の体裁を失いつつあった。それは、腕木のように、剥がれて落ちる思い出
、僕自身の死の初舞台だった。
 「¥僕は、この祈りと墓‐掘りの騒動の全てが嫌だが、サラーがそれを良しとしたら、僕は、それを手配させよう。」
 「彼女は、彼女の結婚式を出生登録書ですることにした、」僕は言った、「彼女は。彼女の葬儀が、教会になればいい、と思いもしない。」
 「いや、僕は、それが本音だと思わないよね。」
 「登録と焼却は、」僕は言い、「それらは、共にℍ運び、」すると暗がりで、ヘンリは彼の頭を持ち上げ、まるで彼は僕の皮肉を疑うかのように、僕の方をじっと見詰めた。
 「貴方の手を煩わせないで、その全てを僕に任せてくれ。僕は仄めかした、まさに同じ部屋の中、同じ炉火の側、僕は仄めかして来た、彼の所為でサヴィジ氏を訪ねていると。
 「そうすることが、貴方もいいんだね、ベンドゥリクス。」彼は、極めて慎重に、公平に、僕たちのグラスに最後のフイスキを流し込んだ。
 「真夜中だ、」僕は言い、貴方は少し睡眠を取らなきゃいけない。出来るなら。」
 「医者が、僕に少し丸薬を残してくれた。」しかし彼は、未だ一人切りになることを望まなかった。僕は、彼がどんな気持ちでいるか、正確に知っている。何故なら、僕も又、サラーと一緒だった一日後、出来るだけ長く、僕の部屋の寂しさを先に延ばそうとする。
 「僕は、彼女が死んでいるのを思い出さないようにしている、」とヘンリが言った。そして僕は、それをも経験してしまった。1945中ずうっと―悪い年―忘れながら、僕たちの恋愛‐事件は終わったと、電話が彼女以外のどんな声でも運べばいいのにと、僕が目覚めた時。彼女は、今彼女が死んでいるように、あの頃も、彼女は死んだも同然だった。今年一、二カ月間、亡霊は、僕を希望を餌に苦しめたが、亡霊は横たえられ、苦しみは、間もなく終わろうとしている。僕は、日に日に少しずつ、より死にたくなるにしても、僕はそれをどれだけこらえようと切に願うか。人が、人が生きるのを煩わせる限り。
 「ベドゥに行きなさい、ヘンリ。」
 「僕は、サラーの夢を見るのが心配だ。」
 「医者の丸薬を飲めば、見ないよ。」
 「貴方もそれが欲しいか、ベンドゥリクス。」
 「いや。」
 「貴方は、要らないんだね。貴方は、一晩いてくれるの?そりゃあ外は、汚い。」
 「僕は天気を気にしない。」
 「貴方は、大変な好意を僕に示してくれている。」
 「当たり前だよ、僕はいるよ。」
 「僕は、シートゥとブランキトゥを、持って下りるよ。」
 「気にしなくていいよ、ヘンリ、」しかし彼はいなくなった。僕は、寄せ木細工の床に目をやると、彼女の泣き声そのままの音色を思い出した。彼女が、彼女の手紙を書いた机の上には、散らかった物があり、どれも符号のようで、僕は解釈可能だった。僕は思った、あの小石でさえ、捨てていなかった。僕たちはその形を笑い、そこにそれは未だある、文鎮として。ヘンリは、それから何を成そうとするのか、つまり僕たちの誰も気にも留めないリカーの小瓶や、海水で磨かれたグラスの欠片、そして僕がノッチンガムで見付けた小さな木の兎。僕は、僕共々、これらの物を皆、持ち去った方がいいのか?そうでもしなければ、ヘンリが片付ける為に、そこいら中、手を付ける時、それらは、紙―屑籠の中に入ってしまうだろうが、僕は、それらの同行に耐えられるだろうか?
 僕は、それらを見ていたら、ブランキトゥを背負って、ヘンリが入って来た。「僕は、言い忘れた、ベンドゥリクス、もしそこに貴方が持って行きたい物があれば・・・彼女は遺書を残した、と僕は思わない。」
 「それは貴方らしい。」
 「僕は今、彼女を愛した誰も彼も、感謝している。」
 「良ければ、僕はこの石を持って行きたい。」
 「彼女は変な物を持っていた。僕は、貴方に僕のパジャーマ一揃いを持って来た、ベンドゥリクス。」
 ヘンリが枕を持って来るのを忘れたので、クションに僕の頭を預けながら、彼女の香りを嗅ぐことが出来たら、と僕は空想した。僕が二度と持つ筈のない物を、僕は望んだ―そこには代わりの物はなかった。僕は眠れなかった。僕は僕の爪を僕の掌に押し付けた、彼女が彼女のものでそうしたように、だから、その痛みが、僕の脳が作動するのを妨げるといいと、僕の願望の振り子は、嫌になる程、向かっては逆戻りして振れた、忘却への願望、記憶への願望、死ぬことへの、そして生き続けることへの、差し当たって。そしてその後、やっと僕は眠った。僕はオクスフォードゥ・ストゥリートゥを上りながら、僕はプレズントゥを買おうとして、僕は、悩んでいた。どの店にも、安い宝石は沢山あった。隠された照明の下(もと)、 きらきら輝いている安い宝石なら沢山あった。今もあの頃も何か美しい物を見ると、僕はガラスに近付きたくなるが、僕が近くで宝石を見ると、それは、他の全て同様、人工的だ。―おそらくぞっとする緋色の目を持った緑色の鳥は、ルービの感じを与えるつもりだ。時間がなかったので、僕は店から店へと急いだ。その時、或る店の外に、サラーが遣って来た。彼女は、僕の役に立とうとするのは僕は分かっていた。「貴女は、何か買ったの、サラー?」「ここではないけど、」彼女は言い、「でも、もっと行ったら、そこに幾つも可愛い小瓶があるわ。」
 「僕は、時間がない、」僕は彼女に頼んだ、「僕を助けて。明日の誕生日の為に、僕は何か見付けようと
していたところ。」
 「気を遣わなくていいのよ、」彼女は言った。「どんな物でもきっと気に入るわ。気を遣わないで。」すると僕は、突然、心配がなくなった。オクスフォードゥ・ストゥリートゥは、その境界線を広大な鉛色の霧の原野に伸ばしていた、僕の足は裸足で、僕は露の中を歩いていた。一人で、浅い轍(わだち)によろけながら、僕は目を覚ました、未だ聞こえていた「気を遣わないで。」耳に閉じ込められた囁きのように、子供の頃にあった夏の音。
 朝食時間に、ヘンリは未だ眠っていた。パ―キスがそそのかしたメイドゥが、トゥレイに載せて、僕の為にコーフィとトウストゥを持って入って来た。彼女がカートゥンを引くと、霙は、突然雪に変わった。僕は未だ眠気と、僕の夢の中身でぼんやりしていたが、僕は、彼女の目が時を経た涙で、赤く見えて驚いた。「何か心配があるの、モードゥ?」僕は尋ね、空っぽの家と空っぽの世界に、僕が当たり前のように目覚めて現れたので、トゥレイを下に置き、猛烈な勢いで歩いて出た。僕は、上に行って、ヘンリを覗いた。彼は未だ、犬のように笑みを浮かべながら、薬を服用した深い眠りの最中にあり、僕は彼が羨ましかった。それから下に行って、僕のトウストゥを食べることにした。
 ベルが鳴り、メイドゥが誰かを二階に案内しているのを、僕は聞いた―葬儀屋、僕は思った、客—室のドアが開くのが聞こえたから。彼は、彼女の死体を見ていた。僕は未だだったが、他の男の腕の中の彼女を見ることを望むよりもっと、僕にはまるで意向はなかった。男には、その方がかえって元気付けられる者もいるのかも知れない。誰も、死人の為に僕に売春の仲介をさせない。僕は僕の心を取り出し、僕は考えた、今に、何もかも本当に終わるのだと、僕は又遣り直すことになってしまった。僕は嘗て恋に溺れたが、それは再び為され得る。それでも僕は納得しなかった、それは、僕が遠ざかって抱いた性の全てを、捧げつくしたような気がしたから。
 又ベルが。何と多くのビズニスが、ヘンリが睡眠中に、家の中で繰り広げられるのだろう。今度は、モードが僕の所に遣って来た。彼女は言った、「実は。マイルズ氏に尋ねたいことがあるという紳士が階下にいますが、私は彼を起こしたくありません。」
 「それは、誰なの?」
 「彼は、マイルズ婦人の友人とのことです。」彼女は言ったが、唯一の機会故、僕たちの卑劣な協力への彼女の貢献を容認した。
 「貴女は、彼を通した方がいい。」僕は言った。僕は、スマイズに対して、今や優越を感じていた、サラーの客間に座りながら、ヘンリのパジャーマズを着て、彼が僕について何も知らない間に、随分たくさん調べ上げて。彼は、途惑いながら僕を見て、寄せ木細工の床の上に雪を滴らせた。僕は言った、「僕たちは一度会っています。僕は、マイルズ婦人の友人です。」
 「貴方は、貴方と一緒に若い方を連れていました。」
 「その通りです。」
 「僕は、マイルズ氏を一目見たくて遣って来ました。」
 「貴方は、ニュースを聞きましたか?」
 「それが、僕が来た理由です。」
 「彼は、眠っています。医者が、彼に丸薬を服用させました。それは、僕たちの誰にも酷い衝撃でした。」僕は、馬鹿みたいに付け加えた。彼は部屋をぐるりと見詰めていた。シーダ・ロウドゥで、何処にも出かけることなく、彼女には、広がりがないようだった、と僕は思った、夢のように。しかしこの部屋は、彼女に厚みを与えた、それも又サラーだった。雪は、ゆっくりとスペイドゥから鋳型のように窓敷居に乗った。部屋は、サラーのように埋もれていた。
 彼は言った、「僕は、帰ります、」そして侘びし気にあちらに向きを変えた、つまり、彼の醜い頬は、僕の方に向けられたということ。僕は思った、それは、彼女の唇が静止した側だった。彼女は、何時も哀れみから、罠に掛けられがちだ。
 彼は、呆けたように繰り返し、「僕が、マイルズ氏
を一目見たくて遣って来ましたのは、何と気の毒なと言いたくて・・・」
 「書くこと、それが、このような機会には、より一般的です。」
 「僕も何か役に立てればいいのに、と僕は思いまして、」彼は、弱々しく言った。
 「貴方は、マイルズ氏を改宗させる必要はありません。」
 「改宗?」彼は気楽に不幸を尋ね、狼狽した。
 「そこには、彼女に関して残されているものは何もないという事実。終わり。全滅。」
 彼は、突然打ち明けた、「僕は、彼女を見たかった。それが全てです。」
 「マイルズ氏は、貴方が存在するのを、知りもしない。そりゃあ、あまり貴方に思い遣りがあるとは言えない、スマイズ、ここに来るなど。」
 「葬式は、何時ですか?」
 「ゴウルダズ・グリーンで明日。」
 「彼女は、それを望んでいなかった、」彼は言い、驚きによって僕に取り入った。
 「彼女は、何ものも信じなかった。貴方がすることに貴方が主張するよりずっと。
 彼は言った、「貴方は、少しも知らないのですか?彼女は、カサリクになろうとしていました。」
 「途方もない。」
 「彼女は僕に書きました。彼女は彼女の心を決めました。僕が、口を挟めなかったことで、少しはましになったでしょう。彼女は始めていました―Instruction(指導)を。それは、彼らが使う言葉ではありませんか?」つまり、彼女は未だ秘密を持っていた、と僕は思った。彼女は、彼女の日記にそれを載せていなかった、彼女が、彼女の病気について載せなかった以上に。どれだけもっと多くの発見すべきことが、そこにあったのやら?その思いは、絶望に近かった。
 「それは、貴方にとって衝撃だったんじゃないの?」僕は、僕の負傷を転嫁しようとして、彼をあざけた。
 「オウ、僕は勿論、怒りました。しかし、僕たちは誰しも、同じ物事を信じられはしない。」
 「それは、貴方が何時も主張することではない。」
 彼は、僕を見た、まるで僕の敵意で困惑したかのように。彼は言った、「どんな場合でも,貴方の名前は、モーリスですか?」
 「そうです。」
 「彼女は、僕に貴方のことを話しました。」
 「そして僕は、貴方のことを読んだ。彼女は、僕たち二人をこけにした。」
 「僕は道理を弁えなかった。」彼は言った、「僕は彼女を見られる、と思いませんか?」そして僕は、葬儀屋の重いブーツが下りて来るのを聞いた、僕は、同じ段が軋むのを、耳にしたことがある。
 「彼女は、二階で横になっている。左の最初のドア。」
 「もしマイルズ氏が・・・」
 「貴方は、彼を起こさないで。」
 僕は、彼が又、下りて来る時までに、僕の服を身に付けて置いた。彼は言った、「貴方に感謝します。」
 「僕に感謝しないで。僕は、貴方がそうするよりずっと彼女を自分のものにしてはいない。」
 「僕には、尋ねる権利さえ得ていなかった、」彼は言った、「しかし、僕は、貴方がそうするのを望みます―貴女は、彼女を愛した、僕には分かります。」彼は、彼が苦い薬を呑んでいるかのように付け加えた、「彼女は、貴方を愛した。」
 「貴方は、何を言おうとしているの?」
 「僕は、貴方が彼女の為に、何かしたらいいのに、と思っています。」
 「彼女の為に?」
 「彼女に、彼女のカサリク葬式を催させて上げて下さい。彼女は、それを好んだでしょう。」
 「いったい、それは、何が違っているんですか?」
 「彼女の為に少しでも、と僕は思わない。何れにせよ、それで、何時も、彼女が鷹揚であるが故に、僕たちに代償を支払う。」 
 「それで、そのことで僕は何をすればいいの?」
 「彼女は、彼女の夫は貴方に大いなる敬意を払っている、と何時も言っていた。
 彼は、不条理のスクルーを、余りにも遠くまで回していた。僕は、笑い声で、この埋もれた部屋の死の状態を粉砕しようと思った。僕は、ソウファに座り、僕は、そうして揺さぶり始めた。僕は、二階のサラーの死体と、彼の顔に愚かな笑みを浮かべたヘンリと、彼のドア‐ベルに粉を振り掛ける為に、パ―キス氏を雇って来た恋人と葬式を論じている痣を持った恋人を思った。僕が笑っている内に、僕の頬に涙が走り落ちた。一度だけ、急襲の最中、僕は、彼の妻子が生き埋めにされた彼の家の外で、一人の男が笑っているのを見た。
 「僕には分からない、」スマイズは言った。彼の右の握り拳は、彼が彼自身を守る準備が整ったかのように閉じた。そこには、僕たちが理解しない多くのことがあった。痛みは、僕たちを揃って投げ飛ばす説明しがたい爆発に似ていた。「僕はそろそろ行きます、」彼はそう言って、彼の左手でドア‐ノブに手を掛けた。唐突な考えが、僕に浮かんだ、彼は、左利きだと信じる理由は、まるでなかったから。
 「貴方は、僕を許すしかない、」僕は言った。「僕はガタピシしている、僕たちは、何もかもガタピシしている。」僕は、僕の手を彼の方へ伸ばした。彼は、躊躇いながらも、それに左手で触れた。「スマイズ、」僕は言った、「貴方は、そこで何を手に入れたの?彼女の部屋から何か持って来たの?」彼は、彼の手を開き、切り取った髪の毛を見せた。」「それで全部です。」彼は言った。
 「貴方は、どんな権利も持っていない。」
 「オウ、彼女は、今はもう誰にも属さない、」彼は言い、すると突然、僕は彼女を見たような気がした、何の為に、彼女は―片付けられるのを待っているだけの廃物の小片になったのか、もし貴方が僅かな頭髪を必要としたら、貴方は、それを手に入れ、彼女の爪を切り取ることも出来た、もしも爪を切り取ったものが、貴方に価値があれば。聖者のもののように、彼女の骨は、ばらばらに分けられても仕方なかった―もしも誰彼となくそれらを求めたら。彼女は、間もなく焼却されようとしていた、そう彼が真っ先に欲しがったものを、何故誰もが自分のものにしようとしてはいけないのか?何としてでも、僕が彼女を所有したその姿を描くのに、三年もの間、何と愚か者だったことか。僕たちは、僕たちそのものでさえない、誰でもないものによって所有される。
 「僕は済まなく思う、」僕は言った。
 「彼女が僕に何を書いたか知っていますか?」スマイズは尋ねた。「あれは、ほんの四日前でした、」そこで僕は悲しくなった、僕に電話することもなく、彼女は、彼に書く時間を持つしかなかったんだ。「彼女は書きました―私の為に祈って下さい。それは変だと思いませんか、彼女の為に祈るよう、僕に頼むのは?」
 「貴方は、何をしたの?」
 「オウ、」彼は言った、「彼女が死んだと僕が聞いた時、僕は祈りました。」
 「貴方は、少しは祈りの言葉を知っていますか?」
 「いいえ。」
 「貴方が信仰しない神に祈ること、それは好ましいとは思えない。」
 僕は、家から出て、彼に付いて行った。ヘンリが起きるまで残っても、そこには、何の利点もなかった。多少早くとも遅くとも、彼は、彼自身に基づいて存在することに直面するしかなかった、まさに僕がそうして来たように。僕は、僕の前を、スマイズが共有地を横切って、彼の道を急にせかせか動くのを見守った。そこで僕は思った、ヒステリカルなタイプだと。不信仰は、まさに信仰同様、多くは興奮の所産である筈。大勢の人々の通行が、それを溶かしてしまった所の雪の泥濘(ぬかるみ)が、僕の靴底からじわじわ滲みて、僕の夢の雫を僕に思い起こさせはしたが、「気を遣わないで、」と言っている彼女の声を思い出そうとした時、僕が音の響きを求めても、空虚な記憶を抱き締めるだけと気付いた。僕は、彼女の声を真似られなかった。僕は、それを風刺さえ出来ず、僕はそれを思い出そうとした時、それは、匿名だった―まるで何処かの婦人の声。彼女を忘れることの手順は、整った。僕たちは、写真を保存するように、蓄音機レコードゥも保存すべきだ。僕は、ホールの中へと、壊れた階段を上った。何一つなくとも、ステインドゥ・グラスは、1944のあの夜と同じだった。誰ということもなく、何らかの兆しに感付く。サラーは、彼女が僕の死体を見た時、終わりが来た、とまともに信じた。終わりは、随分前に始まっていた、と認めようとはせず、この、或いはあの不十分な理由の為に、益々減った電話の呼び出し音、恋の終わりという危険を、僕が察知したために僕が彼女に仕掛けた口論。僕たちは恋の向こう側を見るようになったが、僕たちが御されていた方角に気付いたのは、それは、僕だけだった。爆弾が一年早く落ちていたら、彼女は、あの誓いを立てなくて済んだ。彼女は僕を開放しようとして、彼女の爪を引き剝がそうとした。僕たちが人間の終わりに手を掛ける時、僕たちは神の信仰へと、僕たち自身を欺こうとする、彼の食物に添える、より複雑なソースを追い求める美食家のように。僕はホールを見た、独房のようにすっきりとした、グリーンのペイントゥにぞっとする、そこで僕は思った、彼女は、僕に二度目のチャンスを与えたがったが、それは、ここにある、虚しい暮らし、無臭、防腐、刑務所の暮らし、そうして僕は、彼女の祈りが、実際、変化をもたらしてしまったかのように、彼女を責めた。暮らしに向けて、貴女が僕に有罪判決を下したくなるような何を、僕は貴女にした?階段と手すりは、階上のあちこち新しさに軋んだ。彼女は、一度もそれらを歩いて上ることはなかった。家屋の修復でさえ、忘却の課程の役目を担った。全てが変わる時、覚えていること、それには、時とは別に神を要する。僕は未だ愛していたのか、或いは、僕は、只愛したことを悔いていただけなのか?
 僕は、僕の部屋の中に入り、机上に、サラーからの一通の手紙を置いた。
 彼女は、24時間死んだ状態で、それよりずっと長い間、意識を失っていた。細長い共有地を横切るのに、どうしたらそんなに長くかかってしまうのか?その時、僕は、彼女が僕の番号を間違って置いたということを見て知った。すると少々懐かしい苦々しさが、滲み出した。彼女は、二年前、僕の番号を忘れる筈がなかった。
 彼女が書いたものを見る思い、そこには、随分多くの痛みがあったから、僕は、ガス‐火へと向かうその手紙を、それでもどうにかこうにか持ち堪えた。何れにせよ、好奇心は、痛みより強くなり得る。それは、鉛筆で書いてあった。彼女がベドゥで書いたからだ、と僕は思う。
 「最愛の人モーリス、」彼女は書いた、貴方が去った後、あの夜、私は貴方に書こうとしたけれど、私が家に着いた時、私は、かなり具合が悪いと感じ、又ヘンリは私のことで気を揉みました。私は、電話する代わりに書きます。私は、貴方と一緒に遠くへ行くつもりはない、と私が口にすると同時に、気が変になりそうで、私は電話を掛けて貴方の声を聞けない。だから私は貴方と一緒に遠くへ行くつもりはないの、モーリス、最愛の人モーリス。私は、貴方を愛しているのに、私は、もう一度、貴方に会うことは出来ない。この痛みの最中を、私はどう生きようとすればいいのか、私には分からず、思い焦がれるだけで、私は、時間の許す限り、彼が私に厳しくしないようにと、彼が私を生き続けさせないようにと、神に祈っています。親愛なるモーリス、私は私のケイクを手に入れたい、それを食べたい、他の皆のように。貴方が私に電話を掛ける以前、二日前に、私は牧師のところに赴き、私は、カサリクになりたい、と彼に話しました。私は、私の誓いや貴方について、彼に打ち明けました。私は言いました、私は、実際、もうヘンリに添い遂げられないと。私たちは一緒に眠らない―貴方との最初の一年からではなく。それは、本当に結婚ではなかった、私は言いました、貴方が、出生登録事務所を結婚式場と呼べなかったと。私は彼に、私はカサリクになって、貴方と結婚出来ないか、と尋ねました。貴方が、官公庁事業をすり抜けても気にしない、と私は知っていました。あらゆる機会に、私がこんな希望を持つ不可思議を、彼に問いました。それは、新しい家の鎧戸を開けることに、その見晴らしに目を向けることのようで、すると全ての窓は、まさに白地の壁に面していました。いいえ、いいえ、いいえ、彼は言いました、私は貴方と結婚出来ない、私は貴方の顔を見続けることは出来ない、もし私がカサリクになるつもりがなければ。私は、思いました、彼らの全運命もろとも地獄へ、そして私が彼と面会していたその部屋から、私は歩いて外に向かい、私が牧師連中について思う何かしらを知らしめる為に、ドアをバタンと閉めました。彼らは、私たちと神の隔たりになると私は思いました。神はもっと慈悲心を持ちます。それから私は教会の外に出て、彼らがそこに持つクライストゥ磔刑像(たっけいぞう)を見て、私は思いました、勿論、彼は慈悲心を手に入れました、只それはこんなにも或る種可笑しな慈悲心です。それは、時に罰の様相を帯びます。モーリス、私の愛する人、私は、嫌な頭痛がします。私は、死ぬような気がします。私は、馬ほど丈夫ではなくて良かった。私は、貴方なしで生きたくない、それに私は知っている、私が貴方に共有地で会い、その後、私は、ヘンリも、神も、どんなことについての罵りの言葉も気にしない一日を。それにしても、何が善でしょう、モーリス?そこいらに神はいると信じます。―欺瞞の鞄丸ごと、私は信じます、そこいらに、私が信じないものは何一つありません。彼らは、一ダズンの断片に、三位一体を細分出来ます。すると私は信じます。クライストゥは、彼自身を宣伝して売り込ませる為に、ピラトゥによって創案されたことを証明する記録を、彼らは掘り起こせます、すると私は信じます、全く同様に。私は、病気のように信仰に感染しました。私は、私が恋に溺れたように、信仰の中で溺れました。私が貴方を愛すように、以前、私は愛したことはなかった。私が今信仰するように、以前、私は何かを信じたことはなかった。私は確信しています。私は、何かにつけ、以前、確信がなかった。貴方が、貴方の顔を血まみれにして、ドアの所に入って来た時、私は確信するに至りました。一時(いちどき)に何から何まで。喩え、その時、私がそれを知らなかったにせよ。私は、愛と格闘するよりずっと長く、信じることと格闘しましたが、私には、どんな闘争心も残っていません。
 モーリス、親愛なる人、怒らないで。私を可哀そうだと思って、でも怒らないで。私はいんちきでぺてんだとしても、これは、いんちきでもぺてんでもありません。私は、私自身のことを、確かだと当たり前のように思っていたので、何が正しくて間違っているのか、貴方は私に確信しないように教えました。貴方は、私の嘘の全てと自己‐欺瞞を、それらが、道伝いにやって来る誰か、大切な誰かの為に、瓦礫の道を奇麗にするが如く、取り去り、そして今、その人がやって来ましたが、貴方は、その道、貴方自身を身綺麗にしました。貴方が書く時、貴方は正確であろうとし、貴方が真実を追い求めるように、と私に教え、そうして貴方は、私が真実を語ろうとしなかった時、貴方は、私に話しました。貴方は、本当にそう思うのか、貴方は言おうとして、或いは、貴方がそう思うと思っているだけなのか。そう、それは、皆貴方の欠陥、モーリス、皆貴方の欠陥だ、と貴方には見て欲しい。こんな風に、私を生き続けさせようとしない、彼の人、神に、私は祈ります。
 そこには、もう何もなかった。彼女は、それらが話される前でさえ、彼女の祈りに答えて貰うコツを持っていたように思うのは、彼女が雨の所為で入って来て、ヘンリと一緒の僕を見つけたあの夜、彼女は、死ぬことにとりかかったのではなかったか?もしも僕が小説を書いていたら、僕は、それをここで終わろうとしただろう、僕は何時も思う、何処かで終わることにしなければ、と、しかし僕は、僕の実在主義は、この何年もずっと、欠陥のままだった、と信じ始めている。今や、人生に於ける何事も、何れ終わるように思えるものはないのに。化学者は、決して物質は完全に破壊されない、と貴方に話し、数学者は、もし貴方が部屋を横切ろうとして各歩調を二等分すると、貴方は何時までも反対側の壁に達さないだろうと貴方に話す。この物語がここで終わると考えたとしたら、僕は何と楽観主義者なのだろう。只々、サラーのように、僕が馬並みに強くない方がいいのだが。

僕は、葬式に遅れた。或るちょっとした書評に、僕の作品に関する記事を書こうとしていたウォタベリという男に会いに、街中に出掛けてしまった。僕は彼に会おうか、どうしようか、コインを投げて決めた。僕は、彼の記事の仰々しい表現を、余りにもよく知り過ぎていた。彼は、僕が気付かなかったことを発見し、欠陥は、正視すると嫌気が差す。挙句の果てに贔屓にしても、彼は、僕を位置づけようとする―おそらくモームの少し上に、モームは、世間に広く行き渡っているから、それに僕は、未だその罪は犯していなかった―未だしてない、しかし不成功というささやかな排他性を維持し、そのちょっとした書評は、賢い刑事のように、その道すがら、嗅ぎ付けてしまう。
 何故僕は、コインを投げる程、今まで悩んだのか?僕は、ウォタベリに会いたくなかったし、僕は確かに色々書かれたくなかった。僕は、今や、僕の興味の限界に達していたから。誰も賛辞で僕をひどく喜ばせたり、或いは、非難して僕を傷付けたり出来ないから。僕が、今尚興味を持つ官吏に関するその小説を始めた時、しかしサラーが僕を残して逝った時、僕の仕事、それは何の為だったか―何週、何年中、何かを得ようとして、煙草同様、何の役にも立たない薬物のような。僕たちが死によって消滅するのなら、僕は尚も信じようとしても、瓶や衣服や、安い宝石以上に、何冊かの本を後世に残すことに、そこに何の利点があるのか?そしてもしサラーが正しいのなら、重要な芸術の全ては、如何に重要ではないのか。僕はコインを放り投げて決めたのは、僕は、単に、孤独からだけだと思う。葬式の前、僕は何もすることがなかった。僕は一、二杯の酒で元気付けたかった。(誰でも自分の仕事を心配しなくなるのはいいが、誰でも集会を気にしなくなり、一人前の男が、人前で取り乱してはいけない。)
 ウォタベリは、トッテナム・コートゥ・ロウドゥ外れのシェリ‐バーで待っていた。彼は、黒いコーデュロイのズボンを履き、安い煙草を吸い、彼より桁違いに背が高く、見栄えのいい、同じ感じのズボンを履き、同じ煙草を吸う女を、彼の側に連れていた。彼女は随分若く、彼女はシルヴィアと呼ばれた。専(もっぱ)らウォタベリ付きで始まった勉強の長いコース上にあって―彼女は、彼女の教師を見習う段階だった。そうした見せかけ、そうした用心深い天性の有能な眼差しと髪、イルーミネイシャンの金を持つ、僕はどことなく不思議に思った。彼女は、けりをつけるだろう。彼女は、十年の内にウォタベリを、トッテナム・コートゥ・ロウドゥ外れのバーを思い出したりするのだろうか? 僕は彼を気の毒に思った。彼は、今は大層自信ありげで、僕たち二人に大層なパトロン気取りだが、衰退して行く側にいた。何故、僕は思った、意識の流れに関する彼の特に独りよがりなコメントゥで、僕のグラス越しに彼女の眼差しを捕えながら、今直ぐにでも彼女を彼から手に入れることが出来ると。彼の記事は、新聞に閉じられたが、僕の本は、布地で製本された。彼女は、僕からはもっと学べると知っていた。そして未だに、哀れな悪魔、時に、彼女が素朴な人間の知的ではないコメントゥをすると、彼は、彼女をわざと無視するような神経を持っていた。僕は、彼に虚しい未来と戒めたかったのに、僕は、もう一杯飲み、言った、「僕は長くはいられません。ゴウルダズ・グリーンの葬式に行くことになっています。」     「ゴウルダズ・グリーンで葬式、」ウォタベリは叫んだ。何と貴方自身の品位の一端らしい。それならゴウルダズ・グリーンにいなければならないでしょ?
 「僕は、場所を選ばなかった。」
 「芸術を模写している暮らし。」
 「それは友人ですか?」シルヴィアが、同情して尋ねると、ウォタベリは、睨みつけて彼女の見当違いを表した。
 「はい。」
 彼女は、あれこれ思い巡らしていたと、僕には見受けられた―男?女?どんな種類の友人?そしてそれは、僕を満足させた。僕は、彼女に対して人間で、小説家ではなかったから。友人が死んで、彼らの葬式に出席する、満足と痛みを感じる、慰安さえ必要としてもいい、多分仕事は、モーム氏のものよりずっと卓越した共感を得、熟練工そのものではなく、勿論、同じくらい高くそれを位置付けられないが、一人の男だった。
 「貴方は、フォースタをどう思いますか?」
 「フォースタ?オウ、申し訳ないが、ゴウルダズ・グリーンまで、それがどれだけかかるか、僕にはまるで分からない。」 
 「貴方は、40分は覚悟して置いた方がいいでしょう。」シルヴィアが言った。「貴方は、エヂウエア列車を待つことになります。」
 「フォースタ、」ウォタベリは、苛々して繰り返した。
 「その駅から貴方はバスに乗るしかありません。」シルヴィアは言った。
 「実際、シルヴィア、ベンドゥリクスはゴウルダズ・グリーンへの着き方について話す為にここに来て貰ったんじゃないんだよ。」
 「私は、済まなく思います、ピータ、私は本当に思います・・・」
 「思う前に6数えなさい、シルヴィア、」ウォタベリは言った。「それではさて、僕たちはE.M.フォースタに戻せますか?」
 「僕たちに必要ですか?」僕は尋ねた。
 「貴女はこんな色々な学校に属しているので、そりゃあ面白いだろうね・・・」
 「彼は、学校に属しているの?僕がしたことを、僕は分かってもいなかった。貴女は、教科書を書いて
いるの?」
 シルヴィアは微笑み、彼はその笑みを見た。僕は、その瞬間から、彼は、彼の取引の武器を鋭く研いではいるが、そのことは、僕には重要ではなかった。無関心と誇りは、大変よく似て見える上に、彼は多分僕のことを自慢げだと思った。僕は言った、「僕は、本当に行くことになっているんです。」
 「しかし貴方は5分ここにいただけです。この記事をまともなものにすること、それが大切です。」
 「僕にとっては、ゴウルダズ・グリーンに遅れないこと、それが本当に大切です。」
 「僕は、その理屈は眼中にありません。」
 シルヴィアは言った、「私は、ハムプステドゥと同じくらい遠くへ、私自身行くつもりです。私は、貴方の目的地に貴方を置いてきぼりにしますが。」
 「君は僕に話してないじゃないか。」ウォタベリは、疑って言った。
 「私が、何時も水曜日に私の母を見に行くのを、貴方は知っています。」
 「今日は、火曜日だよ。」
 「どうしても明日行く必要はありません。」    「それは、貴女にも非常に好都合です、」と僕は言い、「僕は、貴方の連れが気に入りそうだ。」
 「貴方は、貴方の作品の一つにある意識の趨勢(すうせい)を利用しましたね、」ウォタベリは、必死な慌て振りで言った。「何故貴方は、あの方式を捨てたのですか?」
 「オウ、僕には分かりません。誰もが、何故フラトゥを変わるのか?」
 「それには欠陥がある、と貴方は思ったんですか?」
 「僕の作品全てについて、僕はそれを感じています。さて、グドゥ‐バイ、ウォタベリ。」
 「僕は、記事のコピを貴方に送ります。」彼は、まるで脅しを表明するかのように言った。
 「ありがとう。」
 「遅れるなよ、シルヴィア。それでは、6時30分に三番のバートク プログラムですよ。」
 僕たちは、一緒にトッテナム・コートゥ・ロウドゥの瓦礫の中に入って行った。僕は言った、「パーティを散々にしてくれてありがとう。」
 「オウ、私は貴方は逃げ出したがっていると分かりました、」彼女は言った。
 「貴女のもう一つの名前は何?」
 「ブラック。」
 「シルヴィア・ブラック、」僕は言った、「それは、いい組み合わせだ。殆ど言う所が無さ過ぎ。」
 「それでは、大の親友ですか?」
 「そう。」
 「女の人?」
 「そう。」
 「私は気の毒に思います。」彼女は言い、そして僕は、彼女がそういうつもりだという印象を持った。彼女は多くを学ばなければならなかった、本や音楽の道で、又、如何に装い話すかを。しかし彼女は人間らしさを学ぶ必要はない。彼女は僕と一緒に混み合った地下鉄へと下り、僕たちは、並んで吊革に掴まった。僕に寄り掛かる彼女を感じながら、僕は、欲望を思い起こした。それは、今、是が非でも事実になろうとするのだろうか?
欲望ではなく、しかし単にそれを思わせるだけのもの。彼女は、グジ・ストゥリートゥで、新しい人に道を作ろうして向きを変えた。それで、誰でもずっと前に起こった何かに気付くように、僕は、僕の足に触れた彼女の大腿骨に気付いた。
 「僕が今まで生きて来て、これが初めての葬式です、」僕は、話を仕切り直す為に言った。
 「貴女のお父さんとお母さんは、生きているの、唐突だけど?」
 「私の父は。私の母は、私が学校で離れていた時、死にました。私は、2、3日の休暇を貰おう、と思いしましたが、私の父は、それでは私の心を乱すと考え、ですから私は、その外にいて全く何事にも関らなかった。外され、私は準備を放免されました。その夜そのニュースは、届きました。」
 「私は火葬されたくありません。」
 「貴女は、虫の方がいいの?
 「はい、私はその方が。」
 僕たちの頭は、どちらからともなく随分接近して、僕たちは、僕たちの声を高く上げずに話せたが。人混みの所為で互いを見ることは出来なかった。僕は言った、「或る方式でも他でも、それは、僕には関心はないよ、」そして直ぐに、何故僕は嘘を吐く為に悩んで来たのか、と不思議に思った。そのことに関心があった、そのことに関心がなければならなかった。埋葬に反対してヘンリを説得して来たのは、それは、最終的に僕だったから。

午後を前にして、ヘンリは、迷っていた。彼は、来て欲しいと僕に頼む為に電話をして来た。サラーが去ると共に、僕たちが如何に近付いたか、それは、妙だった。彼は、前にサラーに頼っていたように、今、僕をかなり頼る―僕は、およそ幾らか家に精通している者ではあった。葬式が終わった時、彼が家を共有するよう僕に頼みたいのか、どんな答えを僕は彼に与えたいのか分からない振りもした。サラーを忘れるという見地から、二つの家の間で選ぶ事、そこには何一つなく、彼女はどちらにも属して来た。
 僕が着いた時、彼は彼の薬で未だぼんやりしていて、或いは、僕は、彼にもっと面倒を掛けるのかも知れなかった。一人の牧師が、書斎の肘掛け椅子の縁にこわばって座っていた。僕がサラーを最後に見た暗い教会で、日曜日に地獄から出て来て仕える、多分レデムプトリストゥの一人、気難しい瘦せこけた顔を持つ男。彼は明らかに鼻っからヘンリに反感を持たせ、それは、役に立った。
 「こちらは、ベンドゥリクス氏、作家の、」ヘンリが言った。「クロムプトン神父。ベンドゥリクス氏は、僕の妻の大切な友人です。」クロムプトン神父は、それを既に知っているという印象を僕は持った。彼の鼻は、控え壁のように、彼の顔を走って下り、僕は思う、おそらくこれが、サラーの上の希望のドアを、バタンと閉めたその男だ。
 「申し分のない午後ですね、」クロムプトン神父は、ベルやカンドゥルが、遠く離れていないと感じた、そんな悪‐意を持って言った。
 「ベンドゥリクス氏は、準備全てに大いに対処して僕を助けてくれました、」とヘンリは説明した。
 「もし私が知っていれば、貴方がたの手を煩わさずに、悉(ことごと)く何でも引き受ける用意がありましたのに。」
 僕がヘンリを嫌った時、そこには時機があった。僕の嫌悪は、今思うとつまらない。僕が犠牲者だったと同様、酷な程、ヘンリも犠牲者で、勝者は、大層な襟を着けたこのぞっとするような男だった。僕は言った、「貴方は、確かにそれを殆ど出来なかった。貴方は、火葬に不賛成だった。」
 「私は、カサリク式土葬を準備出来ました。」
 「彼女は、カサリクではなかった。」
 「彼女は、それになる意志を表明していました。」
 「彼女をそれにするのに、それだけで十分ですか?」
 クロムプトン神父は、決まった遣り方を演出した。彼は、それを銀行通帳のように、下に広げた。「私たちは、要請があればバプティズムを認めます。」
 「それは、僕たちの間のそこに、摘まみ上げられるのを待ちながら、置いてあった。誰も動かさなかった。クロムプトン神父は言った。「貴方がたの準備を撤回する時間は、未だそこそこあります。」彼は繰り返した、「私は、貴方がたの手を煩わさず全て引き受けます、」彼はマクベス婦人に話しかけ、彼女にアラビアのパーヒューム以上に彼女の手を甘くする、或る非常にいい方法を、彼女に期待させるかのように、それを訓戒調で繰り返した。
 ヘンリは、突然言った、「それは、本当に大きな差を作るんですか?勿論、僕はカサリクではありません、神父、しかし僕は見当が付かない・・・」
 「彼女は、もっと居心地が良かっただろう・・・」
 「そんな、どうして?」
 「教会は、特権を、マイルズさん、責務同様十分に奉(たてまつ)ります。 そこには、我々の死に備えて特別なマスィズ(ミサ))が用意されています。祈りが本式に唱えられます。私たちは、私たちの死を追悼します、」彼は付け加え、僕は腹立たしく思い、貴方はどういう風に彼らを追悼するのか?貴方の論理は、全く正しい。貴方がたは、個人の重要性を説く。僕たちの毛は、皆、番号が付けられている、と貴方がたは言う、が僕は、僕の手の甲で、彼女の頭髪を感じられる。彼女が僕のベドゥに顔を伏せると、彼女の背骨の付け根に、ヘアの上質の亡骸を思い出すことが出来る。僕たちは、僕たちの死をも思い出す、僕たちなりに。
 ヘンリが気弱になるのを見守りながら、僕は、断固として嘘を吐いた、「彼女がカサリクになろうとしたと信じる理由を、僕たちは全く持っていません。」
 ヘンリは始めた、「勿論、看護婦が言ってはいました、」僕は彼を遮った、「彼女は、最後にうわ言を言ったんだ。」
 クロムプトン神父は言った、「私は、貴方がたに割り込むなど夢にも見ません、マイルズさん、ちゃんとした理由もないのに。」
 「私は、彼女が死ぬ前、一週間以内に書いたマイルズ婦人からの手紙を持っています、」僕は、彼に打ち明けた。「貴方が彼女を見てから、それでどの位経ちますか?」
 「おおよそ同じ頃です。5、6日前。」
 「それは、僕には極めて妙な気がしますが、彼女は、彼女の手紙の中で、その話題に触れてもいません。」
 「おそらく、ミスタ:::ベンドゥリクスさん、貴方は彼女の信頼を得ていなかった。」
 「おそらく、神父、貴方は結論へと少し性急に飛躍し過ぎます。必然的にカサリク信者になろうとするのでもないのに、人々が、貴方がたの教義に興味を持っても、それについて質問してもいい。」僕は、素早くヘンリに続き、「今更、何もかも変えるなんて、それは馬鹿げている。案内は、出してしまった。友人たちは招待してしまった。サラーは、一度も狂信的であったことはない。彼女は、出来心があって引き起こす何らかの面倒を、最後に必要としたのでしょう。後の祭り、」ヘンリの上に、僕の目を釘付けにしたまま、僕は更に追い詰め、「それは、クライストゥ教徒の儀式になります。あのサラーは、クライストゥ教徒でさえなかった。僕たちはともかく、それについて何の兆しも見なかった。しかし貴方は、何時でもクロムプトン神父にマス(ミサ)の代金を差し上げられる。」
 「それは、必要ではありません。私は今朝そのことを申しました。」彼は、彼の膝の中の彼の両手で身振りをした。真っ先に彼の硬直に分け入る。それは、爆弾が落ちた後、替えて寄り掛かる頑丈な壁を眺めているかのようだった。
 「僕のマス(ミサ)の中で、毎日、彼女を追悼します。」
 ヘンリは、それで物事の決着がついたかのようにほっとして言った。「貴方については、非常に好ましい、神父、」そして煙草の‐箱を動かした。
 「貴方に言うのは、それは異常で失礼な事のように思いますが、マイルズさん、貴方の奥様が、何とも善良な女性だったということを貴方は分かっているとは思いません。」
 「彼女は、僕に対して何もかもあるがままでした。」
 「実に多くの方々が、彼女を愛しました。」僕は言った。
 「クロムプトン神父は、鼻を垂らした子供から、教室の後ろで、妨害音を耳に挟む校長のように、僕の上に彼の目を向けた。
 「多分、十分ではありません。」彼は言った。
 「十分、」僕は言った、「僕たちが話し合っていたことに戻るべき。僕たちは、今となっては物事を変えられるとは思いません、神父。それも又、話しの大げさな取り扱いのもとになります。貴方は、世評を好まないでしょ、ヘンリ?」
 「いいえ、オウいいえ。」
 「そこには、ザ・タイムズの掲載があります。僕たちは、訂正を加えざるを得ない。人々は、その類のことに敏感です。それでは、あれこれ評判されるだけです。何はさておき、貴方は、無名ではない、ヘンリ。それから、電報は、送られてしまうでしょう。」大勢の方々が、既に、火葬場へ花輪を配達してしまったでしょう。貴方は、僕の意味するところに目が行きます、神父。」
 「私がすることを、僕は口に出来ない。」
 「貴方が尋ねるどんな事も、合理性に欠けます。」
 「貴方は、一連の非常に奇妙な価値観を持っているように思えます。、ベンドゥリクスさん。」
 「それにしても確かに貴方は、肉体の復活に影響する火葬を受け入れない。」
 「当然、私は受け入れない。私は、私の理由を既に貴方に話しました。もしそれらがマイルズ氏に対して十分説得力がないようであれば、そこには、もはや話の一つもない。」彼が彼の椅子から身を起こすと、何とも不格好な男だった、彼は座ってさえいれば、少なくとも権力的外見は持っていた。しかし彼の足は、彼の体にしては短過ぎ、彼が立ち上がると、意外に小さかった。それは、まるで突然、彼が長い道のりの向こうに行ってしまったかのようだった。
 ヘンリは言った、「貴方がもう少し早くいらっしゃればなあ、神父。どうか考え込まないで下さい・・・」
 「私は、貴方のことを何も悪く思っていません、マイルズさん。」
 「僕のことは、多分、神父?」僕はわざと無礼を承知で尋ねた。
 「オウ、気にしないで下さい、ベンドゥリクスさん。貴方が出来ることは何一つなく、直ぐに彼女に影響を及ぼします。」懺悔は、憎悪を認めることを人に教える、と僕は思う。彼は、ヘンリに彼の手を差し出し、彼の背を、僕に向けた。僕は、彼に言いたかった、貴方は、僕のことを勘違いしている。僕が遠ざける、それはサラーではない。それに貴方はヘンリについても勘違いしている。僕ではなく、彼が不純な奴だ。僕は、僕自身を、守りたかった、「僕は彼女を愛した、」確かに懺悔の中で、彼らは、そうした感情を認めることを学ぶのだから。

 Ⅳ

「ハムプステドゥは、次の停留所よ、」シルヴィアは言った。
 「貴女は、貴女のお母さんを見に行くんだったね?」
 「私は、ゴウルダズ・グリーン迄付き合って、貴方を案内しましょう。私は、普段、今日は彼女を見に行きません。」
 「開始の列に遅れても、そんなことは、問題ない、と僕は思うよ。」
 彼女は、駅の中庭まで僕を見送り、その後彼女は戻ろうとした。彼女が随分たくさん悩みを抱えているということ、それが僕には不思議に思えた。女の人に対して好きになるような僕の中のどんな性質も見せびらかしたことはなく、今までより以上に今は少ない。悲しみや落胆は、嫌悪に似ている。それは、自己憐憫や難儀と共に男達を穢れさせる。そしてそれも又、如何に僕たちを利己的にすることか。僕は、シルヴィアに与えるものはなかった。僕は、彼女の教師の一人になろうとはしない、しかしだから僕は次の半時間を、僕の孤独を詮索している、僕のサラーとの関係がどうだったか、誰が誰を捨てたか、僕の態度から探ろうとしているその表情を懼れた。僕は、僕を支える彼女の美しさを必要とした。
 「でも。こんな服では入れないわ、」僕が彼女に同行を求めた時、彼女は不満を表した。僕は、彼女に僕と一緒にと望んだ、そのことを、どれ程彼女が嬉しがったか、僕は話してもいい。あそこであの時、ウォタベリから彼女を奪える、と僕には分かった。彼の砂は、既に流れ出た。もし僕が選んだら、彼は一人でバータクに耳を傾けるだろう。
 「僕たちは後ろに立とう。」僕は言った。「貴女は、歩き回っている単に見知らぬ人になるといい。」
 「少なくとも彼らは黒い服よ。」彼女のズボンに言及して、彼女は言った。タクシの中で、僕は僕の手を約束のように彼女の足の上に置いたままでいたが、僕は、僕の約束を守るつもりはなかった。火葬場の塔は、煙を上げ、砂利の歩道に半ば凍った水溜まりに水が横たわっていた。大勢の見知らぬ人々が、側を通った―前の火葬からの、僕は思った、飽き飽きするパーティを後にして、今やっと「前に進む」ことが出来る人々の元気な清々しさが彼らにはあった。
 「それは、この道です。」シルヴィアが言った。
 「貴方は、その場所を随分よく知っているね。」
 「ダディは、二年前、ここで済ませました。」
 僕たちが礼拝堂に着くと、皆、出て来るところだった。ウォタベリの意識の流れに関する質問は、実際余りにも長く、僕を手間取らせた。僕は、月並みな悲しみの刺し傷を持った―僕は、結局サラーの最期に見(まみ)えなかった。そこで僕はぼんやりと思った、郊外の庭園の上になびいていたそれは、彼女の煙だったんだ。ヘンリが、無目的に一人で外に出て来た。彼は泣いていた。そして彼は、僕を見なかった
。サー・ウィリアム・マロック以外、他に誰も知らなかった。彼は、シルクハトゥを被っていた。彼は、僕に反感の一瞥を与え、先を急いだ。そこには半ダースの公務員の雰囲気を持つ男たちがいた。そこにダンスタンはいたか?それは、あまり重要ではなかった。何人かの妻たちは、彼女たちの夫に同伴した。彼女たちは、少なくとも儀式に満足していた―貴方は彼女たちの帽子で、殆どそれを物語ることが出来た。サラーの消失は、どの妻もより安全なままにした。
 「私は、申し訳なく思います。」
 「それは、貴女の落ち度ではない。」
 僕は思った、もし僕たちが彼女を記憶に留められたら、安全ではなかったでしょう。彼女の死体でさえ、彼らを裁く基準を与えただろう。
 スマイズは、外に出て、いない者に話しかけながら、水溜まりの中をどんどん急いで、水を飛び散らした。一人の女が、「カータ家は、十日の週末に備えて、私たちに頼んだの。」と言うのを聞いた。
 「貴方は、私について行って欲しい?」シルヴィアが尋ねた。
 「いや、いや、」僕は言い、「僕は、貴女がそこら辺をぶらぶらしていて欲しい。」
 「僕は、礼拝堂のドアに向かい、中を見た。炉に向かう通路は、目下誰もいなかったが、古い花輪が運び出され、新しいものが運び入れられた。初老の夫人が、カートゥンの予期せぬ巻き上げによって捕らえられた他のシーンからの俳優のように場違いに膝まづきながら、祈っていた。聞き慣れた声が、僕の背後でした、「ここで貴方に会えた、そのことは、悲しい中での喜びです、サー、ここでは、過去のことは、あくまで過去のことです。
 「貴方は来たんだね、パ―キス、」僕は避難がましく言った。
 「ザ・タイムズの広告を見ました、サー、それで私は、午後暇を取る為に、サヴィジの許可を求めました。」
 「貴方は、貴方の関わった人々を、これ程遠くまで追跡するの?」
 「彼女は、実に素敵な女性でした、サー、」彼は言った、咎めるように。「彼女は、一度、通りで僕に道を尋ねました、その辺りにいる僕の理由を、勿論、知りもしないで。それにカクテイル・パーティで、彼女はシェリのグラスを僕に手渡しました。」
 「南アフリカのシェリ?」僕はこれみよがしに言った。
 「私は、知りもしません、サー、しかし彼女がそうした遣り方―オウ、そこに、彼女のような人は、多くはいなかった。僕の若い者も・・・彼は何時も彼女のことを話しています。
 「貴方の所の若者はどうしてる、パ―キス?」
 「よくありません、サー。全くよくありません。かなり激しい胃痛が。」
 「貴方は医者に診せたの?」
 「未だ診せていません。私は、自然に物事を委(ゆだ)ねることを良しとしています。或る程度まで。」
 僕は、皆が皆サラーを知っている見知らぬ人々のグループを、見回した。僕は言った、「ここにいる人々は、誰、パーキス?」
 「僕の知らない若い女性、サー。」
 「彼女は僕と一緒だ。」
 「僕は貴方の許しを乞います。サー・ウイリアム・マロックは、地平線上に只一人です、サー。」
 「僕は、彼を知っている。」
 「水溜まりを今避けた紳士は、サー、マイルズ氏の局の主席です。」
 「ダンスタン?」
 「それが、名前です、サー。」
 「貴方は、何とも大勢知っているね、パ―キス。」僕は、嫉妬は全くもって息絶えたと思った。僕は、自ら進んで世界中の男と彼女を分かち合おうと思った、但(ただ)し、彼女が再び息を吹き返せれば。それなのに、ダンスタンの趣(おもむ)きが、古い憎しみを、瞬間、目覚めさせた。「シルヴィア、」僕は呼んだ、サラーが僕に耳を傾けるといいのにと
、「貴女は、今晩何処かで食事をするの?」
 「私は、ピータと約束しています。」
 「ピータ?」
 「ウォ―タベリ。」
 「彼を忘れて。」
 貴女は、そこにいるの?僕はサラーに言った。貴女は、僕を見守っている?見て、貴女がいなくても、僕は直ぐに手に入れられる。それは、そんなに難しくはない。僕は彼女に言った。僕の憎悪は、彼女の生存を当てにすれば良かった。彼女が死んだ鳥以上に、影も形も消え失せたと分かった、それは、単に僕の執着に過ぎなかったのだ。
 新たな葬式が、人を集めようとしていたが、鉄道の側のその女は、入って来る見知らぬ人々の様子に、混雑の中、立ち上がった。彼女は、すんででのところで間違った火葬に捕えられそうだった。
 「僕は。電話を掛けるといい、と思う。」
 嫌悪が、倦怠のように、夕闇を覆い、行く手に横たわっていた。僕は、僕自身を追い詰めた。執着もなく、僕は恋の真似事を押し通してしまう。僕が、罪を、僕の迷宮の中に純潔を引きずり込むという罪を犯す前に、罪悪感が疼いた。性の行為は、どうということはないにしても、貴女が僕の年齢に達する頃、どんな時も、全てであることを、それが証明してしまう、と貴女は学ぶ。僕は安心していたが、僕は求めてもいいと、この子供の中のどんな神経症に、誰が話し掛けられよう?夕べの終わりに、僕は無様に愛を育もうとする、僕の酷い無様さ、僕の性的不能でさえ、もし僕が性的不能と判明すれば、ごまかせばいい、又、僕は専門的に恋愛をしようとしたり、僕の経験も手伝って、彼女を夢中にさせても構わなかった。僕は、サラーに懇願した、これの外へ僕を逃して、それの外へ僕を逃して、僕のではなく、彼女の為に。
 シルヴィアは言った、「私の母が具合が悪いと言う事も出来るわ。」彼女は、嘘を吐く用意をした。それは、ウォタベリの終わりだった。気の毒なウォタベリ。その初めての嘘と共に、僕たちは共犯者になる外ない。彼女は、彼女の黒いズボンを履いたままそこに立っていた。凍った水溜まりの間、そして僕は思った、これが、全ての長い前途が始まる場所だ。僕は、サラーに懇願した。その外へ僕を逃して。僕は、再びその全てを始めて、彼女を傷付けたくない。僕は、愛せない。貴女以外、貴女以外、すると青褪めた老婦人が、薄い氷をバリバリ音を立てながら僕の方へ逸れた。「貴方は、ベンドゥリクスさん?」彼女は尋ねた。
 「はい。」
 「サラーが私に話していました、」彼女は始めた、彼女が躊躇している間に、彼女は、伝えたいことがあるという、死者は語り掛けるという乱暴な期待が僕に湧いて来た。
 「貴方は、彼女の最高の友人だ―彼女は、よく私に話していました。」
 「僕は、彼らの中の一人でした。」
 「私は、彼女の母親です。」僕は、彼女の母が生きていると気に掛けもしなかった。あの数年の内、そこには、僕たちの間について話すことは何時も随分たくさんあったのに、僕たち二人の暮らしの全空間は、大昔の地図のように白紙だった、後(のち)に埋められるべく。
 彼女は言った、「貴方は、私についてご存じなかったんでしょ?」
 「現実の事柄としては・・・」
 「ヘンリは、私をよく思わなかった。それがそれをかなり気まづくしました。ですから私は、距離を保ちました。」彼女は穏やかな理性的様子で話した、そして尚も、独立の効果で、彼女の目から涙が溢れ出た。男たちと彼らの妻は、皆、一掃された。見知らぬ人々が、僕たち三人の間を、礼拝堂の中に入る彼らの道を選んだ。パ―キスだけは、考え事をしながら、居残っていた。僕は思う、彼は、より疎遠な情報を提供することで、未だ僕の役に立つのかも知れないが、彼は、彼の距離を保っていた、承知の上で、彼は、彼の立場を話してしまおうとするように。
 「私は貴方のことを聞いて、大変好意を持っています、」サラーの母親は言った。僕は、彼女の名前を思い出そうとした―カメロン、チャンドゥラ、それは、C.で始まった。「私は、今日、グレイトゥ・ミセンデンからこんなに大急ぎでやって来ました・・・」彼女は、浴用タウアルを使っているかのように無頓着に、彼女の目から涙を拭った。バトゥラム、僕は、それが名前、バトゥラムだったと思った。
 「そうです、バトゥラム婦人、」僕は言った。
 「それで私は、私の黒いバグの中にお金を入れ替えるのを忘れました。」
 「僕に出来ることなら、何なりと。」
 「もしよろしければ、貴方が一パウンドゥ私に貸して下さればいいのですが、ベンドゥリクスさん。私は、私は出る前に、町で何か夕食を摂ろうと思います。グレイトゥ・ミセンデンでは、それは早く閉まります、」それから彼女は、話しながら、もう一度彼女の目を拭った。何か彼女に纏わることは、僕にサラーを思い起させた。彼女の悲しみ、多分曖昧さ、の中の現実ーのー物事。彼女は、一度でもヘンリに頻繁過ぎる程「触れた」ことがあったのか?「僕と一緒に、早い夕食を摂りましょう。」
 「貴女は、くよくよしようとしてはいけない。」
 「僕はサラーを愛していました、」僕は言った。
 「そう、私も。」
 僕は、シルヴィアの所に戻り、説明した。「あれは、彼女の母親だ。僕は、彼女の夕食を御馳走したい。僕は申し訳なく思う。僕は貴女に電話して、他の日を設けてもいい?」
 「もちろん。」
 「貴女は、電話帳にある?」
 「ウォタベリがあります。」彼女は悲観的に言った。
 「次の週。」
 「私はそれでいいわ。」彼女は、彼女の手を出し、言った、「グドゥ‐バイ。」時を逸してしまったということ、それは様々な事情の一つだ、と彼女には分かっている、と僕は言えはする。神に感謝、そんな事は、どうでも良かった―地下鉄駅と同じ程度に遠い微かな後悔と好奇心、バートクを覆うウォタベリへの意地悪な言葉。バトゥラム婦人の方へ後戻りしながら、僕は、又、サラーに話し掛けている僕自身に気付いた。貴女は見ている、僕は貴女を愛している。しかし、憎悪が持つのと同程度の、聞かれているという確信を、愛情は持たない。僕たちが火葬場入口に近付くに連れ、パ―キスが消え去ったということに僕は気付いた。僕は、彼が行くのを見なかった。今頃はもう、僕が彼を必要としない、と悟っていなければならなかった。
 バトゥラム婦人と僕は、イゾラ・ベラで夕食を食べた。僕は、僕がサラーと一緒に前に行ったことのある何処にも、行きたくなかった。それにもちろん直ぐに。一緒に訪れた他の全てと、このレスタラントゥを僕は比べ始めた。サラーと僕は、キアンティを飲んだことがなく、そして今は、それを飲んでいるという行為が、あの頃の実情を僕に思い起こさせた。僕は、僕たちの好みのクラレトゥを飲んだ方がずっとましだった、僕は、もう彼女について考えられなかった。空虚でさえ、彼女で混み合った。
 「私は、式が好きではなかった、」バトゥラム婦人は言った。
 「僕は気の毒に思います。」
 「それは、非常に非人間的です。ベルトゥ・カンヴェイアのよう。」
 「それは、適当だったと思います。結局、そこには祈り手がいました。」
 「あの牧師―彼は牧師でしたか?」
 「僕は、彼を見なかった。」
 「彼は、偉く大きな全体について話しました。私は、ずうっと分からずじまいでした。彼は偉く大きな海雀を言っているんだと思いました。」彼女は、彼女のスープの中に、又、垂らし始めた。彼女は言った、「私は、吹き出しそうでした、するとヘンリが私を見ました。私は、私の勘定書きにそれを見積もると、見て取れました。」
 「貴女は離れて、それに打撃を与えない?」
 「彼は、とても卑しい人です。」彼女は言った。彼女は、彼女のナプキンで目を拭い、それからスープの中で、猛烈に彼女のスプーンで、彼女はヌードゥルを掻き雑ぜながら、カチカチ音を立てた。「私は、一度、彼から十パウンズ借りなければならなくなりました。と申しますのも、私は滞在する為にロンドンへ来ようとして、私のバグを忘れました。それは、誰にでも起こり得ることです。」
 「もちろん、それは有り得ます。」
 「私は、何時も世間で借金しないことを、自分自身誇っています。」
 彼女の会話は、地下鉄システムのようだった。それは、円や輪の中で動いた。僕は、カフィによって、繰り返されている駅に気付き始めた。ヘンリの卑しさ、彼女自身の清算の高潔、サラーへの彼女の愛情、葬式に伴う彼女の不満、偉く大きな全て―そこは、ヘンリに向かう不可避な列車が進み続ける所だった。
 「それは、随分おかしかったわ。」彼女が言った。「私は笑いたくなかった。誰も私が愛した以上にサラーを愛した者はいません。」僕たちは皆、僕たちが他の舌の上で、そういうことを聞くと、何時も、それに主張したり、怒られたりする。「しかしヘンリは、それを理解しようとしません。彼は冷たい人です。」
 僕は、目盛りを切り替える為に、測り知れない努力をした。「他にどんな種類の式を、僕たちが催せたのか、僕には見当が付きません。」
 「サラーは、カサリクでした。」彼女が言った。彼女は、彼女の、ポートゥのグラスを手に取り、一気にその半分を飲んだ。
 「ばかな、」僕は言った。
 「オウ、」バトゥラム婦人が言い、「彼女は、そのことを彼女自身知りませんでした。」
 突然、説明しがたく、僕は、殆ど完全な罪を犯してしまった男のように、恐れをなし、彼のペテンの壁に、初めての予期せぬ亀裂を見付ける。亀裂は、どれ程深く入るのか?それは、何とか塞がれるといいが?
 「僕は、貴女が仰っていることが分かりません。」
 「サラーは、私がカサリクだと貴方に話しませんでした―一度も?
 「いいえ。」
 「私はそれにあまり立ち入っていません。 貴女にも見当が付くでしょうが、私の夫は、全てのビズニスを嫌いました。私は、彼の三番目の妻で、最初の年、私は彼の持つ十字架貰った時、私たちはきちんと結婚していない、と事あるごとに申しました。彼は、卑しい人でした、」彼女は機械的に付け加えた。
 「貴女がカサリクである事は、サラーをそれにしない。」
彼女は、もう一口、彼女のポートゥを飲んだ。彼女は言った、「私は、他の指導者を口にしたことはなかった。私は少し酔ったと私は思います。私は酔っていると貴方は思いますか、ベンドゥリクスさん?」
 「もちろん、思いません。もう一杯ポートを飲んで下さい。」
 僕たちがそれを待つ間、彼女は、話を切り替えようとしたのに、僕は、彼女を情け容赦なく連れ戻した。「貴女は何を言い出すんです―サラーがカサリク?」
 「貴方はヘンリに話さない、と約束して下さい。」
 「僕は約束します。」
 「私たちは、一度、ノーマンディの海外にいたことがあります。サラーは、ちょうど二つを越えていました。私の夫は、ドービルに何時も出掛けました。そう彼は言っていましたが、彼が、彼の最初の妻を見舞うことを、私は知っていました。私は大層な十字架を頂きました。サラーと私は、砂浜に沿って歩いて向かいました。サラーは、座りたいと頼み続けたのに、私は、彼女に一休みさせ、その後も、私たちは少しでも歩こうとしました。「これは、貴女と私の秘密よ、サラー。」その時でさえ、彼女は内緒ごとが上手でした。―彼女はそうしたかったかどうか。私は、貴方に話せるなんて、びっくりします。でも、それは立派な復讐ですものね?」
 「復讐?僕はあまりよく貴女が分からない、バトゥラムさん。」
 「私の夫への、もちろん。それは単に、彼の最初の妻の所為だけではありません。私は貴方に話したでしょ、彼は、私をカサリクにならせないということを?オウ、
そこで私は思いました、サラーはカサリクになろうとしている、そうして彼は知ろうともせず、私が実際に怒りを買わなければ、私は彼に話そうともしない。」
 「それで、貴女はそうしなかったんですか?」
 「彼は去り、その後一年、私を置き去りにしました。」
 「だから貴女は、もう一度、カサリクになれた?」
 「オウ、ところで、私は多くを信じなかった、貴方が見ての通り。その後、私はユダヤ人と結婚しました。そして彼も又、難しかった。ユダヤ人は、恐ろしく寛大だ、と彼らは貴方に言います。貴方は、それを信じてはいけない。オウ、彼は、卑しい人でした。」
 「それにしてもビーチで何かあったのですか?」
 「もちろん、それ程のことは、ビーチで起こらなかった。私たちはその道のりを歩いた、と只言おうとしているだけです。」私はドアの側にサラーを置いて、牧師を探しに行きました。私は、二、三、彼に嘘を吐こうと思いました―成り行き次第の罪のないそれを―事情を説明する為に。私は、その全てを私の夫に押し付けました、当然。彼は結婚する前、約束したのに、その後、彼は彼の約束を破った、と私は言いました。フランス語をたくさん話せない事、それが命運を分けました。貴方が正直な理(ことわり)を知らなければ、貴方には恐ろしく真実に聞こえる。何はともあれ、彼はそこでその時、それを行い、私たちは、昼食に間に合うように帰りのバスを拾いました。
 「何をしました?」
 「彼女にカサリクの洗礼を施しました。」
 「それで終わりですか?」僕はほっとして尋ねた。
 「まあ、それは、サクラメントゥです―そうとも彼らは言います。」
 「サラーは、カサリクそのものだ、と貴女は言いたいのではないか、と直ぐに思いました。」
 「まあ、貴方は見ていますね、彼女はそういう人でした。只彼女はそれを知りません。私は、ヘンリが適切に埋葬してくれていたらと願います。」バトゥラム婦人は言い、再び異様な涙の滴下を始めた。
 「喩えサラーが知らなかったにしても、貴女は彼を責めることは出来ない。」
 「私は、何時も、それは『受け容れる』だろうという願いを持っていました。ワクチン接種のように。」
 「それは、貴女と同様、多くを『受け容れられた』ようには思えません。」僕は、言うことには抵抗出来なかったが、彼女は、立腹しなかった。「オウ、」彼女は言った、「私の人生には、限(きり)のないほどの誘惑がありました。事態は、終わりまでに好転するだろうと期待しています。サラーは、私と一緒に随分我慢をしました。彼女は、いい娘(こ)でした。誰も私がしたように、彼女に感謝する者はいなかった。彼女は、更に何杯かポートゥを飲み、話した、「貴方だけでも、彼女をよくよく知って下さっていれば。何故(なにゆえ)に、もし彼女がちゃんとした様子の中で育てられていたら、もし私があんな卑しい男たちと決まって結婚しなかったら、彼女は聖人になれたのに、と私は真剣に決め込んでいます。
 「しかしそれは、まるで受け容れなかった。」僕は、荒々しく言い放ち、それから僕は、勘定書きを持って来させる為にウェイタを呼んだ。僕たちの未来の墓所の上を飛ぶあれらの灰色の雁の片翼は、僕の背中の下に隙間風を送ったのか、それとも他に、もしかして、僕は、凍った地面の中の死ぬほどの寒気を捕えてしまった。もしそれが、只、サラーのような死ぬほどの寒気で有り得たら。
 「それは受け容れなかった。僕は、マライルボウンでバトゥラム婦人を下ろした後、家への道すがら、地下鉄の中で僕自身に繰り返した。彼女にもう三パウンズ貸すと「明日は水曜日で、私は、雑役の為に、中に居なきゃいけませんから。」可哀そうなサラー、「受け容れられた」何かは、夫や継父というその一続きだった。彼女の母親は、彼女に効果的に十分教えた、一生の内に、一人の男では足りないと、しかし彼女は、彼女自身、彼女の母親の結婚の虚構を通して見て来た。彼女がヘンリに嫁いだ時、彼女は暮らしの為に嫁いだ、僕が絶望的に分かったように。
 しかしその賢明さは、ビーチ近くの狡猾な儀式で、出来る事は何もなかった。それは「受け容れた」貴方ではなく、僕は、僕が信じなかった神を、語った。サラーが考えた想像上の神は、僕の命を救い(想像可能な何らかの目的の為に)、僕が、嘗て経験した唯一の深い安らぎを、彼の非実在にあってさえ、破滅させた。オウ、いや、受け容れたのは、それは貴方ではなかった。それは呪文だったし、僕は、貴方を信じるくらいなら呪文でも信じる方がましだ。呪文は、貴女の十字架であり、貴女の肉体の復活であり、貴女の神聖なカサリク教会、貴女の聖人の親交だ。
 僕は、僕の背中の上に横たわり、僕の天井で動く共有地の高木の影を見守った。それは、まさに符合だ、僕は思った、恐ろしい程の符合、それは、殆ど最後には貴方に彼女を返したことになる。貴方は、一生に備え、僅かな水と一人の祈り手と一緒になって、二歳の子供に印を付けてはいけない。もし僕がそれを信じ始めたら、僕は、肉体や血を信じられただろうに。貴方は、この数年来、彼女を所有しなかった。僕は、彼女を所有した。貴方は、終わりの時に勝った。貴方は、それを僕に念を押す必要はない。彼女が僕と一緒に、このベドゥの上に、彼女の背中の下のこの枕と共に、ここに横たわった時、彼女は、貴方共々僕を騙していた。彼女が眠ると、僕は彼女と一緒になった、貴方とではなく。それは、彼女を貫いた僕だった、貴方ではなく。
 灯は皆消え、闇がベドゥの上にあった、直ぐに僕は夢を見た、僕の手の中に銃を持ち、僕はフェアにいた。僕は、それがグラスで作られたかのように見える瓶を撃っていた。しかしそれはスティールで覆われているかのようで、僕の弾丸は、それを外して跳んで行った。僕は発砲し又発砲して、ひびを入れられたのは瓶ではなかった、そうこうして僕の頭の中に同じ思いを抱えたまま、朝の五時に、僕は目覚めた。この数年の間、貴女は僕のものだった、彼のものではなく。


ヘンリが彼の家を共有することを、僕に頼んでもいいと思った時、それは、僕の気味の悪い冗談だった。僕は、提供を実際は期待しなかったし、その時が遣って来た時、僕は、驚きに心奪われた。葬式一週後、彼の訪問も、驚きだった。彼は、以前、僕の家に来たことは一度もなかった。僕は、彼が今までに、雨の中、共有地で彼に会ったその夜より南側に、ずっと近くまで来たことがあるのではないかと疑った。僕は訪問者と顔を合わせたくなくて、僕のベルが鳴るのを聞くと、窓の外を見た―それは、シルヴィと一緒のウオタベリかも知れないちう考えが浮かんだ。鈴懸の‐木の側のラムプは、歩道の上にヘンリの黒い帽子を浮かび上がらせた。僕は階下へ向かい、ドアを開けた。「僕は、ちょうど側を通り掛かったんだ。」ヘンリは嘘を吐いた。
 「入ってくれ。」
 僕が食器戸棚から僕の飲み物を取り出している間、彼は、突っ立って決まり悪そうにオロオロしていた。彼は言った、「貴方は、将軍ゴードンに興味があるように思います。」
 「彼らは、Lifeを遣って行く為に僕を欲しがっている。」
 「貴方は、そうするつもりなの?」
 「僕は、そう考えている。この頃、僕は大抵、仕事のように思わない。」
 「それは、僕と同じだ。」
 「王室委員会に未だ席があるの?」
 「そう。」
 「それは何か考えるべきことを貴方に許すの?」
 「それがですか?そう、僕はそう思っている。僕たちが昼食を止めるまで。」
 「とにかく、それは大事な仕事だ。ここに貴方のシェリがある。」
 「それは、独身気分に僅かなりとも見当違いをさせまいとする。」
 あんなに僕を怒らせたタトゥラの悦に入った写真から、どんな長い道程を旅して来たのか。僕は、机の上に倒した、スナプ写真から引き伸ばしたサラーの写真を持っていた。彼は、それを上に向けた。「僕はそれを撮ったのを覚えている、」彼は言った。サラーは、写真は女友だちに撮られた、と僕に話した。彼女は、僕の気持ちを救う為に嘘を吐いたんだと僕は思う。写真では、彼女はより若く、より幸せそうだったが、僕が彼女を知った数年の内よりずっと愛らしく見えなかった。僕は、そのあたりを彼女に見せられたらなあと願いはしたものの、彼の情婦の周囲の配役に似て、強固になるばかりの不幸を見詰める事、それは愛人の宿命だ。ヘンリが言った、「僕は、彼女を笑顔にしようとして、自分自身、愚かなことばかりしていた。「将軍ゴードンは、興味深い性質?」
 「なかなかのくせもので。」
 ヘンリは言った、家が、この頃、非常に奇妙に感じる。僕は、出来るだけ力を尽くしてそれから守ろうとしている。貴方は、クラブでの夕食で、侭ならないと僕は思うが?」
 「僕は、終えなければならないたくさんの仕事を貰った。」
 彼は、僕の部屋を見回した。彼は言った、「貴方は、ここでは貴方の本のスペイスを十分とれない。」
 「いや。ベドゥの下にその内の幾らかは、置くことにしている。」
 彼は、ウォタベリが、彼の仕事の一例を見せる為に、インタヴュウ前、僕に送ったマガジンを抜き取り、言った、「僕の家には、部屋がそこいらにある。貴方は、実際、貴方自身向けにフラトゥを持てたりする。」僕は、答えようにもあまりにもびっくりし過ぎていた。彼は、急いで続け、彼自らの提案が実際興味深いものではないかのように、マガジンの頁を捲った。「よくそれを考えてみて欲しい。貴方は、今、決める必要はない。」
 「それだから、貴方はとても善良だ。」
 「貴方は僕に好意を示そうとする、ベンドゥリクス。」
 僕は思った、何故そうしないのか?作家は、型に嵌らないと見做(みな)す。僕は、上級官吏よりずっと典型的なのか?
 「僕は、昨夜、夢に見た、」ヘンリが言った、「僕たちの何もかもを。」
 「そう?」
 「僕は、大抵、覚えていない。僕たちは、一緒に飲んでいた。僕たちは、幸せだった。僕は目覚めた時、彼女は死んでいないと思った。」
 「僕は、今は、彼女の夢は見ない。」
 「僕たちが、あの牧師に彼の道を貫かせていたらなあと思う。」
 「そんな馬鹿げた、ヘンリ。彼女は、もう貴方より僕よりずっと、カサリクとは言えない。」
 「貴方は、残存を信じるの、ベンドゥリクス?」
 「もし貴方が個人的残存を言おうとしているのなら、いいえだ。」
 「人は、それに論ぱく出来ない、ベンドゥリクス。」
 「何か論ぱくする、それはほとんど不可能だ。僕は、物語を書く。その中で、何事も起こらなかったと、その登場人物は現実にはいないと、貴方はどう証明出来る?聞いてくれ。僕は、今日、共有地で三本足の男に会った。」
 「何とおぞましい。」ヘンリは真剣に言った。「出来損い?」
 「それに、魚のうろこでそれは覆われていた。」
 「貴方は冗談を言っている。」
 「じゃあ、私であると証明してみなさい。ヘンリ。僕が神を論ぱく出来る以上に、僕の物語を、貴方は論ぱく出来ない。が、僕の物語は嘘だと貴方は知っている、まさにそのように、僕は彼がぺてんだとよく知っている。
 「もちろん、そこには論拠がある。」
 「僕の物語の為に、哲学的論拠を僕はでっち上げてもよく、僕は敢えて言う、アリスタトゥルに基づいた。」
 ヘンリは、不意に話題を元に変えた。もし貴方が来て居てくれたら、それは貴方を少しは救うだろう。サラーは何時も言った、貴方の本は、それらは、あるべき程の成果を上げていないと。」
 「オウ、成功の影は、その上に投げ掛けられようとしている。」僕は、ウォタベリの記事を思った。僕は言った、「賞賛の為に大衆的批評家が、彼らのペンをちょっと浸しているのが聞かれる時、ある瞬間は訪れる―次の本が書かれる前でさえ。それは、皆時機に問題がある。」僕は、僕の心を決めていないから、と話した。
 ヘンリは言った、「そこには残った悪い‐感情は全くない。そこにあるの、ベンドゥリクス?僕は、貴方のクラブで貴方に怒られた―あの男の事で。しかし、今、それはどうでもいいじゃないか?」
 「僕が悪かった。彼は、単なる幾分狂気じみた桶をどんどん打つ、彼の論理を以(もっ)て彼女に興味を抱いた合理主義者だった。そんなことは忘れた方がいい、ヘンリ。」
 「彼女は善良だった、ベンドゥリクス。人々は噂するが、彼女は善良だった。まあ、僕が彼女を適切に愛せなかった、それは、彼女の落ち度ではない。貴方も知ってる、僕は恐ろしく分別があり,慎重だ。僕は愛人を作るタイプではない。彼女は、貴方のような誰かを求めた。」
 「彼女は僕の許を去った。彼女はその気にさせ続けた、ヘンリ。」
 「僕は、一度、貴方の著作の一つを呼んだのを知ってる?―サラーが僕に見繕った。貴方は、その中で女が死んだ後の家を描写した。」
 「The Ambitious Host。」
 「それがその題名だった。その時には、それで全くいいように思った。僕はそれを尤もらしいとは思ったが、貴方は、それを全く間違っていることにした。貴方は、どのように夫は、その家が酷く空虚だと気付くかを描写した。椅子を移し、そこにいるもう一人の動作の効果を出そうとして、彼は、部屋をあちこち替えた。時々、彼は、二つのグラスに飲み物を、彼自身注ごうとする。」
 「僕は、そういうことは忘れる。そうだとちょっと文学的な響きがある。」
 「それじゃあ、目的からずれる、ベンドゥリクス。悩みは、家が空虚に思えない処にある。貴方は見ている、しばしば随分前には、僕が役所から帰宅すると、彼女は何処かに出掛けている―おそらく貴方と一緒に。僕が呼ぶのに、彼女は答えようとしない。その時、家は空っぽだった。僕は、危うく家具がなくなっているのを見つけることを期待するところだった。僕は、僕の範疇で彼女を愛したんだと貴方も分かっている、ベンドゥリクス。彼女がそこにいなかった時は何時も、あの最期の月、僕が帰宅した時、手紙が僕を待っているのを見るのを惧れた。
 「そう。」
 「しかし今は、あんな風に家が空虚には思えない。僕は、それをどう表現すべきか、分からない。彼女は何時も何処かにいる。彼女はこれまで何処にもいない。貴方は、彼女が他の何処にも、これまでいた例(ためし)がないのを見ている。彼女は、誰かと昼食を摂っていない、彼女は、貴方と映画館にいない。そんな場所は、彼女のいるべき場所ではなく、それにしても家だって。」
 「じゃあ、何処に彼女の家庭はあるの?」僕は言った。
 「オウ、貴方は僕を許そうとした、ベンドゥリクス。僕は神経が細く、疲れている―僕は十分寝ていない。彼女に話し掛けるのに次の最高の手法は、彼女について語る事だし、そこには貴方だけがいる、と貴方は分かっている。
 「彼女は、多くの友人を持っている。サー・ウイリアム・マロック、ダンスタン・・・」」
 「僕は、彼らに彼女の事を語れない。あの男、パ―キス以上に。」
 「パ―キス。」僕は叫んだ。彼は僕たちの暮らしの中に、永遠に、彼自身を滞めてしまったのか?
 「僕たちが催したカクテイル・パーティに彼はいた、と彼は僕に話した。」
 「見知らぬ人々を、サラーは選んだ。彼は、貴方も彼を知っていると言った。『親愛なるヘンリ』・・・彼らが小説の中で書くような事だと貴方は知っている。」
 「貴方を味方につけて、地上の何を彼は欲しがったのか?」
 「彼のところの少年に彼女は親切だった、と彼は言った―神は、その時を御存知だ。その若者は病気だ。形見に彼女の物を欲しいように思えた。彼女の昔の子供達の本の一、二冊を彼にあげた。彼女の部屋、そこにはたくさんそういうものがあり、どれにも鉛筆で、一面、走り書きがあった。それは、そういうものを片付けるのに良い方法だった。誰もフォイルズにそういうものをまさか送られない、誰か出来る?僕はその中にどんな害も見えない、貴方はどう?」
 「いや。それは、サヴィジの探偵取次事務所から、彼女を見張る為に置いた男だった。」 
 「善良な神、もし僕が知っていたら…しかし彼は、実際、彼女を好きな感じではあった。」
 「パ―キスは人間だ。」僕は言った。「彼は、簡単に触った。」僕は、僕の部屋を見回した―どこからヘンリが来ても、サラーのものは、もうそれ以上そこにないように。多分どころではなく、彼女は、そこで薄められるだろうから。
 「僕は、来て貴方と一緒にいよう、ヘンリ、だが貴方は、僕に幾らか家賃を払わせなきゃいけないよ、ヘンリ。」
 「僕はとても嬉しい、ベンドゥリクス。それで、家屋は、自由保有不動産だ。貴方は、料金の内、貴方分を払えばいい。」
 「又結婚して、新しい当てこすりを探す方がいいと貴方が気付く『三ヶ月』。」
 彼は僕の言う事を、実に真面目に受け取った。「僕は、そんな事をもうする気はない。僕は、結婚する類じゃあない。僕が彼女と結婚したばっかりに、サラーに負わせたのは、そりゃあ大きな傷だった。僕は、今ようやくそれが分かった。」

そうこうして僕は、共有地の北側に転居した。僕は一週間の家賃を無駄にした。ヘンリが直ぐに来て欲しいというものだから。僕は五パウンズ僕の本や衣服を運ぶヴァンの為に支払った。僕は、客間を持ち、ヘンリは、書斎としてがらくた―部屋を片付け、階上には、床の上、そこにバスがある。ヘンリは、彼の衣裳‐部屋に移り、彼らが冷たいトゥイン・ベドゥを共有した部屋は、訪れない客の為に残された。二、三日後、ヘンリは空っぽになる事のない家によって、何をどうするつもりなのか、僕は見ることにした。僕は、大英博物館でそれが閉まるまで仕事をし、その後、僕は戻って、ヘンリを待ち、普段は出掛けて、ポンテフラクトゥ・アームズで少し飲んだ。一度、ヘンリがバーンマウスの会議で、数日間不在
だった時、僕は女の子を拾い、彼女を連れ帰った。それは、微塵もいい事はなかった。僕は、直ぐにそういう気がした、僕は、性的不能者で、彼女の気持ちを救う為に、他の誰かとこういう事をしない、と僕は、僕が愛した或る女に誓ったんだ、と彼女に打ち明けた。彼女は、非常に気持ちよく、それを理解した。売春婦は、感傷への大いなる畏敬の念を抱く。僕の心の中、そこにどんな復讐心もなかったこの時、僕があんなにも繰り返し楽しんだ何かを諦める事への悲しみを、僕は感じただけだった。僕は、その後サラーの夢を見て、僕たちは、南側の懐かしい部屋で、又恋人に戻ったが、何も起こる事はなかった。この時だけ、事実そこにどんな悲しみもなかった。僕たちは、幸福だった上に後悔もなく。
 僕の寝室の食器戸棚を引っ張って開け、古い子供たちの本の積み重ねを見付けた、それは、その後二、三日経ってからだった。ヘンリは、この食器戸棚をパ―キスの若い者の為に荒さなければならなかったんだ。それぞれ色の付いたカヴァに包まれたAndrew Langのお伽話、数多いBeatrix Pottersの五、六冊が、そこにはあった。The Children of the New Forest、The Golliwog at the North Pole、そしてまたもっと古い一、二冊。―Captain Scotts Last ExpeditionやPoem of Thomas Hood、それが台数に於ける熟達の為、サラー・バトゥラムに授与されたというラベルの付いた学校用皮革に閉じられた極め付け。代数!人の何と変わる事よ。  その夕方、僕は仕事が出来なかった。僕は何冊も本を抱えて床に寝転び、サラーの一生の内、白紙の時間に少なくとも二、三その輪郭を追おうとした。愛する人が、父や兄弟も又、いて欲しいと願った時代が、そこにあった。彼が分かち合えなかった年月を、彼は妬む。The Golliwog at the North Poleは、おそらくサラーの初めての本で、それは、前頁に亘って走り書きされていた、この道、またあの道、無意味に、破壊的に、カラのチョークで。Beatrix Pottersの一つに彼女の名前が、鉛筆で綴られていた。一つの大文字が間違って配列してあった。The Children of the New Forestに、彼女は実にきちんと、綿密に、「Sarah Bertram Her Book」記と彼女は語った。借りるにはどうか許しを請うて下さい。そしてもし貴方がそれを盗めば、その時は、貴方の悔恨となるでしょう。それらは、今まで生きた全ての子供の目印だった。人が冬に見る鳥の鉤爪の印同様、特徴のない。僕がその本を閉じた時、直ぐに、それらは時の流れによって覆われた。  彼女が、前にフドゥの詩を読んだことがあったかどうか、僕は疑う。本は、校長か有名な訪問者によって彼女に手渡された時と変わらず、どの頁もきれいだった。実際、それを食器戸棚に戻して置こうとした時、一枚のプリントゥが床に落ちた―おそらくその真の賞授与の書類。手書きの内、僕が承認可能だったのは(しかし僕たちの手書きでさえ、始まって日が浅く、時勢の古臭いアラビア模様上を占領している)言い回し「何と戯言を発する」だった。僕は、校長が彼女の席に着き、親たちによって恭しく拍手されている時、サラーはそれを書き下ろし、彼女の隣にそれを見せたのだと想像出来た。僕は、何故、彼女のもう一つの輪郭が、僕の頭の中に入ったのか、何時、その苛立ち、その無理解やその確信全てを持ったその女学生の言い回し「私は詐欺師でペテン師です。」を、僕が見知ったのか分からない。僕の手の下のここは、無知だった。彼女は彼女自身について、そういう事を思う為にだけ、もう一人の二十歳を生きて来たというのでは、余りに哀れなような気がした。怒りの一瞬に、僕は彼女を利用したそれは説明になったのか?彼女は何時も、僕の批評を匿(かくま)った。それは雪のように彼女から滑り落ちた一途な賞賛だった。  僕はその紙切れを上に向け、23 7月 1926のプログラムを読んだ。the Water Music of Handelミス・ダンカンによる演奏、R.C.M。「I wanted lonely as a cloud」ベアトリス・コリンズ。チュダ・アイレス男子学生クラブによる。Aflat Chopin‘s Waltsメアリ・ピピトゥによる。二十年前の長い夏の午後は、僕へとその影を伸ばし、僕は、そう、悪い方向へ僕たちを変えるこの世を憎んだ。僕は思った、僕の初めての小説を始めた、その時だった。僕は、仕事をしようと腰掛ける時、そこには有り余る程の興奮、野心、希望があった。僕は辛くはなく、僕は幸福だった。僕は読まれなかった本の中に紙切れを戻して置き、GolliwogとBeatrix Pottersの下の食器戸棚の後ろに一冊突っ込んだ。たった十年、僕たちの間の数郡を共にしただけでも、僕たちは二人共幸福だったが、何の明瞭な目的もなく、しかし数え切れない程の傷を互いに与える為に、一緒になるには少し遅かった。僕は、Scotts last Expeditionを持ち上げた。
 あれは、僕自身の好きな本の一つだった。今デイトゥするなど奇妙に思えた。敵に対する氷だけを持ったこのヘロウイズム、人の所有を超えて、何人の死も巻き込まない自己犠牲、二つの戦争が僕たちと彼らの間に立ち尽くした。僕は、写真を見た。顎髭があり、目をむいている、雪の小さな積み上げたもの、、ユーニアン・ジャック、縞を付けた岩の間の時代‐遅れの調‐髪のような、長いたてがみを持ったポウニ。死でさえ「終止符」であり、「終止符」どころか、頁に線、感嘆符で印を付けた女学生がいて、彼女は、Scott`s last letter homeの余白に小奇麗に書いた。「そうして次はどうなるの?それが神ですか?Robert Browning。」その時でさえ、僕は思った、彼は彼女の心の中に入り込んだ。彼は、愛人同様に秘密で、束の間のムードゥの優勢を選び、彼のありそうにない事と伝説で、僕たちをヒアロウのように誘う。僕は、最後の本を戻し、錠を下ろして鍵を回した。

「貴方は何処にいたの、ヘンリ?」僕は尋ねた。彼は、普段、最初に朝食に着き、時には、僕が下りる前に、彼は家を出たのに、今朝は、彼のお皿が触れられないままで、僕は彼が現れる前に、静かに玄関ドアが閉まるのを耳にした。
 「オウ。ちょうど下りて来たね、」彼はごまかすように言った。
 「一晩中外にいたの?」僕は尋ねた。
 「いや。もちろんいない。」彼が僕に本当の事を言うそんな義務を、彼自身に明瞭にする為に。「神父クロムプトンは、今日、サラーの為のマース(ミサ)を唱えた。」
 「彼は、未だにその事に関わっているの?」
 「ひと月に一度。ちょっと覗く、それが礼儀だろうと僕は思った。」
 「貴方がそこにいても彼が気付く、と僕は思わない。」
 「僕は、後でお礼を言いたくて、彼に面会した。実を言うと、僕は彼を夕食に招待した。」
 「それなら僕は出掛けるよ。」
 「貴方は、そうしないで欲しい、ベンドゥリクス。」
 「とりあえず、彼の身になると、彼は、サラーの友人だった。」 
 「貴方まで、信仰を変えるんじゃないでしょ、ヘンリ?」
 「もちろん変えない。彼らには、僕たちが持つ程度の、彼らの見解に対する真剣さはある。」
 そうこうして彼は夕食に遣って来た。醜い、目の落ちくぼんだ、トルケマダのような鼻の、彼は、僕からサラーを守ったその男だった。一週間で忘れられて当然の、ばかげた誓いに閉じ込め、彼は、彼女を支えて来た。彼女が雨の中歩いて、避難所を探したのも、その代わりに「彼女の死を受け止める事になった」のも、そりゃあ、彼の教会に向かっていたからだ。ありのままの礼儀正しさでさえ示すのは、僕にとってそれは難しく、ヘンリは、夕食の重荷を肩に背負うことにした。神父クロムプトンは、何時もは、外で食事をしなかった。彼の意向を保つ為にそれを懸命に探す事、これは義務だという印象を、人は持った。彼は、非常に限られた些細な話をし、彼の答えは、木のように道を横切って倒れ掛かった。
 「貴方は、ここら辺に多くの貧困者を抱えている、と僕は思いますが?」
ヘンリは言った、かなり疲れて、一面のチーズに。彼は随分いろんな事に挑戦した―本や映画の影響、最近のフランス訪問、第三次戦争の可能性。
 「それは、問題ではありません。」神父クロムプトンは返事をした。
 ヘンリは一生懸命務めた。「不道徳?」彼は、僕たちがこんな言葉では、避けて通れないいささか捨て鉢な調子で尋ねた。
 「それは、嘗て問題であった例がありません。」神父クロムプトンが言った。
 「僕は思いました、多分―共有地―誰でも気付きます、夜・・・」
 「どんな開けた場所でも、貴方は、それを事件にする。それにどっちみちそりゃあ冬ですもの。」そうして、それはがそれはを締め出した。
 「もう幾つかチーズを、神父?」
 「いえ、貴方に感謝します。」
 「僕は思います、このような地区で、貴方はお金を集める数多(あまた)の苦労を抱えていらっしゃる―慈善の為に、と僕は申しますが?」
 「皆様は、彼らに出来ることなら何でも施して下さる。」
 「貴方のカフィと一緒にブランディは?」
 「いいえ、貴方に感謝します。」
 「貴方は、気にしないで下さい、喩え僕たちが・・・」
 「もちろん僕は気にしません。僕はそれを飲むと眠りに落ちられません、それだけです、それに僕は六時に起きることにしています。」
 「一体何の為に?」
 「祈り。貴方はそうする習慣が身についてますね。」
 「恐縮ですが、僕はたくさんは先ず祈れません。」ヘンリが言った、「僕は少年だった頃から、二軍のXV(ラグビー))に入りたくて何時も祈りました。」
 「それで貴方は入りましたか?」
 「僕は三軍に入りました。僕は不安ですが、祈りというものは、非常に優れている訳ではないんでしょ、神父。」
 「どんなものでも、何もないよりはいい。それは、ともかく神の力の承認で、それが賛美というもの、と私は思います。」僕は、夕食が始まってから、余りにも彼の話に耳を傾けていなかった。
 「僕は、考えもしなかった。」僕は言った、「それは、森に触れる事か、舗装道路上の線を避ける事にかなり似ていた。あの年齢では、どっちみち。」
 「オウそうです、」彼は言った、「私はちょっとした偶像崇拝にも逆らいません。それは、この世界が全てではないという考えを、人々に齎します。」彼は、僕に鼻を下げて顔をしかめた。「それは、知恵の始まりに成り得ましょう。」
 「貴方の教会は、確かに大筋から言って偶像崇拝を求めて入ります―聖ヤヌアリウス、血を流す像、処女の理想像―その類の事。」
 「私共は、それらを選り分けて除外しようとしました。何があってもいいと開き直る事、その方がずっと賢明さに欠けるのでは・・・?」
 ベルが鳴った。ヘンリは言った、「僕は、彼女はべドに行っていいよ、とメイドゥに言ってある。」
 「貴方は、僕の退席を許して下さいますか、神父?」
 「僕が行くよ、」僕は言った。僕は、その苛酷な同席から逃げ出す方が嬉しかった。彼は答えにも、励ましがあった。素人には、先ず彼を拒む事を期待出来ず、彼は彼の名に値する技術によって、人に耐え得る手品師のようだった
僕が玄関ドアを開けると、小包を抱えた喪服の頑丈な女が、
目に飛び込んだ。一瞬、それが僕たちの家政婦だと僕は思った、「 貴方は、ベンドゥリクスさんですか、サー?」と彼女が言うまで。
 「はい。」
 「私は、これを貴方に差し上げなければなりません、」すると彼女は、そこに何か爆発物でも入っているかのように、僕の手に素早く包みを押し込んだ。
 「それは、誰からですか?」
 「パ―キスさん、サー。」僕は、当惑してそれを裏返した。彼が僕に手渡そうとするには、今はもう遅過ぎる何らかの証拠を、誤って取って置いた、そういう事が僕の身にまで振り掛かった。僕は、パ―キスさんを忘れたかった。
 「良ければ受領書を私に戴けますか、サー?私は、包みを貴方自身の手に入れ込まなければなりませんでした。」
 「僕は、鉛筆を持っていない―それに紙も。僕は本当に悩まされる覚えがない。
 「パ―キスさんは、記録をどうしているか、貴方は知ってらっしゃる、サー。私は、私のバグに鉛筆を入れています。」
 使用済みの便箋の背に、僕は、彼女の為に受領書を書いた。彼女は、それを用心してしまい込み、その次に可能な限り遠くへ、彼女に出来る限り速く手に入れたかったかのように入口の方へ慌てて走った。
僕は、僕の手の中の物の重さを測りながらホールに佇んだ。ヘンリが、食堂から僕に呼び掛けた。「それは何、ベンドゥリクス?」
 「パ―キスからの小包、」僕は言った。その文句は、早口言葉のように響いた。
 「彼が本を返そうとしてるんじゃないかと僕は思う。」
 「こんな時間に?その上、それには僕の宛先が書いてある。」
 「そうだね、それで、それは何なの?」僕は小包を開けたくなかった。僕たちは、僕たち二人共が、忘れようとする痛みを伴った過程の最中(さなか)にあったのではないか?サヴィジ氏の取次店への僕の訪問で、僕は十分罰せられて来たのではないかと僕は思った。僕は、「私は、もう席を外しましょう、マイルズさん。」と言うクロムプトン神父の声を、僕は聞いた。
 「それはまだ早い。」
 「僕は思った、僕が部屋の外に留まれば、僕は、ヘンリの客への礼儀に適わなくてもいい、彼はもう間もなく帰るかも知れない。僕は包みを開けた。
 ヘンリが正しかった。それは、アンドゥルー・ラングの童話集の一冊だった。しかし、頁の間に一枚の折り畳んだメモ用紙が突っ込んであった。それは、パ―キスからの手紙だった。
 「親愛なるベンドゥリクス氏、」僕は読んだ、又、それは感謝の主旨だと思いながら、僕の目は、最後の文章に我慢出来ずに引き付けられた。「つまりこの状況の下で、僕は、いっそ家に本がない方がいいし、貴方の立場上、そこには本当に恩知らずはいない、と貴方がマイルズ氏に説明して下さることを望んでいます、アルフレドゥ・パ―キス。」
 僕は、ホールに座り込んだ、僕はヘンリが話すのを聞いた、「僕は、僕の心を閉ざしてしまったと考えないで下さい。クロムプトン神父・・・」そうして僕は、パ―キスの手紙を初めから読むことにした。
 「親愛なるベンドゥリクス氏、私は貴方に書いています、嘆かわしい団体とはいえ、私共の終わり故に貴方の同情を確信しているマイルズ氏ではなく、想像力のある、未知の出来事に慣れた文学の紳士貴方に。貴方は、私の所の若い者が、最近、彼の胃の酷い痛みは悪化する一方で、アイス・クリームの所為ではない事を御存知です。私は、虫垂炎を心配しています。医者は、手術を申し渡し、それには殆ど危険性はあり得ないとはいえ、私の幼気(いたいけ)な子供にメスとは、どれだけ恐ろしい事か、彼の母親は、不注意によりその最中に死んだ事を私は確信しています。この上、もしも同じ事で私の子供を失う嵌(は)めになったら、私はどうすればいいでしょう?私は全く一人になってしまいます。つまらぬ事はひらに許して下さい、ベンドゥリクスさん、しかし私の職業では、私たちは順番に物事を片付けるよう訓練され、重要な事を真っ先に説明します、だから裁判官は、事実を分かり易く提供しなかったと不平を言えない。それで私は、月曜日に医者に言いました、私たちが確信するまで待ちましょうと。只、マイルズ婦人の家の外で、待ちかまえ、見張っていた、そういう事をした、これは風邪だと時々僕は思います、一人放って置かれても致し方ない底なしの寛大さを持つ女性だったと僕が言っても、貴方は私を許すでしょう、貴方は、私の仕事の中身をほじくり返し、選別するけれども、メイドゥン・レインでのあの最初の日から今まで。私が見張っていた、それが、誰か他の女性だったらいいのにと願いました。ともかく、僕の所の若い者は、どんな風にその可哀そうな女の人が死んで行ったのか、彼が聞いた時、恐ろしく取り乱しました。彼女は、一度、彼に話し掛けただけでしたが、どういう分けか、彼の母親は彼女に似ていたという考えを持ってしまった、と僕は思います。只、彼女も、彼女の途上にあって、十分誠実な婦人ではなかったのに、私は私の人生の日々を見失っています。それで、彼の体温が、彼のような少年にしては高い、103だった時、通りで彼がした、ちょうどその通りに、マイルズ婦人に話し始めましたが、彼の年齢でさえ専門家としてのプライドゥを持ちながら、もちろん彼はしたくないのに、彼女を見張っていた、と彼女に打ち明けました。その内、彼は、彼女が何処かへ行ってしまって泣き出し、それから彼は眠ったにもかかわらず、彼が起きた時には、彼の体温は、まだ102のままでした。彼は、彼女が夢の中で彼に約束したプレズントゥを頼みました。そう、それが、何故私がマイルズ氏を悩ませ、彼を騙したのかであり、幼気な私の子供だけで、そこに専門家としての理由がない事が、私は恥ずかしい。
 私が本を貰って、それを彼に与えると、彼は少し穏やかになりました。しかし、もうこれ以上危険を選ぶ事はなく、彼は、水曜日には病院に行く予定で、もしそこで空いたベドゥがあったら、彼は、その夜、彼を送るつもりだ、と医者が言いましたから、私は心配でした。私の可哀そうな妻と私の幼気な子供だからこそ私は気懸かりで、それにメスが怖くて眠れなかったのは、貴方が見ての通りです。私は、随分一生懸命祈ったと貴方に打ち明けても、気にはなりません、ベンドゥリクスさん。私は神に祈り、もし天国のそこに誰かがいれば、今彼女は天国にいるのだから、彼女が出来る事をして欲しい、と私の妻に祈り、私は、マイルズ婦人に、もし彼女がそこにいたら、彼女も又出来る事なら何でもして欲しい、と頼みました。今、もし成長した男がそういう事をする事が出来れば、ベンドゥリクスさん、貴方には私の幼気な子供が想像している事が理解出来ます。今朝、私が目覚めますと、彼の体温が99度で、彼は少しの痛みもなく、医者が来ると。そこには残された僅かな虚弱さもなかったものですから、私たちは、暫く待つ方がいいと彼は言いましたが、子供は一日中全く正常でした。只、来て痛みを拭い去ってしまったのは、それは、マイルズ婦人でした―胃の右側を、彼に触れながら、もし貴方が無作法を許して下されば―そして彼女は、彼の為に本に書き込んだ、と医者に打ち明けました。しかし医者は、彼は、この上なく安静を保たれなければいけない、本は彼を興奮させると言いますから、こんな状況の下では、私は家の中に本がない方が寧ろいいのです・・・」
 僕がその手紙を上に向けると、そこに追伸があった。「本の中のあちこちに何か書いてありますが、マイルズ婦人が少女だった頃で、それは何年も前だったという事は、誰でも見ると分かります、只、私はその事を、痛みが戻って来るかも知れないと不安に思うが故に、私の幼気な子供に説明出来ません。敬意を込めて、A.P。」私は見返しの方を向けて、そこに 他の本の中で以前見たのとちょうど同じ消せない鉛筆の形にならなかった走り書きがあり、その中に、子供だったサラー・バトゥラムが、彼女の座右の銘を書いていた。
 「私が病気になった時、私の母は、私にラングによるこの本を私に与えました。
もし誰か丈夫な人がそんなものを盗めば、彼は、凄絶な轟音を喰らうでしょう。
けれども、もし貴方が病気で床に伏せているのなら、その代わりに
貴方は、それを読む為に、手に取ることが出来ます。」
僕は、食堂の中に僕と一緒にそれを戻した。「それは何だったの?」ヘンリが尋ねた。
 「本、」僕は言った。「貴方がパ―キスにそれを上げる前に、そこにサラーが何を書いたか読んだの?」
 「いや、どうして?」
 「偶然の一致、それが全て。偶像崇拝である事へのクロムプトン神父の説得に加担する、それは貴方には必要ないように思う。」僕は、ヘンリに手紙を与えた。彼はそれを読み、それから、クロムプトン神父にそれを手渡した。
 「私は、それは好きではありません。」とヘンリは言った。「サラーは死にました。僕は、彼女が噂を立てられるのを見聞きするのは嫌です・・・」
 「僕は、貴方が何を言いたいのか分かる。僕もそう思う。」
 「それは、見も知らぬ人々に彼女の事を、あれこれ言われるのを聞いているようだ。」
 「彼らは、彼女の事を何も悪く言おうとしてはいません。」クロムプトン神父が言った。彼は手紙を下に置いた。「もう私は行かなければなりません。」しかし彼は、テイブルの上の手紙を見るばかりで、動こうとしなかった。彼は尋ねた、「それで碑文?」
 僕は、彼の方へ本を横切って押した。「オウ、それは、何年も前に書かれた。彼女は子供皆と同じで、このような事を彼女の本の多くに書きました。」
 「時は、不思議なものです、」クロムプトン神父は言った。
「もちろん、子供というものは、それが過去にすっかり為された事と理解しようもないのです。」
 「聖オーガスティンは、時は何処から来たかと尋ねました。彼は、それは未だ存在しなかった未来から現れ、全く継続性を持たない現在の中へ、やがて存在を終えた過去の中で消えたと言いました。私たちは、子供より時を多少よく理解出来るという事を、私は知りません。」
 「僕には意味が分からなかった・・・」
 「オウそうですね、」と彼は言い、立ち上がりながら、「貴方は、まともにこの事に囚われてはいけません、マイルズさん。それでは、貴方の奥様がどんなに善良な方だったかを、見せびらかす事にしかなりません。」
 「それは、僕には何の救いにもならないんですね?彼女は、実在する事を終えた過去の一部です。」
 「その手紙を書いた男は、彼の中に多くの意図を持っていました。それらの為にと同じように、死者に祈る事の中に、そこには全く害はありません。」彼は、彼の言葉を繰り返した。「彼女は善良な女性でした。」
 全く突然、僕は僕の自制をなくした。彼の自己満足に主に悩まされた、と僕は信じている。知性などまるでないという感じは、これまで彼を困らせた筈だった。彼は数時間か、数日の間に知ったのは、僕たちが、何年もの間分かっていた誰かの親密な精通の掌握だけだった。僕は言った、彼女には、その種の事は何もなかった。」
 「ベンドゥリクス、」ヘンリは抜け目なく言った。
 「彼女はどんな男にでもまばたきをする人で、」僕は言った、「牧師にでも。彼女は、彼女の夫を騙したように、彼女は貴方を騙しただけです、神父。それに僕を。彼女は類稀な嘘吐きだった。」
 「彼女は、彼女がなかった何かである振りはしなかった。」
 「僕は、彼女の唯一の愛人ではなかった―」
 「彼を一人にさせなさい、」クロムプトン神父は言った。「かわいそうな男に譫言(うわごと)を言わせて置きなさい。」
 「貴方の専門的な哀れみを僕によこすな、神父。それを貴方の罪を悔いている人の為に、取って置きなさい。」
 「貴方は、僕が誰を哀れもうと、僕に押し付ける事は出来ない、ベンドゥリクスさん。」
 「どんな男でも彼女を所有出来た。」僕は、僕が何を言おうと信じようとしたのは、その時、そこに間違えるか後悔する事は何一つないに決まっていた。彼女が何処にいても、僕は、もう彼女に縛られようとは思わなかった。僕は自由になるんだ。
 「そして貴方は、懺悔に関して、何を以てしても私を説き伏せられないベンドゥリクスさん。私は、告白の25年と共にあった。そこには、私たちが、私たちの前でしなかった死者の内の何人かに、私たちが出来る事は何一つありません。」
 「失敗以外、僕は懺悔すべき事に囚われる事はなかった。貴方を待つの人々の処へ戻りなさい、神父、貴方の血みどろの小さな箱と貴方のロザリオに戻りなさい。」
 「貴方が私をと望むなら、どんな時もそこで、貴方は私に気付くでしょう。」
 「僕に貴方を求めよ、神父?神父、僕は無作法でありたいとは思わないが、僕は、サラーがいなくても僕だ,サラーがいなくても。」
 ヘンリは、困り果てて言った、「僕は申し分けなく思います、神父。」
 「貴方がそうである必要はない。どんな時に男が苦痛の中に納まるか私は知っています。」
 僕は、彼の自己満足の堅い皮膚を貫けなかった。僕は、僕の椅子を後ろに押して言った、「貴方は間違っている、神父。これは苦痛のように何か微妙なものではない。僕は、苦痛の中にいるのではない。僕は、憎しみの中にいる。僕はサラーを憎む、彼女は小さいタートゥだったから、僕はヘンリを憎む、彼女は、彼にくっついて離れないから、そして僕は、貴方と貴方の想像上の神を憎む、貴方は、僕たち皆から彼女を何処かへ連れ去ったから。」
 「貴方は、善良な憎みたがり屋です、」クロムプトンが言った。
 涙が、僕の目で行き場を失くした、彼等の何れかを傷付けるにしても、僕は力を頼りにする気はなかったから。「その貴方の饒舌さを持ったまま地獄へ。」僕は言った。
 僕は、ドアを僕の背でバタンと閉め、二人揃って彼らを閉じ込めた。ヘンリへの彼の高徳な博識を、彼に撒き散らせるといい、僕は思った、僕は一人だ。僕は一人になりたい。喩え貴女を僕が自分のものに出来ても、僕はあくまで一人になろうとする。オウ、次の男と同程度の信頼の能力が、僕にはある。僕は、延々と、ひたすら僕の心の眼差しを締め出すしかないのだ、そして僕は、貴女が、夜、安らぎを運ぶ貴方の感触と共に、パ―キスの少年の所へ出かけたという事を僕は信じられるのに。僕は、僕からあの娘を救うように貴女に頼み、貴女は貴女の母親を僕たちの間に押し付けた―或いはそう彼らが言ってもいい。しかし、もし僕が信じ始めれば、その時貴女の神を僕は信じるようとするに決まっている。僕は貴女の神を愛そうとする。僕は、いっそ貴女と寝た男たちを愛す方がましだ。
 僕は理性的になる事にした、僕は二階に行くよう自分に言い聞かせた。サラーは、死んでいないまま、もう長い時が過ぎた。誰も、この激しさで死者を愛し続けない、唯一生者だけは。彼女は生きていない、彼女が生きている筈がない。彼女が生きていると想い込んではいけない。僕は、僕のベドゥに横になり、僕の目を閉じて、僕は理性的になるよう努めた。僕が時になるように、もし僕が彼女を、そんなに身を余す程嫌えば、どうして彼女を愛せる?人は、心底憎み愛せるか?又、僕が心底憎むのは、それは、僕自身だけだ。僕がそれらのありふれた取るに足りぬ技術書いた本に、僕は嫌気がさす。僕の中の職人気質は、原稿の為には随分貪欲で、彼女が僕に与えられる情報が欲しくて、僕が愛さなかった女を引き籠らせようと調整した。心ゆくまで楽しんだところで、それにしても、心が何を思うかを表現するには、不十分であるこの体を、僕は疎んじた。そして僕は、僕の信頼しようとしない心が疎ましい。それは、ドアベルに粉を振ったり、神屑籠を荒らしたり、貴女の秘密を盗んだりしたパ―キスを腕時計にセットした。僕の片机の引き出しから、僕は貴女の日記を取りそれをでたらめに捲りながら、去年の一月の日付に沿って僕は読んだ。「オウ神よ、私は貴方を実際嫌える、それにどんな意味があるのか?」そして僕は思った、サラーを憎む事は、ひたすらサラーを愛す事、自らを嫌う事は、ひたすら自らを愛す事^―モーリス・ベンドゥリクス、The Ambitious Host,The Crowned Image The Grave Water-frontの著者。ベンドゥリクス乱筆家―サラーでなくとも―もし貴方が実在すれば、貴方以外、僕たちの憎悪に価値を見出す事はない。そこで僕は考えた、時に僕はモーリスを憎んだが、喩え僕が彼をも愛さなかったところで、僕は彼を憎むに至るだろうか?オウ神よ、喩え、僕が貴方を、心底憎めたにしても・・・
 どのように彼女は信じなかった神に祈ったか、僕は覚えていた、と今、僕はサラーに話し掛ける、僕は信じなかったのに。僕は言った、生きる事に僕を連れ戻そうとして、一度は僕たち二人揃って、貴方は犠牲にした。貴女なしで、これが、どんな人生足り得るか?神を愛する事、それは貴女にとっては全て実に好都合だ。貴女は、彼を我がものにしている。僕は生きる事に喘いでいる、僕は健全である事に気が塞ぐ。もし僕が神を慈しみ始めると、僕はまさに死ねもしない。僕は、その事で何かをしようとした。僕は僕の手で貴女に触れずにはいられない、僕は僕の舌で貴女を味わわずにいられなかった。誰も愛せないし、何一つ出来ない。夢の中で貴女が一度したように気にしないでと貴女が僕に話し掛ける事、それも何の役にも立たない。もし僕が永遠にそのように愛したら、それで、何もかも終焉に至るだろう。貴女を愛してさえいれば、僕は何も食べなくても良かった、他のどんな女にも萎えてゆく欲望を感じた。ともかく彼を慈しんだところで、そこは遠くて、何事の中にも、まるで彼と共にある事の喜びは見出せない。僕は僕の仕事でさえ捨てたくて、僕はベンドゥリクスである事を止めたい。サラー、僕はどうしようもない。
 その夜、朝の二時にすっかり目が覚めた。僕は食料貯蔵室へ降り、何枚かのビスキトゥと一杯の水を、自分で取って来た。僕は、ヘンリの前で、サラーの事をあんな風に話してしまって申し訳なく思っていた。牧師は、或る死者がしなかったということ、そこには僕たちが出来る事は何もないと言った。それは、殺人や姦通、目を見張る程の罪の真実かも知れないが、一人の死者はずっと妬みと卑劣という有罪のままでいいのか?僕の憎悪は、僕の愛情同様、箸にも棒にもかからなかった。僕は静かにドアを開け、ヘンリを覗き見た。彼は、明かりを点け、彼の目を彼の腕が隠したまま、ぐっすり眠っていた。隠された目と共に、そこには、全身について匿名の、人がいた。彼は男そのものだった―僕たちの内の一人。彼は、男が戦場で出くわす初めての敵の兵士のようで、死んで、見分けがつかない、白でも赤でもなく、しかし彼自身のように人間そのもの。僕は、彼が目が覚めたらと、彼のベドゥの側に2枚のビスキトゥを置き、明かりを消した。

僕の本は上手く行っていなかった(書くという行為は、何と時間の浪費に思える事か、しかし他にどう使い果たされよう?)演説者の話を聞く為に共有地を横切って歩いた。そこに僕が覚えている一人の男がいて、彼は戦前の日々、僕を何時も楽しませてくれた。僕は、彼の投球場所に無事戻り、彼を
見て嬉しかった。彼は、政治的、宗教的演説者のように、伝えたいメシジをまるで持っていなかった。彼は  で、彼は只物語を伝え、詩の一片を暗唱した。彼は、詩の何かの断片をと頼んで、彼に間違いを指摘する、彼の聴衆に挑もうとした。「The Ancient Mariner」誰かが叫ぶ、と直ぐに、大層な強勢で、彼は僕たちに4行詩を披露するのだ。一人のお調子者が言った、「Shakespear’s Thirty-Second Sonnet」すると彼が無作為に四行を暗唱し、お調子者が異議を唱えると、彼は言った、「貴方は、酷い版を手に入れたんだね」僕は、僕の同僚のリスナをぐるっと確認してから、スマイズを見た。おそらく彼は先に僕を見付けた、というのも、彼は、彼の顔のハンサムな方、サラーがキスをしなかった方を、僕に向けたから、しかし喩えそうでも、彼は僕の目を避けた。
 何故僕は、サラーが知っていた誰彼に、何時も話し掛けたがるのか?僕は、彼の方へと僕の手法を押し通して言った、「こんにちわ、スマイズ。」彼は、彼の顔の醜い方にハンカチーフを乗せたまま僕の方を向いた。「オウ、ベンドゥリクスさん。」彼は言った。
 「僕は、葬式以来、貴方を見かけませんでした。」
 「僕は、離れていました。」
 「貴方は、もうここで話していないのですか?」
 「いいえ。」彼は躊躇い、嬉しくなさそうに付け足した、「僕は、公開演説を止めました。」
 「それで貴方は家庭‐指導は未だしているんですか?」僕はからかった。
 「いいえ。僕はそれも止めました。」
 「貴方の見解は変わらなかった、と僕は願う?」
 彼は憂鬱そうに言った、「僕は、何を信じていいか分かりません。」
 「何にもない。きっと、それが核心だった。」
 「そうでした。」彼は、群衆の外の方へ少し動き始め、僕は、自ずと彼の悪い方に目が行った。僕は、もう少し彼をからかおうとせずにはいられなかった。「貴方は、歯痛になったの?」僕は尋ねた。
 「いいえ、どうして?」
 「それは、そんな風に見えたから。そのハンカチーフで。」
 彼は答えずに、ハンカチーフを取った。そこには隠す醜さは全くなかった。一つの小さいシミ以外、彼の肌は、実に新鮮で若々しかった。
 「彼は言った、「僕は、僕が知る人に会う時、説明するのに飽きてしまいました。」
 「貴方が、除去法を見付けたの?」
 「はい。僕は何処かにいたと貴方に話しました。」
 「施設療養所へ?」
 「はい。」
 「手術を?」
 「正確ではありません。」彼は嬉しくなさそうに付け加えた、「それは、手を触れて行われました。」
 「心霊治療?」
 「僕には信仰はありません。僕は、医者に行ったことがありません。」
 「それじゃ何?蕁麻疹?」
 彼は、その話題を終えようとして漠然と言った。「近代的方法。電気。」
 僕は帰宅して、再び、僕は僕の本に身を入れようとした。何時も、僕は書き始めると、そこにしつこく息づかない一つの人物がいるのに気付く。彼に関して心理的誤りは、そこには何もないのに、彼は身動きが取れず、彼は周りに押されてしまう、言葉が彼に向かって探り当てられようとする、僕が勤勉な歳月を通して得た、あらゆる技術的スキルは、彼を僕の読者に息づいて見えるように組み立てる事に使われて欲しい。時に、僕は、物語の中で最も‐引き摺られた人物として彼を批評家が褒めると、僕は腐った満足を得る。喩え彼が引き摺られなかったとしても、彼には確かに引き摺り込まれた。彼は、重く僕の心に横たわる、僕が仕事をし出すと必ず胃の上の殆ど消化されない食事のように、彼が登場するどんなシーンにも、創造の喜びから僕を遠ざけるばかりで。
 彼は、期待されなかった事はせず、彼は僕を驚かせもせず、彼は手数料も取らない。他の人物皆が助ける、彼は只々邪魔をする。
 それでも尚、誰も彼なしで振舞えない。僕は、僕たちの何人かについては、その道筋そのものに神の思いを想像出来る。死者は、人はきっと思う、ある認識の中に自らを創造する。彼らは息を吹き返す。彼らは、驚くほどの演技、或いは言語能力を持つ。彼らは、それによって無条件で、陰謀の外側に留まる。しかし僕たちは、四方を押されてしまう。僕たちは、不在の執拗さを持つ。僕たちは、脱出出来ずに陰謀に縛られ、物憂げに神は僕たちに強いる、こちらでもあちらでも、彼の意図に従って、詩情もなく、自由意志もない人物、彼の重要性だけが、その何処かに、何らかの折にあり、僕たちが、多分彼らの自由意思にとって好機を手にした死者を提供しながら、その中で、生きている人物が動き、話すシーンを入れ込むのに役立つ。
 僕は、ドアが閉まり、ホールの中のヘンリの足音が聞こえた時、嬉しかった。止める事、それが謝罪だった。その人物は、今尚、朝まで無気力のままでもいい。その時は、ついにポンテフラクトゥ・アームズへ向かう時間だった。僕は、彼が上に呼び掛けるのを待った。(既に一か月の内に、何年も一緒に暮らして来た二人の独身者と同じように、僕たちの成り行き任せだった。)しかし彼は声を掛けず、僕は、彼が彼の書斎の中に入るのを耳にした。少しして、僕は、彼の後を
追った。僕は僕の酒を飲み損うところだった。
 僕が、最初、彼と一緒に戻って来た時、僕は、その時の事が思われた。彼は、そこに、緑色の円盤投擲の側に座っていた。
しかし、今、彼を見守りながら、僕は、羨望も喜びもどちらも感じなかった。
 「飲むか、ヘンリ?」
 「そう、そう。もちろん。僕は、只、僕の靴をかえようとしただけだ。」彼は彼の街用と彼の田舎用靴を持ち、共有地は、彼の見る限り田舎だった。彼は、彼の紐の上に折れ曲がった。そこには彼が解けない結び目があって―彼は、何をしても彼の指使いが下手だった。彼は、奮闘する事に疲れ果て、靴をもぎ取った。僕はそれをつまみ上げ、彼の為に結び目を解いた。
 「貴方には感謝する、ベンドゥリクス。」おそらくそれ程些細ではあっても、仲間付き合いの一つの振る舞いは、彼に信用を与えた。「あまり嬉しくない事が、今日役所であったんだ。」彼は言った。
 「僕に話すと言い。」
 「バトゥラムさんが、電話をして来た。貴方は、バトゥラムさんを知ってると、僕は思わない。」
 「オウ、そう。僕は、他日、彼女に会った。」妙な言葉―他日、その一日以外、全ての日は、同じだったかのようで。
 「僕たちは、そんなに上手く一緒にやって行った事がない。」
 「そういう風に彼女は言っていた。」
 「サラーは、それを何時も非常にうまくこなした。彼女はあの人を遠ざけていた。」
 「彼女は、お金を借りに来たの?」
 「そう。彼女は10パウンドゥ欲しかった―彼女の何時もの作り話、一日街で、買い物をして、走りに走る、銀行は閉まった…ベンドゥリクス、僕は卑しい男ではないが、僕は、彼女が仕出かす遣り方に、随分いらいらさせられる。彼女は、年に二千も彼女のものとして懐に入れた。それは、僕が稼ぐのとほぼ同額だ。」
 「貴方は、それを彼女にあげたの?」
 「オウそう。誰でも決まってそうするが、困った事に、僕は説教をせずにはいられなかった。それが彼女を怒り狂わせた。何度、彼女がそんな事をして、何度、僕に返したか、僕は彼女に話した―それは、最初、簡単だった。彼女は、彼女の小切手綴りを取り出して、彼女は、僕に、そこやその時全部の代償に全部小切手に書くつもりだと言った。彼女は非常に腹を立てたので、僕は彼女はそうするつもりだと確信した。彼女は、彼女の最後の小切手を使ってしまったという事を、本当に忘れていた。彼女は僕に恥をかかせようとしたのに、彼女は、只、自ずと恥をかく事に成功しただけだった、可哀そうな女。当然、それが、事を悪化させた。
 「彼女は、どうしたの?」
 「サラーに相応しい葬式をしてやらなかった事で、彼女は僕を責めた。彼女はおかしな話を僕にした・・・」
 「僕は、それなら知っている。彼女は、二杯のポートゥの後、僕にそれを打ち明けた。」
 「彼女が、嘘を吐いていると貴方は思う?」
 「いや。」
 「それは、有り得ない一致でしょ?二歳で洗礼を施され、そしてあの時、貴方が覚えてもいられない事に、後戻りし始める事・・・それじゃあ、まるで伝染病のようだ。」
 「妙な一致、貴方が言えば何でもそうだ。」
 前に一度、ありったけの強さでヘンリの代役を務めた事があった、僕は、今、彼をへこませるつもりはなかった。「僕は、見知らぬもの同士の一致を知った。僕は続けた。「去年中、ヘンリ、僕は、実にうんざりさせられる程、僕は車のナムバを集めた。それは、符合について貴方に教え導く。一万もの有り得る番号、そして神は、どれ程多くの組み合わせがあるか知っているのに、未だに僕は、繰り返し、交通障害で並んだ同じ型の二台の車に目が行く。」
 「そうだね。それはそんな風になってしまうものだと僕も思う。」
 「僕は、一致の内に、僕の自信を失くしてしまう事はない、ヘンリ。」
 電話は、二階で微かに鳴っていた。僕たちに今までそれが聞こえなかったのは、 スイチが書斎で消してあったから。
 「オウ大事な人、オウ大事な人、」ヘンリが言った。「もしそれが又、あの人だったら、僕は少しも驚かないのに。」
 「彼女に鳴らさせて置け。」すると僕が話すと同時に、ベルが止まった。「それで僕が卑劣だという事にはならない。」ヘンリが言った。「十年で百パウンドゥ以上、彼女が借りたとは思わない。」
 「外に出て、一杯やろう。」
 「もちろん。オウ、僕は、僕の靴を履いてなかった。」彼がその上に折れ曲がると、彼の頭の王冠に禿げた継ぎ当てが見えた。それは、彼の心配事が尽きなかったかのようだった―僕は、彼の心配事の一つだった。彼は言った、「僕は、貴方がいないと何をしたらいいのか、分からない、ベンドゥリクス。」僕は、彼の肩からふけの数粒を払った。「オウ、大丈夫、ヘンリ・・・」するとその時、僕たちが動こうとする前に、ベルが又鳴り始めた。
 「そんなの放って置こう、」僕は言った。
 「僕は、出た方がいい。貴方には分からない・・・」彼は彼の靴‐紐をぶら下げたまま起き上がり、彼の机の方へ向かった。「今日は、」彼は言った、「マイルズが話しています。」彼は、僕に受話器を渡して安心して言った、「それは貴方へだ。」
 「はい、」僕は言った、「ベンドゥリクスです。」
 「ベンドゥリクスさん、」男の声が言った、「貴方に電話を掛ける事にしようと思いました。僕は、今日の午後、貴方に真実を打ち明けなかった。」
 「貴方はどなた?」
 「スマイズ、」その声が言った。
 「僕は、分からない。」
 「僕は、私設療養所へ行ったと貴方に話しました。そこに僕は行っていません。」
 「実際、それは、僕に関係などある筈がない。」
 彼の声は、電話を通して僕に届いた。「もちろん、それは関係あります。貴方は、僕に耳を傾けようとしない。誰も僕の顔を取り扱っていません。それは。すっかり奇麗になりました、或る夜に、突然。」
 「どのようにして?僕は未だ知らない・・・」
 彼は陰謀の恐ろしい雰囲気で言った、「貴方と僕は道理が分かる。その周辺、そこはどうにもなっていません。それは、そこを陰気にしている僕の右ではありません。それは、・・・でした。」しかし、それは、「符合」に向かう二者択一だったというあの馬鹿げた新聞の言葉を使える前に、僕は、受話器を置いた。僕は、彼の握り締めた右手を覚えていたし、僕は、死者がそうして包み込まれ、彼らの衣服のように分けられてもいいのかという僕の怒りを覚えていた。僕は思った、彼は、非常に誇り高く、彼は、何時も或る種の啓示を授からずにはいられない。一、二週間の内に、彼は、それについて共有地で話し、彼の治った顔を見せようとするだろう。それは、新聞に登場するだろう。「合理主義者の演説家、奇跡的治癒によって転向した。」僕は、符合に、ありったけの僕の信条を結集しようとしたが、僕は考えた挙句、妬みを伴うそれは、僕には何の遺品もなかったから、彼女の髪の上に、夜に、横向きになっている潰れた頬だけだった。
 「それは誰なの?」ヘンリが尋ねた。僕は、彼に話すべきかどうか、瞬間、躊躇いはしたが、ふと、僕は思った、だめだ。僕は彼を信用していない。彼とクロムプトン神父は一緒になるだろう。
 「スマイズ、」僕は言った。
 「スマイズ?」
 「サラーがよく訪ねたあいつ。」
 「彼は、何を欲しがったの?」
 「彼の顔が治った、それだけ、僕はその専門家の名前を僕に知らせるように頼んだ。僕には、友達がいて・・・」
 「電気療法?」
 「僕には、確信がない。 は、元はヒステリク状態だと、僕は、どこかで読んだ事がある。精神医学とラディウムの混合。」それは、もっともらしく聞こえた。多分、結局、それが真実だ。他の符合、同じナムバ プレイトゥの二台の車、そして僕は、飽き飽きした感じで思った、どれだけ多くの符合が、そこにあればいいというのか?葬式での彼女の母親、その子供の夢。これが、毎日毎日続くというのか?僕は、彼の強靭さを遥かに‐超えて、潮流が彼自身より優勢だと知っている泳ぎ手のような気がしたが、喩え僕が溺死しても、僕は、最後の瞬間までヘンリを支え続けるつもりだった。喩えこの事が論ぱくされなくても、喩えそれが新聞に載っても、何処でそれが終わるのか誰もそれを語れないのだから、結局、それは、友人の義務ではなかったのか?僕は、マンチェスタのバラを思い出した―あの詐欺は、それはどういう事かを承認されるのに長い時間がかかった。人々は、当時、酷くヒステリク状態だった。そこには、遺品‐漁り、祈りをする人々、行列があるのかも知れなかった。ヘンリが、知られていなくても、醜聞は凄まじい。おまけに、二人の生活の事を質問し、ドーヴィル近くの洗礼の奇妙な物語をほじくり返す新聞雑誌記者連中。宗教的報道機関のその低俗さ。僕には、見出しが想像出来ないし、見出しは更なる「奇跡」を産み出すだろう。僕たちは、しょっぱなに、この事を葬らなければならなかった。僕は、二階の僕の引き出しの中の日記を思い出し、僕は考えた、あれも始末しよう、あれは、彼らのいいように解釈されてしまうから。彼女を救う事、それは、自らの為に僕たちが一つづつ彼女の特徴を壊そうとするかのようだった。彼女の子供の頃の本も、危険だと分かっていた。そこには写真があった―一枚はヘンリが持って行った。報道機関は、それを持っていなければならない。モードゥは信用するに値するか?僕たちは二人は、一緒に暫定的な家を築き上げようとして来たのに、それも中断される事になる。
 「僕たちの酒飲みは、どうする?」ヘンリが言った。
 「僕は、もうちょっとで加わるよ。」
 僕は、僕の部屋に上り、その日記を取り出した。僕は、カヴァを裂いて剥がした。それは、丈夫だった。綿の裏張りは、繊維状になって外れていた。それは、翼を引き裂かれている一羽の鳥のようで、ベドゥの上のそこに、日記が横たわっていた。紙の剥ぎ取り式ノウトゥ、羽のない、傷付いた。最後の頁が上向きになっていたので、僕は、又それを読んだ、「貴方は、そこで消耗するように、私を導いていた、そうして、或る日、私たちは、この貴方の愛以外、何も残っていなくてもよくなってしまった。それにしても貴方は、私には立派過ぎます。辛くて、私が貴方に縋(すが)る時、貴方は、私に安らぎを下さった。それを彼にも授けて下さい。彼にこの安らぎを授けて下さい―彼は、もっとそれを必要としています。」
 僕は思った、貴女は、そこを間違った、サラー。少なくとも貴女の願いの一つは、叶えられなかった。貴女,貴女以外の者に、僕はどんな安らぎも覚えないし、僅かな愛情も抱かない。僕は彼女に言った、僕は憎しみの内にある男だ。しかし僕は、さほど憎悪の虜になっていないのに、僕は、他の人々をヒスティアリア状態だと言って憚らなかったが、僕の遣う言葉は、過剰だった。僕は、彼等の不誠実を見て取れた。僕が主として感じた何かは、不安より憎しみの方が負けていた。もしこの神が存在するなら、僕は考えた、そしてもし貴女でさえ―貴女の性欲や、貴女の姦通や、貴女が何時も口にする弱気な嘘で、このように変われるのなら、僕たちは、アナタが急いで行くように、急いで行けば、目を閉じれば、一度、皆の代わりに急いで行けば、皆死人になれるだろう。もし貴女が聖人なら、聖人になる事、それはそんなに難しくない。それは、彼が、僕たちの誰かを要求し、急いで行くことが出来る何かだ。しかし僕は急いで行きたくない。僕は、僕のベドゥに座って、神に言った、貴方は、彼女を奪ったが、貴方は、未だ僕を手に入れていない。僕は、貴方の狡猾さを知っている。高みへと僕たちを持ち上げ、僕たちに全世界を提供する、それは、貴方だ。貴方は、僕たちを急いで行くように誘っている悪魔、神だ。何れにせよ僕は、貴方の安らぎが欲しくない、僕は貴方の愛が欲しくない。僕は、何かしら実に単純で、実に安易なものが欲しかった。僕は、生きている限り、サラーが居なくてはならなかったのに、貴方は、彼女を何処かへ連れ去った。貴方の見事な計画で、収穫農機具が、鼠の巣を潰すように、僕たちの幸福を潰す。僕は、貴方を憎む、まるであなたが実在するかのように、僕は貴方を憎む、神よ。
 僕は、紙の剥ぎ取り式ノウトゥを見た。それは、頭髪の切れ端以上に人格を持たなかった。貴女は、貴女の唇や指で髪に触れられ、そして僕は、心の死に直面し、参っている。僕は彼女の体を求めて暮らし、僕は彼女の体が欲しかった。それなのに、日記は、僕が持つ全てだった。だから食器戸棚の中に戻して、それを閉じ込めた。彼女が居なくても、それを葬り、もっと完全に僕の手元に残して置く事、それは、彼の人にとって更なる勝利にならなかったのでは?僕は、サラーに言った、これでいい、それで貴女の行く道を手に入れなさい。僕は、貴女が生きていて、彼の人は実在すると信じる。愛へと、この彼の人の憎悪を変えようとする貴女の願い以上に、それは奪ってしまう。彼は僕を身包み剥ぎ取り、あの王のように、僕の中の彼の人が欲しがるものを僕は彼の人を身包み剥がすでしょうと貴女は書いた。憎悪は、僕の脳の中にあり、僕の胃の中、或いは僕の皮膚にもない。それは、発疹や痛みのように除去されようがない。僕は、貴女を愛する程に、貴方を憎んだ?それに、僕は僕自身を憎みはしない?
 僕は、ヘンリに呼び掛けた。「僕は、準備が出来たよ。」そして僕たちは、ポンテフラクトゥ・アームズへと公有地を越え、並んで歩いた。灯火が伸び、恋人たちは、道路が交差する所で待ち合わせ、草の生えたもう一方の側には、壊された階段のあるその家があり、彼の人は、この希望のない手足の不自由な暮らしを、僕に返した。
 「僕は、僕たちのこうした夕方の散歩の度に前向きになる、」ヘンリが言った。
 「そうだね。」
 僕は思った、朝の内に僕は、医者に電話を掛けて、宗教的治療が可能かどうかを、彼に尋ねよう。するとそこで僕は思った、ましではないが、誰も知らなければ、誰でも無数の治療を予想出来る・・・僕は、ヘンリの腕に僕の手を乗せ、それをそこにそのままにした。僕は、今こそ僕たち二人の為に、強くなる。彼は、未だ真剣に心配していなかった。
 「それは、必ず僕が前に目を向ける唯一の事だ、」ヘンリが言った。
 僕は、初めに、これは憎悪の記録になると書いた。夕方のグラスのビアの為に、ヘンリの側でそこを歩きながら、僕は、冬の気配を添えるように感じる一つの願い事を思い付いた。オウ神よ、十分にして下さった、十分僕を身包み剝がして頂きました。僕は、愛する事を学ぶには、疲れ果てて、年も取りました、ずうっと、僕を一人で放って置いて下さい。

2022年10月7日金20時27分、
「The End of the Affair」の翻訳が終わりました。
今日で終わりました。
次の翻訳は、2年がかりです。
もう決めました。
何をされても、どうなっても、その小説の翻訳をします。

私は、翻訳というものを変えています。
私が全てを変えようと思っています。

私は、誰より翻訳したものを読み、誰より影響を受けました。
それは、読んだ本の名前や数のことを言っているのではありません。

空と海とそしてひとり 成田悦子
https://naritaetuko.club
を作りました。成田悦子が書いた詩を定着させようと思っています。Google抜きで各社の検索が成立しないとしたらもっとどうにかしなければと思います。いろいろな方法で検索に載るよう試しています。

“The End of the Affair Graham Greene” への1件のコメント

  1. 今日から1年くらいかけてThe End of the Affairを投稿します。私独自の表記も確立しつつあり極力使用していきます。この小説投稿から数年経過しました。私に無断で私の翻訳が映画に使われているのを知りました。その英国俳優は日本名布施明と松坂慶子です。翻訳物を無断で映画に取り入れるのは違法だそうです。この小説は古い物で私以前の翻訳は英文とかなり懸け離れていました。山川千帆元鳥取県議会議員による米子市警二名を使った令状を持たない自宅に押し寄せての違法捜査はこの翻訳を盗むために行われたことが判明しました。翻訳を完全筆記したノートがなくなっています。松坂慶子は安倍昭恵で、安倍晋三から渡った何億円ものお金が返還されていません。この映画の撮り直しに使ったと耳にしています。

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